75 / 87
2章
75
しおりを挟む
「お姉さん、穴を広げるんでちょっと下がっててください」
「君、カイト君?」
土間は泥濘んでるから片手鍋でも掘れそうだ。
持って来てよかったぁ、小道具にスコップ代わりに大活躍だな片手鍋。
「あ、はい、カイトです」
「冒険者の?」
「はい。D級ですけど。寝起きだったから装備も何もなくて…。でもお姉さんもちゃんと逃げれるようにしますから!」
「…わかった。私はロナ。食堂をやってるアンナの娘よ」
お姉さん、ロナさんは木切れを拾って俺と一緒に穴を掘り出す。
「アンナさんの!俺、アンナさんのお店の味が大好きなんです。美味しいですよね」
そっかー。アンナさんのお店でギィと出会ったのかな?ロナさんもきっと料理上手だろうから、ギィは幸せだな。
「ふふっ、ありがと。カイト君のことは聞いたことあったのよ。すごく大事にしてるのねって思ってたの」
「そうなんですか」
えへ、ちょっと照れるな。
「ところでロナさんはリノを知ってたんですか?」
「いいえ。お店に仕込みの準備に向かってたら路地であの子が男に捕まってたから、助けに行ったの。で、私も捕まっちゃったのよね」
いやいや無謀でしょ…。
でも勇気はある!それに優しいし、近くで見てもやっぱりかわいい。
ギィが好きになるだけのことはある!
「そういう時は大声出すとか、誰か呼ぶとかっ」
「そうよね。次からはそうするわ!」
ははっ、ロナさんって何か面白い。
かわいいし楽しいし、いいね!
「あ、ロナさん、これお守りです。ギィからもらったやつなんでロナさんが持っててください」
俺は左手のお守りを外してロナさんの手首に巻く。
これは本来ロナさんが持つべき物だ。
「ギィのって…」
「へへっ。ギィは内緒にしておきたいみたいなんですけど、俺知ってて。あ、でも俺が知ってるってことはギィには黙っててくださいね。
ロナさんはちゃんと帰れるようにしますから!」
「ギィの…そう、知ってたんだ。
そうよね。お店で出してるお肉とは段違いの質だものね」
「?
お肉…はよくわからないですけど、まずは穴、頑張りますね」
左手がすごく軽くなったみたいに感じる。ギィに付けてもらって以来1度も外したことのなかったお守りが俺に残した日焼け跡を視界に入れながら無心で穴を掘る。
なんとしてもロナさんを無傷でギィの元へ返すんだ!
でも穴掘りを再開してすぐ、隣の小屋から男達が出てくる音がした。
やばい。今穴が見つかったらリノが逃げたのがバレる!
「ロナさん、一旦木箱を元に戻して穴を隠します」
「わかった。袋に何か代わりになる物を入れないと…」
木箱を戻して袋の中に入れられそうな物を探すけど、何もないっ。
「お前ら何をゴソゴソしてやがる。
あっ!ガキをどこへやった!!」
あぁぁぁぁ、空の袋が見つかってしまった。
「おいっ、ガキが逃げた!探して来い!」
巨漢に言われて小さい方が走って行く。
リノ、ごめん。逃げてくれっ。
ルーク、お願い。リノを守って!
「クソッ、余計なことしやがって!
先にこうしておくべきだった!」
巨漢は縄を持って俺に近づいて来る。
いけるか?コイツに捕まらないようにするのは、俺だけなら余裕だけど、ロナさんがいる。
狭い場所で格闘となれば絶対安全とはいいきれない。コイツ1人なら縛られてても倒すことは可能だ。外に連れ出されてからがチャンスか。
ロナさんに大人しくしておくように合図して、俺は男が手首を縛ってくるのを受け入れた。俺を縛った後、ロナさんの手首も縛られる。
「お前が最初に余計なことをするから計画が崩れたんだぞ、あ゛!?」
「きゃっ」
「止めろよ!その人に乱暴するな!」
「あ゛あー???誰に言ってんだ!?」
手首を縛りながらロナさんを乱暴に揺するから、慌ててロナさんと男の間に割り込む。
男は激昂して俺を思いっきり振り払った。
「カイト君!!」
受け身も取れずに仰向けにひっくり返って後頭部を打ちつける。
目から火花が出るってこういうことかっ。
頭の奥がグラグラして動けない。
男はそのまま俺に馬乗りになって首を絞めて来る。
「ちょっと!やめなさいよっ!…きゃあっっ!」
「お前は後だ!大人しくしとけ!」
俺に乗ってる男の背中を蹴ったロナさんは振り払われて尻餅をついたらしく、俺からは見えなくなってしまった。
お願い、大人しくしてて。
俺、大丈夫だから。
男の下から抜け出そうと体をくねらせるけど、徐々に首を絞められて顔が熱くなって来る。
こめかみがドキンドキン言い出した時、急に首を絞めていた手を離されて大量の空気が流れ込んできて咽せてしまう。
「お前のその顔、なかなかいいな。耐える表情がぐっとくる。もっと見せろや」
何か男の雰囲気が怒ってるっていうのとはちょっと変わった?
