君とエアーコンタクト! ※休載中

まゆぽん

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第2話

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この家にある電化製品は全て親の会社の物で、修理が必要な時や新しい物が欲しい時は、頼めばいくらでも対応してもらえる。
メール1本で、「○○修理して」「○○送って」だけでOKだ。

その時は、ABCトリオが会社から自動運転の車やトラックに乗り、2時間かけてこの田舎へ運んで来る。
頼む時間が早ければ当日来るし、夜中に頼めば次の日にはだいたいやって来る。
物によっては数日かかることもあるけれど、いつも手配は早かった。

またはあえてこちらから呼ばなくても、3人は月に1度は必ず俺の身体チェックをするためにこの家にやって来る。

体調不良時に病院に行って万が一機器を壊しては……との配慮(いや、警戒か?)から、親はこの3人に医療系の資格を沢山取らせ、機械ついでに俺のメンテナンスもできるようにしていた。

「……というわけなんですよ~、ぼっちゃん!」

ABCトリオの誰かが言った言葉に、俺は我に返って顔を上げた。
リビングのソファーに座ってぼーっとしていたらしい。全然話を聞いてなかった。

「楽しみでしょう~?」

「あ、ああ……」

何をどう設置するか知らないが、流れで返事をしてしまった……。
まぁ……ある程度は信頼しているし、俺のこともよくわかっているし、大丈夫だろう。
設置した物が不要だと言えば持ち帰ってくれるだろうし。。。

俺はドア・ロボを解体するふりして、ちらちらとABCトリオの作業を見ていた。

エアコンだと嬉しいが、エアコンでなくても面白い電化製品なら嬉しい。
正直暇つぶしになるなら何でもいい。
ABCトリオは今までも新作ができるたびに色々な電化製品を持ってきたが、ほとんどは壊れて処分になってしまった。

だから今回も、期待しているようで、期待していない部分もあった……。

(ふぅー……。首が疲れた……)

ドア・ロボを解体するためにずっと下を向いていたせいで肩がこった。
休憩するために工具を置いて天井を見上げると、解体途中で放置してあるエアコンが目についた。

エアコンの解体も、ドア・ロボの解体も途中で止まってる。なんか俺のやることって中途半端だな……。

でもまぁいいや。急ぐことでもないし、時間は有り余るほどあるし。まじで……。

―――――だってこの家以外に、俺の居場所はないのだから―――――

引き続きバリバリビリビリとダンボールをはがしていく音をBGMに、俺は頭の向きを変えて窓の外を眺めた。
さっきまで風が全く吹いてなかったが、今は少しだけ風が出てきて気持ちいい。。。

そして風が出てきたと同時に、窓辺から「スパコンッ♪」と響く軽快な音が増えた。
これは虫バイバイ・ロボが動く音だ。

虫バイバイ・ロボは、柔らかく繊細な網がついたテニスラケットのような形をしていて、長い手足がついているので自分で動ける。
これを窓辺に置いておくと、侵入してくる虫をセンサーでキャッチして、自ら動いて外に跳ね飛ばしてくれるという優れものだ。

虫を捕まえたり叩き落とす系のものだと残骸がその辺に転がってしまうが、虫バイバイ・ロボは、網で生かしたまま外に叩き出す構造が人気で、ABCトリオが開発した商品の中でヒットした物の1つだ。
1度太陽の光を浴びれば半年は充電が持つので、そこも人気の秘訣だった。

都会の方では窓を開ける必要のない空調管理システムが発展していてあまり需要はないが、田舎の方ではまだこうして普通に窓を開けている家庭も多く、十分需要がある。

さっきから虫バイバイ・ロボは、開けっ放しの窓から入ってくる蚊やハエに反応してタタタタッと二足歩行で走り、カエルのように飛び上がって「スパコンッ♪」と音を出して追い返している。
何度侵入してきても、侵入するたびにすごい速度で動き回って追い払う。

10匹以上同時に虫が侵入した時は、「ローリング・スパコンッ♪」と七色に輝きながら竜巻のように回転し、虫をなぎ払うそうだ……。まだ見たことはないけれど。
(そもそもそんなに虫が入ってくる状況がまず嫌だ!)

この虫バイバイ・ロボに少し問題があるとすれば、窓を開けておかないと作動しないところ。
どういう仕組みなのか、空気の流れを感じて動くらしかった。
使用マニュアルに、「窓を30センチ以上開けないと効果が望めません」とある。
大丈夫、今はどの窓も全開だ。

飛んできた赤いテントウムシを「スパコンッ♪」と跳ね返した虫バイバイ・ロボを見て、俺はフッと笑った。
跳ね飛ばされたテントウムシが、丁度いい場所にあったひまわりにピトッとくっついて、むしろ嬉しそうに見えたからだ。

この家の周りには、亡くなったじーさんばーさんが管理していた畑がある。

畑仕事に自信がなかった俺は、ひまわりの種を適当にまいておいたというか、投げておいた。
そんな状況に気付いて、ABCトリオが自動水やり・ロボも作ってくれたので、夕方になると土の湿った香りが漂ってくる。

自動水やり・ロボは、形としてはミニ戦車を想像するとわかりやすいかもしれない。

沢山のタイヤで土の上を難なく走り、自動水やり・ロボ用に作った背丈の低い水道の蛇口まで自ら走って行き、戦車の上の出入り口をパカッとあけてセンサーで水を入れ、火砲のところから水をピュイーッと発射する。
そして仕事が終わると、倉庫に帰って専用の充電器で充電しながらまた次の日の水やりを待つ……。
複雑な動きはできないが、きちんとひまわりを避けつつ家の周りをくるくる走り回って水やりしてくれるだけでも十分だった。

