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第三話
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入学してから一ヶ月が経った。
麗王はサッカー部に入部したから、朝と夕方はオフじゃない日以外一緒に登下校することは無くなった。
利鬼斗は図書委員会に入ったから、こっちも朝と夕方当番が入っている日以外は一緒に登下校することも無くなった。
三人で一緒に行動するのは週一回くらいで、あとは利鬼斗と一緒にいることが増えた。
てっきり麗王がいない日は単独行動になると思っていたから意外だった。でも利鬼斗といるのは居心地がいいから全く苦じゃない。
ただ、二ノ宮さんが怖い。二ノ宮さんも利鬼斗のこと放課後何回か誘ってるっぽいけど、いつも利鬼斗は断っている。
この前帰りにふと聞いてみたんだ。
「二ノ宮さんと遊ばなくていいの? 結構可愛いじゃん」
「興味ないから。それにあんまり僕と合わなそうなタイプな気がするし」
それはそうかも。どちらかというと利鬼斗には桜子の方が合う気がする。
桜子とも下の名前で呼び合うくらい仲良くなれた。あと啓爾くんと諒くんとも麗王の苦労話で意気投合してよく話すようになった。
そんな感じで一ヶ月の間にだいぶ交友関係が深くなったけど、柊木さんと二ノ宮さんとは距離が開いたままで、麗王とも少しまだ気まずい。
一ヶ月も経つと、学校行事も目前に迫ってくる。
まず5月末に中間テストがあって、そのあとは球技大会だ。
中間テストで赤点を取ると球技大会は出られないっていう学校のルールがある。私と利鬼斗は大丈夫だけど、麗王は大丈夫かな……。
まぁ、あいつのことだから近くなったら頼ってくるか。
そんなことを考えていたら今日最後の授業が終わった。得意な数学だったから話半分に聞いていてもだいたいは理解できる。でもこの後家に帰ったら復習しておこうかな。
変える準備を済ませ、席を立とうとしたとき麗王が近くにやってきた。
「瑠璃、今いいか?」
「いいけど、部活は?」
「あるよ。だから手短に頼むわ」
「それ私のセリフね?」
でもいつもと違って真面目な雰囲気に少し身構えてしまう。まさか麗王の初恋関係か? いやいやそんなことないか。
「俺絶対球技大会出たいんだ! だから勉強教えてくれ!」
麗王は誰もが見本にするべきであろう綺麗に直角お辞儀をしている。テストまで二週間を切っているから、流石に焦りだしたか。
「いいよ、私に教えられることならね」
「まじ!? 助かるわー!」
両手でガッツポーズをしているこの男は本当に単細胞だ。別に赤点を回避したわけじゃないのに……。
まぁそうゆうところが可愛いんだけどね。
「お、珍しく笑ってんじゃん」
咄嗟に右手で口元を隠した。笑ってた? 無意識に表情筋が緩んでいたらしい。
「あんたの頭がお花畑だからだよ」
「ちゃんと花咲いてるならいいじゃん!」
だめだこいつとは会話にならない。
明日部活が休みだから、放課後図書館で勉強することになった。
利鬼斗も当番があるから図書館にいるらしい。今は勉強する人がほとんどで本を借りる人がいなくて暇なんだとか。だから利鬼斗も実質一緒に勉強するような形だ。
すぐに放課後がやってきた。
三人で図書館に向かい、利鬼斗は最初だけ仕事があるので二人で始めることにした。
「さて、何からやるの?」
「やりたくないけど数学からお願いします」
「ふむよろしい。取り敢えず問題集見して?」
まだ私たちは文理で別れていない。だから基本的には今のクラスで多くの授業を受けているから、進行度は同じ。
数学の授業は最初に解き方を教えてもらい例題をやる。その後に問題集を解いて終わりってのが大体の流れだ。
だから問題集は埋まっているはずなんだけど……。予想通りほとんど最初の二問くらいで止まってる。
「最後までやってない理由は?」
「えっと。難しくて?」
「それもあると思うけど、他には?」
「寝ているからです……」
