552 / 804
★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★
539:石版
しおりを挟む
***
《全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜、その名も創造神ククルカンは、大地に恵みをもたらし、我らを滅びの危機から救った。これより、我ら紅竜人の国が始まった。初代国王の名を取って、我らの暦を【イグリャ】とする》
《イグリャ歴82年。国外より侵略者有り、東の村が壊滅。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、民を率いて侵略者と戦った。侵略者は全滅し、我らは平和を取り戻した》
《イグリャ歴198年。日照りが二百日ほど続いた。畑は枯れ果て、民は飢餓に苦しんだ。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、古代の秘術を用いて、虚空の彼方より【彼者】を呼び寄せた。彼者は、およそ人智を超えたる力にて、大地に恵みをもたらした》
《イグリャ歴273年。大地の化身と呼ばれる怪物現る。大陸を暴れ回った後、大地の化身は彼者の力を欲し、我ら紅竜人の国へと進行を始めた。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、その身一つで大地の化身に挑んだ。その底知れぬ破壊の力を前にして、大地の化身は進行を諦め、北の地へと逃れていった》
《イグリャ歴496年。恐ろしい疫病が国中に蔓延し、民の半数が死に至った。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜が、南に現る。自らを創造神ククルカンの再来と名乗るその者は、西の泉の水を飲めば疫病は鎮まる、と予言した。それに従い、王は兵を西へと向かわせた。そこには一つの泉があり、その水は不思議と澄んでいた。その泉の水を持ち帰り、病に侵された者達に飲ませる事数回、疫病の流行はぴたりと止まった。王は、創造神ククルカンの再来を認め、その者を次の王にと定めた。》
《イグリャ歴686年。創造神ククルカンの再来を名乗る者現る。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜は、王となるべき者の首に刄を突き付け、亡き者にしようとした。王は、その者と、その者に加担する者全てを敵とみなし、争いが始まった。国中が戦火に包まれ、多くの民が犠牲となった》
《イグリャ歴734年。長きに渡る戦いに終止符が打たれた。王は、自らを創造神ククルカンの再来と名乗る異形の竜が率いた反逆者どもを、一人残らず討ち取り、国を平和へと導いた。そして、戦いに敗れし異形の竜が、二度とこの世に現れぬよう、その身を西の泉へと沈めた。これにより泉の水は汚れ、そこは奈落の泉と呼ばれるようになった。王は、生き残りし民を率いて、これより新たに、【リザドーニャ】という国が誕生した》
***
「イグリャ歴っていうのが、この国の暦なんだね?」
「いかにもその通りだ。今はイグリャ歴1234年……、紅竜人の歴史は長いが、このリザドーニャ王国においてはつい先日、建国五百年を迎えたばかりだ」
ふむ、なるほど……
俺の記憶が正しければ、大魔導師アーレイク・ピタラスの大陸大分断があったのは、今から553年前だったはず。
つまり逆算して考えると、イグリャ歴では、681年に大陸大分断がされた事になるな。
そして、大陸大分断から53年後の、イグリャ歴734年に、このリザドーニャ王国が建国されたわけか。
「ここにある暦書の記述が正しければ、少なくとも、我ら紅竜人がこの世に生み出された後、ククルカンの再来とされる者は五人いたという事になるな」
「そうだね。紅竜人を生み出したとされる最初の創造神ククルカンは別として……。ククルカンの再来と呼ばれる者は全部で五人。ゼンイが六人目で、チャイロは七人目、って事になるのかな……?」
独り言のように呟いた俺に対し、ティカは鋭い視線を送る。
またしても無意識のうちに、俺はチャイロの事を呼び捨てにしてしまっていたのだ。
しかしながら、俺は今考え事をしているので、ティカの視線には全く気付かなかった。
この石版に記されている限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達は、紅竜人にとってはヒーロー的な存在だ。
外敵を滅ぼし、飢餓を止め、かつての大陸で暴れていた大地の化身(これ、あのカバ面のタマスの事だな。人騒がせな奴め……)を退かせ、疫病をストップさせた。
めちゃくちゃカッコいいヒーローじゃんか、ククルカンってばよ。
しかし、それは四人目までの話だ。
石版には、イグリャ歴686年に現れたククルカンの再来と呼ばれる者が、《王となるべき者の首に刃を突きつけ》とある。
つまり、この五人目のククルカンの再来は、それまでとは違って、紅竜人の敵と見なされているわけだ。
何故ここにきて、ククルカンの再来と呼ばれる者は、王の敵……、紅竜人の敵となったのだろう?
