異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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1章

5 side ギィ

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声をかけると子どもは顔を上げて答えてきた。
蹲っていた姿から予想していたよりは年上に見えるが、まだ成人前の少年だ。
言葉はわかるし、傷を負っている様子もなく少し安心する。

が、こちらを認識した子どもは突然逃げようとし始めた。
モタモタと這って離れようとする様子に足を痛めているのかと心配になるが、必死で顔を背け泣きながら蹲るのでこれ以上確認することも出来ない。
追い詰めない様に少し離れて座り、観察していることを気づかれない様に物音をたてながら横目でじっくり眺める。

細い手足に薄い体。手入れの行き届いた短髪。衣服は柔らかそうな上質な生地だが見慣れぬ形をしている。
年齢的には駆け出しの冒険者でもおかしくはないがその様には全く見えない。
行商の見習いが商隊からはぐれたにしても違和感がある。
荷物もなく身一つのようなのが悪い想像を掻き立てる。拐われたところを逃げ出して来たか…。

全身でこちらを拒否する姿からは子どもの感じている恐怖と不安が手に取るようにわかるがそれを必死で隠そうとしているのもわかるから、これ以上の詮索はひとまずやめることにする。

しばらくすると子どもはそのまま寝てしまった。

しまった…。もう少し警戒心が解けてきたら携帯食を渡そうと準備していたのに渡しそびれた…。
仕方ないから俺ももう寝るか。

宿木の下だから冷えることはないとわかっていながら子どもの薄い衣服に上着をかけたくなるが、起こしてしまうことを思うと実行できずぐっと我慢して目を閉じた。


ルークの気配が近づいてくるのに気づいて目を開ける。間もなく夜明けになる時刻だ。
まだ寝ている子どもを起こさないようにルークの気配のする方へ向かう。領域の端に現れたルークは、子どもと近づいてくる俺を見比べて不思議そうにしている。

「報告は問題なかったか?」
「大丈夫大丈夫。村も変わりなかったよ。
で、あの子は?」
「昨夜ここに来たときにはすでに居た。
怖がらせてしまったようで、まだ何も聞けてないんだが…」
「そのガタイで詰め寄られたら、あんな小さな子だと泣きだすでしょ。かわいそうに」

ちゃんと優しく声をかけてから近づいたんだがな…確かに泣かれたな…。

「そこまで幼くはなさそうだぞ。13、4才というところか。ただ、様子がおかしい。このまま置いて行くのはまずい気がする」
「年も聞けてないんだ…名前は?その様子だとそれもまだか」

やれやれと言いながらも、俺の人付き合いの悪さをよく知っている奴は軽く笑う。
俺と違ってルークは距離を縮めるのが上手いからあの子から色々聞き出せるだろう。俺が聞き出したかったが仕方ない。
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