そんな感じで育ったひまわりが今、大輪の花をつけ……。
太陽の下……競うように咲き誇っている。

……きれいだ。

小さな頃、両親と一緒に見たことを思い出す。
あの頃はまだ、みんな一緒にいたんだ―――――

「……ちゃん。ぼっちゃん!」

いつの間にかウトウトしていた俺は、3人の誰かの声で目を覚ました。

「あ、ワリィ。寝てたわ」

気付くと俺はソファーに横になっていて、タオルがかけられていた。
そして部屋も涼しくなっている。

「大丈夫です。寝てる間に身体チェックと血液検査、あと壊れたエアコンとドア・ロボも直しておきました。寝室の方のエアコンも今のところ問題ありません」

毎度毎度用意周到だ……。

ABCトリオの言葉に以前なら発狂していたところだが、今ではもう怒る気も起こらない。
3人は親に命令された仕事をしているだけで、何も悪くないのだということが年齢と共にわかってきた。

それに俺に何かあれば、ABCトリオが一番責められる。

だから俺は、俺自身を大切にしなくてはいけないんだ―――――

「起きれそうなら起きて下さい。ぼっちゃんに見てほしいものがあるんですよ!」

「ん……わかった」

目をこすりながら起きて、のびをしてから窓の外に目をやると、もう陽は落ち切っていて暗かった。3~4時間は眠っていたらしい……。
窓も閉めきっているので、虫バイバイ・ロボも部屋の隅で大人しくしている。

「で、俺に見て欲しいものって……?」

あくびをしながら振り向いた俺は、、、まさに「ギョッ」とした。

そこにはビキニ姿の金髪の美女がいた。
ゆるふわロングヘアーにまつ毛の長い青い瞳。
部屋の中だというのに、何故かパレオ付でハイビスカス柄のビキニを着ている。

しかし、一番目を引いたのは……!

(でかいな。Eか? Eくらいか?)

金髪美女(の特に一部)をガン見する俺を見て、ABCトリオは満足そうに笑った。

「「「ふふふ……予想通りの反応ですね……」」」

「楽しんでんじゃねー‼ 説明しろよ‼」

こいつらのことだから犯罪ではないと思うが、あまりに予想外のことすぎて、俺は混乱していた。

「ぼっちゃ~ん。みなぎる気持ちと若さはわかりますが、まずはその下半身を沈めてもらえますかねぇ?」

にやにや~と笑うABCトリオの視線に、俺はハッとする。

「うるさいわ!ちょっと待ってろ‼ トイレ行ってくる‼」

Tシャツと短パン姿の俺は、フーッフーッと息を吐いて必死で分身に静まるよう呼びかけた。
確かに金髪美女の前ではちょっとハシタナイ。

気持ちを落ち着かせ、何とか日常サイズに戻せた分身と共にリビングに戻ると、美女はさっきと同じ位置に棒立ちしたままだった。微動だにしないし、振り向きもしない。

(……あれ?もしかして……?)

さっきは寝ぼけていてよく見なかったが(いや、一部だけはよく見たが!)、近づいてみるとやはり多少の違和感を感じずにはいられなかった。

「なぁ……。もしかしてこの金髪美女……ロボなのか?」

俺の言葉に、ABCトリオがうなづく。

「よければ触ってみますか?」

「え、いいのか!?」

その言葉に誘導され、俺は金髪美女に近づいてじっと眺めた。
最初は正面から。次は横から。後ろから。
下からちょっと見上げてみたり、つま先立ちで俯瞰して谷間を見ようとしたり、興味津々で動き回ってみた。

確かに遠目なら人間に見えなくもないが、近づくと肌質はテカテカしすぎていて綺麗すぎる。
目とか鼻とか唇とか……近くで見るとやはり違和感がなんとなくある。

つまり、「人間」としては全体的に整いすぎていて、逆に違和感を感じるのだ。

気になったので、首の辺りのにおいもかいでみた。ふんわりとフローラルの香りがした。
香水だろうか? うっとりする香りだ。

(背丈は俺と変わらない……。170くらいか……?)

―――――そして!

最後にやはり気になったのが胸! ビキニの中に隠れている胸の形‼

女性とご縁がなさそうなABCトリオが運んできたこの金髪美女ロボ。
胸の造りは、どの程度リアルなのか……。

両手をわきわきし、よだれを垂らしそうな表情で金髪美女を見つめる俺に、最ッ高ー! な言葉が響いた。

「「「ぼっちゃん好みのEカップですよ」」」

E!……それは、、、イイ‼!!

瞬時に俺の理性が吹っ飛び、金髪美女の胸にビキニの上から両手でタッチ。

「中……! 中見ていいか? 中! ちゃんと商品は確認しないとな? な!」

もう何を言っているのか自分でもよくわからない。
鼻息荒くABCトリオを見ると、天使のような笑顔で微笑んでいる。

―――――こ、これは……OKってことだよな!?

落ち着けー。落ち着けー。

俺は自分の胸に手をあて、何度も深呼吸を繰り返した。

そして金髪美女をぎゅーっと正面から抱きしめた後、背中に回していた自分の手を金髪美女の脇の下にすべりこませ、布のビキニをつかみ、、、

さぁ! 一気に脱がすぞっ! 脱がしちゃうぞっ‼

脳内がハイビスカス顔負けのバラ色に染まった瞬間、、、


―――――ズバンッ‼‼


どこかから大きな音がして、、、

俺の足は、、、気付くと宙に浮いていた。。。気がする。。。

何故???



つづく。
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