君とエアーコンタクト! ※休載中

まゆぽん

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第5話

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亡くなったじーさんばーさんが子供の頃は、「食事をする」という日常風景がだんだん減りつつもそこそこあったらしいが、仕事や娯楽に忙しい人類の片手間としてする「食事」には、身体に悪い添加物や栄養素の偏りが多く、肥満とそれに付随する病気が蔓延したそうだ……。

「きちんとした栄養を補給できないものは食事としての意味がない」という国の決断から、栄養素が認められない食品はどんどん排除されていき、同時に個人の身体検査を義務付けて徹底し、データとして国に登録することが定められた。
その上で、食事の代わりとして個々の足りない栄養素を補うためのドリンクやサプリメント、野菜や魚の栄養素を凝縮したタブレットが配給として出回るようになった。

これらは指定数飲むだけで身体に必要な栄養素が全て行きわたり、おなかがすくという感覚すら感じなくなり、増加傾向にあった肥満に関しては、特にストレスなく解消されていった。

その結果、長い年月をかけて人々の中から少しずつ「食事をしなければならない」という固定観念は自然と消えていき……
お金もかからず、食事の手間や片付けに時間を取られない上に、歯を磨く必要がなく、肥満にもならない。
自由を謳歌したい人類にとっては、まさに理想的な生活になった。

上記のことは、国の歴史として調べれば誰でもわかるようにネットで公開されている。
じーさんばーさんから聞いた話も同じような感じなので、情報操作等でねじ曲がっていることはないはずだ。

そして俺たちの世代になると、「食事」という言葉自体を知らない者も増えてきた。
俺も「食事」の認識は、「たまに口に入れる趣味」みたいな感覚だ。

ひと昔前のゲームをやったり映画やアニメを観れば、何かを食べたり複数でテーブルを囲むシーンが割と出てくる。
なので自分が体験したことがなくても、昔の人たちが、どういう風にどういうものを食べていたのかは、知識としては知っている。

だけどそれはどこか「他人事」で、自分の日常に持ち込むものではないという感覚がある。

国も別に「食事をしてはいけない」という法律は定めてはいない。あくまでそこは個人の意思でどうぞ、という感じだ。

そんな状況の俺たちが、「食事」を好まなくなった理由は、上記の他にもう1つある。

食事をするための材料が……とにかく「高価」なのだ。
知っている人はきっと口を揃えて言う。「食事は高級な趣味」だと。

まず、配給用に使用する材料をあえて原型で譲ってもらうため、多額の税金を取られる。
譲ってもらうためには登録が必要で、当人たちが健康であることも条件にあげられる。

登録した者以外が食事した場合も、身体検査によってすぐバレる。当然その者にも共同飲食者として多額の税金は課せられる。

そこまでしてする「食事」はもう趣味の域であり……
日常でやることではなかった。

ちなみにじーさんばーさんは、肥料を取り寄せたり作物の種を取り寄せたりして家の周りに作物を作っていたが、それらの材料も全て高額だった。
それは「身体を動かす」が目的の趣味であったが、金持ちの娯楽でもあった。

実った食べ物を、トントンと音を立てて切る包丁の音は割と好きだったな……と、たまに思い出す。枕・ロボの影響もあると思うけれど。

小さい頃、目を閉じながら……よくその音を聞いていた。
一定のリズムで刻まれるその音は、どういう訳か心が安定する音だった。

正直、実った作物が美味しかったかどうかの記憶はあまりない。
口に入れてみて、酸っぱいとか苦いとか、ごわごわするとか、ネチャネチャするとか、そういう感覚が強くて俺は好かなかった。吐き出したこともある。
じーさんばーさんも無理に食べろとは言わず、「今の時代の子には無理かな~」と笑ってた。
まず「歯を磨く」という習慣がないから、食事をした後に、口の中を奇麗にするのも大変なのだ。

そんなじーさんばーさんの言葉で一番驚いたのは、俺たちの世代は「食事」を噛まないせいで歯がだいぶ劣化して、小さく少なくなっているということだ。
糖分の制限により虫歯がほぼなくなる代わりに、歯自体も身体には不要なものと判断されて、身体が自然に減らしていくそうだ。

しかし最近では、歯は身体の中でも硬く残りやすいものであり、後世の遺伝子研究に役立てられるものとして残すことを研究者たちに強く推薦されていることもあり、ABCトリオが開発したカミカミ・ロボが人気だったりする。

カミカミ・ロボは、歯の研究者たちと共に開発した柔軟性のある楕円形の噛み物で、一日一時間程度噛み噛みしているだけで歯が丈夫になったり、思考能力がアップしたり、小顔になったりする効果があるらしい。
唾液から抽出される菌を調べてPCに転送してくれる簡単な機能もついており、歯の健康維持に貢献してくれることから、とても人気商品だ。

毎日のお手入れも簡単で、箱付の専用液体につけておくと、液体がカミカミ・ロボに付着した菌を吸い上げて勝手に浄化していくそうだ。
液体が無くなると、箱自体も溶けて跡形も無くなり……ゴミすら出ない。
そして次の日にはまたカミカミ・ロボをいつも通り使える。

ちなみにきちんと洗浄してから使わないと、使えない仕様になっているので問題ない。
カミカミ・ロボが、カッチカチになっていて噛めないのだ……。
よくできた仕様だと、毎回感心させられる。

―――――ん……?

