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【7章】新しい未来
バーベキュー1
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夏休みの初日。今日はユキ家族が、家に遊びに来る予定が入っている。抜け殻のようになったレグルシュを気にかけながらの作業は、思うように進まなかった。
定刻の時間に訪れた義姉夫妻に手伝ってもらい、周防家のバーベキューが始まった。肉を焼くのはレグルシュの担当だ。
家庭内がごたついている間、エレナや樹とは連絡を取っていなかったので、こうして集まるのは数ヶ月ぶりだ。
「斗和かわいぃー! 元気だった?」
「にぃー!」
二人は両手を広げると、まるで生き別れの兄弟が再会したときのように、抱き合って喜んだ。キラキラした汗を散らしながら、庭を駆け回る子供達を千歳は目で追いかけた。
「斗和くん、見ないうちにすごく大きくなったわねー」
「ユキくんも。背が伸びましたね。本当に斗和のお兄さんみたいです」
千歳は串打ちした肉と野菜を、斗和が食べやすいように抜いてやる。玉ねぎ、ピーマンを綺麗に避けて、肉だけを平らげてまた遊びに行く斗和を、千歳は後ろから叱った。エレナと樹にその様子を笑われて、耳が赤くなる。
「すみません。お見苦しいとこを」
「そうじゃないのよ。怒る千歳くんが珍しくて、おかしかっただけ。ごめんなさいね」
ユキの前ではあまり怒ったことがないので、語気を強める千歳を見て、ユキは「え?」と呆気に取られている。レグルシュの息子に対する溺愛ぶりは相変わらずで、サシの入った一番いいステーキ肉を、斗和へと分け与えていた。
ユキもすかさずおかわりを要求する。甘い顔をしていたレグルシュは、途端に険しい顔になる。
「まだ皿に野菜が残ってるだろ。全部食ってからだ」
「なぁんで!? 斗和にはあげたのに!」
「お前は食うペースが速すぎる。その肉いくらすると思ってるんだ。味わって食え」
ユキはまだまだ小さいが、一歩も引かずにレグルシュを睨み返した。結局レグルシュは根負けし、焼けたばかりの肉をユキの皿に載せた。
大人用のチェアに二人は座りながら、レグルシュから取り分けられた肉と野菜を、仲良く食べている。
「おいしーね!」
「うんっ。ぱぁぱのご飯おいしーね!」
「ピーマン以外ね!」
子供達はきゃっきゃっと笑い合いながら、肉を堪能している。ここ最近、綾乃との別れで落ち込んでいたが、大好きなユキと遊んで気が晴れたようでよかった。
息子と従兄弟の仲睦まじい様子を見守りながら、千歳達も食事を楽しんだ。
「ユキも斗和くんと久しぶりに会えて嬉しそう。……何だか千歳くんとレグ、雰囲気変わった?」
「えっ? そうでしょうか」
「うん。もしかして……二人目できた?」
千歳とレグルシュは二人揃って、盛大にむせた。
「え? 図星?」
「全く……姉貴は。身内だからといって遠慮がないな。なら、姉貴のほうはどうなんだ?」
エレナはビールを一口飲んでから答える。
「私はいいのよ。ユキに寂しい思いさせちゃったし。アルファは妊娠しにくいから、ユキを授かれたこと自体、奇跡みたいなものだと思ってるし。だから、千歳くんとレグの子供が楽しみなのよ」
「そ、そうか……」
気まずい空気を出すレグルシュを、エレナは笑って小突いた。レグルシュが暗い顔をしているのが、気にかかったのだろう。斗和は駆け寄ってきて、さっきレグルシュにもらった肉を食べさせようとしている。
「パパどーぞ!」
「ああ、ありがとう」
「ママも食べて!」
「ふふ、ありがとう。斗和」
撫でてやると、斗和はオリーブ色の瞳を輝かせた。少なくなった斗和の皿を見て、ユキが自分の分を分けてあげている。ユキはすっかり頼もしい兄貴分だ。
「ユキにぃありがとう!」
「どういたしまして! 味わって食べようね。レグがドラゴンになるからね」
「うんっ。あじあって食べようね」
「お肉おいしーね! ほっぺがとろけそう……」
「と、斗和くんもっ。ほっぺがとろけそう!」
友達に「斗和くん」と呼ばれているので、息子はたまに自分のことを名前で呼ぶ。両手で柔らかい頬を持ち上げて、競うようにもちもちとさせている二人が可愛い。
「斗和くん。たくさん喋れてすごいわね。言葉を覚えるのも早かったものね。可愛いし、ご近所さんでも幼稚園でもモテモテでしょう?」
──あ……その話題は。
バーベキューの肉を美味しそうに頬張っている二人を、スマホの画面に収めていたレグルシュは、エレナの発言に分かりやすいほど反応した。
レグルシュは定位置であるコンロの前まで戻ると、黙々と肉や海鮮物を焼き始める。
「相変わらず無愛想な弟。斗和くんの可愛さは一〇〇パーセント千歳くんの遺伝ね」
