異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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寝ちゃってた!!

物音がした気がして意識が浮上してくると共に、慌てて顔を上げて目を開ける。

もしかしたらと思ってたけど、見えた景色はまだ森だった。

明るくなってきているからか、眩しさはマシになった気がする。光ってるのは光ってるけど、昼にフラッシュを焚いたような感じだ。眩しいけど、痛い程ではない。
空気中の光る粒々も、夜程みっしりには見えない。ちなみに吸い込まない様に浅く息をするのは諦めた。今のところ体に異変はないし、昨日あれだけ暴れて息を切らしても平気だったんだから、きっと害はないんだろう。
ちょっと眩しくて、みっしり過ぎるのが見ていてゾワっとするだけで…。たぶん、大丈夫。

「起きたか」

森を見ながら薄目で放心してた俺に、横から声が掛けられた。

「!!」

反射的にそちらを向いて驚いた。
光る人型が、2人?2体?に増えてた!
そして森や粒々の光は我慢できるくらいになっていたのに、人型はまだ明るすぎた!
慌てて顔を背けるけど、視界に残像が残って頭がクラクラする。

「俺たちはもう行くが、お前はどうする?
ここにいたら迎えが来るのか?」

声を掛けてきたのは、昨日の人型だ。

「えと…その…」

親切で声をかけてくれているのだろうに顔を背けたままは人としてダメだろうと、ソロっと顔を人型の方に向ける。薄目で目線は人型の足元に固定だが許してほしい。

「遠くから来たのかな?
はぐれちゃったんだったらここで待つより森の近くの村へ一旦行って、ギルドに申し出たら同行者を探してもらうこともできるよ?」

こちらも昨日の人型よりも柔らかい声だが男の声だ。

「連れて来られて置いていかれた感じで…」

誤魔化した方がいいのか正直に言った方がいいのかわからないけど、変に嘘をついたら後々辻褄を合わせられなくなって困りそうだったから、嘘じゃない程度に答える。

「連れて来られたって拐われたのか!?」
「どこで拐われたのかわかるなら元の場所に帰れるよう手伝うよ!?」
「拐われたって言うか…その…約束で…。帰れないんです」
「連れて行く契約で連れ出して、置いて行ったということか?宿木に置いて行くなら殺すつもりはなかったのかもしれんが」
「身一つで置いて行くならそうとも言えないと思うけど。どこかの貴族のお家騒動で、死んでもいいしどこかで生き延びてても帰って来なければそれでいいっていうのがあり得そう」

うぅ、不審な点だらけだろうけど、追及しないで欲しい。俺にもどうしてこうなってるのかわからないんだ。

「やっぱり近くの村まで一緒に行かない?
元の場所に帰るかどうかは別としても、ずっとここにいるのは俺たちも心配だしさ。」

どうしよう。
一緒に行くのは不安だ。
でも、ここに残るのも不安だ。水も食糧もない状態で何日保つのかもわからない。

じっとしたまま、神様が迎えにくる可能性に賭けて飢え死にするくらいなら、移動してせめて食糧を手に入れるべきじゃないだろうか。
村に行けば働けるかもしれないし、住み込みで雇ってくれるところもあるかもしれない!

人型は、昨日寝てしまった俺に何かすることもなかったし、安全な場所を教えてくれもした。
何よりこれ以上1人でいることに耐えれなかった。言葉が通じる相手とまた出会えるとは思えない。

光ってるけど…。
…光ってるけど、眩しいだけで害はなさそうだし…。

意を決して、人型の方を向いて小さく頷く。

「…よろしくお願いします…」

眩しいから薄目だけど、許してほしい…。
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