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2章
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ギィのいない毎日は特に変わり映えなく過ぎていく。
あんなに波立っていた俺の気持ちも時間と共に落ち着いてきて、今はギィの事を考えても寂しくなったり悲しくなったりはしない。
…嘘だ。
本当はちょっと胸の奥の方が痛くなったりするけど、それも小さくなってきてると思う。きっともっと時間が経ったらもっと小さくなってそのうち痛むこともなくなるだろう。
毎日、朝起きたら木に水を遣ってギルドで依頼をこなして、暗くなる前に帰って来てお風呂に入って寝る。
変わったことがあるとしたら、あの種の木はもう俺の背丈を越えてちゃんと木って言える大きさになった。あと、俺はあんまりお腹が空かなくなってお昼にちょっと食べるくらいで大丈夫になった。それも1人で依頼中とかだったら無しでいける。今日の一杯は変わらず飲んでるから、ミルク一杯で活動できる省エネ体質になったってことかな。経済的だ。
今日は牧場に配達依頼。運ぶ荷物が大量だったので荷車を2台借りて俺、ヤック、グレン、ティナの4人で運んできた。後は空の荷車をギルドに戻せば完了だ。
街の大通りは馬車がすれ違える幅があるので荷車を引きながら端っこを歩いても大丈夫。おやつにもらったチーズを齧りながらのんびり歩く。今日もティナのおしゃべりは絶好調だ。
「あ、カイト!あの人!ギィの」
ギルド近くの商業区でティナが俺の袖を引っ張った。
「ほら、八百屋さんの前の黒っぽい髪の人」
言われて見れば、ギィが椅子を持ってた日に見た人らしき女の人だ。
八百屋のおばさんと楽しそうに話しながら、野菜を吟味してる。
明るくてよく笑う感じの小柄な女の人。
なるほど。かわいいな。
俺とティナの後ろを空の荷車を引きながら歩いてたヤックとグレンもその人を見ながら八百屋の前を通り過ぎた。
「今の人がどうした?」
「あぁ、ギィの結婚相手」
「「はぁ??」」
ヤックとグレンが特大の驚き声を上げて目を剥いて俺を見てくる。ヤックはともかく、グレンもそんなに大きな声出せたなんてそっちの方が驚きだ。
「いや、だってカイト、拠点…」
びっくりさせないでよ!って怒るティナをいなしながらヤックが俺に聞いてくる。ヤックとグレンは俺がギィと拠点で一緒に住んでるって知ってる数少ない人の中に入ってる。ギィが2人に話してた。ティナは知らないからはっきり聞けなくてモゴモゴになっちゃってるけど、驚くのはわかる。ホームを2つ持つなんて珍しいだろうしね。しかも同じ街にだ。
まあ、自宅と事務所みたいな感じかな?
「俺もびっくりしたよ。さすがA級って感じなのかな」
家2軒だもんね。
「…カイトは聞いてなかったのか?」
「今もまだちゃんと話してもらってはいないんだけどね」
「間違いじゃね?」
「いや、俺もギィとあの人が一緒に買い物してるの見たし。仲良さそうだったよ?」
「同じ家に帰ってるんだしあの人で間違いないって!お似合いよね!」
「ティナは黙ってろって」
「カイトはそれでいいのか?」
何?グレン怒ってる?
「ぇ?俺は別に…ギィが決めることだし…」
事務所の方に住まわせてもらってる俺に何か言う権利はない。
「ほら、ギルド着いたよ。完了報告しよう。
3人はこの後狩りの訓練だろ?急がないと」
「ちゃんとギィに聞いた方がいいと思うぞ?」
「んーでもなー。本人が言わないのに俺から聞くのも変だろ?」
「「変じゃないだろ!!」」
「…なんでヤックとグレンが怒ってるんだよ…。
俺はこの後書類整理だからもう行くよー。またなー」
「おい!カイト!」
なんで俺が怒られないといけないんだ。全く!
