【異世界転移】悪に立ち向かうは悪の力。罪人異世界に降臨!

桜花龍炎舞

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1話

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 第一話「悪の開幕、世界の始まり」

 その日、空が裂けた。

 黒い稲妻が空間を引き裂き、九つの魂が時空を超えて堕ちてきた。彼らは元の世界で“悪”とされ、社会から追放された者たち。だが、ここ異世界《リュミエル》では、彼らに新たな意味が与えられた。

 それは、世界を救う“希望”であると──。

 ***

 最初に目を覚ましたのは、阿部野晴明(あべのせいめい)だった。見知らぬ草原の上、整ったスーツ姿は埃にまみれながらも威厳を保ち、彼は冷ややかな目で周囲を見渡す。

「……ふん。神か、悪魔か。どちらにせよ、俺にチャンスを与えたのは失敗だ」

 彼の頭には、転移時に直接刻み込まれた情報が流れ込んでいた。
 《支配術:アークマネジメント》──あらゆる組織・個体の構造を読み取り、統制可能にする能力。

 その背後で、突如うめき声とともに倒れ込む者たち。ひとり、またひとりと目を覚まし、互いを睨み合う。

「ここ……どこ?」
 不安げに辺りを見渡すのは三ノ輪愛莉(みのわあいり)。しかし、彼女の目が一人の男──阿部野に向いた瞬間、その表情は陶酔に近いものへ変わった。

「あなたは……もしかして、運命の人……?」

「馬鹿なのか?黙ってろ」

「はいっ!」

 不可解な忠誠心に満ちた返答に、他の者たちが眉をひそめる中、ひときわ大きな笑い声が轟く。

「クククッ!ガハハハ!最高じゃねぇかよ!ここなら殺しても文句言われねえ!」

 叫んだのは朝霧蓮二(あさぎりれんじ)。筋骨隆々の体を誇示するように肩を鳴らし、周囲を睨めつける。

「……落ち着け。殺すなら敵にしろ」

 冷静に言ったのは風間陽一(かざまよういち)
 。軍人の如き風格で立ち上がると、即座に地形や風向きを分析し始める。

「ふむ、草原。見渡す限りの平野。戦術的には最悪だな。敵の襲撃を想定するなら高所を確保すべきだ」

「情報が足りねぇな」

 しゃがみ込みながら草の匂いを嗅ぐのは如月透(きさらぎとおる)。彼の目はわずかな土の乱れも見逃さない。

「妙な土だな。」それに反応を示したのは苅谷忍(かりやしのぶ)

「クックック。そそるではないか。未知の芸術の予感だ!!」

「うーん……腹減った……」

 そう呟いたのは大福太郎(だいふくたろう)。持っていた非常食が転移で消えたらしく、代わりに地面に生えるキノコを見つけ、即座にかじった。

「毒じゃねぇな。イケる」

「食べないでよ怖いでしょ普通……」と呟きつつも、紫苑(しおん)は舌舐めずりし他者の観察を始めていた。

「全員、なかなか面白い男たち……これは、楽しめそうね」

 そして、最後に目を覚ましたのは真壁 凌(まかべ りょう)。静かに立ち上がり、誰にも気づかれぬようナイフを一本、手の中に隠し持つ。

(この世界でも、俺は裁く……)



 ***

 そして、その上空。

 空に浮かぶ巨大な魔方陣。そこから響く声が、彼らの運命を告げた。

 《選ばれし罪人たちよ。我らが世界は崩壊の危機にある。救世の力を求め、お前たちを召喚した──》

 《報酬は“全ての罪の免罪”と、“新たな神位”の授与──》

「……神、ね。面白い提案じゃないか」

 阿部野晴明が、ニヤリと笑った。

「俺たち“悪”が、救世主?冗談じゃない。だが──」

「利用できるなら、利用してやる」

 その言葉に、九つの“罪”が静かに動き始める。

 こうして、異世界《リュミエル》に悪人たちが降り立った。

 彼らの存在が、希望となるか破滅となるか──まだ、この世界は知らない。

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 第二話「血と炎の森」

 草原を離れ、悪人たちは北西に見えた森へと足を踏み入れた。

 そこはただの森ではなかった。
 瘴気が漂い、木々は黒く枯れ、遠くで不気味な咆哮が響く“呪われた森”だった。


「魔力の流れが乱れている……ここの空間、何かがおかしい」
 転移時に直接流し込まれた情報を、元にすぐに順応しこれが魔力の流れによるものだと察するトオルが木の根に触れながら言う。

「視界が悪すぎるな。陽も届かん」
 ヨウイチが警戒の声を上げ、仲間に陣形を整えさせる。

「気に入ったぜ……敵がどっから出てくるか分かんねぇこの感じ」
 レンジは獣のように笑い、ナックルを両手に嵌める。

「……ねえ、何か、聞こえない?」

 アイリが立ち止まり、木々の奥に視線を向けた。

 微かな歌声。
 誰かが、泣きながら子守唄を口ずさんでいた。

 ***

 やがて彼らが辿り着いたのは、森の中心部にある古びた祭壇。

 その上に座していたのは、少女の姿をした植物の魔物だった。

「ようこそ……救世主さま……あなたたち、“喰わせて”……?」

 その声と同時に、地面が割れた。
 根のような触手が地面から溢れ出し、空間を飲み込まんとする。

「な!?」

「化け物!!」

「なんじゃありやぁ!?」

「!」

 一同が戸惑うなか、

「落ち着け!!横に飛ぶんだ!!」

 晴明が一声かけ、九人の“罪”が同時に動く。

 そして避けた場所に根がドゴォと弾かれクレーターができる。

「あんなの貰ったらひとたまりもないぞ!」

 ボサボサの頭を描く苅谷。

 そんな中、一人は意気揚々と声を張り上げる男がいた。

「その首もらうぜェェッ!!」

 レンジが真っ先に突っ込み、根を砕いた。

 バギィ!!

