最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★

539:石版

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   ***

《全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜、その名も創造神ククルカンは、大地に恵みをもたらし、我らを滅びの危機から救った。これより、我ら紅竜人の国が始まった。初代国王の名を取って、我らの暦を【イグリャ】とする》

《イグリャ歴82年。国外より侵略者有り、東の村が壊滅。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、民を率いて侵略者と戦った。侵略者は全滅し、我らは平和を取り戻した》

《イグリャ歴198年。日照りが二百日ほど続いた。畑は枯れ果て、民は飢餓に苦しんだ。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、古代の秘術を用いて、虚空の彼方より【彼者かのもの】を呼び寄せた。彼者は、およそ人智を超えたる力にて、大地に恵みをもたらした》

《イグリャ歴273年。大地の化身と呼ばれる怪物現る。大陸を暴れ回った後、大地の化身は彼者の力を欲し、我ら紅竜人の国へと進行を始めた。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、その身一つで大地の化身に挑んだ。その底知れぬ破壊の力を前にして、大地の化身は進行を諦め、北の地へと逃れていった》

《イグリャ歴496年。恐ろしい疫病が国中に蔓延し、民の半数が死に至った。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜が、南に現る。自らを創造神ククルカンの再来と名乗るその者は、西の泉の水を飲めば疫病は鎮まる、と予言した。それに従い、王は兵を西へと向かわせた。そこには一つの泉があり、その水は不思議と澄んでいた。その泉の水を持ち帰り、病に侵された者達に飲ませる事数回、疫病の流行はぴたりと止まった。王は、創造神ククルカンの再来を認め、その者を次の王にと定めた。》

《イグリャ歴686年。創造神ククルカンの再来を名乗る者現る。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜は、王となるべき者の首に刄を突き付け、亡き者にしようとした。王は、その者と、その者に加担する者全てを敵とみなし、争いが始まった。国中が戦火に包まれ、多くの民が犠牲となった》

《イグリャ歴734年。長きに渡る戦いに終止符が打たれた。王は、自らを創造神ククルカンの再来と名乗る異形の竜が率いた反逆者どもを、一人残らず討ち取り、国を平和へと導いた。そして、戦いに敗れし異形の竜が、二度とこの世に現れぬよう、その身を西の泉へと沈めた。これにより泉の水は汚れ、そこは奈落の泉と呼ばれるようになった。王は、生き残りし民を率いて、これより新たに、【リザドーニャ】という国が誕生した》

   ***








「イグリャ歴っていうのが、この国の暦なんだね?」

「いかにもその通りだ。今はイグリャ歴1234年……、紅竜人の歴史は長いが、このリザドーニャ王国においてはつい先日、建国五百年を迎えたばかりだ」

   ふむ、なるほど……
   俺の記憶が正しければ、大魔導師アーレイク・ピタラスの大陸大分断があったのは、今から553年前だったはず。
   つまり逆算して考えると、イグリャ歴では、681年に大陸大分断がされた事になるな。
   そして、大陸大分断から53年後の、イグリャ歴734年に、このリザドーニャ王国が建国されたわけか。

「ここにある暦書の記述が正しければ、少なくとも、我ら紅竜人がこの世に生み出された後、ククルカンの再来とされる者は五人いたという事になるな」

「そうだね。紅竜人を生み出したとされる最初の創造神ククルカンは別として……。ククルカンの再来と呼ばれる者は全部で五人。ゼンイが六人目で、チャイロは七人目、って事になるのかな……?」

   独り言のように呟いた俺に対し、ティカは鋭い視線を送る。
   またしても無意識のうちに、俺はチャイロの事を呼び捨てにしてしまっていたのだ。
   しかしながら、俺は今考え事をしているので、ティカの視線には全く気付かなかった。

   この石版に記されている限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達は、紅竜人にとってはヒーロー的な存在だ。
   外敵を滅ぼし、飢餓を止め、かつての大陸で暴れていた大地の化身(これ、あのカバ面のタマスの事だな。人騒がせな奴め……)を退かせ、疫病をストップさせた。
   めちゃくちゃカッコいいヒーローじゃんか、ククルカンってばよ。

   しかし、それは四人目までの話だ。
   石版には、イグリャ歴686年に現れたククルカンの再来と呼ばれる者が、《王となるべき者の首に刃を突きつけ》とある。
   つまり、この五人目のククルカンの再来は、それまでとは違って、紅竜人の敵と見なされているわけだ。
   何故ここにきて、ククルカンの再来と呼ばれる者は、王の敵……、紅竜人の敵となったのだろう?

   そして、イグリャ歴686年に始まったとされる五人目のククルカンの再来と当時の王との戦いが、734年まで続いていたということは、単純計算で48年もの間、争いが続いていた事になる。
   48年間もの長期に渡る紛争となると、犠牲者の数は計り知れない。
   きっと、沢山の紅竜人達が命を落とした事だろう……
   ずっと昔に過ぎた事とはいえ、少々胸が痛む。

   とにかく、トエトが俺に教えてくれた五百年前のククルカンの再来の話は全て、石版の暦書に残っている真実だという事が確定した。
   そこで気になるのが、この争いが始まったのが、アーレイク・ピタラスの大陸大分断のほぼ直後だという事だ。
   俺の計算が正しければ、大陸大分断はイグリャ歴681年の出来事となり、そのたった五年後である686年に、五人目のククルカンの再来による紛争が始まった事になる。
   ノリリアから聞いた話だと、このロリアン島には、ピタラスの弟子であるロリアンが訪れていて、最期は紅竜人に殺害されたという事実が残っているという事だったが、何か関係があるのだろうか?

