異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

文字の大きさ
41 / 87
2章

41

しおりを挟む
「よし。ちょっと個人的な話をしような。コレのこととか、どんな依頼が向いてるかとかな」
「はいっ」
「じゃあお二人は退室くださいね。終わったら呼びに参りますので」
「いてもできるでしょ?」
「断る」
「依頼に関する話は当人と俺たちだけの話だ。わかってるだろ?ほら、さっさと出ろ」
「…わかりましたよ。カイト、下で待ってるからな」
「カイト、何かあったら殴ってでも逃げてくるんだぞ。すぐ外にいるからな」
「うん。わかった」
「何があると思ってんだ!!!」

ギルド長に怒られてれてルークとギィは渋々部屋を出ていった。
副長がソファの間にある机の上に砂時計みたいな物を置く。

「これは防音の道具ですよ。ここの話を盗み聞きしているような者はいないと思いますが、念のため使います。これからの話はカイト君の個人的な話も含まれますからね」
「はぃ…」

別にルークとギィなら聞かれて困るような話もないんだけどな。

「冒険者は依頼を受けることで依頼人の秘密を知ることもあります。依頼の内容は例え家族であっても漏らしてはいけません。いいですね?」
「はいっ」
「よし。まずカイトの話をルークとギィから聞いてるのは俺とソイルだけだ。他のギルド員は誰も知らん。本来は本人無しに話すことではないんだが、カイトの場合はちょっと特殊だと聞いて例外的に先に話を聞いていた。俺たちが聞いた事を他人に漏らすことは絶対にない。そこは信用してもらって大丈夫だ。
俺たちはギルド長と副長としての信用を賭けるし、あいつらはA級としての信用を賭けてる」
「我々が聞いているのは、カイト君の魔力はとても少ない、道具を起動させることもできない程だということ。魔力を見ることができるということ。どんな言語でも理解できるし話せるということ。魔王領で保護されていたけれど出自については一切明かせないということ。以上です。間違ってはいないですか?」
「はい」
「まず、さっき見せてくれたコレな。コレは魔王の庇護を受けている者が持っている印と認識されている。コレは魔王から受け取ったのか?」
「はい。冒険者になるのであれば登録の時にコレを見せるように言われました」
「そうか…。わかった。コレはもう誰にも見せるな。魔王領には行きたくても行けないでいる奴がいっぱいいる。コレをお前が持っていることが知られると伝手になってくれと付き纏われたり奪おうとされたり面倒な事が起こるからな。いいな。今返すからすぐ仕舞え」
「はぃ」

ギルド長が机の上でこっちにそっと指で押して戻して来たバッジを鞄にしまう。
コレそんなに大変な物だったんだ…。すごく気軽な感じで渡されたし、かっこいいマークが入ってたから鞄に付けちゃうとこだった…。

「魔力がほとんどないっていうのはどのように対応しているのですか?」
「えっと、魔力を入れた魔力鉱石から必要なときは魔力を取り込めるような道具を作ってもらいました」
「…それは、魔王に?」
「はい。コレです」

鎖を通して首から下げてるギィの魔力が詰まった魔力鉱石を見せる。これは魔王も驚く大きさで貴重品だってわかってるからシャツの下に入れて見えないようにしてるんだ。

「…そうか…それか…。それも人前にはできるだけ出さないようにしろ。魔力鉱石から魔力を取り込むなんてとんでもないことだからな」

不快感があろうと魔力量を増やしたい奴はいるからな。十分注意して使えよ。って、ギルド長疲れてきてるみたいだな…。深呼吸してソファにもたれちゃった。

「その魔力は、ギィの魔力ですか?」
「はい。これとこっちのにもギィの魔力が入ってます」

左手のお守りも見せる。コレも隠した方がいいのかな?

「これは魔力を取り込んだりはできないんですが、隠した方がいいですか?」
「…それは見えてないと意味がないな…。それが何かわかってるか?」
「?お守りですよね?」
「ぁー…まぁ、そう…だな。ちゃんと見えるようにつけとけよ」
「はい」

えーと、後なんだっけかな…って呟くギルド長。
すいません、なんかご迷惑をおかけしているようで…。何がダメなのかわかってないんですけど、すいません。

「どんな言語でも理解できるというのはどのようにするのですか?」
「えーと、どんな言葉を聞いても何を言っているかわかります。聞けば同じ言葉で話すこともできます。ただ、俺には普通に聞こえてしまうので話してるのがどの言葉なのかがわかりません。直前に聞いた言葉と同じ言葉でしか話せないですし。読むのは文字の形を見て違う言葉だなってわかるんですけど。書くのは読んだのと違う言葉で書くこともできます」

そう、聞いたり見たりした言葉と同じ言葉でしか返せない問題。とりあえず書く方は色んな言語の単語帳的な物を作ってそれを見ることで解決できた。俺は今、色んな言葉で書かれた「ありがとう」の一覧を持っている!この中から書いて欲しい言語を指定してもらうとその言語で書けるのだ!
聞いたことを通訳するのも筆記だとこの方法でできるから、一応できるって言ってもいいんじゃないかなー。

「それは…なかなか使える能力ですね」
「ですよね!そういう依頼もあったらいいんですけど」
「他言語の文書を扱っているようなところにギルドから話を持っていくこともできますから、考えてみますね」
「よろしくお願いします!」
「魔力が見えるというのは?」
「人とか物とかの魔力量が見れます!具体的にどれくらいっていうのはわからないんですけど、これより多いとかそういう感じで見れます。えーと、ギルド長より副長の方が多いです。下の食堂のダスさんはもうちょっと多かったと思います」
「……。普段から見てるんですか?」

あれ、ダメなことだったかな…。言うのはダメかなって思って言わないようにしてたけど見るのは結構勝手に見てたけど…。

「…えと、普段はしないです。疲れるので…。あの、魔王領では美味しい野菜を見分けるのに使ってました」
「野菜…」
「魔力が多いほど美味しいんで!」
「…そうか…。見るのは別に構わんだろ。動物のものでも見えるんだろ?危険を見分けるのにも使えるだろうしな。ただ、他人の魔力量は言わないようにしろ。魔力量だけが上位ランクの条件ではないが多い方が有利ではあるからな。言いふらされたくない奴も多いだろう」
「はい」
「冒険者になるには自衛できないといけないが、ある程度は習ってるんだな?ギィからか?」
「魔王領で教わりました!」

あれ?ギルド長の目が光ったみたいに見えたんだけど…。

「そうか。じゃあ今からテストだ!下の訓練場へ行くぞ!」
「ギルド長…」
「大丈夫だ。ちょど良さそうな奴を選ぶから。この時間なら空いてるだろ。
ほら、行くぞ!」

テスト!やっぱりあるんじゃないか!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙
BL
ごく普通の高校生だった優輝は勇者として招かれたが、レベル1だった。弱いキノコ狩りをしながらレベルアップをしているうち、黒衣の騎士風の謎のイケメンと出会うが……。 

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。

処理中です...