前世タチだった悪役令息はできれば攻役をネコにしたい

しそみょうが

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21 マクレガー家の掟に則り

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転移魔法の白い光がファ~と消えると、そこは10歳くらいの時に1度だけハーディ様に見学に連れて来てもらった覚えのある、王宮騎士団の演習場だった。

数百人は収容できそうな観客席があったりして、スポーツの団体戦が行われるくらい大きめの公営体育館に規模も雰囲気も似ているそこは、普段は騎士達が剣や魔法の訓練をしている場所だ。 

当時の俺は訓練に汗する騎士達を眺められる最高のプレースに内心で大興奮したものだが、あれっきり2度とハーディ様に連れて行ってもらえず残念に思っていた。

いつもは訓練場にいるはずの騎士達は今日は観客席にいる。そして広大な訓練場のど真ん中にいるのは、俺とハーディ様と、数メートル離れた距離に対峙しているお義父様だけである。ハーディ様と鉱山に来ていた騎士達はここに到着するやいなや『では我々はこれにて』と言いサッとはけて行った。

「待ち兼ねたぞジュディス!!」

お義父様がクソデカボイスを張り上げると、観客席の騎士達がうおおおおと雄叫びを上げた。

「これは代々当主にのみ口伝されこれまで秘匿されてきた事実であるが、過去にも我がマクレガー伯爵家に逆アナルを挑む不埒者が存在した。このサリアーニ子爵家が嫡子ジュディスこそ、その者の再来である!」

お義父様の怒声に呼応するように観客席から「恥を知れ!」だの「この身の程知らずが!」だの罵声とブーイングが投げかけられる。確かに皆が俺を待っててくれたようだが思っていたのと違う。

「遡ること数代前、当時のマクレガー家の嫡男に逆アナルを挑まれた際には、当主がその不埒者と一騎討ちの勝負をした。爾来マクレガー家では逆アナルを挑まれたならば、その代の当主が逆アナルを賭けて決闘をするのが掟となっている!その掟に則り、ここにマクレガー家現当主ハースティー・マクレガーこと私と、逆賊ジュディス・サリアーニの決闘を執り行う!!」

うおおおおおと盛り上がる観客達。逆賊て。まあ100年前は手討ちにされた例もあるってジャックも言ってたしな。古代ギリシアにおける同性愛は年長者がタチじゃなきゃアカンと決められてたらしいし(Utubeで観た)どこにも謎のルールってのがあるものだ。あと俺の前の挑戦者がどうなったのか気になる。

「勝負は1対1、ジュディスは剣の心得が無いため素手のみとし、どちらかが対戦不能となって決着とする!ジュディスが勝利を収めた場合は我が息子ハーディとの婚約及びジュディスによる逆アナルを認める!しかし私が勝利した場合、ハーディとジュディスとの婚約を解消し、サリアーニ子爵の了承の元ジュディスを廃嫡の上、国外追放とする!」

お義父様に遅れを取る気はしないが、万が一負けちゃった場合は駆け落ちするしかない。

「ジュディスよ。負けたら駆け落ちすれば良いなどと不埒なことを考えているやもしれんが、お前が負ければ即座にハーディは年嵩の高位貴族の妾となるぞ。伯爵家嫡子にも関わらず逆アナルを望んだハーディも相応の罰を受けねばならぬ」

「は!?負ける気はさらさらありませんが、もし万が一私がお義父様に敗北したとして、何故ハーディ様のような若く美しく才気に溢れる御方が妾になるのです!?普通そこは正妻でしょう!?」

「お前は知らぬだろうが、お前とハーディが揃いで身に着けている首飾り《ユニコーンの契り》は互いの絆と純潔を証明するアイテムであるが、ハーディがひとたびお前以外の者と契りを結べば、ペナルティの魔法が発動し肌に一生消えぬ焼印の痕が残るのだ。その様な者をまともな貴族が娶るわけがあるまい。また、この決闘の件が広まれば白い結婚の相手としても望まれないだろう」

