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2章

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「おかえり。俺も今帰ったところだ。暗くなってきたから心配になってきてた。大丈夫か」
「…ぁ、あ、うん。だ、大丈夫」

喉が絡んで声が出にくい。
まさかいると思ってなかったから、心の準備が間に合わない。

今帰ったとこなんだ…。この時間まであの人の所にいたのかな…いや、違う違う、今考えるのはそれじゃなくって!
…いつもの笑顔ってどんなだっけ!?

「ご飯買って来たからまだだったら食べてね。
俺…俺、お風呂入って来るっ」

ギィが近寄って来ようとするのを避けるように移動しながらテーブルの上に買ってきた焼き串を置いて、足早にお風呂に向かう。
ギィの顔をしっかり見られない。

お風呂でぐずぐず限界まで長湯して茹で上がってヨロヨロしながらリビングに戻った。
ギィは部屋着に着替えてソファで次の依頼の物かな?資料を読んでる。
リビングのオレンジ色の灯りに照らされたギィの横顔は、静かで、完成された大人の男の持つ力強さや美しさを漂わせていて、ただただカッコよかった。

やっぱり俺、ギィのことが好きだ。これは、恋人の好きだ。
胸が痛くて、涙が出そう。

「カイト、上がったのか。そんなところでどうした?」

入り口の柱の陰からギィを見ていたのに気付かれて、いつものようにおいでと腕を広げられるけど、近づくことなんてできない。

「カイト?」

今ギィに触れたら、碌でもないことを口走って困らせてしまいそうだ。

「…つ、疲れたからもう寝るね。おやすみっ」

急いで2階に駆け上がる。
ベッドの俺の側の出来るだけ端に寄って掛布の中に潜り込んだ。

「カイト。カイト、どうした。何があった?」

すぐにギィが追いかけてきて、布団の中で丸まっている俺を上から撫でる。
俺は布団を剥がされまいときつく握って更に体を縮める。

「何もない。疲れただけだから!寝たら治るから」

ギィは何も言わず、掛布の上に寝転んで布団の上から俺を抱え込んだ。

「…指名依頼が入って、明日また出ることになった。今度は少し長くなる。一緒にいてやれなくてすまない」

ギィはまたいなくなるのか。
寂しいけど、一緒にいていつ結婚の話をされるのかびくびくしていなくていいことにちょっと安堵もする。

「この依頼の後はしばらく休める予定だから、待っててくれ」
「…指名依頼なら仕方ないね。気をつけてね」
「カイト…顔を見せてくれ」

小さな声があまりにも悲しそうだったから、俺は諦めて布団から頭を出してギィを見た。
ギィの目は俺の目の奥を覗き込んでくる。

「カイト、大丈夫なんだな」
「大丈夫だって。ちゃんと1人で留守番できるよ」

ギィが言ってる大丈夫と俺が言ってる大丈夫が噛み合ってない事に気づかないふりで精一杯笑ってみせて、そのまま目を瞑った。
ギィはそれ以上何も言わず、俺が寝てしまうまでずっと布団の上から俺を抱きしめたままだった。
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