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第2章 魔王辺境に暮らす
平穏の始まり
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「いやいや、宿屋暮らしでメイド連れてたらおかしいでしょう!」
「そうは申されましても、これ以外の服は殿方の受けが悪い物しか持っておりません」
「殿方の受けとかどうでもいいですから。常に俺の側にいるというのであれば、赤タグのギルド員みたいな格好がいいと思いますよ」
いや、赤タグのギルド員の服装の標準がどんなかは知らんけど。
というようなやり取りがあった以外は、遺跡から帰って以来、俺の日常は平穏である。
とは言え、俺の側を離れるなと厳命されているようで、交代にティエルさんが来るまではメイド服のままだ。
俺が宿屋から出ない事を約束したので、今は宿の食堂で給仕をしている。
「いやあ、ザナちゃんお客の受けがいいねぇ。毎日来てくれないかな」
とは、宿屋の女将の弁である。
正直それもいいと思うんだけどね。
連絡要員なんて宿屋にいればいいと思うんだ。
態々、魔物の出る危険な地域に行くギルド員に付いてくる必要はないと思う。
そうこうする内にサリーアが挨拶回りから帰ってきた。
「おかえり、結構時間が掛かったみたいだね」
「ん、これからこの街で薬師を営むからにはコネクションは大事」
「そうなのか?どちらかと言えば商売敵って感じなんじゃ?」
「一面だけ捕らえればそう。でも、希少な材料を融通し合ったり、市場で不足している薬の情報の交換も必要。薬師の仕事はお金儲けだけではなくて買ってくれる人を助けること」
ぉぉお、オババ様の教育は何一つ間違っていませんでしたよ。
商売敵とか言ってたさっきの俺を殴ってやりたい。
そうだよな、作った薬を買ってくれた向こう側には助かってくれている人がいるんだよな。
そこへザナさんが晩飯の注文を取りにやってきた。
「お帰りなさいませお嬢様、ご主人様ご注文をどうぞ」
「ぉ……ぉ嬢様?」
あのしっかり者のサリーアが混乱していた。
なかなか希少な光景だ。
「やめろ、サリーアが混乱しているじゃないか。サリーア、こちらはザナさん。ティエルさんとの連絡係として俺の側にいることになった」
「そう、私はサリーアよろしく。でも、何故メイド?」
「ああ、この前までお屋敷でメイドとして働いていたかららしいよ。明日からは違う服装なんだよな?」
語尾を強めて、先程のやり取りの確認を込める。
「はい、残念ですが、明日からは赤タグギルド員風の装備に換えてまいります」
残念て、余程メイド服が気に入ってるようだが、その日暮らしで先の見えない状態でメイドに傅かれてる状態は許容できませんよ。
晩飯は、ポトフっぽい肉と野菜の煮込み料理にした。
見た目はポトフだが、塩味だけなのでポトフとは呼べまい。
それでもタマネギやジャガイモから出ているのであろうほんのりした甘みがある。
向かいではサリーナが一生懸命に皿からニンジンを選び出して皿の一部に集めている。
どうやらサリーナはニンジンが苦手なようだ。
ウサミミ生やしてニンジン苦手ってどうなんだ。
アイデンティティーの否定に繋がらないかとも思うが、保護者も同然の俺はそんな事は言わない。
「サリーア、ニンジンが苦手か?」
「うー」
本人にも好き嫌いに対する罪悪感のようなものはあるのか、はっきりとした答えは返ってこない。
「いらないなら、俺が貰おう」
そう言って、サリーアの皿からひょいひょいとニンジンを食っていく。
当然美味そうに食べる事も忘れない。
基本的に俺に好き嫌いはない。
なんでも美味しくいただける。
ただし、元の世界の日本においての話だ。
こちら世界の食生活は、今のところ美味な物が少ないというだけで元の世界と同じものが出てきている。
とはいえ、タマネギもジャガイモもニンジンも俺がそう思っているだけで全然別の食材なのかもしれないが。
なので、芋虫をふんだんに使った料理とか出されたら、流石に躊躇うこともあるかもしれない。
ニンジンは、最後に一つだけは残しておいた。
サリーアは最後に一個残ったニンジンをフォークで突き刺して暫く睨んでいたが、意を決したように口に放りこんだ。
目を固く閉じて、大げさに咀嚼してそのままのみこむ。
顔が「どうだ」と言っている。
ここは、にっこりと微笑んでやるのが正解だろう。
食事が終わる頃にティエルさんが店に現れた。
ザラさんと一言二言交わすと、入れ替わるようにザナさんは店を出て行った。
恐らく着替えに行ったのだろう。
「カズマ様はメイド服はお気に召しませんでしたか……」
ティエルさん、それは性癖的な意味で言っているでしょ?
