最強竜殺しの弟子

猫民のんたん

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第一章 いざ、竜狩りへ

019 勝負の行方は

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 鉄塊の進撃を無抵抗のまま全身に受け、まるで木の葉のように空を舞うザックス。

 しかし、空中で旋回しているザックスは、銃をしかと握り、ターゲットを狙っていた。

 身体は無傷。無抵抗であるがゆえに、全ての衝撃はザックスの身体を流れて発散されていた。

 中空を舞うザックスの目が盾の奥にいるネルビスの頭頂を捉える。

「くらいやがれ、魔弾の射手マジック・バレット!」

 紫色の光が銃口に溢れ、ネルビスへ向けて放たれた。

「ザックス、それ魔力つかってない!?」

「あ、やべっ!」

 マーブルが叫ぶと、ザックスはしまったと焦りを口にした。

 ネルビスが、頭上から迫る光の撃線に気付く。

 同時に、端正な顔が不快感を露わにし、紫色の玉光を睨みつけた。

 そして、紫色の鱗粉をまき散らしながら、ネルビスの頭上で光が爆ぜた。

「魔力障壁っ!?」

 ザックスが驚き、思わず目を見開く。

 ネルビスの周囲に突如として展開された、透明な障壁。翡翠竜と同じ魔力障壁を展開させたネルビスは、紫に輝く光の霧から怒りに満ちた顔を覗かせた。

「我が盾『バリアルド』に死角はない。それよりも、貴様っ!」

 ネルビスは魔力障壁を解くと、中空に舞うザックスへ大盾を勢いよく投げた。

 盾には黒く強靭なワイヤーがついており、大盾は空を切り裂きながらザックスの脇を過ぎる。

 ネルビスが巧みにワイヤーをうねらせると、大盾はその軌道を変えた。

「げっ!」

 大盾が率いるワイヤーが、空中で落下を始めたザックスに絡みつく。と、ザックスを引っ掛かりにして、大盾はくるくるとザックスの周囲を飛ぶ。次々とワイヤーがザックスへ巻き付けられていき、ザックスは身動きが取れなくなった。

裁きの鉄槌ジャジメント・フォール!」

 ネルビスはワイヤーを力強く引っ張り、ザックスを地面へと叩きつけた。

 砂埃が巻き上がり、「ぐぇ!」という悲鳴がザックスの口から洩れ出した。

「魔力の使用は禁止すると言ったはずだ。貴様、何のためのルールだと思ってるんだ?」

 漆黒のワイヤーで巻藁のようにされて大地に口づけするザックス。そこへネルビスが近づくと、ザックスの頭上から冷淡な声を投げつけた。

「いや、悪い。戦いに夢中で、ルール忘れちまって」

「このド阿呆が」

「うげっ」

 首だけを動かして口を開いたザックスを、ネルビスは躊躇なく足蹴にして転がした。

 ワイヤーに巻きつかれた状態のまま、ザックスは仰向けになった。

 ネルビスが、ザックスを縛るワイヤーの先端で重しとなっている大盾を見やる。内側に取り付けられた棒は、深緑色の輝きを湛えていた。

「まったく、無駄な魔力を使わせてくれたな。ただでさえ貴重な翡翠竜の魔力を、どうしてくれる?」

 大盾に取り付けられているのは、マーブルに提示されたものと同じ、翡翠竜の角を加工して作られた棒だった。しかしながら、色味がまるで違う。

「そういえば、貴様は翡翠竜を狩ってきたのが自慢だったな。あの竜ならば、我々でも狩れる。装備を整え、部隊を編成し、必要な物資を使ってな。あの鉄壁を誇る魔力障壁を使う魔力さえ枯らしてしまえば、奴はただ図体がでかいだけの竜にすぎん」

 しかし、と。ネルビスが忌々しそうに、ザックスを見下ろした。

「あれほど鮮やかな琥珀色をした角は、生きている翡翠竜の角くらいでしか見ることができない。我々が採れるのは、魔力を絞り取り、既に若葉色程度になった角だけだ。ところが、貴様らはどういう訳だ? あの鮮やかな琥珀色の角を採ってくることが出来る」

 ネルビスは、ザックスの腹に具足を乗せる。押さえつけるように。

「この際だから、はっきり言っておこう。貴様のような奴は目障りだ。我々の商売の邪魔をするつもりなら、この場で二度と竜狩りに行けない体にしてやる」

「ちょっと、ネルビスさん!? やめてくださいまし!」

 ネルビスが手元の剣を掲げ逆さ手に持つ。その様子からただならぬ気配を感じたマーブルが、制止の声を上げた。
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