大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル

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【8話】幸せのかたち

素敵な旦那様

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連絡があったのは薄寒い早朝だった。基城があまりにも大きな声を上げるものだから、隣で寝ていた優生ものそのそと起き上がる。

「う、う……産まれたって。美奈姉ちゃんの赤ちゃん」

連絡を受けて数日後、退院した美奈の家で神崎家一同が集まった。優生も一緒だ。

美奈の傍らには小さな赤ちゃんがいる。姉達の出産後に駆けつけるのは初めてではないが、何故だが無性に胸の中にこみ上げてくるものがある。小さくて顔をくしゃっとさせている姿は、可愛くて愛しい。

「基城、抱っこしてみる?」
「えっ、いいの?」
「優生くん、基城のこと見てくれるなら安心だわ」
「俺は子供じゃねぇっつうの!」

文句をぶつけると、腕の中の赤ちゃんがくしゃっと泣きそうになる。基城はげ、と固まった。どうやら欠伸をしただけだったようでほっとする。

「本当かわいーな……」

産まれたばかりで、まだ目もしっかりと開いていない。最初は遠慮がちに覗き込んでいた優生も、基城の隣にきて小さな手に指で触れたりしている。

「美奈姉ちゃん。出産大変だった?」

もう半年もすれば、基城も可愛い我が子をこうして腕に抱くことになる。基城は恐る恐る聞いてみた。美奈は安心させるように「一瞬よー」と言った。

「神崎家は皆お産早いし安産だから大丈夫よ。ママもそう言ってたし遺伝なんだわ。だから基城も安心して産みなさい」
「お、おう……」
「私三時間もかかんなかったわ」
「そうそう。一人目のときも早すぎて、助産師さんに二人目だって勘違いされたくらい」

姉達は懐かしそうに口々に言い合う。赤ちゃんがぐずり始めたので、基城は美奈の元へと返した。ちょうどミルクの時間がきたようだった。

「基城、ミルクあげてみる?」
「えっ、いいのか?」
「赤ちゃん産まれたら嫌というほどあげることになるんだから。練習して慣れておきなさい。優生くんだけに任せたらダメよ」

──優生に任せる前提か!

と、突っ込もうとしたけれど、赤ちゃんを再び膝の上に置かれて押し黙る。姉の手ほどきを受け、基城は怪我をさせないように慎重に哺乳瓶の乳首を押し当てた。上手くいかず、再び泣き出しそうになったところで、美奈がぐいっと吸い口を押し込む。

少しずつ、ちゅうちゅうと飲み始めたのを合図に、哺乳瓶を基城の手に握らせた。小さいけれど、懸命に、力強く吸い付いている。

「赤ちゃんって不思議よねぇ。教えられたわけじゃないのに、ちゃんとミルク飲んでくれるんだから」
「だな」

ミルクの時間が終わると、優生を交えて家族で食事を始める。美奈の出産祝いのために、テーブルの上にはご馳走がたくさん並んだ。

事前に文面で伝えてはいたが、大学を休学すること、そして出産後は基城の実家で優生と一緒に暮らすことを伝える。家族の中に首を横に振る者はいなかった。

「全面的にお世話になる形になって……すみません」

恐縮して深々と頭を下げる優生に、「気にしないで」という三つ子の返答が重なった。

「全っ然! ママもパパも出張多くて実家に帰ってこないこと多いし。私達はそれぞれに散り散りだし。むしろ、誰か住まないと家が傷むわーって話したこともあったしね。ママ?」
「そうねぇ。ほとんど居付いてないのに、ハウスキーパーさんに手入れしてもらうのは申し訳ないと思ってたの。基城と優生くんが使ってくれるのならこちらとしてもありがたいわ」

反対はされないと思っていたが、逆に歓迎されるムードになって驚いた。

「綺麗にはしているんだけど、住んでもらうのにお古なのは忍びないわ。基城は後半年くらいで赤ちゃん産まれるのよね? どうしましょう……改築は間に合わないかしら。優生くんが来るなら、古いところは直しておきたいのに……」
「大丈夫よ、ママ。知り合いの工務店に急ぎでできないか頼んでみるわ」

そう言うと、瞳は言い終える前にスマホを取り出しどこかへ電話をかける。少し離れたところで、何度かやり取りがあった後、満面の笑みで戻ってきた。

「オッケーだった。弟さんの結婚祝いでタダにしましょうかー、なんて言ってくれたくらいだわ。もちろん向こうも冗談のつもりだったけど。建て直しは間に合わないけれど、屋根とか水場の修繕と、壁紙の張り替えくらいなら諸々三ヶ月くらいの見通しらしいの」
「まあ! それはありがたいわね。基城が帰ってくるまでには間に合いそうねー」

などと、話は次々と進み、基城の部屋の隣は優生の部屋に置き換わることになった。見積もりも早く出してもらいたいとのことで、その場で壁紙や外壁の色を決めるよう言われたが、あまりにも逐一聞かれるため、基城はお任せすると瞳と母に投げた。

決めることが多くて、赤ちゃんに癒されたことなど昔のようだった。後でカタログを送ると言われて、基城達は帰路に着く。

「姉ちゃんも母さんも、決めたらすぐなんだよなぁ」
「せっかちな基城がのんびりに見える」
「俺、そんな普段からそうか?」

優生は頷いて肯定した。暗に姉に似ていると言われて心外だ。子育ての先輩である姉達から、必要なものなどもきっちりと聞いてきた。長女の瞳は三人目の予定が今のところないので、乳児用品は譲ってもらえるのでありがたい。

「もうちょっとで分かるらしい」
「何が?」
「性別。優生はどっちがいい?」
「んー……俺はどっちでも楽しみ」

と、二人でまだ少ししか丸みを帯びていないお腹を撫でながら話し合う。

「俺は断然! 男の子! だって姉ちゃんの血が隔世遺伝したら、めちゃくちゃ悲しいし……」
「何でそんなこと言うの。女の子だったらきっとすごく可愛いのに」
「優生は姉ちゃんの怖さを知らないから言えるんだろ。お前は苦労を知らないっ」

もし仮に優生が三つ子の弟だったら、可愛がられていそうな想像もつく。……ただ、頼りにされ過ぎて、胃を悪くしないかという心配もあるが。
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