そして、イグリャ歴686年に始まったとされる五人目のククルカンの再来と当時の王との戦いが、734年まで続いていたということは、単純計算で48年もの間、争いが続いていた事になる。
48年間もの長期に渡る紛争となると、犠牲者の数は計り知れない。
きっと、沢山の紅竜人達が命を落とした事だろう……
ずっと昔に過ぎた事とはいえ、少々胸が痛む。
とにかく、トエトが俺に教えてくれた五百年前のククルカンの再来の話は全て、石版の暦書に残っている真実だという事が確定した。
そこで気になるのが、この争いが始まったのが、アーレイク・ピタラスの大陸大分断のほぼ直後だという事だ。
俺の計算が正しければ、大陸大分断はイグリャ歴681年の出来事となり、そのたった五年後である686年に、五人目のククルカンの再来による紛争が始まった事になる。
ノリリアから聞いた話だと、このロリアン島には、ピタラスの弟子であるロリアンが訪れていて、最期は紅竜人に殺害されたという事実が残っているという事だったが、何か関係があるのだろうか?
……うん、なんだか、とってもややこしくて、頭がこんがらがっちゃいそうなんだけど。
でも、なんか気になる、すっごく気になる。
大陸大分断のすぐ後に、それまではヒーローだったはずのククルカンの再来が、紅竜人を滅ぼそうとしただなんて……、なんか引っかかるんだよなぁ~。
もやもやもやもや。
五人目のククルカンの再来と大陸大分断、そしてこの島に訪れたであろうロリアンのその死が、全くの無関係だとは俺には到底思えない。
大陸大分断から五人目のククルカンの再来が現れるまでの五年間に、いったい何があったんだ?
どうしてククルカンの再来は、再び現れたんだろう??
原因はいったい……???
「この、《彼者》とは何のことだ? 何者だ??」
ティカの問い掛けに、俺はハッとする。
考え込み過ぎて、そこにティカがいる事をすっかり忘れていましたよ。
ティカの指差す石版を、俺は見やった。
そこに描かれているのは鳥だ。
それも、ギリギリ鳥だと分かる程度の鳥だ。
……いや、正直に言おう、鳥かどうかも疑わしい。
何を描いたのかは知らないが、描いた奴は絵が下手過ぎだろう。
石版には文字だけでなくて、子供の落書き紛いな挿絵が描かれているものがあり、イグリャ歴198年のその石版にも、何かの古代絵が残されているのだが……、ティカはそこに描かれている鳥擬きを指差していた。
「う~ん……、鳥? かなぁ??」
分からないので、適当に返事をする俺。
背中に六枚の羽を持つ鳥らしき飛行生物は、その顔に大きな目玉を持ち、羽毛らしき物に覆われた長細い体躯が描かれているものの、全体的に絵が掠れてしまっている為に、それが何なのかはハッキリとは分からない。
「鳥? ……我ら紅竜人には、創造神ククルカンこそその存在が知らされているものの、鳥の神などは聞いた事もない」
怪訝な顔で俺を見るティカ。
そ……、そんな事を言われましても……
ごめんなさい、かなり適当に返事をしてしまいました。
けれども、俺には本当に、分かり兼ねるのです。
「ま、まぁ……、とりあえず、今知りたいのはククルカンの事だからさ、ね?」
「ふむ。それで……、分かったのか? 創造神ククルカンが如何なる者なのか」
「あぁ、うん。大体はね。けど、この暦書を見る限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達が悪者だとは思えないし……。それに、五百年前に起きた争いが、ククルカンのせいだとは考えにくいよね」
「何が言いたい?」
「……うん、つまりね。チャイロは生贄になる必要なんか無いんじゃないか、って事だよ」
俺の言葉に、ティカはフーンと鼻から息を吐いた。
納得したかのような、それでいて憤慨しているかのような、そんな重い鼻息だ。
「なるほど……。時にモッモよ、先程からグルグルと回っているぞ?」
「え? 回ってる??」
何のことですか? 俺はジッとしてますけど??
「その、君が首から下げているものだ」
「首? あ……、えっ!?」
視線を下に向けた俺は、驚き声をあげた。
ティカに指摘された通り、首から下げている望みの羅針盤の金色の針が、狂ったようにグルグルと回り続けているではないか。
「な!? 何これっ!??」
こんな状況は初めてだ。
なんだ? どうした??
