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【8章】溺愛アルファは運命の恋を離さない
結婚式2
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──エレナさん? それとも樹さん?
参列者達もサプライズゲストを予想し合っている。「芸能人では?」という声も聞こえてきたが、レグルシュはそんな知り合いはいないと首を振った。
千歳達が入ってきた重厚な扉が開かれ、全員が後方に注目する。随分と小さなサプライズゲストが花束を持って、こちらに近付いてきた。顔は花束で隠れてよく見えないが、千歳もレグルシュも姿を一目見た途端に、誰だか分かってしまった。
千歳に花束を手渡すと、天使のような可愛らしい顔と対面する。緊張しているのか、少しむくれたような……むすっとした表情をしていた。
「ちー!! 今日はご結婚おめでとうございます!!」
黒のタキシードに、蝶ネクタイをつけたユキが二人を祝福してくれた。スタッフからマイクを渡されて、ユキは台本もないのにハキハキと喋る。可愛いと絶賛する周りの人に、エレナは私の息子と自慢げに語っていた。
「ちーはシッターさんをしてくれました。レグはすごく怖くて、ご飯だけは美味しくつくってくれたけど、ちーは可愛いし遊んでくれるしご飯も美味しいし、とても優しい人です」
ユキとの温かい思い出が蘇り、千歳は涙する。愛していたアルファに裏切られ、夜道に行き倒れていた千歳に声をかけてくれたユキ。ユキがいなければシッターという仕事を通して、レグルシュとの今の未来もなかった。
ユキの両親が元通りになるまでの期限付きのシッター。その時間が終わったとき、千歳は不誠実にももっとユキの側にいたいと思った。……そして、レグルシュの隣にも。
千歳は横にいる最愛の人へ顔を向けた。
「おい。俺への感謝はそれだけか? 風呂に入れてやったり、夜中にトイレにもついてやっただろ。おねしょの始末もしてやったぞ」
「頼んでないもん!」
「何だと。減らず口なやつだ」
本人は気付いていないが、レグルシュの呟きをマイクが拾い、二人の言い争いを中継する。参列席からは笑いがあふれた。
「ユキくん。お祝いしてくれてありがとう」
千歳がそう言うと、ユキは気難しい顔を見せた。シッターをしていた頃は小さかったのに、背丈は会う度にぐんぐんと伸びている。
「大人になったら俺とも結婚してね!?」
「え……」
「俺の前で……この場でよく言えたな」
このまま二人を放っておいたら、神聖な場所で大喧嘩に発展しそうだ。しかし、千歳が口を挟める隙はない。どうしようかと困っていたら、とてとてと小さな子供がもう一人、新郎新婦の前に出た。
「斗和くんもっ! 結婚してください!」
置いてけぼりの千歳の息子……斗和がまさかのプロポーズを宣言した。ステンドグラスに照らされて輝くオリーブの瞳は、千歳ではなくレグルシュのほうに向けられている。もう一人の可愛い天使の台詞に、言い争いはぴたりと止んだ。
恐らく、二人の喧嘩を止めに入るのが目的だったのではなく……。
──もしかして、僕がユキくんに「結婚して」と言われていたから、レグに?
パパっ子の斗和ならあり得ることかもしれない。ユキが千歳とくっつくなら、一人になったレグルシュがかわいそうだから、放っておけなかったということ……。溺愛する息子からの告白を受けて、レグルシュの目には涙の膜が張っていた。
「幸せ者だな。俺は。千歳と……斗和がいて」
「ユキくんも、でしょう?」
「まあな。煩いのが突然消えたら、寂しくは感じるな」
わざと憎まれ口を叩くけれど、ユキへの愛情は深い。白髪の混じった牧師が「では、それぞれ愛を誓い合いますか?」と、冗談で聞いてくる。子供達はエレナの呼びかけで行儀よく参列席へ戻った。
結婚指輪は以前レグルシュから贈られたものだ。大きなダイヤの周りに、ペリドットが星のようにいくつも散りばめられている。互いの指輪を交換した後、愛を誓い合う言葉に頷く。
「汝、周防レグルシュは彼、和泉千歳を健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、生涯伴侶として愛し合うことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「汝、和泉千歳は彼、周防レグルシュを健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、生涯伴侶として愛し合うことを誓いますか?」
「はい……誓います」
レグルシュの出会いから今までが走馬灯のように、千歳の頭の中を駆け巡った。ぼろぼろと涙を溢す千歳を見て、レグルシュは小さく「困ったな」と独りごち、自身の目から溢れるものを拭った。
──これから、レグルシュを知らなかった時間よりも長く、彼と一緒にいられる……。
レグルシュは屈み、伝ってきた涙で濡れた唇に、誓いのキスを授けた。いつもよりも軽いキス。それでも、その瞬間が千歳にとって一番幸福なキスだった。見届けた牧師は、言葉を続ける。
「互いを尊敬し生涯の愛を誓った二人に……。そして、新しい小さな命にも祝福があらんことを」
