X

雪乃都鳥

文字の大きさ
12 / 15

早くしてくれ

しおりを挟む
 せめてゲームセンターで別れてしまえば良かった。食べ放題のみせ。目の前で立花さんは皿に取り分けている。姿勢だって、何かを刺ししているように背筋が真っ直ぐだ。
 皿もテーブルいっぱいになり、食べようとしたところで目の前にグラスが置かれた。前を見ると渚の前にも水が。
「ありがとう」
    俺は目を下に向けて目を合わせないようにして言った。口元に手を当てて立花さんはいった。
「陽乃ちゃんていつもこんな感じなんですか? 」
 渚は目を細くして、しばらく立花さんを見ていた。だが、水を少しだけ飲んだ。「こんな感じですよ」渚は水しか口にししなかった。言葉を水と共に飲み尽くすような、そのような勢いさえも感じた。
 俺は目の前のたこ焼きを、ホコリ玉のような物を飲み込むように苦しさを感じさせながら食べて飲みこんだ。
「俺、トイレ行ってくる」
「・・・おお、行ってら」
 渚を視線で見送って、目の前のオレンジジュースを吸う。グラスが音を立てたので前を見てみると、彼女の口元は笑っていた。
「朝比奈さんって、なんか、男の子っぽいよね」
 俺は反吐が出る思いで、言葉を呑み、頷いた。目は、合わせられなかった。果汁100%のオレンジジュースの減りはいつもより早かった。
「第三者である私が言うんだけど、もう少し女の子らしくした方がいいと思うよ? 」
 どこまでも優しい言い方だった。けれど、その言葉の澱には冷たい沈下物が眠っているように感じた。
 立花さんは続ける。
「渚くんも、なんかちょっと可哀想な気がして・・・」
 俺の胸に刺さった棘を、引き抜こうとされている気分だった。
 『でも、渚は。渚は、そんな俺が好きって言ってくれた』口から、出そうとしたものは、魚の骨のようにつっかえて取れなかった

「正直。 」と語彙がちょっと鋭いものになって、続く。
「侑希、くんにも迷惑だと思うの」
侑希、なぜ今その名前が挙げられるのだろうか。
「正直、侑希くんに近寄らないで欲しいの」
 支離滅裂な言葉は、理不尽という言葉を連想された。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...