前で縛られている手を無理矢理頭の上に上げられて片手で押さえつけられる。お腹の上に座られていたのは膝くらいに下がったから呼吸は楽になったけど、男の上体が倒れて密着してきて気持ち悪い。
男の膝は俺の脚を割って股間に当てられた。
「ほら、泣いてみせろ」
その状態で空いた片手で首を絞めて来る。
息が出来なくなるギリギリまで絞められて、生理的な涙が滲む。
気を失う寸前で緩められ、息を吸ったらまた絞められる。
「っ…。ぅ、っ……はっ、はぁっ、はぁっ…っ」
「あぁ、いい顔だ…おら、苦しいか?ん?」
まだだ。まだ反撃しちゃダメだ。
「ガキは見つからねぇよ…おぃ、何してんだ」
あぁ、小さい方が帰って来ちゃった。
リノは捕まってないのはよかったけど、2人相手となるともっと考えないと。
ロナさんは大丈夫かな。
「こいつちょっと頭のおかしいガキかと思ってたが、なかなかいい顔するぜ」
ほら。ってまた絞めるな!
「お前、ほんと好きだな。俺は女の方がいいけどよ。あっ、気ぃ失ってるじゃねぇか、何したんだよ」
あぁ、ロナさん、頭打ったのかな。
早く何とかしないとっ。
「君、カイト君?」
土間は泥濘んでるから片手鍋でも掘れそうだ。
持って来てよかったぁ、小道具にスコップ代わりに大活躍だな片手鍋。
「あ、はい、カイトです」
「冒険者の?」
「はい。D級ですけど。寝起きだったから装備も何もなくて…。でもお姉さんもちゃんと逃げれるようにしますから!」
「…わかった。私はロナ。食堂をやってるアンナの娘よ」
お姉さん、ロナさんは木切れを拾って俺と一緒に穴を掘り出す。
「アンナさんの!俺、アンナさんのお店の味が大好きなんです。美味しいですよね」
そっかー。アンナさんのお店でギィと出会ったのかな?ロナさんもきっと料理上手だろうから、ギィは幸せだな。
「ふふっ、ありがと。カイト君のことは聞いたことあったのよ。すごく大事にしてるのねって思ってたの」
「そうなんですか」
えへ、ちょっと照れるな。
「ところでロナさんはリノを知ってたんですか?」
「いいえ。お店に仕込みの準備に向かってたら路地であの子が男に捕まってたから、助けに行ったの。で、私も捕まっちゃったのよね」
いやいや無謀でしょ…。
でも勇気はある!それに優しいし、近くで見てもやっぱりかわいい。
ギィが好きになるだけのことはある!
「そういう時は大声出すとか、誰か呼ぶとかっ」
「そうよね。次からはそうするわ!」
ははっ、ロナさんって何か面白い。
かわいいし楽しいし、いいね!
「あ、ロナさん、これお守りです。ギィからもらったやつなんでロナさんが持っててください」
俺は左手のお守りを外してロナさんの手首に巻く。
これは本来ロナさんが持つべき物だ。
「ギィのって…」
「へへっ。ギィは内緒にしておきたいみたいなんですけど、俺知ってて。あ、でも俺が知ってるってことはギィには黙っててくださいね。
ロナさんはちゃんと帰れるようにしますから!」
「ギィの…そう、知ってたんだ。
そうよね。お店で出してるお肉とは段違いの質だものね」
「?