まさか……、壊れたか???
俺がアワアワしていると、金の針は次第に光を帯びて、突然にピタッと止まったかと思えば、針の先から金色の光線を放ち始めたではないか。
なんだなんだなんだっ!?!?
金色の光線が導く方向に、俺は体を向ける。
すると更に激しく、光線は輝きを放ち始めた。
こ……、こっちに、何かあるのか?
椅子を降りて、光線が続く方向へテクテクと歩く俺。
すると、石版が並べられている棚の裏側に、ヒビ割れて瓦礫となった石版の残骸があった。
羅針盤の金の針から放たれる光線は、真っ直ぐそれを指している。
どうしてこんなところに、こんな物が?
石版の一部が欠けているものは沢山あったけど、こんなにバキバキに割れているものは他にはない。
不思議に思い、そっとその欠片を手にすると、金色の光線はスッと消えて、羅針盤の金の針も光を失った。
「もしかして……? ねぇティカ、ちょっとこっち来て」
俺はティカに手伝ってもらい、その石版の残骸を机の上へと移動させた。
石版の表面を金槌か何かで強く叩いて割ったらしく、バラバラになってはいるものの、結合部が何となく分かったので、それらをパズルのように組み合わせていく。
そして、ようやく読める程度に復元出来たその石版には、驚きの事実が書かれていた。
《イグリャ歴681年。我ら紅竜人の暮らす大陸が、大きく割れた。世界の終わりと思しき揺れが三日三晩続いた。国は崩れ、全てが無に帰った。大陸は島となり、他の種族は見当たらなくなった。食べ物も水も無くなり、我らは滅びの危機に瀕していた。すると、空より【白き神】が舞い降りて、王に告げた。彼者を捕らえ、その力を奪えば、民は助かり、国は栄えると。王は助言に従いて、彼者を捕らえ、金の檻へと閉じ込め、国の繁栄を願った》
「白き、神……? 彼者を閉じ込めただと?? これはいったい……???」
困惑するティカ。
俺も同様に、困惑していた。
《全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜、その名も創造神ククルカンは、大地に恵みをもたらし、我らを滅びの危機から救った。これより、我ら紅竜人の国が始まった。初代国王の名を取って、我らの暦を【イグリャ】とする》
《イグリャ歴82年。国外より侵略者有り、東の村が壊滅。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、民を率いて侵略者と戦った。侵略者は全滅し、我らは平和を取り戻した》
《イグリャ歴198年。日照りが二百日ほど続いた。畑は枯れ果て、民は飢餓に苦しんだ。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、古代の秘術を用いて、虚空の彼方より【彼者】を呼び寄せた。彼者は、およそ人智を超えたる力にて、大地に恵みをもたらした》
《イグリャ歴273年。大地の化身と呼ばれる怪物現る。大陸を暴れ回った後、大地の化身は彼者の力を欲し、我ら紅竜人の国へと進行を始めた。自らを創造神ククルカンの再来と名乗る者が現れ、その身一つで大地の化身に挑んだ。その底知れぬ破壊の力を前にして、大地の化身は進行を諦め、北の地へと逃れていった》
《イグリャ歴496年。恐ろしい疫病が国中に蔓延し、民の半数が死に至った。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜が、南に現る。自らを創造神ククルカンの再来と名乗るその者は、西の泉の水を飲めば疫病は鎮まる、と予言した。それに従い、王は兵を西へと向かわせた。そこには一つの泉があり、その水は不思議と澄んでいた。その泉の水を持ち帰り、病に侵された者達に飲ませる事数回、疫病の流行はぴたりと止まった。王は、創造神ククルカンの再来を認め、その者を次の王にと定めた。》
《イグリャ歴686年。創造神ククルカンの再来を名乗る者現る。全身を黒い鱗に覆われ、頭部に太陽の冠を有した異形の竜は、王となるべき者の首に刄を突き付け、亡き者にしようとした。王は、その者と、その者に加担する者全てを敵とみなし、争いが始まった。国中が戦火に包まれ、多くの民が犠牲となった》