   ……うん、なんだか、とってもややこしくて、頭がこんがらがっちゃいそうなんだけど。
   でも、なんか気になる、すっごく気になる。
   大陸大分断のすぐ後に、それまではヒーローだったはずのククルカンの再来が、紅竜人を滅ぼそうとしただなんて……、なんか引っかかるんだよなぁ~。

   もやもやもやもや。

   五人目のククルカンの再来と大陸大分断、そしてこの島に訪れたであろうロリアンのその死が、全くの無関係だとは俺には到底思えない。
   大陸大分断から五人目のククルカンの再来が現れるまでの五年間に、いったい何があったんだ?
   どうしてククルカンの再来は、再び現れたんだろう??
   原因はいったい……???
   
「この、《彼者》とは何のことだ? 何者だ??」

   ティカの問い掛けに、俺はハッとする。
   考え込み過ぎて、そこにティカがいる事をすっかり忘れていましたよ。

   ティカの指差す石版を、俺は見やった。
   そこに描かれているのは鳥だ。
   それも、ギリギリ鳥だと分かる程度の鳥だ。
   ……いや、正直に言おう、鳥かどうかも疑わしい。
   何を描いたのかは知らないが、描いた奴は絵が下手過ぎだろう。

   石版には文字だけでなくて、子供の落書き紛いな挿絵が描かれているものがあり、イグリャ歴198年のその石版にも、何かの古代絵が残されているのだが……、ティカはそこに描かれている鳥擬きを指差していた。

「う~ん……、鳥? かなぁ??」

   分からないので、適当に返事をする俺。

   背中に六枚の羽を持つ鳥らしき飛行生物は、その顔に大きな目玉を持ち、羽毛らしき物に覆われた長細い体躯が描かれているものの、全体的に絵がかすれてしまっている為に、それが何なのかはハッキリとは分からない。
   
「鳥? ……我ら紅竜人には、創造神ククルカンこそその存在が知らされているものの、鳥の神などは聞いた事もない」

   怪訝な顔で俺を見るティカ。
   
   そ……、そんな事を言われましても……
   ごめんなさい、かなり適当に返事をしてしまいました。
   けれども、俺には本当に、分かり兼ねるのです。

「ま、まぁ……、とりあえず、今知りたいのはククルカンの事だからさ、ね?」

「ふむ。それで……、分かったのか? 創造神ククルカンが如何なる者なのか」

「あぁ、うん。大体はね。けど、この暦書を見る限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達が悪者だとは思えないし……。それに、五百年前に起きた争いが、ククルカンのせいだとは考えにくいよね」

「何が言いたい?」

「……うん、つまりね。チャイロは生贄になる必要なんか無いんじゃないか、って事だよ」

   俺の言葉に、ティカはフーンと鼻から息を吐いた。
   納得したかのような、それでいて憤慨しているかのような、そんな重い鼻息だ。
   
「なるほど……。時にモッモよ、先程からグルグルと回っているぞ?」

「え? 回ってる??」

   何のことですか? 俺はジッとしてますけど??

「その、君が首から下げているものだ」

「首? あ……、えっ!?」

   視線を下に向けた俺は、驚き声をあげた。
   ティカに指摘された通り、首から下げている望みの羅針盤の金色の針が、狂ったようにグルグルと回り続けているではないか。

「な!? 何これっ!??」

   こんな状況は初めてだ。
   なんだ? どうした??
   まさか……、壊れたか???
   
   俺がアワアワしていると、金の針は次第に光を帯びて、突然にピタッと止まったかと思えば、針の先から金色の光線を放ち始めたではないか。

   なんだなんだなんだっ!?!?

   金色の光線が導く方向に、俺は体を向ける。
   すると更に激しく、光線は輝きを放ち始めた。

   こ……、こっちに、何かあるのか?

   椅子を降りて、光線が続く方向へテクテクと歩く俺。
   すると、石版が並べられている棚の裏側に、ヒビ割れて瓦礫となった石版の残骸があった。
   羅針盤の金の針から放たれる光線は、真っ直ぐそれを指している。

   どうしてこんなところに、こんな物が?

   石版の一部が欠けているものは沢山あったけど、こんなにバキバキに割れているものは他にはない。
   不思議に思い、そっとその欠片を手にすると、金色の光線はスッと消えて、羅針盤の金の針も光を失った。

「もしかして……? ねぇティカ、ちょっとこっち来て」

   俺はティカに手伝ってもらい、その石版の残骸を机の上へと移動させた。
   石版の表面を金槌か何かで強く叩いて割ったらしく、バラバラになってはいるものの、結合部が何となく分かったので、それらをパズルのように組み合わせていく。
   そして、ようやく読める程度に復元出来たその石版には、驚きの事実が書かれていた。

《イグリャ歴681年。我ら紅竜人の暮らす大陸が、大きく割れた。世界の終わりと思しき揺れが三日三晩続いた。国は崩れ、全てが無に帰った。大陸は島となり、他の種族は見当たらなくなった。食べ物も水も無くなり、我らは滅びの危機に瀕していた。すると、空より【白き神】が舞い降りて、王に告げた。彼者を捕らえ、その力を奪えば、民は助かり、国は栄えると。王は助言に従いて、彼者を捕らえ、金の檻へと閉じ込め、国の繁栄を願った》

「白き、神……? 彼者を閉じ込めただと?? これはいったい……???」

   困惑するティカ。
   俺も同様に、困惑していた。
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