俺は、TPO的にダメだと言ってるんですよ?
「宿屋暮らしがメイド連れてたら、そういう性癖に見られてしまうでしょうに」
卑しいという表現は現代日本ではハラスメントになってしまうのだろうが、自分より立場の弱い女性に劣情をもよおす男性は、古今東西を問わないらしい。
ティエルさんの誤解を解いたところで、早々に部屋へと引き上げる。
ティエルさんはギルドに詰めるらしい。ご苦労様です。
部屋に戻った俺とサーリアは、明日の予定について話し合った。
「明日はどうする?何か依頼でも受けようと思うんだけど」
「ん、なら薬草採取の依頼を受けたい」
「ふむ、薬草採取か。いいかもしれないな」
薬草採取は、ファンタジーではゴブリン退治と同じぐらいポピュラーな依頼だ。
常時依頼として掲示板に常に掲げられているという作品も多かったはずだ。
「デルザで全体的に不足している薬草がある。依頼の薬草のついでにそれを探して確保しておきたい」
そうか在庫不足の薬草があるんだな。
冥穴を使えば大量に採取しても、輸送と保管が可能だ。
それにしても、サリーアはやっぱりしっかり者だったな。
「そうは申されましても、これ以外の服は殿方の受けが悪い物しか持っておりません」
「殿方の受けとかどうでもいいですから。常に俺の側にいるというのであれば、赤タグのギルド員みたいな格好がいいと思いますよ」
いや、赤タグのギルド員の服装の標準がどんなかは知らんけど。
というようなやり取りがあった以外は、遺跡から帰って以来、俺の日常は平穏である。
とは言え、俺の側を離れるなと厳命されているようで、交代にティエルさんが来るまではメイド服のままだ。
俺が宿屋から出ない事を約束したので、今は宿の食堂で給仕をしている。
「いやあ、ザナちゃんお客の受けがいいねぇ。毎日来てくれないかな」
とは、宿屋の女将の弁である。
正直それもいいと思うんだけどね。
連絡要員なんて宿屋にいればいいと思うんだ。
態々、魔物の出る危険な地域に行くギルド員に付いてくる必要はないと思う。
そうこうする内にサリーアが挨拶回りから帰ってきた。
「おかえり、結構時間が掛かったみたいだね」
「ん、これからこの街で薬師を営むからにはコネクションは大事」
「そうなのか?どちらかと言えば商売敵って感じなんじゃ?」
「一面だけ捕らえればそう。でも、希少な材料を融通し合ったり、市場で不足している薬の情報の交換も必要。薬師の仕事はお金儲けだけではなくて買ってくれる人を助けること」
ぉぉお、オババ様の教育は何一つ間違っていませんでしたよ。
商売敵とか言ってたさっきの俺を殴ってやりたい。
そうだよな、作った薬を買ってくれた向こう側には助かってくれている人がいるんだよな。
そこへザナさんが晩飯の注文を取りにやってきた。
「お帰りなさいませお嬢様、ご主人様ご注文をどうぞ」
「ぉ……ぉ嬢様?」
あのしっかり者のサリーアが混乱していた。
なかなか希少な光景だ。
「やめろ、サリーアが混乱しているじゃないか。サリーア、こちらはザナさん。ティエルさんとの連絡係として俺の側にいることになった」
「そう、私はサリーアよろしく。でも、何故メイド?」
「ああ、この前までお屋敷でメイドとして働いていたかららしいよ。明日からは違う服装なんだよな?」
語尾を強めて、先程のやり取りの確認を込める。
「はい、残念ですが、明日からは赤タグギルド員風の装備に換えてまいります」