千歳は苦笑いを浮かべる。斗和がつい最近幼稚園の女の子に告白されたことを、話題に出した。エレナは納得した顔で「通りでね」と相槌を打つ。
ユキがモテモテだったと聞いたときは、エレナは冗談を交えながら誇らしげだったので、レグルシュとの違いに千歳は驚いている。
定刻の時間に訪れた義姉夫妻に手伝ってもらい、周防家のバーベキューが始まった。肉を焼くのはレグルシュの担当だ。
家庭内がごたついている間、エレナや樹とは連絡を取っていなかったので、こうして集まるのは数ヶ月ぶりだ。
「斗和かわいぃー! 元気だった?」
「にぃー!」
二人は両手を広げると、まるで生き別れの兄弟が再会したときのように、抱き合って喜んだ。キラキラした汗を散らしながら、庭を駆け回る子供達を千歳は目で追いかけた。
「斗和くん、見ないうちにすごく大きくなったわねー」
「ユキくんも。背が伸びましたね。本当に斗和のお兄さんみたいです」
千歳は串打ちした肉と野菜を、斗和が食べやすいように抜いてやる。玉ねぎ、ピーマンを綺麗に避けて、肉だけを平らげてまた遊びに行く斗和を、千歳は後ろから叱った。エレナと樹にその様子を笑われて、耳が赤くなる。
「すみません。お見苦しいとこを」
「そうじゃないのよ。怒る千歳くんが珍しくて、おかしかっただけ。ごめんなさいね」
ユキの前ではあまり怒ったことがないので、語気を強める千歳を見て、ユキは「え?」と呆気に取られている。レグルシュの息子に対する溺愛ぶりは相変わらずで、サシの入った一番いいステーキ肉を、斗和へと分け与えていた。
ユキもすかさずおかわりを要求する。甘い顔をしていたレグルシュは、途端に険しい顔になる。
「まだ皿に野菜が残ってるだろ。全部食ってからだ」
「なぁんで!? 斗和にはあげたのに!」
「お前は食うペースが速すぎる。その肉いくらすると思ってるんだ。味わって食え」
ユキはまだまだ小さいが、一歩も引かずにレグルシュを睨み返した。結局レグルシュは根負けし、焼けたばかりの肉をユキの皿に載せた。
大人用のチェアに二人は座りながら、レグルシュから取り分けられた肉と野菜を、仲良く食べている。
「おいしーね!」
「うんっ。ぱぁぱのご飯おいしーね!」
「ピーマン以外ね!」
子供達はきゃっきゃっと笑い合いながら、肉を堪能している。ここ最近、綾乃との別れで落ち込んでいたが、大好きなユキと遊んで気が晴れたようでよかった。
息子と従兄弟の仲睦まじい様子を見守りながら、千歳達も食事を楽しんだ。
「ユキも斗和くんと久しぶりに会えて嬉しそう。……何だか千歳くんとレグ、雰囲気変わった?」
「えっ? そうでしょうか」
「うん。もしかして……二人目できた?」
千歳とレグルシュは二人揃って、盛大にむせた。
「え? 図星?」
「全く……姉貴は。身内だからといって遠慮がないな。なら、姉貴のほうはどうなんだ?」
エレナはビールを一口飲んでから答える。
「私はいいのよ。ユキに寂しい思いさせちゃったし。アルファは妊娠しにくいから、ユキを授かれたこと自体、奇跡みたいなものだと思ってるし。だから、千歳くんとレグの子供が楽しみなのよ」
「そ、そうか……」
気まずい空気を出すレグルシュを、エレナは笑って小突いた。レグルシュが暗い顔をしているのが、気にかかったのだろう。斗和は駆け寄ってきて、さっきレグルシュにもらった肉を食べさせようとしている。
「パパどーぞ!」
「ああ、ありがとう」
「ママも食べて!」
「ふふ、ありがとう。斗和」
撫でてやると、斗和はオリーブ色の瞳を輝かせた。少なくなった斗和の皿を見て、ユキが自分の分を分けてあげている。ユキはすっかり頼もしい兄貴分だ。
「ユキにぃありがとう!」
「どういたしまして! 味わって食べようね。レグがドラゴンになるからね」
「うんっ。あじあって食べようね」
「お肉おいしーね! ほっぺがとろけそう……」
「と、斗和くんもっ。ほっぺがとろけそう!」
友達に「斗和くん」と呼ばれているので、息子はたまに自分のことを名前で呼ぶ。両手で柔らかい頬を持ち上げて、競うようにもちもちとさせている二人が可愛い。
「斗和くん。たくさん喋れてすごいわね。言葉を覚えるのも早かったものね。可愛いし、ご近所さんでも幼稚園でもモテモテでしょう?」
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レグルシュは定位置であるコンロの前まで戻ると、黙々と肉や海鮮物を焼き始める。
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千歳は苦笑いを浮かべる。斗和がつい最近幼稚園の女の子に告白されたことを、話題に出した。エレナは納得した顔で「通りでね」と相槌を打つ。
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