《イグリャ歴734年。長きに渡る戦いに終止符が打たれた。王は、自らを創造神ククルカンの再来と名乗る異形の竜が率いた反逆者どもを、一人残らず討ち取り、国を平和へと導いた。そして、戦いに敗れし異形の竜が、二度とこの世に現れぬよう、その身を西の泉へと沈めた。これにより泉の水は汚れ、そこは奈落の泉と呼ばれるようになった。王は、生き残りし民を率いて、これより新たに、【リザドーニャ】という国が誕生した》
***
「イグリャ歴っていうのが、この国の暦なんだね?」
「いかにもその通りだ。今はイグリャ歴1234年……、紅竜人の歴史は長いが、このリザドーニャ王国においてはつい先日、建国五百年を迎えたばかりだ」
ふむ、なるほど……
俺の記憶が正しければ、大魔導師アーレイク・ピタラスの大陸大分断があったのは、今から553年前だったはず。
つまり逆算して考えると、イグリャ歴では、681年に大陸大分断がされた事になるな。
そして、大陸大分断から53年後の、イグリャ歴734年に、このリザドーニャ王国が建国されたわけか。
「ここにある暦書の記述が正しければ、少なくとも、我ら紅竜人がこの世に生み出された後、ククルカンの再来とされる者は五人いたという事になるな」
「そうだね。紅竜人を生み出したとされる最初の創造神ククルカンは別として……。ククルカンの再来と呼ばれる者は全部で五人。ゼンイが六人目で、チャイロは七人目、って事になるのかな……?」
独り言のように呟いた俺に対し、ティカは鋭い視線を送る。
またしても無意識のうちに、俺はチャイロの事を呼び捨てにしてしまっていたのだ。
しかしながら、俺は今考え事をしているので、ティカの視線には全く気付かなかった。
この石版に記されている限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達は、紅竜人にとってはヒーロー的な存在だ。
外敵を滅ぼし、飢餓を止め、かつての大陸で暴れていた大地の化身(これ、あのカバ面のタマスの事だな。人騒がせな奴め……)を退かせ、疫病をストップさせた。
めちゃくちゃカッコいいヒーローじゃんか、ククルカンってばよ。
しかし、それは四人目までの話だ。
石版には、イグリャ歴686年に現れたククルカンの再来と呼ばれる者が、《王となるべき者の首に刃を突きつけ》とある。
つまり、この五人目のククルカンの再来は、それまでとは違って、紅竜人の敵と見なされているわけだ。
何故ここにきて、ククルカンの再来と呼ばれる者は、王の敵……、紅竜人の敵となったのだろう?
そして、イグリャ歴686年に始まったとされる五人目のククルカンの再来と当時の王との戦いが、734年まで続いていたということは、単純計算で48年もの間、争いが続いていた事になる。
48年間もの長期に渡る紛争となると、犠牲者の数は計り知れない。
きっと、沢山の紅竜人達が命を落とした事だろう……
ずっと昔に過ぎた事とはいえ、少々胸が痛む。
とにかく、トエトが俺に教えてくれた五百年前のククルカンの再来の話は全て、石版の暦書に残っている真実だという事が確定した。
そこで気になるのが、この争いが始まったのが、アーレイク・ピタラスの大陸大分断のほぼ直後だという事だ。
俺の計算が正しければ、大陸大分断はイグリャ歴681年の出来事となり、そのたった五年後である686年に、五人目のククルカンの再来による紛争が始まった事になる。
ノリリアから聞いた話だと、このロリアン島には、ピタラスの弟子であるロリアンが訪れていて、最期は紅竜人に殺害されたという事実が残っているという事だったが、何か関係があるのだろうか?
……うん、なんだか、とってもややこしくて、頭がこんがらがっちゃいそうなんだけど。
でも、なんか気になる、すっごく気になる。
大陸大分断のすぐ後に、それまではヒーローだったはずのククルカンの再来が、紅竜人を滅ぼそうとしただなんて……、なんか引っかかるんだよなぁ~。
もやもやもやもや。
五人目のククルカンの再来と大陸大分断、そしてこの島に訪れたであろうロリアンのその死が、全くの無関係だとは俺には到底思えない。
大陸大分断から五人目のククルカンの再来が現れるまでの五年間に、いったい何があったんだ?
どうしてククルカンの再来は、再び現れたんだろう??
原因はいったい……???
