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2章
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ギルド長が扉を開けるとすぐ前の廊下の壁にもたれてギィが立ってた。
「終わったか?」
「ギィ!テストあるって。訓練場でやるって」
「テスト!?
おぃ。何をやるんだ」
「自衛力の確認だけだ。軽いやつだよ。丁度良さそうな相手を探してやるから大丈夫だ」
ギルド長は先に降りて行って、カウンターの奥の倉庫を通って裏口から外に出た。カウンターの向こう側で待ってたルークも慌てて追いかけて来る。
「どうした?」
「テストやるって。どうしよう」
出た所は低い柵で囲われた運動場だった。
端っこの方に何人かいるだけで今は使われてはいないみたい。
自衛力を見るって事は模擬戦かなぁ。体術はヘキとギィ以外とやった事ないし、武器を使うのは嫌なんだけどな…。
ギルド長が端にいた人に何か言って、その人は横の扉から中に入って行った。
「ギルド長、ちょっと突然すぎじゃないですか?」
「戦闘なんていつも突然だろうが。カイトは結構できるだろ?心配してないで周りの人払いでもしとけや」
あー、どうしよう。緊張するなぁ。
相手は誰だろう…。
ギィがマントと鞄を受け取ってくれる。
「ギルド長は言い出したら止められん。
勝ち負けではなく今の実力が見たいだけだと思うから、いつも通りで大丈夫だ」
あ、中からさっきの人ともう1人出て来た。
そんなに大きくないな。俺よりちょっと大きいくらいか。
「フリオ、ちょっと今から登録の奴の相手してやってくれ。武器無しの1対1の模擬戦だ」
「ぇー。急だなぁ。もう」
「A級の2人も見てるんだから頑張れよ」
ギルド長と一緒に寄って来た人はまだ若い男の人だった。身長はこの中だと俺の次に低い。
「俺、フリオ。ギルド員だ」
「カイトです。よろしくお願いしますっ」
「ぉ、ぉぅ。ギルド員がE級に負ける訳にはいかないから本気でいくから」
「ははは。頑張れよ!武器無しの模擬戦だ。どっちかが降参するか動けなくなるか俺が止めるかまでだ。いいな?」
「はい」
「はいっ」
ギルド長とギィが柵まで下がる。ルークもいる。
俺とフリオは5メートルほど離れて向き合った。
フリオの魔力はそんなに多くない。
いつも通りってことは出来るだけ捕まらないようにするって事だ。
よし、できる!
ギルド長の始めの合図でいきなりフリオは突っ込んで来た。
速い!でもヘキほどじゃない。ちゃんと見えてる。
掴みかかって来た腕を払って下がる。
着地を狙って来た足払いを跳んで躱す。
横にステップをして距離を取る。
大丈夫、対応出来てる。
今度はフリオも距離を保ったままこちらの隙を伺ってる。
ジリジリ動きながら互いに相手を観察する。
どっちから来る?
腕か?足か?
フリオの溜めの動作が見えた!
掴みに来た腕をわずかに横にズレることで躱して伸び切った腕を両手で掴む。
相手の勢いを利用して投げた。
ダメだ。軽い!
ヘキやギィだと重さで勢いが増してダメージが大きくなるけど、フリオは小柄だからそこまでのダメージにならない。
投げた腕を離さずにそのまま足払いで倒そうとするけど避けられて腕を払われる。
逃げられる距離が取れないなら相手の懐に入り込んで投げる!
飛び込んだ瞬間、フリオの足が地面の砂を蹴り上げるのが見えて咄嗟に目を瞑る。
ステップで下がりながら無意識のまま交差させた腕でフリオの蹴りを防いでた。
「そこまで!」
あー。びっくりした。
そうだよな。戦闘だもんな、ああいう攻撃だってあるよな。
「お前、強いな。動きが全部読まれてて焦ったわ」
フリオがバンバン肩を叩いてくるけど、俺は今足がガクガクで子鹿のようです…。
「ありがとう…。練習以外でやったの初めてで緊張したんだけど、合格できたかなぁ」
「合格ってお前…」
「よかったぞ、カイト!」
「ギルド長…。合格できました?」
「おぉ!ちゃんと登録してやる!」
「よかったぁ」
気が抜けてヘナヘナになった俺をギルド長と一緒に近づいて来ていたギィが抱え上げる。
無言でぎゅっとされた。
「いつも通り出来てたよ!上出来、上出来!」
「ルーク、合格だって!」
「宿に帰ってお祝いだな!」
「おぅ、今日はこのまま帰れ。ギルド証は作っておくから明日受け取りに来い。だいぶ人が集まって来たから早く行け」
「ギィ、もう大丈夫だから降ろして」
「いや、このまま行く」
「いやいやいや、歩けるから!」
「……」
「ぉぃ、ギィ、降ろしてやれ。後、話があるからちょっと来い。すぐ終わるから!」
渋々俺を地面に降ろしてギィはギルド長と柵の向こう側まで行く。
周りを見たら結構人が集まってた。
全然気が付かなかったな。
あ、ダスさんもいる。
俺が気が付いたのに気付いたのかダスさんは手を振って中に入って行った。
「じゃ、俺も仕事に戻るわ。また明日な」
「あ。ありがとう」
「おぅ」
フリオも中に戻って行って、ギルド長と話し終わったギィが戻って来た。
「大丈夫?」
「あぁ。宿は俺と同じところだ。途中で食事を買って部屋で食べよう」
「俺の宿は違うとこなんだけど、お祝いは一緒にさせてくれよ」
ギィの常宿は銀鹿亭っていってギルドからも近いらしい。俺もそこに泊まる。
ルークの常宿は銀蝶亭。近所の別の宿なんだって。
無事合格できたし、焼き鳥買ってお祝いするぞー!
