期間限定のセフレだったはずなのに

しそみょうが

文字の大きさ
1 / 7

1 セフレとマッチング

しおりを挟む
十二の時に幼馴染二人と故郷の村から逃げた。

『今年は不作で領主に納める税が足りん。村の子どもの中で見目の良いムルドとピオニーならば高値で買うと商人が言うておる。二人を売るならそこそこ見目の良いジェノもついでに彼らの半値で引き取ってくれるそうだ』

と、村長達が密談しているのをたまたま聞いてしまったからだ。

ムルドは黒髪黒目の男前で、ピオニーは金髪に青い目の貴族のお嬢さんみたいに可愛い子で、二人は小さな頃から相思相愛のラブラブカップルだった。

彼らのついでに売られそうになっていた茶色の髪にグレーの目をしたそこそこな見た目の俺は、物心ついた頃からずっとムルドが好きだった。

あれから八年が経ち、俺達三人は今年で二十歳だ。俺のムルドへの片想い歴はいよいよ十六年目に突入した。いい加減に報われない恋にさよならしたい。

「ムルド、ピオニー⋯⋯俺はパーティーを抜けて、冒険者もやめようと思う」

村から隣の領に逃げ延びた時、俺達はなけなしの金で冒険者ギルドに登録して三人でパーティーを組んだ。今では結成八年目の中堅パーティーで、それぞれがソロでもやっていける実力がある。俺が抜けても問題はないはずなのだが、二人からはめちゃくちゃに反対された。

「駄目だ。ジェノはしっかり者のようで抜けているところがあるから、独り立ちなんかしたら良からぬ輩に騙されて身ぐるみ剥がされる未来しか見えない」

惚れた男に真剣な瞳で見つめられて、俺はつい『うん』と頷いてしまいそうになる。危ない。俺はここで折れるわけにはいかないのだ。

「アンタがもし奴隷落ちにでもなっちゃったら、あのクソみたいな村から逃げ出した意味がないじゃない!私も絶対に反対よ!」

姉御肌のピオニーは俺を手のかかる弟みたいに思っている節がある。そして、鈍感なムルドと違って察しの良いピオニーには、俺がムルドを好きな気持ちはおそらくとっくにバレている。

ピオニーがムルドからの求婚になかなか首を縦に振らないのは、絶対に俺に遠慮しているせいなのだ。

ピオニーが憂いなくムルドと身を固めるために、そして俺自身がムルドへの想いを断ち切るために。彼らのそばからどうしても離れたかった俺は、つい有りもしない嘘をついてしまった。

「二人には黙ってたけど⋯⋯実は俺、恋人ができて、その人と一緒になるつもりなんだ。ちゃんとした仕事に就いてる人だから安心してくれ」



ピオニーは俺の苦しまぎれの嘘をかなり疑っていたものの、取りあえずは新たな門出を祝ってくれた。だがムルドは最後まで納得してくれず、パーティーを抜ける条件として、俺の恋人を近々二人に紹介するよう約束させられてしまったのだ。



◇◇◇◇



追い詰められた俺は、男同士が大人の出会いを求める酒場で相手を探すことにした。そこで店に入ってすぐ奇跡的にマッチングしたのが、イグニスという今まで見たことないほど容姿の整った男だった。

彼は領都の騎士団に在籍していて、一年以内には退団して親の跡目を継ぐことが決まっている。それまでの期間限定のセフレを探していた。

「家を継いだら然るべき家から婚約者を探さなきゃならなくてさ。それまでは恋愛も火遊びもできないから禁欲生活続きで困ってたんだよ。娼館はあまり好きじゃないしな。だから急いで、ジェノ。しばらくご無沙汰だったから早くしたい」

「ああ、うん。なあ、イグニスって二十七歳なんだろ?今まで婚約者とか、決まった相手はいなかったのか?」

「去年までの俺は気楽な次男坊だったから、自由恋愛を楽しんでたんだ。王都の騎士でこの見た目だろ?周りが放っといてくれなくてな。後継ぎだった兄貴が学者になるって家督を放棄しちまったもんだから、俺が繰り上がってこっちに戻って来たってわけだ。俺と違って後継ぎだった兄貴には子どもの頃からの婚約者がいたんだが、兄貴が家を継がなくても構わないって一緒になったよ」