私の席より麗王が前にいるから、授業態度は嫌でも見えてしまう。ほとんど寝てるんだよなー。
「部活大変?」
「んー、大変だけど好きだから頑張れるよ」
「そっか。なら勉強も頑張ろうか」
「いやいや、勉強は嫌いだし!」
「成績悪いと部活続けられないんじゃない? 文武両道がこの学校のテーマだし」
「うー。そうデスヨネ」
「大丈夫だって。今回の範囲なんてまだ高校始まって一ヶ月しか経ってないんだから。この問題集解いてれば赤点は回避できるよ」
「ほんとか!? なら頑張るぞー!」
単純なやつ。取り敢えず麗王には問題集解いててもらえばいいかな。集中力切れないかだけ見張ってよう。
それから一時間ほどで麗王の集中力は限界を迎えた。頑張ったほうかな。
「休憩しよっか。何か飲み物買ってこようか?」
「俺買ってくるから瑠璃は待ってていいよ。何がいい?」
「じゃあアイスティーで」
「任されよう」
なんだそれは……。
麗王を待っている間に利鬼斗の所へ行く。
「お疲れ。結構忙しそうだね」
「お疲れ。二年生の先輩で一度に大量の本を借りていく人がいてさ、貸し出し作業は楽だけど返却本を元あった棚に戻すのが大変。本は好きだけど多すぎるから」
「なるほどねー、その先輩は委員会の中では有名人?」
「だいぶね。いつも放課後に来るんだけど今日は昼休みに来たんだよね。テスト勉強する人が今多いからかな」
本を戻しつつ貸し出し手続きもしないけいけないから、まだまだ利鬼斗は忙しそうだな。
「勉強は順調?」
「もちろん。あいつ地頭が悪いわけじゃなくてやってないだけだもん。真面目に問題解かせれば今回の範囲くらい出来るよ」
「麗王寝てるもんね」
「ぐっすりね」
会話が一区切りしたタイミングで図書室のドアが開いた。麗王が帰ってきたのかと思い扉の方を見ると麗王と他に二人一緒に入ってきた。
「お待たせ瑠璃。これ飲み物な」
「ありがとう……。そちらは?」
「たまたま自販機で会ってさ! 二人も一緒に勉強したいって言うから連れてきたんだよ!」
麗王の後ろにいた二人組、柊木さんと二ノ宮さんが静かにこちらを見ていた。
麗王はサッカー部に入部したから、朝と夕方はオフじゃない日以外一緒に登下校することは無くなった。
利鬼斗は図書委員会に入ったから、こっちも朝と夕方当番が入っている日以外は一緒に登下校することも無くなった。
三人で一緒に行動するのは週一回くらいで、あとは利鬼斗と一緒にいることが増えた。
てっきり麗王がいない日は単独行動になると思っていたから意外だった。でも利鬼斗といるのは居心地がいいから全く苦じゃない。
ただ、二ノ宮さんが怖い。二ノ宮さんも利鬼斗のこと放課後何回か誘ってるっぽいけど、いつも利鬼斗は断っている。
この前帰りにふと聞いてみたんだ。
「二ノ宮さんと遊ばなくていいの? 結構可愛いじゃん」
「興味ないから。それにあんまり僕と合わなそうなタイプな気がするし」
それはそうかも。どちらかというと利鬼斗には桜子の方が合う気がする。
桜子とも下の名前で呼び合うくらい仲良くなれた。あと啓爾くんと諒くんとも麗王の苦労話で意気投合してよく話すようになった。
そんな感じで一ヶ月の間にだいぶ交友関係が深くなったけど、柊木さんと二ノ宮さんとは距離が開いたままで、麗王とも少しまだ気まずい。
一ヶ月も経つと、学校行事も目前に迫ってくる。
まず5月末に中間テストがあって、そのあとは球技大会だ。
中間テストで赤点を取ると球技大会は出られないっていう学校のルールがある。私と利鬼斗は大丈夫だけど、麗王は大丈夫かな……。
まぁ、あいつのことだから近くなったら頼ってくるか。
そんなことを考えていたら今日最後の授業が終わった。得意な数学だったから話半分に聞いていてもだいたいは理解できる。でもこの後家に帰ったら復習しておこうかな。
変える準備を済ませ、席を立とうとしたとき麗王が近くにやってきた。
「瑠璃、今いいか?」
「いいけど、部活は?」
「あるよ。だから手短に頼むわ」
「それ私のセリフね?」