考え事をしていたら、目の前で床を泳いでいたカルガモップ・ロボが止まり、首を振っているのに気が付いた。
これは、エラーの時のしぐさだった。
親カルガモが止まると子カルガモも止まり、全員一斉に首を振り出す。

どうやらモチモチ・ロボを揉み揉みしながらぼんやりしていたせいで、そこら中に水を吐きまくって床が水浸しになり、カルガモップ・ロボの掃除が追い付かないようだ。
足元のモップが重くなりすぎて、泳げなくなってエラーになっている。
モップを一旦外して、水を絞ってくる必要があった。

(今度からモチモチ・ロボを揉む時は、バケツを用意しよう……)

―――――そういえば……!

バケツ……でふと思い出した。

「なぁ、バケツ・ロボが壊れたのは聞いたけど、結局サンダルはどーなったんだ?」

食事を準備中のABCトリオを見ると、「「「「サンダルならそこに……」」」と、3人が目線だけ同じ方向を見た。

リビングの床に適当に転がってる改造後のサンダル・ロボは、バケツ・ロボから外す時に欠けたであろう部分を継ぎはぎして補ってあった。

(夏用のシンプルなデザインだし、壊れたなら捨てて新しいのを取り寄せれば済むことなのに……)

まぁこういうものでも試しに改造したくなるのが、研究者なんだろうなぁ……。

俺はモチモチ・ロボを床に置き、サンダル・ロボのいる場所まで行ってから、何となくサンダルに足を乗せてみた。
その間にABCトリオのひとりがカルガモップ・ロボのモップを絞りに行き、また装着して動かし始めていた。

「これは、どういうロボなん……」

と俺が言いかけたところで、サンダルがシュイーンッと音を立てて浮き上がってびっくりした! スンスンスンスンッと音を出して白い煙を一定間隔で吐き出している。
床から20センチくらいは浮いているだろうか……?

「とりあえず、エクササイズ用に改造してみましたー♪」
「落ちないようにバランスを取って下さーい♪」
「普段使わない筋肉を鍛えることができますよー♪」

「「「ぼっちゃんの体重に合わせて調整してありまーっす♪♪♪」」」

ABCトリオめ……相変わらず褒めていいのか、突っ込んでいいのか謎な改造するな……と思ったところで、

『ヘイ! ぼっちゃん! レッツプレイ☆ナイスバランスッ! ステップ・ワン!』

サンダル・ロボがテンションの高い機械音でしゃべりだした。

(とりあえずやってみるか。結構難しいな……)

そしてステップ・ファイブくらいで慣れないバランスのため崩れて落ちて、足からサンダルが抜けた瞬間……

『頑張れー! 頑張るんだ! ぼっちゃ~ん! おいらはオゥェエエエエッェェンするぜー☆』

その吐き気をもよおしそうな声援に、俺はイラッとして反射的にサンダル・ロボを蹴り飛ばしていた。床に尻がついた状態で横蹴りしたので、サッカー選手のボレーシュートのようだったと自画自賛する!

サンダル・ロボはひゅるるるるーっとリビングを舞い、ぽこんっと落ちて、吐く……じゃなくて、履くところが上を向いて転がった。

『ぼっちゃん、、、明日も……晴れ……だぜ☆ フッ』

サンダル・ロボはそういい残し、ぷしゅーっと煙を噴いて静かになった。

「あ、これで普通のサンダルとして使えるじゃん」

俺は立ち上がってサンダルを回収し、スタスタ歩いて玄関に置いた。
継ぎはぎだから見栄えは若干悪いが、まぁ他人が来ることなんてほぼないし、、、大丈夫だろう。

「さすが……! さすがですよ、ぼっちゃん!」
「サンダルを普通のサンダルとして使うなんて、思いつきませんでした!」
「二足でもサンダルとはこのことですね!」

最後のは何言ってるのかわかんないんだけど……と思いつつ、俺はABCトリオをキッと睨んで指を差した。

「次からロボ作る時、オェェエェとかゲロ系の叫びは禁止! まじ禁止!!」

「「「アアン♥ ぼっちゃんの冷たい視線、しびれるぅ♥」」」

3人は悶え、くねくねと身体をよじって喜んだ。

―――――研究者って、どうしてこう変態チックなのが多いのかね!

「で! いい加減食事の準備はできたのか?」

俺はそう言って、リビングのテーブルの横にどっかり腰をおろした。


つづく。
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