「そ、そんな⋯!!」

思わず隣に立っているハーディ様を見ると、彼は申し訳なさそうな表情で言った。

「すまない、ジュディス。君には伝えていなかったが、もし私が他の者と契ればペナルティの焼印の痕はジュディスにも残ってしまうのだ」

「俺の焼印なんてどうだっていいんです!私はハーディ様がどこぞのジジイの妾にされるってのがイヤなんです!」

「ふふ。興奮して素が出ているよ。私はジュディスが勝つと信じているから何も憂いてはいないよ。例え万が一にもジュディスが負けることがあったとしても、他の誰かに身体を拓かれる前に自刃するから大丈夫だ」

いや何も大丈夫ではない。

「お義父様。申し訳ありませんがこの勝負、私が勝たせていただきます」

「言うではないか。よもやお前と手合わせする日がこようとはな」

お義父様は不適に嗤うと、着ているシャツのボタンを上からぷちぷち外し始める。え。まさかお義父様、上半身裸になろうとしてないよな?

「さあ来い!男と男の一騎討ちだ!」

案の定お義父様が着ているシャツをバサッと脱ぎ捨てると、観客席から

「う゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」

と今日イチの歓声が湧き起こった。女性騎士のキャーッという悲鳴も微かに混じっている。

同性同士が恋愛対象なのが普通の世界で美しいお義父が裸になったらそりゃそうなる。俺はお義父様の引き締まった白い上半身と桃色の乳首を直視してはならぬと両手で目を覆った。

「どうしたジュディス!その様に両目を隠しておっては戦えぬぞ!」

「いやお義父様⋯服を着ていただかないと目の遣り場に困ります。観客の方々も大騒ぎされているではありませんか」

「ああ。あやつらは何故か私が鍛錬の際に服を脱ぐといつもあの様に騒ぐのだ。さあ、何をしている、お前も早く脱げ!」

「ええ⋯」

無自覚ヒロインムーブはやめていただきたい。言われるままに俺も上のシャツを脱ぐと、今度は観客席からどよめきの声が上がった。身体が異様に筋肉バキバキで顔だけ美少年だから皆さんそういう反応になりますよね。色白だけに俺の乳首も無駄にピンク色だ。

「おまっ、何なのだその身体は!?」

「ちょっと筋肉が付きやすい体質でして」

ハーディ様にも初披露だな。キモって顔してたらどうしようとチラリとハーディ様を見れば、うっとりしたお顔で「男らしくて素敵だ⋯」と仰ってくださった。よかった♡

俄然やる気に満ちた俺は、薄目でお義父様に戦いを挑んだ。


◇◇◇◇


勝利を飾ったのは俺だった。

剣を握ったお義父様は鬼強いが肉弾戦は圧倒的にこちらが上だった。けどすぐ倒すのも気が引けるというわけで、格ゲーの技を繰り出してみたところ観客にウケた。それで調子に乗った俺は、お義父様が疲れるまで魅せ技連発の魅せ試合をしたのである。

体感20分くらいが過ぎた頃、お義父様の息が荒くなってきたところで俺は最後に絞め技をかけた。地面に引き倒されて苦しげに顔を歪めて喘ぐお義父様に観客達が大興奮する内に勝負は幕を閉じた。試合前のあれだけのブーイングが最後には喝采に変わったのは、お義父様が意図せず多大な犠牲を払ってくださったのが9割以上占めている気がする。

「私は後の始末があるゆえ、お前達はこれで先に帰っておれ」 

と、試合後すぐに渡された《転移陣》でハーディ様と一緒に転移した先はマクレガー伯爵家だった。

「実はしばらくの間ジュディスをマクレガー家で預かってほしいと、お義父上から頼まれているんだ」

「な、なんですって⋯!」

ハーディ様との同棲生活が急展開で始まってしまった⋯!



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