最強竜殺しの弟子

猫民のんたん

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第一章 いざ、竜狩りへ

036 力ある者

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 ネルビスは言うと、剣を強く握りしめ、盾を構えたままワイバーンへ突進した。

 ワイバーンは自身の両翼を持ち上げると、ネルビスの突進を防ぐために大きくはためかせて風を起こす。

「ぐっ……」

 強風を受け、突進力を失ったネルビスが怯む。

「加勢しますぜ、旦那!」

「我々も続け!」

 茶髪と黒髭が、左右からワイバーンに襲い掛かった。

「ギャアアアアア」

 ワイバーンが金切り声を上げながら、尻尾を振るった。

 黒髭は盾で毒棘を防ぐも、傷持ちワイバーンの力は他よりも一段と強く、そのまま弾き飛ばされた。

 対角線から向かってきた茶髪には、深緑色の翼が振るわれた。

「ちぃっ!」

 剣を突き立て、翼に差し込む。せめてもの反撃を試みたが、翼皮を傷つけた程度では大した障害にならず、力づくで押し返される。

「ぐぁっ」

 茶髪は翼に打ちつけられ、吹き飛ばされてしまった。

 だが、茶髪と黒髭に対応していたことで強風が止んだ。

「よくやった、お前たち」

 ネルビスは隙を見逃さない。

 すかさずワイバーンとの距離を詰める。

 ワイバーンがネルビスの方を向くと、足を突き出した。

「ふんっ!」

 ネルビスは怖気づくことなく、鉄剣を突き出す。

「ガアアアアア!」

 鉄剣がワイバーンの足を貫いた。

 しかし――

「なにっ!?」

 足を貫く剣にも構わず、ワイバーンは強引に足を押し出した。

 肉を切らせた反撃にネルビスは、その足を身体で受けるほか無い。

 たまらず、ネルビスの身体は大地へと押し付けられた。

「ネルビス!」

 ザックスが叫んだ。

 辛うじて、ネルビスの身体は押しつぶされていない。

 盾が大地に突き刺さるようにしてつっかえとなり、身体が潰されることは無かった。突き立てられた剣のおかげで踏みつける力が弱まったこともある。が、身動きが取れるほど自由な隙間があるわけでもなく、剣を抜くことも出来なかった。

「ぐっ、動けぬ……」

 さしものネルビスも、押し倒された状態では竜の足を押しのけることも叶わない。

 ワイバーンが、上から自身を睥睨するのが見えた。

 まるで、二度と同じ手は食わない。そう言っているような視線だった。

「あのネルビスが、まるで歯が立たないだと……くそっ!」

 ザックスは、力を振り絞り走り出した。

「うおおぉぉぉぉ!」

 地を蹴って飛び上がり、身体を捻りワイバーンへ向けてガン・ソードを振りかざす。

 ワイバーンは黄色の双眸でザックスを見やると、翼を振るい、難なくザックスを打ち払った。

 ザックスは地を転げ、ガン・ソードを手放し突っ伏した。

「くそったれ……!」

 黒い砂利を右手で握り、顔だけを上げてワイバーンを睨みつける。

 満身創痍の身体では、満足に戦うことが出来なかった。

「ザックスさん、大丈夫ですか?」

 大男がザックスに駆け寄り、介抱する。

「くそっ……どうにかして、奴に近づければ……」

「あまり無理をしないでください。その傷では、満足に動くこともままならないでしょう」

「だからと言って、お前らの親分はどうすんだよ」

 ザックスは歯噛みしながら、赤い瞳を大男へ向けた。

「我々が何とかします。数の上では、我々が有利です」

「数だけでどうにかなってねぇだろ……そうだ!」

 ザックスは打開策を閃き、大男の腕を払い退けてよろよろと立ち上がった。

「おい、俺を奴のとこまで投げてくれねぇか?」

「何を?」

「俺が奴の眉間に、最大の一撃をぶち込んでやる。この環境でも、超至近距離ならガン・ソードの攻撃が通用するのは確認済みだ。頼むぜ」

「はぁ……」

 ザックスはガン・ソードを拾い上げると、歯を剥いて大男へ不敵な笑みを向けた。

 この状況でなお笑えるザックスに、大男は驚きの念を隠せなかった。

「……分かりました。やってみましょう」

 大男はすぐに他の仲間を呼び、ザックスの意図を説明した。

 茶髪が頷き、理解を示す。

「分かった。俺たちが時間を稼いでやる。いくぜ!」

「おう!」

 茶髪、ハゲ、黒髭、デブが傷持ちへ向けて駆けだした。

 四人は、ワイバーンを取り囲むように広がる。

「さて、ザックスさん。ちょっと失礼しますね」

 大男は、ザックスを対竜ネットでふんわりと包む。

「これから、お前さんをネットごと奴のところに放り投げてやる。うまいこと、やつの頭にとり付いてくれよ」

「ああ、任せとけ」

 ザックスは、対竜ネットにその身を預けた。

「よし、回すぞ!」

 大男とそばかすは、対竜ネットの端を手繰り寄せて持ち、二人がかりでぶん回し始めた。
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