「ガッハッハ!!身体が軽いぜ!!オラオラオラオラ!!!」

 勢いずいたレンジが次々と根を砕いていく。

「きゃぁ!!」

 不意に愛莉の叫び声が響く。

 きずく

 そしてそ根は愛莉の顔を覆い隠すと愛莉の手が、だらりと落ちたかと思うと豹変し始める。

「誰か……誰か、いや、いやぁぁぁぁ!!!!私を一人に!私を一人にしないでぇ!!消える!消えるぅ!!」

 個々の能力を予め情報を、つめこまれた如月がその状況を察する。

「な!?これはラブ・オブセッションの暴走か?だとすると……この魔物、“人間の記憶”を喰ってるってことか……」

 愛莉の記憶が喰われ、誰かに存在を認識してもらえなければ精神を保てぬ“欠落”が露わになった。

「能力は万能ではないのね。」
 
紫苑がその能力に目を細め興味をしめす。

「関心している場合じゃないぞ。」

 晴明が前に出る。

「考えより先に行動だ。やった事はないが発動してくれよ《アークマネジメント》【電撃】」

 晴明が地面に伝う根に電撃を流しこむ。

『ギュァァァァァア!!』魔物が雄叫びをあげ愛莉に巻きつく根が落ち動きを止めた。

 そしてその電撃で魔物の生体構造を理解する。

「なるほど。なかなか使える能力のようだ。あの女の下半身の下に核がある!そいつを狙え!」

「しゃぁ!任せろ!!」

 蓮二が考えなしに走ると同時にヨウイチも動き、蓮二の背後に迫る根を振り払った。

「ほぅ!!やるじゃねぇかオッサン!」

「ふん。生きる為の最善作だ。」

「ちっ。やはり土属性には電流は聞きにくい。多少のインターバルのみか。」

「カカカカ!俺に任せろ!芸術はここにあり!【アートマッドネス】作品名『ピアース・パレード』」

 ドガガガガガガ!!

 土が盛り上がり無数の棘が根を串刺ししていく。

 そしてその棘は仲間までも脅威を示し、蓮二の頬を棘が掠める。

「うぉい!!こらぁ!こっちにまであたってんだろが!!」

「カカカカ!人間の串刺しこそ正に芸術なのだよ!」

「ぶっ殺す!」

青筋をたてる蓮二だが「食ってやるぅ!!」という間の抜けた太郎の声で正気に戻る。

ボリッもぐもぐもく!!!グググ!

馬鹿でかい根があっという間に太郎の胃袋に流しこまれた。

「ゲフ。不味いけど食えない事はないな。」

皆驚きのあまり動きがとまり、思わず晴明が「どっちが化け物なのかわからんな。」と呟く中、一人動きを止めずに動いていた人物がいた。

 真壁は密かに魔物の背後に周り、核となる場所があるであろう幹にナイフを突き刺した。

 すると

「ギュァァァァァア!!痛いい"""!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

 魔物の女は言葉を発し、悍ましく喚きちらした。

 それは 皮膚の下を何かが這いまわるような悪寒を感じさせるものだった。

 幹には剥き出しになった赤い宝石が露わになっている。

 魔物は一気に根を湧き上がらせ、真壁に巻きつける。

「グア!」

 そして真壁は地面に叩きつけられる形に投げられた。

「グフゥ!!」

 横たわる風間。

「よくも!よくも人間の分際でぇぇ!!!」

 怒り狂う魔物の女がこちらに飛びつこうとするその時。

 晴明が動いた。

「アークマネジメント。電撃!!」

 先程よりも威力を増した稲妻が根全体に走り、また魔物を痺れさせる。

「ギュァァァァァア""""!!!!」

「今だレンジ!!」

「わかってらぁ!!俺に指図すんじゃ‥ねぇよ!!」

ドゴォ!!!!!!

 レンジの拳が核を貫いた。

パリーン

 その音と共に魔物の女の手がダラリと下におちた。

「お……終わりは、すぐそこ……あなたたちも、“喰われる”」

 そして灰のように魔物の身体はハラハラと崩れ落ちていた。

 彼らは確信した。

 この世界は、ただの異世界などではない。
 “喰うか喰われるか”の、生存をかけた戦場なのだと。

「う。」

 真壁が目を覚ます。

「状況は?」

「なんとかなったわよ。」

「‥そうか」

 続いて愛莉も意識を取り戻し、ハッと起き上がり辺りを、見渡す。

「魔物は!?」

「終わったよ」

 皆が地面に腰を下ろした。

 ***

 そして夜、その後その場にいても仕方ないので、皆で動き、ようやく森を抜けた。

 そしてその先に小さな丘があり、そこから遠くに街が見えた。

「ようやく、文明の匂いがするな」

「だが、どうだろうな。?」

 晴明がつぶやいた。

「この世界、手遅れかもしれん」

「それでも森よりかはマシよ。それに煙もあがっているし、人の気配はしそうよ。それにお腹もすいたしね。」

 紫苑がこの今の状況には似つかわしくない笑みで微笑む。

 「どっちにしろいくしかない‥か。」

彼らは歩き出す。
 
 ──次なる舞台へ。

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