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第二章
38. その後
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こうして、俺の盛大な誤解から引き起こした痴話喧嘩は幕を降ろした。
晴れて正真正銘の『恋人』として仕切り直した俺達と、巻き込んでしまった周囲の方々は、その後どうなったかって?
それでは、一人ずつ紹介していこう。
一人目は、早川さん。
実は俺に激重感情を抱いていたらしい彼(周囲は今更気づいたのか……と何故か俺を責めてきた! 理不尽!)は、今まで外面モードの"悠平スタイル"だったのをやめて、少しずつ砕けた口調で話すようになってくれた。けれど、長らく被った猫がなかなか逃げてくれないようで、今だに俺の前では『僕』になってしまう。俺としては、もう少し砕けてほしいのだが、本人曰く……
「蒼大くんの前だと、自然とこうなっちゃうんだよ。本当は、これが素の僕なのかな。でも、愛する人を丁寧な言葉でもてなしたいと思うのは、当然のことだよね☆」
……だ、そうだ。
よく回る口に無性に腹が立ったので、とりあえず一発頭を叩いてやった。
ついでにその晩は、魚の解体ショーをもう一度見学させて一発KOしたので良しとする。(俺としては善意のつもりだったので、少し不本意だったが……)
まぁ、よく分からんが、彼が良いと言っているので、そこは深く考えないことにした。
そして、もう一つ。
こちらが、怒涛の展開だった。
なんと、来月から始まる連載の一話目を差し替えたいと言い出したのだ。これには、俺も、悠平さんも、何より芦名さんも驚かされた。
二人目は、芦名さん。
「私と蒼大くんは、日頃から悠介に迷惑を被られてる仲間、いわば同志でしょう? "芦名さん"なんて水臭い呼び方しないで"菜月"って呼んでちょうだいよ~」
もう、お分かり頂けただろうか……。
いつかの彼女の言葉。
『いいでしょう、蒼大くん。君と私の仲なんだし……、ね?』の意味深発言の全容を。
もう何から突っ込んでよいか分からないが、兎にも角にも悠平さんと仕事一筋な彼女は、一話目差し替えという暴挙に出た早川さんのせいで、今日も戦場で戦っている。
三人目は、悠平さん。
実は、彼。菜月さんの産後の社会復帰を支え、なんと今は専業主夫なのだそうだ。
双子の「鍋は、ママの得意料理なんだぜ!」発言は文字通り、芦名さんは鍋しか作れないということだった。
朗らかな悠平さんは、般若の如く仕事を捌く菜月さんを献身的に支えている。
そして俺と彼は、家事情報を交換する良い主夫友達になったのはいうまでもない。
四人目は、祥吾。
あの祭りの日から数日後、夏休み中に一度だけ祥吾と会った。
俺の行きつけになりつつあるブックカフェで、あの夜のことを謝罪する。
そして、早川さんと仲直りができたことを報告すれば、気持ちに応えられない罪悪感に頭を下げたままの俺に、祥吾は言った。
「蒼大が幸せなら、それでいい」
顔をあげれば、祥吾は笑顔だった。
言葉の通り心からそう言ってくれていることが分かり、涙ぐみそうになる。
祥吾は、本当に良い奴だ。
心の底から、彼の幸せを祈る。きっと、祥吾なら俺なんかよりも、もっと素敵な恋人ができるだろう。
その後は、友人としていつも通りに会話してくれた彼の人柄に感謝した。
けれどー……、
「そういえば、今頃暁人は何してるかな~」
そんな俺の何気ない一言に、祥吾はアイスコーヒーを噴き出した。
それも、盛大に。
「……どうせ、いつものバイトだろ」
「暁人のバイト先知ってんの? なんだかんだ仲良いよな、二人って」
俺の言葉に、顔を真っ赤に染め上げる祥吾が理解できないまま、その日は解散となった。夏休み明け、とんでもない報告を聞くことになるのだが、それはまた別の話だ。
「あの馬鹿野郎の話はしないでくれ」
祥吾の願いに答えるため、暁人の近況報告は割愛しよう。
そして、最後に。
俺こと、間宮蒼大はというと……?