お肉…はよくわからないですけど、まずは穴、頑張りますね」
左手がすごく軽くなったみたいに感じる。ギィに付けてもらって以来1度も外したことのなかったお守りが俺に残した日焼け跡を視界に入れながら無心で穴を掘る。
なんとしてもロナさんを無傷でギィの元へ返すんだ!
でも穴掘りを再開してすぐ、隣の小屋から男達が出てくる音がした。
やばい。今穴が見つかったらリノが逃げたのがバレる!
「ロナさん、一旦木箱を元に戻して穴を隠します」
「わかった。袋に何か代わりになる物を入れないと…」
木箱を戻して袋の中に入れられそうな物を探すけど、何もないっ。
「お前ら何をゴソゴソしてやがる。
あっ!ガキをどこへやった!!」
あぁぁぁぁ、空の袋が見つかってしまった。
「おいっ、ガキが逃げた!探して来い!」
巨漢に言われて小さい方が走って行く。
リノ、ごめん。逃げてくれっ。
ルーク、お願い。リノを守って!
「クソッ、余計なことしやがって!
先にこうしておくべきだった!」
巨漢は縄を持って俺に近づいて来る。
いけるか?コイツに捕まらないようにするのは、俺だけなら余裕だけど、ロナさんがいる。
狭い場所で格闘となれば絶対安全とはいいきれない。コイツ1人なら縛られてても倒すことは可能だ。外に連れ出されてからがチャンスか。
ロナさんに大人しくしておくように合図して、俺は男が手首を縛ってくるのを受け入れた。俺を縛った後、ロナさんの手首も縛られる。
「お前が最初に余計なことをするから計画が崩れたんだぞ、あ゛!?」
「きゃっ」
「止めろよ!その人に乱暴するな!」
「あ゛あー???誰に言ってんだ!?」
手首を縛りながらロナさんを乱暴に揺するから、慌ててロナさんと男の間に割り込む。
男は激昂して俺を思いっきり振り払った。
「カイト君!!」
受け身も取れずに仰向けにひっくり返って後頭部を打ちつける。
目から火花が出るってこういうことかっ。
頭の奥がグラグラして動けない。
男はそのまま俺に馬乗りになって首を絞めて来る。
「ちょっと!やめなさいよっ!…きゃあっっ!」
「お前は後だ!大人しくしとけ!」
俺に乗ってる男の背中を蹴ったロナさんは振り払われて尻餅をついたらしく、俺からは見えなくなってしまった。
お願い、大人しくしてて。
俺、大丈夫だから。
男の下から抜け出そうと体をくねらせるけど、徐々に首を絞められて顔が熱くなって来る。
こめかみがドキンドキン言い出した時、急に首を絞めていた手を離されて大量の空気が流れ込んできて咽せてしまう。
「お前のその顔、なかなかいいな。耐える表情がぐっとくる。もっと見せろや」
何か男の雰囲気が怒ってるっていうのとはちょっと変わった?
前で縛られている手を無理矢理頭の上に上げられて片手で押さえつけられる。お腹の上に座られていたのは膝くらいに下がったから呼吸は楽になったけど、男の上体が倒れて密着してきて気持ち悪い。
男の膝は俺の脚を割って股間に当てられた。
「ほら、泣いてみせろ」
その状態で空いた片手で首を絞めて来る。
息が出来なくなるギリギリまで絞められて、生理的な涙が滲む。
気を失う寸前で緩められ、息を吸ったらまた絞められる。
「っ…。ぅ、っ……はっ、はぁっ、はぁっ…っ」
「あぁ、いい顔だ…おら、苦しいか?ん?」
まだだ。まだ反撃しちゃダメだ。
「ガキは見つからねぇよ…おぃ、何してんだ」
あぁ、小さい方が帰って来ちゃった。
リノは捕まってないのはよかったけど、2人相手となるともっと考えないと。
ロナさんは大丈夫かな。
「こいつちょっと頭のおかしいガキかと思ってたが、なかなかいい顔するぜ」
ほら。ってまた絞めるな!
「お前、ほんと好きだな。俺は女の方がいいけどよ。あっ、気ぃ失ってるじゃねぇか、何したんだよ」
あぁ、ロナさん、頭打ったのかな。
早く何とかしないとっ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
710
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる