無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

文字の大きさ
106 / 159
冒険者Dと近隣国

冒険者ギルド

しおりを挟む
散々食べ散らかして俺は酒場を出る。
もうすぐ夜更けを過ぎて空が明るくなるだろう。銀貨を出して酒場に居た奴らに奢ればやんややんやの大騒ぎだ。俺が酒場を出る頃には酔い潰れた奴らがわんさか出たぜ。そのお陰でハルッツも知らねえ話が聞けたから良しとしよう。

俺は冒険者ギルドを目指してのんびりと歩いた。

この時間はまだ一部の冒険者しか出て来ていない筈だ。夜の魔物を狩って戻った冒険者がいるか、夜勤の受付嬢くらいしか居ない。
ギルマスやサブマスは性格で遅出する者も、泊まり込んで仕事をする者もいる。ライアンはそんな男だろう。

バラナビィーチ冒険者ギルドマスターであり、立派な体躯をした冒険者叩き上げの男だ。厳つい顔はその生真面目さを表してる。
しかも俺が仕事を振ってるからな。
バラナビィーチ冒険者ギルド塩漬け案件の妙齢の婦人行方不明事件にアミバ•モトーレン伯爵が関わっていると教えたし、冒険者パーティのテンペストの連中がわざと塩漬けにしたとも言ったからな。
スナーク辺境伯への繋ぎと内偵やらテンペストの処罰やら忙しいだろうよ。

冒険者ギルドに入るとミリュエルが受付で居眠りをしていた。どうやら彼女が夜勤だったらしい。
髪の毛がほつれて妙な色気を出してやがる。唆るぜ。

俺が入って来た音で目が覚めたらしい。こっちをぼんやりした目で見てる。
「ギルマスは居るか?」

俺が声を掛けると目を瞬かせてから、しゃんとして応えた。
「あっ、はい!泊まり込みで部屋に居るはずです!」

窓明かりが差し込む誰も居ないギルドの中は静かだったからミリュエルの声がやけに大きく聞こえる。
「奴に報告かあるから上がるぜ。終わったらミリュエルにも話をしないとな」

俺がニヤリと笑うとミリュエルは顔を赤らめて背けた。

俺は遠慮なしに2階のギルマスの部屋に向かった。
訪う事無くドアを無遠慮に開けて中に入ると執務机の椅子に座ったまま、頭を上げて鼾をかいていやがった。
「おい、起きろ!ライアン」

俺が声を掛けたら変な寝言をかきやがった。
仕方ないから執務机を叩いてやると積み上げられていた書類が崩れ、ライアンが音にビクついて起きた。
「な、な、何だぁ?」
「朝早くから悪いな!俺だ、Dだ。」

目をしょぼつかせながらライアンが俺を見て、言った。
「アミバの件ならまだ終ってないぞ。ようやく、拘束する手筈がスナーク伯爵と整ったばかりだ。」

呑気すぎるような気がするぞ。
「おいおい、大丈夫か?アミバは今日、明日には証拠隠滅に動くぞ。」

ピンと背筋を伸ばし焦ったようにライアンは言った。
「そりゃ不味い!一応、見張らせて居るがスナーク伯爵の言う通りにやるしかねえのかよ!」

何をどうするのか分からんがちゃんと捕まえろよ。
「それとな、ライアン」
「まだ、なんかあんのか?」

俺が言葉を続けたから疑わしそうな目つきで聞いてきた。
「ああ、塩漬けになってた『海獣リバイス討伐』終えたぞ。」
「うそん!受けたのは一昨日じゃなかったか?」

驚きすぎて顎が外れそうな顔になったのは笑えるぜ。
「まあな、でもほんとだぜ。証拠を見せるから解体倉庫へ行こうぜ」

せっつく俺を嫌がりながら、俺はライアンを席から引っ張り上げながら部屋から追い立てる。
眠気覚ましをしてやったというのにライアンは時折欠伸を噛み殺しながらギルドの1階に俺と降りた。

受付嬢のミリュエルが朝早い冒険者と話し込んで居たがこちらに気付いた。
「あら、ギルマスどちらへ?」

ライアンは片手を上げてミリュエルに応えると言った。
「3番倉庫に行ってくる。」
「Dさんの納品ですか?」
「そうだ」
「ちょっと待ってください。私も行きます!」

ミリュエルは乱暴に依頼書を目の前の冒険者に渡すと立ちあがってドアを出掛けていた俺達を追ってきた。
話をしていた冒険者があ然としていたが、奥からふらふら出てきて隣に他の受付嬢が座ったから良いのだろう。

俺達はライアンの後を付いて冒険者ギルドに併設されている大きな倉庫に入った。

入口のドアの横には巨人でも入れそうな横開きの扉があり、中に入ると更に奥行きも広かった。
床は石畳が敷かれ、簀子が沢山置かれて居るから魔物の体液などは流してしまえるようだ。最も魔法を掛けて置けばそれなりに清潔に保てるのだろう。
「ここなら、海獣リバイスでも置けるだろう。何処に仕舞ってあるんだ?」

どうもライアンはアイテム袋か何かに入れてあると思ったらしい。俺は手を伸ばしてインベントリから海獣リバイスを取り出した。ドゴンと音を立てて簀子の上に落ちる。あまりの重さに一部の簀子が欠けてしまったらしい。
「「!」」

ライアンとミリュエルが息を飲んだ。
う~ん、でかいよな。改めて目の前にするとやはり20mは越えているようだ。
「D~!お前はインベントリが使えるのか!?」

なんとライアンはインベントリを知っているようだ。ミリュエルは驚きから戻って来ない。
「ああ、それがどうした。」
「じゃあ、お前は『使徒』なのか?」

『使徒』というのは神様の使いとか呼ばれる神様の命令を受けて某かの使命を成し遂げる存在のことだ。
「いや?違うぞ」
「ほんとか?インベントリが使えるのは『使徒』だけだと聞いているぞ!」
「『使徒』って奴らは神の声が聞こえるとか言うイカれた奴らだろーが。俺はそんなんじゃねえぞ。どんな神にも憑かれちゃあいねえ!」
「・・・ほんとか」

ライアンは半信半疑らしい。
それを聞いていたミリュエルが放心から帰って来た。
「Dさん凄ーい!!」

抱きつきながら言うもんだから俺は照れた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...