無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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冒険者Dと近隣国

世界の破滅

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「古代兵器の事を知っているのはサヴァやユークリッド、ストロバヤがその前世の記憶を持っていたからだ。」

あちこちから「法螺だと思ってた」とか「本当かよ」と声が上がる。
「今はあちらこちらからその古代兵器が打ち出されて大地を破壊しているようだ。この飛行船ノアンはもっと高くまで上がるから大地の破壊の影響を受けない。」
「村に残して来た者達はどうなるんだ?」

村人の、誰かが言った。
「大地の破壊が村まで及ばなければ運が良ければ生き残れるかも知れないさ」

と俺は答えた。
残った者の事を考えて啜り泣く者もいた。

茶色い大地と青い海が織りなすこの世界を赤い溶岩のひび割れが破壊していくのが眼前に見えている。大地が丸かったのかと言う様な当たり前の声が上がらないのは前世の記憶を持つハイドゥンの村人だからだろう。

暗い虚空は宇宙の闇でそこまで上り詰めると上昇は止んだようだ。
「上昇限界の高度20000mを越えたぞ」

イシュタームが説明する。
「周りが暗いのは夜だからかしら」

俺の前のアンナが言う。
「星空に大地は浮かんでるんだ。ほら暗い大地は夜に成りかけてる。」

なかなかポエミーな事を俺が言ったせいか、誰かの腹が鳴った。
QTかダリア当たりかも知れない。すると口々に腹減っただの文句を言い始めた。

操船をしながらイシュタームが言った。
「急な試運転になったから食べ物なんか持ち込んで無いぞ。水ならその中央のダクトに水栓があるから飲めるだろう?」

水があれば数日は生きられるだろうが腹を空かせると碌な事になら無い。俺はインベントリからありったけのパンを出して眼の前のアンナ達に配る様に伝えた。
籠に入ったバンやらサンドイッチ、惣菜パンなど俺が買い集めて置いたものだかこの人数なら一回分くらいは足りるだろう。

アルマの後ろにいた商人、確かコメツキだったか、が驚いて目を剥いている。アイテム袋などから出した訳では無いから驚いているのだろう。アンナやQTは今更驚きはしないがアルマまで眉を顰めているのは何故だ?アルヴァンチェリのスキル持ちにもこんな力を持つ者が居るだろうに。

渡されたパンを握りしめてアルマを押しのける様にコメツキが前に進み出て俺に喰って掛かった。
「あ、あんたはもしかしてべゼット•ワイグマさんでは?」

俺がBを名乗ったのはかなり昔だし、短期間だったのに良く知ってるな。だが、これは王家との約束だから否定して置く。
「なんのことだ?良いから早く食え。握り潰してるぞ!」

俺の言葉にコメツキははっとして自分がパンを握っていることを思い出したようだ。ポロポロとパンカスを落としながら貪った。
アルマがコメツキの肩を引いてボソボソと何かを言い聞かせてる。良く聞こえなかったが窘めてくれたようだ。

まぁこれで少しは腹も膨れるだろうから少しは静かになるだろうと思ってたら今度はトイレに行きたいと言う奴らが現れた。飛行船ノアンの構造はイシュタームがら少しは聞いているから俺は声を張り上げて説明した。
「トイレに行きたい奴は後ろ側の階段から下に行け。個室が幾つかあるはずだ。」

まぁ人間喰えば出すのが普通だな。緊急で飛び乗ったから忘れていたのだろうが食べて飲めば出したくなるもんだ。そういや、飛行船ノアンは何処に向かってるんだ?
「おい、イシュターム!何処に向かってるんだ?」

パンを口に咥えたイシュタームが振り返りつつモゴモゴ何か言った。口にパンが入っているのに気づいた奴は片手で操船しながらパンを口から離して言った。
「何処へって、逃げようが無いから取り敢えずアララット山にぶつからない様に滞空させてるさ。移動にも魔石が必要だからな」

風属性の魔石で進ませる機構もあるが通常はプロペラを回す方式だったな。こっちの方が魔石の消費が少ないんだった。
「今晩だけはあんまりアララットから離れないようにしたほうが良いな」

俺の意見にストロバヤも賛成する。
「報復合戦が起きているとしたら数日は戻らん方が良いがこれだけの人数を乗せたままでは無理があるな」
「一晩も古代兵器は飛ばんよ」

ユークリッドが長丁場にはならないと説明する。
「むしろ落ちた後の災害が収まるのはどれくらい続くか分からないな」

サヴァが続けた。
「ハイドゥン村から離れたせいか転生前の記憶が薄れてきてるぞ」
「どうせ役に立たないから要らんぞ」

ストロバヤが言うがイシュタームが嘆く。
「折角飛行船ノアンを作ったのに操船方法もメンテナンスも忘れちまうなんて嫌だ!」

それなりに役に立つ知識もあるからハイドゥン村の役割もそのためなのかも知れないなどと考える。まぁ神様の考えなんて分からんが。
「日が東から登って来たら少し北に向かってアロシア帝国の様子とマジェント共和王国の様子も伺えば逃げる場所も決められるだろう」

俺の言葉に操縦席近くの者達が頷いた。
暗闇が世界を覆い始めると乗っていた村人も避難の緊張から解かれ始めたのか無口になり、その場で座り込み眠る者達が増えて行く。ストロバヤに抱かれたアンドロノフも既に眠っている。

アンナの周りの者達も寄り添い互いに温め合っていた。このまま静かに夜も更けるかと思われたが天空を切り裂く様な魔物の怪鳴が響き渡った。

キィエエー!キィエエー!

不穏な空気が張り詰めた。








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