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呪いの呪文
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「どうして、あいつの名前? 」
俺の手元のパンケーキは半分に切れて、半分は胃袋に入っていた。一方彼女のパスタは減っていない。彼女の両手は平然と膝の上に置かれていた。そしてその目は、依然として俺を見ていた。
「こないだ、侑希くんが私のいるクラスにきてくれたでしょう?私、とても嬉しかったの。それからちょっと早めだったけど、夕飯に誘ってくれて」
多少イライラしていた。要約すると私は立花さんと侑希の恋を邪魔しないでと言いたいのだろうふざけるのも大概にしろ、とは言わないことにした。
「今日は、ごめんなさい。急に押しかけて」
「・・・それで、なぜ立花さんは俺と渚と遊ぼうと思ったの? 」
答えは出ているんだ、明らかに邪魔をしたいという彼女の邪念は言わず言われずとも感じていた。だが、確証が欲しかった。確証がなかったらって、どうてことない。だが、それを肯定する言葉が欲しかった。
「それは・・・」
口ごもるとは思っていなかった。
「・・・まぁ、いいよ。何がしたいのかは見当がついているし」
核心をつけられたのか、華奢な肩が揺れた。見ると、彼女の瞳は震えていた
。俺は狼狽えて、胸の鼓動を耳に感じながらジュースをのみあげた。店内に流れてくるポップな邦楽に、指がテーブルを打つ。
先に言を放ったのは、彼女のほうだった。ガスコンロの青い炎のように、その瞳は冷たく揺らめいていた。
「朝比奈さんって、どうしてそんな格好してるの? 」
「・・・好きだから」
「すごい違和感あるよ? いい加減やめてみたら? 」
・・・そんな男の子みたいな格好。聞きなれた、言われ慣れた、けれど言われ慣れない、その言葉だった。
「それが本性?」
否、本性なんだろう。そうであって欲しかった。
「うーん、どうだろう。少なくとも私は、もっと女の子らしい格好と喋り方した方がいいと思うな」
未だ、パスタの量は減っていない。
「そうなんだ、まぁ俺には知ったこっちゃないかな。だって、嫌いでも何でもない奴に何を思われようがどうでもいいからさ」
俺は立ち上がり、笑った。
・・・・・・女の子は女の子らしく。その言葉が肩に重たく乗った。
俺の手元のパンケーキは半分に切れて、半分は胃袋に入っていた。一方彼女のパスタは減っていない。彼女の両手は平然と膝の上に置かれていた。そしてその目は、依然として俺を見ていた。
「こないだ、侑希くんが私のいるクラスにきてくれたでしょう?私、とても嬉しかったの。それからちょっと早めだったけど、夕飯に誘ってくれて」
多少イライラしていた。要約すると私は立花さんと侑希の恋を邪魔しないでと言いたいのだろうふざけるのも大概にしろ、とは言わないことにした。
「今日は、ごめんなさい。急に押しかけて」
「・・・それで、なぜ立花さんは俺と渚と遊ぼうと思ったの? 」
答えは出ているんだ、明らかに邪魔をしたいという彼女の邪念は言わず言われずとも感じていた。だが、確証が欲しかった。確証がなかったらって、どうてことない。だが、それを肯定する言葉が欲しかった。
「それは・・・」
口ごもるとは思っていなかった。
「・・・まぁ、いいよ。何がしたいのかは見当がついているし」
核心をつけられたのか、華奢な肩が揺れた。見ると、彼女の瞳は震えていた
。俺は狼狽えて、胸の鼓動を耳に感じながらジュースをのみあげた。店内に流れてくるポップな邦楽に、指がテーブルを打つ。
先に言を放ったのは、彼女のほうだった。ガスコンロの青い炎のように、その瞳は冷たく揺らめいていた。
「朝比奈さんって、どうしてそんな格好してるの? 」
「・・・好きだから」
「すごい違和感あるよ? いい加減やめてみたら? 」
・・・そんな男の子みたいな格好。聞きなれた、言われ慣れた、けれど言われ慣れない、その言葉だった。
「それが本性?」
否、本性なんだろう。そうであって欲しかった。
「うーん、どうだろう。少なくとも私は、もっと女の子らしい格好と喋り方した方がいいと思うな」
未だ、パスタの量は減っていない。
「そうなんだ、まぁ俺には知ったこっちゃないかな。だって、嫌いでも何でもない奴に何を思われようがどうでもいいからさ」
俺は立ち上がり、笑った。
・・・・・・女の子は女の子らしく。その言葉が肩に重たく乗った。
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