でもいつもと違って真面目な雰囲気に少し身構えてしまう。まさか麗王の初恋関係か? いやいやそんなことないか。
「俺絶対球技大会出たいんだ! だから勉強教えてくれ!」
麗王は誰もが見本にするべきであろう綺麗に直角お辞儀をしている。テストまで二週間を切っているから、流石に焦りだしたか。
「いいよ、私に教えられることならね」
「まじ!? 助かるわー!」
両手でガッツポーズをしているこの男は本当に単細胞だ。別に赤点を回避したわけじゃないのに……。
まぁそうゆうところが可愛いんだけどね。
「お、珍しく笑ってんじゃん」
咄嗟に右手で口元を隠した。笑ってた? 無意識に表情筋が緩んでいたらしい。
「あんたの頭がお花畑だからだよ」
「ちゃんと花咲いてるならいいじゃん!」
だめだこいつとは会話にならない。
明日部活が休みだから、放課後図書館で勉強することになった。
利鬼斗も当番があるから図書館にいるらしい。今は勉強する人がほとんどで本を借りる人がいなくて暇なんだとか。だから利鬼斗も実質一緒に勉強するような形だ。
すぐに放課後がやってきた。
三人で図書館に向かい、利鬼斗は最初だけ仕事があるので二人で始めることにした。
「さて、何からやるの?」
「やりたくないけど数学からお願いします」
「ふむよろしい。取り敢えず問題集見して?」
まだ私たちは文理で別れていない。だから基本的には今のクラスで多くの授業を受けているから、進行度は同じ。
数学の授業は最初に解き方を教えてもらい例題をやる。その後に問題集を解いて終わりってのが大体の流れだ。
だから問題集は埋まっているはずなんだけど……。予想通りほとんど最初の二問くらいで止まってる。
「最後までやってない理由は?」
「えっと。難しくて?」
「それもあると思うけど、他には?」
「寝ているからです……」
私の席より麗王が前にいるから、授業態度は嫌でも見えてしまう。ほとんど寝てるんだよなー。
「部活大変?」
「んー、大変だけど好きだから頑張れるよ」
「そっか。なら勉強も頑張ろうか」
「いやいや、勉強は嫌いだし!」
「成績悪いと部活続けられないんじゃない? 文武両道がこの学校のテーマだし」
「うー。そうデスヨネ」
「大丈夫だって。今回の範囲なんてまだ高校始まって一ヶ月しか経ってないんだから。この問題集解いてれば赤点は回避できるよ」
「ほんとか!? なら頑張るぞー!」
単純なやつ。取り敢えず麗王には問題集解いててもらえばいいかな。集中力切れないかだけ見張ってよう。
それから一時間ほどで麗王の集中力は限界を迎えた。頑張ったほうかな。
「休憩しよっか。何か飲み物買ってこようか?」
「俺買ってくるから瑠璃は待ってていいよ。何がいい?」
「じゃあアイスティーで」
「任されよう」
なんだそれは……。
麗王を待っている間に利鬼斗の所へ行く。
「お疲れ。結構忙しそうだね」
「お疲れ。二年生の先輩で一度に大量の本を借りていく人がいてさ、貸し出し作業は楽だけど返却本を元あった棚に戻すのが大変。本は好きだけど多すぎるから」
「なるほどねー、その先輩は委員会の中では有名人?」
「だいぶね。いつも放課後に来るんだけど今日は昼休みに来たんだよね。テスト勉強する人が今多いからかな」
本を戻しつつ貸し出し手続きもしないけいけないから、まだまだ利鬼斗は忙しそうだな。
「勉強は順調?」
「もちろん。あいつ地頭が悪いわけじゃなくてやってないだけだもん。真面目に問題解かせれば今回の範囲くらい出来るよ」
「麗王寝てるもんね」
「ぐっすりね」
会話が一区切りしたタイミングで図書室のドアが開いた。麗王が帰ってきたのかと思い扉の方を見ると麗王と他に二人一緒に入ってきた。
「お待たせ瑠璃。これ飲み物な」
「ありがとう……。そちらは?」
「たまたま自販機で会ってさ! 二人も一緒に勉強したいって言うから連れてきたんだよ!」
麗王の後ろにいた二人組、柊木さんと二ノ宮さんが静かにこちらを見ていた。
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