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雪乃都鳥

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 俺の大好物と言えば、いちごジュース。自販機のボタンを押して、取り出す。
「あ、朝比奈さん。またいちごジュース買ったんだね」
「おっ、山崎。だってこれうまいじゃん」
「えー、ちょっと甘すぎるかなぁ僕には」
 と、山崎はこんな具合だ。クラスであまり目立たない存在だが、廊下でばったりぶつかって何故か仲良くなった。
「山崎はいつも水だもんなー」
「水が一番体によいって聞いてさ」
「あー、真似しようかな」
 沈黙。窓から日の陽光が差し伸べて、少し目を閉じた。サブバックを持って歩き出す。
 教室まで行くと、相変わらず周りはうるさい。いつの日か、それが当たり前になっていく。ただ、女子とは変わらず絡みがない。
「よー、陽」
「よー」
 隣のクラスメイトに挨拶し、椅子を引いた。



 学校の授業はとても興味深い。この世には俺の知らないことに満ち溢れている。全てが好きと言わけではないが。特に、数学はてんでダメだ。
 その授業の最中、俺は窓から雲を見上げた。大きくて、とてもふかふかしてそう。そんなことをしていても、頭の中に浮かぶのは渚の顔。
 こんなとき、胸がひしめく。思い出すのは髪の長い女。気にしないふりをしながら、ひそかに傷を抉る言葉。
 制服はスカートではない。スラックスだ。もちろん、一般常識では女はスカート。俺は、教師にも校長に了承されている。
 窓には、俺の顔が映る。短くショートに切られた髪型。男にも見えるし、女にも見える。それがまだ、救いかもしれない。
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