晴れて正真正銘の『恋人』として仕切り直した俺達と、巻き込んでしまった周囲の方々は、その後どうなったかって?
それでは、一人ずつ紹介していこう。
一人目は、早川さん。
実は俺に激重感情を抱いていたらしい彼(周囲は今更気づいたのか……と何故か俺を責めてきた! 理不尽!)は、今まで外面モードの"悠平スタイル"だったのをやめて、少しずつ砕けた口調で話すようになってくれた。けれど、長らく被った猫がなかなか逃げてくれないようで、今だに俺の前では『僕』になってしまう。俺としては、もう少し砕けてほしいのだが、本人曰く……
「蒼大くんの前だと、自然とこうなっちゃうんだよ。本当は、これが素の僕なのかな。でも、愛する人を丁寧な言葉でもてなしたいと思うのは、当然のことだよね☆」
……だ、そうだ。
よく回る口に無性に腹が立ったので、とりあえず一発頭を叩いてやった。
ついでにその晩は、魚の解体ショーをもう一度見学させて一発KOしたので良しとする。(俺としては善意のつもりだったので、少し不本意だったが……)
まぁ、よく分からんが、彼が良いと言っているので、そこは深く考えないことにした。
そして、もう一つ。
こちらが、怒涛の展開だった。
なんと、来月から始まる連載の一話目を差し替えたいと言い出したのだ。これには、俺も、悠平さんも、何より芦名さんも驚かされた。
二人目は、芦名さん。
「私と蒼大くんは、日頃から悠介に迷惑を被られてる仲間、いわば同志でしょう? "芦名さん"なんて水臭い呼び方しないで"菜月"って呼んでちょうだいよ~」
もう、お分かり頂けただろうか……。
いつかの彼女の言葉。
『いいでしょう、蒼大くん。君と私の仲なんだし……、ね?』の意味深発言の全容を。
もう何から突っ込んでよいか分からないが、兎にも角にも悠平さんと仕事一筋な彼女は、一話目差し替えという暴挙に出た早川さんのせいで、今日も戦場で戦っている。
三人目は、悠平さん。
実は、彼。菜月さんの産後の社会復帰を支え、なんと今は専業主夫なのだそうだ。
双子の「鍋は、ママの得意料理なんだぜ!」発言は文字通り、芦名さんは鍋しか作れないということだった。
朗らかな悠平さんは、般若の如く仕事を捌く菜月さんを献身的に支えている。
そして俺と彼は、家事情報を交換する良い主夫友達になったのはいうまでもない。
四人目は、祥吾。
あの祭りの日から数日後、夏休み中に一度だけ祥吾と会った。
俺の行きつけになりつつあるブックカフェで、あの夜のことを謝罪する。
そして、早川さんと仲直りができたことを報告すれば、気持ちに応えられない罪悪感に頭を下げたままの俺に、祥吾は言った。
「蒼大が幸せなら、それでいい」
顔をあげれば、祥吾は笑顔だった。
言葉の通り心からそう言ってくれていることが分かり、涙ぐみそうになる。
祥吾は、本当に良い奴だ。
心の底から、彼の幸せを祈る。きっと、祥吾なら俺なんかよりも、もっと素敵な恋人ができるだろう。
その後は、友人としていつも通りに会話してくれた彼の人柄に感謝した。
けれどー……、
「そういえば、今頃暁人は何してるかな~」
そんな俺の何気ない一言に、祥吾はアイスコーヒーを噴き出した。
それも、盛大に。
「……どうせ、いつものバイトだろ」
「暁人のバイト先知ってんの? なんだかんだ仲良いよな、二人って」
俺の言葉に、顔を真っ赤に染め上げる祥吾が理解できないまま、その日は解散となった。夏休み明け、とんでもない報告を聞くことになるのだが、それはまた別の話だ。
「あの馬鹿野郎の話はしないでくれ」
祥吾の願いに答えるため、暁人の近況報告は割愛しよう。
そして、最後に。
俺こと、間宮蒼大はというと……?
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