イグニスは貴族か商家のお坊ちゃんあたりだろうと俺は踏んだ。身なりもいいし、家を継ぐために騎士を辞するなんて庶民だったらあり得ない。

「ふーん。金持ちの家って色々あるんだな」

「まあな。ジェノこそ本当にいいのか?幼馴染の彼に十六年も片想いしてたのに、俺とセフレになっちゃて」 

涼やかだけど、どこか艶のある声でイグニスが訊く。俺がセフレを探してた理由は、一番最初に彼に話してあった。

「うん。俺が探してたのは、ムルドとピオニーの前で俺の恋人の振りしてくれる男だからな」

出会いが目的の場で『恋人のふりだけしてください』なんて相手に頼むつもりはなかった。俺も二十歳の健康な男なので、一度くらいは人肌に触れてみたい気持ちは以前からあったのだ。好きな男の肌には触れられないから、相手は誰だって同じだし⋯⋯

「恋人の振りな。演技力には自信があるからお安いご用だ。さ、早く二階にあがろう」

俺とイグニスは住宅街にある二階建ての小ぢんまりとした一軒家にいる。このあたりは領都の中心地に近く、下位の貴族や裕福な平民が住居を構えているエリアらしい。

イグニスとマッチングしてすぐ転移魔法でここに連れて来られたのだが、俺には転移魔法は魔力量が足りず使えないから『すごい』と思わず呟いたら、彼は『そうだろ?』とドヤっていた。

屋敷の中には他の人間の気配はなく、イグニスに急かされて階段をあがり二階の寝室に入ると、彼は早速着ている服を脱ぎ始めた。

俺も脱ぐよう彼に目線で促される。エメラルドみたいな色の、キリッと釣り上がった綺麗な瞳だ。目だけじゃなく、王都でのモテ自慢をしていただけあってイグニスの見た目は全てが華やかだ。鼻筋も通っていて、口元は笑ってなくても口角が上がっている。無造作に束ねた深紅の長髪からは、大人の男の色気みたいなものを感じる。

それに、俺も冒険者だったからそれなりに鍛えた身体をしているけれど、平均的な背丈の俺よりも頭半分以上は背の高い彼の体躯は見惚れるほど立派だ。

じろじろと見ていた俺に気付いたイグニスがにやりと笑う。

「ジェノの片想いの相手⋯えーと、ムルド君だっけ?彼より俺のほうが男前だろ?だがくれぐれも惚れないように」

自信たっぷりに言い放ちながら残りの服を脱ぎ去るイグニス。

(確かに見た目はイグニスのほうがぶっちぎりでかっこいいけど⋯⋯)

ムルドは狭い農村に住んでいた頃は村で一番の美男子だったが、領都に出てきてからは彼より容姿の良い男はそれなりに存在することを知った。

だけど誠実で優しいムルドは俺のことも恋人のピオニーと同じくらい大切に扱ってくれて、俺はそんな彼にずっとメロメロ状態だったのだ。ムルドが俺に向ける愛情はピオニーに向ける愛情と違って、家族に向ける種類のものだと頭ではわかっているのに。

「イグニスは今まで俺が会った中でダントツにかっこいいけど、惚れないと思う。ムルドとイグニスは性格が全然違うから」

「そうか?まあ片想い歴十六年は伊達じゃないか。なあ、それよりジェノも早く脱いで。シャワーの代わりに洗浄魔法でいいよな?ジェノのお尻も俺が魔法で準備してあげるから、早くこっちおいで」

服もブーツもすっかり脱ぎ去ったイグニスの、鍛え抜かれた裸体の中心は既に半分勃ち上がっている。

半勃ち状態なのに俺がいつも使ってるディルドよりでかい。俺の後ろに入るかな、あれ。

イグニスのちんこにまじまじと見入っていると、舐めたそうにしていると勘違いされてしまった。

「すげえ見てくるじゃん。舐めたい?」

「え?⋯う、うん」

俺はまだセックスどころかキスさえしたこともないけれど、イグニスは俺をビッチだと思っている。処女かと訊かれて俺が違うと答えたせいだ。

その時イグニスは『心は一途なのに身体はビッチなんだな。そういうの興奮する』と言って、ピュウと口笛を吹いていた。

お一人様歴の長い俺は昨年あたりからディルドを使ってオナニーしていたから、俺の後ろの穴は処女の締まりとは違うだろうとそう答えたのだが、おかげで初めてのキスよりも先にフェラをする羽目になった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

記憶喪失になったら弟の恋人になった

天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。 そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。 そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。 見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。 トラド×ギウリ (ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)

「大好きです」と言ったらそのまま食べられそうです

あまさき
BL
『「これからも応援してます」と言おうと思ったら誘拐された』のその後のお話 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ リクエストにお答えしましてその後のお話🔞を書きました。 ⚠︎ ・行為に必要な色んな過程すっ飛ばしてます ・♡有り

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

処理中です...