カウンター横から中に入って受付担当のギルド員さん達に挨拶してから2階に上がる。
ギルド長室では珍しく難しい顔をしてギルド長と副長が話し込んでた。
「おはようございます。あの、俺、出直します?」
「あぁ、カイト君。おはようございます。大丈夫ですよ」
「おぅカイト。早いな。昼飯はちゃんと食ったのか?」
「大丈夫です。今日の分の書類片付けますね?」
「もっとゆっくりでいいのに、お前もワーカーホリックだな」
「あなたはもうちょっと働いて頂きたいですがね」
さっきは難しい顔してたけど、ギルド長と副長は今日も通常運転だ。大丈夫そう。
「カイト、近隣の村での子どもの行方不明が増え続けててな。組織的に狙ってる奴らがいると思われるんだ。村には冒険者を派遣して警戒と調査に当たらせてるけど、カイト達も怪しいのを見かけたらすぐ知らせてくれ」
「はい。わかりました」
「下に通知も貼りますし、エリカは人の目も多いので大丈夫だと思うのですが用心に越したことはありませんからね」
副長が去ってギルド長も渋々書類仕事を始めた。俺もお仕事お仕事。
エリカは住人も多いけど、外から立ち寄る人も多いから警戒は難しそう。住人以外の街への出入りは門で必ずチェックされるから街中から子どもを連れ去るのは無理だよな。外の依頼の時に注意しておくようにしないと。でも子どもを攫ってどうするんだろ。
あんなに波立っていた俺の気持ちも時間と共に落ち着いてきて、今はギィの事を考えても寂しくなったり悲しくなったりはしない。
…嘘だ。
本当はちょっと胸の奥の方が痛くなったりするけど、それも小さくなってきてると思う。きっともっと時間が経ったらもっと小さくなってそのうち痛むこともなくなるだろう。
毎日、朝起きたら木に水を遣ってギルドで依頼をこなして、暗くなる前に帰って来てお風呂に入って寝る。
変わったことがあるとしたら、あの種の木はもう俺の背丈を越えてちゃんと木って言える大きさになった。あと、俺はあんまりお腹が空かなくなってお昼にちょっと食べるくらいで大丈夫になった。それも1人で依頼中とかだったら無しでいける。今日の一杯は変わらず飲んでるから、ミルク一杯で活動できる省エネ体質になったってことかな。経済的だ。
今日は牧場に配達依頼。運ぶ荷物が大量だったので荷車を2台借りて俺、ヤック、グレン、ティナの4人で運んできた。後は空の荷車をギルドに戻せば完了だ。
街の大通りは馬車がすれ違える幅があるので荷車を引きながら端っこを歩いても大丈夫。おやつにもらったチーズを齧りながらのんびり歩く。今日もティナのおしゃべりは絶好調だ。
「あ、カイト!あの人!ギィの」
ギルド近くの商業区でティナが俺の袖を引っ張った。
「ほら、八百屋さんの前の黒っぽい髪の人」
言われて見れば、ギィが椅子を持ってた日に見た人らしき女の人だ。
八百屋のおばさんと楽しそうに話しながら、野菜を吟味してる。
明るくてよく笑う感じの小柄な女の人。
なるほど。かわいいな。
俺とティナの後ろを空の荷車を引きながら歩いてたヤックとグレンもその人を見ながら八百屋の前を通り過ぎた。
「今の人がどうした?」
「あぁ、ギィの結婚相手」
「「はぁ??」」
ヤックとグレンが特大の驚き声を上げて目を剥いて俺を見てくる。ヤックはともかく、グレンもそんなに大きな声出せたなんてそっちの方が驚きだ。
「いや、だってカイト、拠点…」
びっくりさせないでよ!って怒るティナをいなしながらヤックが俺に聞いてくる。ヤックとグレンは俺がギィと拠点で一緒に住んでるって知ってる数少ない人の中に入ってる。ギィが2人に話してた。ティナは知らないからはっきり聞けなくてモゴモゴになっちゃってるけど、驚くのはわかる。ホームを2つ持つなんて珍しいだろうしね。しかも同じ街にだ。
まあ、自宅と事務所みたいな感じかな?
「俺もびっくりしたよ。さすがA級って感じなのかな」
家2軒だもんね。
「…カイトは聞いてなかったのか?」
「今もまだちゃんと話してもらってはいないんだけどね」
「間違いじゃね?」
「いや、俺もギィとあの人が一緒に買い物してるの見たし。仲良さそうだったよ?」
「同じ家に帰ってるんだしあの人で間違いないって!お似合いよね!」
「ティナは黙ってろって」
「カイトはそれでいいのか?」
何?グレン怒ってる?
「ぇ?俺は別に…ギィが決めることだし…」
事務所の方に住まわせてもらってる俺に何か言う権利はない。
「ほら、ギルド着いたよ。完了報告しよう。
3人はこの後狩りの訓練だろ?急がないと」
「ちゃんとギィに聞いた方がいいと思うぞ?」
「んーでもなー。本人が言わないのに俺から聞くのも変だろ?」
「「変じゃないだろ!!」」
「…なんでヤックとグレンが怒ってるんだよ…。
俺はこの後書類整理だからもう行くよー。またなー」
「おい!カイト!」
なんで俺が怒られないといけないんだ。全く!
カウンター横から中に入って受付担当のギルド員さん達に挨拶してから2階に上がる。
ギルド長室では珍しく難しい顔をしてギルド長と副長が話し込んでた。
「おはようございます。あの、俺、出直します?」
「あぁ、カイト君。おはようございます。大丈夫ですよ」
「おぅカイト。早いな。昼飯はちゃんと食ったのか?」
「大丈夫です。今日の分の書類片付けますね?」
「もっとゆっくりでいいのに、お前もワーカーホリックだな」
「あなたはもうちょっと働いて頂きたいですがね」
さっきは難しい顔してたけど、ギルド長と副長は今日も通常運転だ。大丈夫そう。
「カイト、近隣の村での子どもの行方不明が増え続けててな。組織的に狙ってる奴らがいると思われるんだ。村には冒険者を派遣して警戒と調査に当たらせてるけど、カイト達も怪しいのを見かけたらすぐ知らせてくれ」
「はい。わかりました」
「下に通知も貼りますし、エリカは人の目も多いので大丈夫だと思うのですが用心に越したことはありませんからね」
副長が去ってギルド長も渋々書類仕事を始めた。俺もお仕事お仕事。
エリカは住人も多いけど、外から立ち寄る人も多いから警戒は難しそう。住人以外の街への出入りは門で必ずチェックされるから街中から子どもを連れ去るのは無理だよな。外の依頼の時に注意しておくようにしないと。でも子どもを攫ってどうするんだろ。
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