残念て、余程メイド服が気に入ってるようだが、その日暮らしで先の見えない状態でメイドに傅かれてる状態は許容できませんよ。
晩飯は、ポトフっぽい肉と野菜の煮込み料理にした。
見た目はポトフだが、塩味だけなのでポトフとは呼べまい。
それでもタマネギやジャガイモから出ているのであろうほんのりした甘みがある。
向かいではサリーナが一生懸命に皿からニンジンを選び出して皿の一部に集めている。
どうやらサリーナはニンジンが苦手なようだ。
ウサミミ生やしてニンジン苦手ってどうなんだ。
アイデンティティーの否定に繋がらないかとも思うが、保護者も同然の俺はそんな事は言わない。
「サリーア、ニンジンが苦手か?」
「うー」
本人にも好き嫌いに対する罪悪感のようなものはあるのか、はっきりとした答えは返ってこない。
「いらないなら、俺が貰おう」
そう言って、サリーアの皿からひょいひょいとニンジンを食っていく。
当然美味そうに食べる事も忘れない。
基本的に俺に好き嫌いはない。
なんでも美味しくいただける。
ただし、元の世界の日本においての話だ。
こちら世界の食生活は、今のところ美味な物が少ないというだけで元の世界と同じものが出てきている。
とはいえ、タマネギもジャガイモもニンジンも俺がそう思っているだけで全然別の食材なのかもしれないが。
なので、芋虫をふんだんに使った料理とか出されたら、流石に躊躇うこともあるかもしれない。
ニンジンは、最後に一つだけは残しておいた。
サリーアは最後に一個残ったニンジンをフォークで突き刺して暫く睨んでいたが、意を決したように口に放りこんだ。
目を固く閉じて、大げさに咀嚼してそのままのみこむ。
顔が「どうだ」と言っている。
ここは、にっこりと微笑んでやるのが正解だろう。
食事が終わる頃にティエルさんが店に現れた。
ザラさんと一言二言交わすと、入れ替わるようにザナさんは店を出て行った。
恐らく着替えに行ったのだろう。
「カズマ様はメイド服はお気に召しませんでしたか……」
ティエルさん、それは性癖的な意味で言っているでしょ?
俺は、TPO的にダメだと言ってるんですよ?
「宿屋暮らしがメイド連れてたら、そういう性癖に見られてしまうでしょうに」
卑しいという表現は現代日本ではハラスメントになってしまうのだろうが、自分より立場の弱い女性に劣情をもよおす男性は、古今東西を問わないらしい。
ティエルさんの誤解を解いたところで、早々に部屋へと引き上げる。
ティエルさんはギルドに詰めるらしい。ご苦労様です。
部屋に戻った俺とサーリアは、明日の予定について話し合った。
「明日はどうする?何か依頼でも受けようと思うんだけど」
「ん、なら薬草採取の依頼を受けたい」
「ふむ、薬草採取か。いいかもしれないな」
薬草採取は、ファンタジーではゴブリン退治と同じぐらいポピュラーな依頼だ。
常時依頼として掲示板に常に掲げられているという作品も多かったはずだ。
「デルザで全体的に不足している薬草がある。依頼の薬草のついでにそれを探して確保しておきたい」
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それにしても、サリーアはやっぱりしっかり者だったな。
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