異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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1章

4 side ギィ

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ギルドから指名を受けた国境の森の宿木の調査依頼中に、その子どもを見つけた。

宿木の領域で旅人や傷ついた獣を見かけることは、ままある。
宿木の下は神の護る領域。そこでは決して争いは起こらず、天候の影響も受けない安寧の地。
獣同士も決して互いを害することなく、獣が人を襲ってくることもない。
獣に襲われ、宿木の下に逃げ込んで急死に一生を得たという事例は枚挙に暇がない。

ちなみに、宿木と呼ばれているが全ての領域が木の下に発生している訳ではない。泉の場合もあるし、荒野では岩の塊であったりする場合もある。最初に発見された領域が森の中の大木の下であったため宿木の領域と名付けられ今では神の護りのある領域の総称となっている。

危険な旅の途中で安全に過ごせる場所として宿木の情報はギルドを中心に広く公開されている。
しかし、宿木は永遠に同じ場所にあるわけではない。領域内で争いが起きると宿木は枯れ、領域が消滅することは確認されている。
それ以外にも、前触れなく宿木が枯れ始め領域が消滅することがある。学者によれば役割を終えた宿木は枯れるのではないかと言うことだが確かなことはわかっていない。
また、突然宿木が生え領域が発生していることもある。

宿木の情報は旅人や冒険者にとって命綱となるもののため、定期的に調査を行い情報を更新していく。
ギルドから指名依頼という形で上位ランクの冒険者に依頼され調査が行われるのが常だ。
今回は俺と、単独行でないときにパーティーを組むことの多いルークの2人での依頼だった。

そんな依頼の調査を終えて、定宿にしている宿のある街へ帰る途中に立ち寄った宿木にその子どもはいた。

昨日この宿木を確認したときには居なかった。

同行していたルークは、調査結果をギルドに報告するために近くの村に行っており明日の朝ここで合流する予定だ。

しばらく離れた場所に身を隠して観察していたが、木の根元に蹲り顔を伏せて動かない。
見慣れない服装をしているが人族に見える。宿木の下に居るので旅の知識はあるようだが恰好は旅をしている様にはとても見えず、チグハグな印象だ。

人族に擬態している妖魔かもしれない。

冒険者としての警戒心はそう告げてくるが、小さく蹲る細い肢体に庇護欲が掻き立てられる。

世の理の外にいる妖であれば、宿木の下であろうと攻撃してくるかもしれないが、防げる自信はある。
人族が傷を負って宿木に逃げ込んでいるのであれば手当てもいるだろうし、旅慣れていなさそうな様子も気になる。

「おい、大丈夫か?」

結局考えているのが面倒になって声をかけた。
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