「終わったか?」
「ギィ!テストあるって。訓練場でやるって」
「テスト!?
おぃ。何をやるんだ」
「自衛力の確認だけだ。軽いやつだよ。丁度良さそうな相手を探してやるから大丈夫だ」
ギルド長は先に降りて行って、カウンターの奥の倉庫を通って裏口から外に出た。カウンターの向こう側で待ってたルークも慌てて追いかけて来る。
「どうした?」
「テストやるって。どうしよう」
出た所は低い柵で囲われた運動場だった。
端っこの方に何人かいるだけで今は使われてはいないみたい。
自衛力を見るって事は模擬戦かなぁ。体術はヘキとギィ以外とやった事ないし、武器を使うのは嫌なんだけどな…。
ギルド長が端にいた人に何か言って、その人は横の扉から中に入って行った。
「ギルド長、ちょっと突然すぎじゃないですか?」
「戦闘なんていつも突然だろうが。カイトは結構できるだろ?心配してないで周りの人払いでもしとけや」
あー、どうしよう。緊張するなぁ。
相手は誰だろう…。
ギィがマントと鞄を受け取ってくれる。
「ギルド長は言い出したら止められん。
勝ち負けではなく今の実力が見たいだけだと思うから、いつも通りで大丈夫だ」
あ、中からさっきの人ともう1人出て来た。
そんなに大きくないな。俺よりちょっと大きいくらいか。
「フリオ、ちょっと今から登録の奴の相手してやってくれ。武器無しの1対1の模擬戦だ」
「ぇー。急だなぁ。もう」
「A級の2人も見てるんだから頑張れよ」
ギルド長と一緒に寄って来た人はまだ若い男の人だった。身長はこの中だと俺の次に低い。
「俺、フリオ。ギルド員だ」
「カイトです。よろしくお願いしますっ」
「ぉ、ぉぅ。ギルド員がE級に負ける訳にはいかないから本気でいくから」
「ははは。頑張れよ!武器無しの模擬戦だ。どっちかが降参するか動けなくなるか俺が止めるかまでだ。いいな?」
「はい」
「はいっ」
ギルド長とギィが柵まで下がる。ルークもいる。
俺とフリオは5メートルほど離れて向き合った。
フリオの魔力はそんなに多くない。
いつも通りってことは出来るだけ捕まらないようにするって事だ。
よし、できる!
ギルド長の始めの合図でいきなりフリオは突っ込んで来た。
速い!でもヘキほどじゃない。ちゃんと見えてる。
掴みかかって来た腕を払って下がる。
着地を狙って来た足払いを跳んで躱す。
横にステップをして距離を取る。
大丈夫、対応出来てる。
今度はフリオも距離を保ったままこちらの隙を伺ってる。
ジリジリ動きながら互いに相手を観察する。
どっちから来る?
腕か?足か?
フリオの溜めの動作が見えた!
掴みに来た腕をわずかに横にズレることで躱して伸び切った腕を両手で掴む。
相手の勢いを利用して投げた。
ダメだ。軽い!
ヘキやギィだと重さで勢いが増してダメージが大きくなるけど、フリオは小柄だからそこまでのダメージにならない。
投げた腕を離さずにそのまま足払いで倒そうとするけど避けられて腕を払われる。
逃げられる距離が取れないなら相手の懐に入り込んで投げる!
飛び込んだ瞬間、フリオの足が地面の砂を蹴り上げるのが見えて咄嗟に目を瞑る。
ステップで下がりながら無意識のまま交差させた腕でフリオの蹴りを防いでた。
「そこまで!」
あー。びっくりした。
そうだよな。戦闘だもんな、ああいう攻撃だってあるよな。
「お前、強いな。動きが全部読まれてて焦ったわ」
フリオがバンバン肩を叩いてくるけど、俺は今足がガクガクで子鹿のようです…。
「ありがとう…。練習以外でやったの初めてで緊張したんだけど、合格できたかなぁ」
「合格ってお前…」
「よかったぞ、カイト!」
「ギルド長…。合格できました?」
「おぉ!ちゃんと登録してやる!」
「よかったぁ」
気が抜けてヘナヘナになった俺をギルド長と一緒に近づいて来ていたギィが抱え上げる。
無言でぎゅっとされた。
「いつも通り出来てたよ!上出来、上出来!」
「ルーク、合格だって!」
「宿に帰ってお祝いだな!」
「おぅ、今日はこのまま帰れ。ギルド証は作っておくから明日受け取りに来い。だいぶ人が集まって来たから早く行け」
「ギィ、もう大丈夫だから降ろして」
「いや、このまま行く」
「いやいやいや、歩けるから!」
「……」
「ぉぃ、ギィ、降ろしてやれ。後、話があるからちょっと来い。すぐ終わるから!」
渋々俺を地面に降ろしてギィはギルド長と柵の向こう側まで行く。
周りを見たら結構人が集まってた。
全然気が付かなかったな。
あ、ダスさんもいる。
俺が気が付いたのに気付いたのかダスさんは手を振って中に入って行った。
「じゃ、俺も仕事に戻るわ。また明日な」
「あ。ありがとう」
「おぅ」
フリオも中に戻って行って、ギルド長と話し終わったギィが戻って来た。
「大丈夫?」
「あぁ。宿は俺と同じところだ。途中で食事を買って部屋で食べよう」
「俺の宿は違うとこなんだけど、お祝いは一緒にさせてくれよ」
ギィの常宿は銀鹿亭っていってギルドからも近いらしい。俺もそこに泊まる。
ルークの常宿は銀蝶亭。近所の別の宿なんだって。
無事合格できたし、焼き鳥買ってお祝いするぞー!
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