牧師の言葉に続き、チャペルの中は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。ペリドットの瞳と見つめ合い、千歳は最愛のアルファに生涯の愛を誓った。
参列者達もサプライズゲストを予想し合っている。「芸能人では?」という声も聞こえてきたが、レグルシュはそんな知り合いはいないと首を振った。
千歳達が入ってきた重厚な扉が開かれ、全員が後方に注目する。随分と小さなサプライズゲストが花束を持って、こちらに近付いてきた。顔は花束で隠れてよく見えないが、千歳もレグルシュも姿を一目見た途端に、誰だか分かってしまった。
千歳に花束を手渡すと、天使のような可愛らしい顔と対面する。緊張しているのか、少しむくれたような……むすっとした表情をしていた。
「ちー!! 今日はご結婚おめでとうございます!!」
黒のタキシードに、蝶ネクタイをつけたユキが二人を祝福してくれた。スタッフからマイクを渡されて、ユキは台本もないのにハキハキと喋る。可愛いと絶賛する周りの人に、エレナは私の息子と自慢げに語っていた。
「ちーはシッターさんをしてくれました。レグはすごく怖くて、ご飯だけは美味しくつくってくれたけど、ちーは可愛いし遊んでくれるしご飯も美味しいし、とても優しい人です」
ユキとの温かい思い出が蘇り、千歳は涙する。愛していたアルファに裏切られ、夜道に行き倒れていた千歳に声をかけてくれたユキ。ユキがいなければシッターという仕事を通して、レグルシュとの今の未来もなかった。
ユキの両親が元通りになるまでの期限付きのシッター。その時間が終わったとき、千歳は不誠実にももっとユキの側にいたいと思った。……そして、レグルシュの隣にも。
千歳は横にいる最愛の人へ顔を向けた。
「おい。俺への感謝はそれだけか? 風呂に入れてやったり、夜中にトイレにもついてやっただろ。おねしょの始末もしてやったぞ」
「頼んでないもん!」
「何だと。減らず口なやつだ」
本人は気付いていないが、レグルシュの呟きをマイクが拾い、二人の言い争いを中継する。参列席からは笑いがあふれた。
「ユキくん。お祝いしてくれてありがとう」
千歳がそう言うと、ユキは気難しい顔を見せた。シッターをしていた頃は小さかったのに、背丈は会う度にぐんぐんと伸びている。
「大人になったら俺とも結婚してね!?」
「え……」
「俺の前で……この場でよく言えたな」
このまま二人を放っておいたら、神聖な場所で大喧嘩に発展しそうだ。しかし、千歳が口を挟める隙はない。どうしようかと困っていたら、とてとてと小さな子供がもう一人、新郎新婦の前に出た。
「斗和くんもっ! 結婚してください!」
置いてけぼりの千歳の息子……斗和がまさかのプロポーズを宣言した。ステンドグラスに照らされて輝くオリーブの瞳は、千歳ではなくレグルシュのほうに向けられている。もう一人の可愛い天使の台詞に、言い争いはぴたりと止んだ。
恐らく、二人の喧嘩を止めに入るのが目的だったのではなく……。
──もしかして、僕がユキくんに「結婚して」と言われていたから、レグに?
パパっ子の斗和ならあり得ることかもしれない。ユキが千歳とくっつくなら、一人になったレグルシュがかわいそうだから、放っておけなかったということ……。溺愛する息子からの告白を受けて、レグルシュの目には涙の膜が張っていた。
「幸せ者だな。俺は。千歳と……斗和がいて」
「ユキくんも、でしょう?」
「まあな。煩いのが突然消えたら、寂しくは感じるな」
わざと憎まれ口を叩くけれど、ユキへの愛情は深い。白髪の混じった牧師が「では、それぞれ愛を誓い合いますか?」と、冗談で聞いてくる。子供達はエレナの呼びかけで行儀よく参列席へ戻った。
結婚指輪は以前レグルシュから贈られたものだ。大きなダイヤの周りに、ペリドットが星のようにいくつも散りばめられている。互いの指輪を交換した後、愛を誓い合う言葉に頷く。
「汝、周防レグルシュは彼、和泉千歳を健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、生涯伴侶として愛し合うことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「汝、和泉千歳は彼、周防レグルシュを健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しいときも、生涯伴侶として愛し合うことを誓いますか?」
「はい……誓います」
レグルシュの出会いから今までが走馬灯のように、千歳の頭の中を駆け巡った。ぼろぼろと涙を溢す千歳を見て、レグルシュは小さく「困ったな」と独りごち、自身の目から溢れるものを拭った。
──これから、レグルシュを知らなかった時間よりも長く、彼と一緒にいられる……。
レグルシュは屈み、伝ってきた涙で濡れた唇に、誓いのキスを授けた。いつもよりも軽いキス。それでも、その瞬間が千歳にとって一番幸福なキスだった。見届けた牧師は、言葉を続ける。
「互いを尊敬し生涯の愛を誓った二人に……。そして、新しい小さな命にも祝福があらんことを」
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