私には王子様と吸血鬼の幼馴染がいる

kyouta

文字の大きさ
4 / 4

第三話

しおりを挟む
 入学してから一ヶ月が経った。

 麗王はサッカー部に入部したから、朝と夕方はオフじゃない日以外一緒に登下校することは無くなった。

 利鬼斗は図書委員会に入ったから、こっちも朝と夕方当番が入っている日以外は一緒に登下校することも無くなった。

 三人で一緒に行動するのは週一回くらいで、あとは利鬼斗と一緒にいることが増えた。

 てっきり麗王がいない日は単独行動になると思っていたから意外だった。でも利鬼斗といるのは居心地がいいから全く苦じゃない。

 ただ、二ノ宮さんが怖い。二ノ宮さんも利鬼斗のこと放課後何回か誘ってるっぽいけど、いつも利鬼斗は断っている。

 この前帰りにふと聞いてみたんだ。

「二ノ宮さんと遊ばなくていいの? 結構可愛いじゃん」

「興味ないから。それにあんまり僕と合わなそうなタイプな気がするし」

 それはそうかも。どちらかというと利鬼斗には桜子の方が合う気がする。

 桜子とも下の名前で呼び合うくらい仲良くなれた。あと啓爾くんと諒くんとも麗王の苦労話で意気投合してよく話すようになった。

 そんな感じで一ヶ月の間にだいぶ交友関係が深くなったけど、柊木さんと二ノ宮さんとは距離が開いたままで、麗王とも少しまだ気まずい。

 一ヶ月も経つと、学校行事も目前に迫ってくる。

 まず5月末に中間テストがあって、そのあとは球技大会だ。

 中間テストで赤点を取ると球技大会は出られないっていう学校のルールがある。私と利鬼斗は大丈夫だけど、麗王は大丈夫かな……。

 まぁ、あいつのことだから近くなったら頼ってくるか。

 そんなことを考えていたら今日最後の授業が終わった。得意な数学だったから話半分に聞いていてもだいたいは理解できる。でもこの後家に帰ったら復習しておこうかな。

 変える準備を済ませ、席を立とうとしたとき麗王が近くにやってきた。

「瑠璃、今いいか?」

「いいけど、部活は?」

「あるよ。だから手短に頼むわ」

「それ私のセリフね?」

 でもいつもと違って真面目な雰囲気に少し身構えてしまう。まさか麗王の初恋関係か? いやいやそんなことないか。

「俺絶対球技大会出たいんだ! だから勉強教えてくれ!」
 
 麗王は誰もが見本にするべきであろう綺麗に直角お辞儀をしている。テストまで二週間を切っているから、流石に焦りだしたか。

「いいよ、私に教えられることならね」

「まじ!? 助かるわー!」

 両手でガッツポーズをしているこの男は本当に単細胞だ。別に赤点を回避したわけじゃないのに……。

 まぁそうゆうところが可愛いんだけどね。

「お、珍しく笑ってんじゃん」

 咄嗟に右手で口元を隠した。笑ってた? 無意識に表情筋が緩んでいたらしい。

「あんたの頭がお花畑だからだよ」

「ちゃんと花咲いてるならいいじゃん!」

 だめだこいつとは会話にならない。

 明日部活が休みだから、放課後図書館で勉強することになった。

 利鬼斗も当番があるから図書館にいるらしい。今は勉強する人がほとんどで本を借りる人がいなくて暇なんだとか。だから利鬼斗も実質一緒に勉強するような形だ。



 すぐに放課後がやってきた。

 三人で図書館に向かい、利鬼斗は最初だけ仕事があるので二人で始めることにした。

「さて、何からやるの?」

「やりたくないけど数学からお願いします」

「ふむよろしい。取り敢えず問題集見して?」

 まだ私たちは文理で別れていない。だから基本的には今のクラスで多くの授業を受けているから、進行度は同じ。

 数学の授業は最初に解き方を教えてもらい例題をやる。その後に問題集を解いて終わりってのが大体の流れだ。

 だから問題集は埋まっているはずなんだけど……。予想通りほとんど最初の二問くらいで止まってる。

「最後までやってない理由は?」

「えっと。難しくて?」

「それもあると思うけど、他には?」

「寝ているからです……」

 私の席より麗王が前にいるから、授業態度は嫌でも見えてしまう。ほとんど寝てるんだよなー。

「部活大変?」

「んー、大変だけど好きだから頑張れるよ」

「そっか。なら勉強も頑張ろうか」

「いやいや、勉強は嫌いだし!」

「成績悪いと部活続けられないんじゃない? 文武両道がこの学校のテーマだし」

「うー。そうデスヨネ」

「大丈夫だって。今回の範囲なんてまだ高校始まって一ヶ月しか経ってないんだから。この問題集解いてれば赤点は回避できるよ」

「ほんとか!? なら頑張るぞー!」

 単純なやつ。取り敢えず麗王には問題集解いててもらえばいいかな。集中力切れないかだけ見張ってよう。



 それから一時間ほどで麗王の集中力は限界を迎えた。頑張ったほうかな。

「休憩しよっか。何か飲み物買ってこようか?」

「俺買ってくるから瑠璃は待ってていいよ。何がいい?」

「じゃあアイスティーで」

「任されよう」

 なんだそれは……。

 麗王を待っている間に利鬼斗の所へ行く。

「お疲れ。結構忙しそうだね」

「お疲れ。二年生の先輩で一度に大量の本を借りていく人がいてさ、貸し出し作業は楽だけど返却本を元あった棚に戻すのが大変。本は好きだけど多すぎるから」

「なるほどねー、その先輩は委員会の中では有名人?」

「だいぶね。いつも放課後に来るんだけど今日は昼休みに来たんだよね。テスト勉強する人が今多いからかな」

 本を戻しつつ貸し出し手続きもしないけいけないから、まだまだ利鬼斗は忙しそうだな。

「勉強は順調?」

「もちろん。あいつ地頭が悪いわけじゃなくてやってないだけだもん。真面目に問題解かせれば今回の範囲くらい出来るよ」

「麗王寝てるもんね」

「ぐっすりね」

 会話が一区切りしたタイミングで図書室のドアが開いた。麗王が帰ってきたのかと思い扉の方を見ると麗王と他に二人一緒に入ってきた。

「お待たせ瑠璃。これ飲み物な」

「ありがとう……。そちらは?」

「たまたま自販機で会ってさ! 二人も一緒に勉強したいって言うから連れてきたんだよ!」

 麗王の後ろにいた二人組、柊木さんと二ノ宮さんが静かにこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

処理中です...