「この、《彼者》とは何のことだ? 何者だ??」
ティカの問い掛けに、俺はハッとする。
考え込み過ぎて、そこにティカがいる事をすっかり忘れていましたよ。
ティカの指差す石版を、俺は見やった。
そこに描かれているのは鳥だ。
それも、ギリギリ鳥だと分かる程度の鳥だ。
……いや、正直に言おう、鳥かどうかも疑わしい。
何を描いたのかは知らないが、描いた奴は絵が下手過ぎだろう。
石版には文字だけでなくて、子供の落書き紛いな挿絵が描かれているものがあり、イグリャ歴198年のその石版にも、何かの古代絵が残されているのだが……、ティカはそこに描かれている鳥擬きを指差していた。
「う~ん……、鳥? かなぁ??」
分からないので、適当に返事をする俺。
背中に六枚の羽を持つ鳥らしき飛行生物は、その顔に大きな目玉を持ち、羽毛らしき物に覆われた長細い体躯が描かれているものの、全体的に絵が掠れてしまっている為に、それが何なのかはハッキリとは分からない。
「鳥? ……我ら紅竜人には、創造神ククルカンこそその存在が知らされているものの、鳥の神などは聞いた事もない」
怪訝な顔で俺を見るティカ。
そ……、そんな事を言われましても……
ごめんなさい、かなり適当に返事をしてしまいました。
けれども、俺には本当に、分かり兼ねるのです。
「ま、まぁ……、とりあえず、今知りたいのはククルカンの事だからさ、ね?」
「ふむ。それで……、分かったのか? 創造神ククルカンが如何なる者なのか」
「あぁ、うん。大体はね。けど、この暦書を見る限りでは、ククルカンの再来と呼ばれる者達が悪者だとは思えないし……。それに、五百年前に起きた争いが、ククルカンのせいだとは考えにくいよね」
「何が言いたい?」
「……うん、つまりね。チャイロは生贄になる必要なんか無いんじゃないか、って事だよ」
俺の言葉に、ティカはフーンと鼻から息を吐いた。
納得したかのような、それでいて憤慨しているかのような、そんな重い鼻息だ。
「なるほど……。時にモッモよ、先程からグルグルと回っているぞ?」
「え? 回ってる??」
何のことですか? 俺はジッとしてますけど??
「その、君が首から下げているものだ」
「首? あ……、えっ!?」
視線を下に向けた俺は、驚き声をあげた。
ティカに指摘された通り、首から下げている望みの羅針盤の金色の針が、狂ったようにグルグルと回り続けているではないか。
「な!? 何これっ!??」
こんな状況は初めてだ。
なんだ? どうした??
まさか……、壊れたか???
俺がアワアワしていると、金の針は次第に光を帯びて、突然にピタッと止まったかと思えば、針の先から金色の光線を放ち始めたではないか。
なんだなんだなんだっ!?!?
金色の光線が導く方向に、俺は体を向ける。
すると更に激しく、光線は輝きを放ち始めた。
こ……、こっちに、何かあるのか?
椅子を降りて、光線が続く方向へテクテクと歩く俺。
すると、石版が並べられている棚の裏側に、ヒビ割れて瓦礫となった石版の残骸があった。
羅針盤の金の針から放たれる光線は、真っ直ぐそれを指している。
どうしてこんなところに、こんな物が?
石版の一部が欠けているものは沢山あったけど、こんなにバキバキに割れているものは他にはない。
不思議に思い、そっとその欠片を手にすると、金色の光線はスッと消えて、羅針盤の金の針も光を失った。
「もしかして……? ねぇティカ、ちょっとこっち来て」
俺はティカに手伝ってもらい、その石版の残骸を机の上へと移動させた。
石版の表面を金槌か何かで強く叩いて割ったらしく、バラバラになってはいるものの、結合部が何となく分かったので、それらをパズルのように組み合わせていく。
そして、ようやく読める程度に復元出来たその石版には、驚きの事実が書かれていた。
《イグリャ歴681年。我ら紅竜人の暮らす大陸が、大きく割れた。世界の終わりと思しき揺れが三日三晩続いた。国は崩れ、全てが無に帰った。大陸は島となり、他の種族は見当たらなくなった。食べ物も水も無くなり、我らは滅びの危機に瀕していた。すると、空より【白き神】が舞い降りて、王に告げた。彼者を捕らえ、その力を奪えば、民は助かり、国は栄えると。王は助言に従いて、彼者を捕らえ、金の檻へと閉じ込め、国の繁栄を願った》
「白き、神……? 彼者を閉じ込めただと?? これはいったい……???」
困惑するティカ。
俺も同様に、困惑していた。
0
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる