36 / 38
第一章 いざ、竜狩りへ
036 力ある者
しおりを挟む
ネルビスは言うと、剣を強く握りしめ、盾を構えたままワイバーンへ突進した。
ワイバーンは自身の両翼を持ち上げると、ネルビスの突進を防ぐために大きくはためかせて風を起こす。
「ぐっ……」
強風を受け、突進力を失ったネルビスが怯む。
「加勢しますぜ、旦那!」
「我々も続け!」
茶髪と黒髭が、左右からワイバーンに襲い掛かった。
「ギャアアアアア」
ワイバーンが金切り声を上げながら、尻尾を振るった。
黒髭は盾で毒棘を防ぐも、傷持ちワイバーンの力は他よりも一段と強く、そのまま弾き飛ばされた。
対角線から向かってきた茶髪には、深緑色の翼が振るわれた。
「ちぃっ!」
剣を突き立て、翼に差し込む。せめてもの反撃を試みたが、翼皮を傷つけた程度では大した障害にならず、力づくで押し返される。
「ぐぁっ」
茶髪は翼に打ちつけられ、吹き飛ばされてしまった。
だが、茶髪と黒髭に対応していたことで強風が止んだ。
「よくやった、お前たち」
ネルビスは隙を見逃さない。
すかさずワイバーンとの距離を詰める。
ワイバーンがネルビスの方を向くと、足を突き出した。
「ふんっ!」
ネルビスは怖気づくことなく、鉄剣を突き出す。
「ガアアアアア!」
鉄剣がワイバーンの足を貫いた。
しかし――
「なにっ!?」
足を貫く剣にも構わず、ワイバーンは強引に足を押し出した。
肉を切らせた反撃にネルビスは、その足を身体で受けるほか無い。
たまらず、ネルビスの身体は大地へと押し付けられた。
「ネルビス!」
ザックスが叫んだ。
辛うじて、ネルビスの身体は押しつぶされていない。
盾が大地に突き刺さるようにしてつっかえとなり、身体が潰されることは無かった。突き立てられた剣のおかげで踏みつける力が弱まったこともある。が、身動きが取れるほど自由な隙間があるわけでもなく、剣を抜くことも出来なかった。
「ぐっ、動けぬ……」
さしものネルビスも、押し倒された状態では竜の足を押しのけることも叶わない。
ワイバーンが、上から自身を睥睨するのが見えた。
まるで、二度と同じ手は食わない。そう言っているような視線だった。
「あのネルビスが、まるで歯が立たないだと……くそっ!」
ザックスは、力を振り絞り走り出した。
「うおおぉぉぉぉ!」
地を蹴って飛び上がり、身体を捻りワイバーンへ向けてガン・ソードを振りかざす。
ワイバーンは黄色の双眸でザックスを見やると、翼を振るい、難なくザックスを打ち払った。
ザックスは地を転げ、ガン・ソードを手放し突っ伏した。
「くそったれ……!」
黒い砂利を右手で握り、顔だけを上げてワイバーンを睨みつける。
満身創痍の身体では、満足に戦うことが出来なかった。
「ザックスさん、大丈夫ですか?」
大男がザックスに駆け寄り、介抱する。
「くそっ……どうにかして、奴に近づければ……」
「あまり無理をしないでください。その傷では、満足に動くこともままならないでしょう」
「だからと言って、お前らの親分はどうすんだよ」
ザックスは歯噛みしながら、赤い瞳を大男へ向けた。
「我々が何とかします。数の上では、我々が有利です」
「数だけでどうにかなってねぇだろ……そうだ!」
ザックスは打開策を閃き、大男の腕を払い退けてよろよろと立ち上がった。
「おい、俺を奴のとこまで投げてくれねぇか?」
「何を?」
「俺が奴の眉間に、最大の一撃をぶち込んでやる。この環境でも、超至近距離ならガン・ソードの攻撃が通用するのは確認済みだ。頼むぜ」
「はぁ……」
ザックスはガン・ソードを拾い上げると、歯を剥いて大男へ不敵な笑みを向けた。
この状況でなお笑えるザックスに、大男は驚きの念を隠せなかった。
「……分かりました。やってみましょう」
大男はすぐに他の仲間を呼び、ザックスの意図を説明した。
茶髪が頷き、理解を示す。
「分かった。俺たちが時間を稼いでやる。いくぜ!」
「おう!」
茶髪、ハゲ、黒髭、デブが傷持ちへ向けて駆けだした。
四人は、ワイバーンを取り囲むように広がる。
「さて、ザックスさん。ちょっと失礼しますね」
大男は、ザックスを対竜ネットでふんわりと包む。
「これから、お前さんをネットごと奴のところに放り投げてやる。うまいこと、やつの頭にとり付いてくれよ」
「ああ、任せとけ」
ザックスは、対竜ネットにその身を預けた。
「よし、回すぞ!」
大男とそばかすは、対竜ネットの端を手繰り寄せて持ち、二人がかりでぶん回し始めた。
ワイバーンは自身の両翼を持ち上げると、ネルビスの突進を防ぐために大きくはためかせて風を起こす。
「ぐっ……」
強風を受け、突進力を失ったネルビスが怯む。
「加勢しますぜ、旦那!」
「我々も続け!」
茶髪と黒髭が、左右からワイバーンに襲い掛かった。
「ギャアアアアア」
ワイバーンが金切り声を上げながら、尻尾を振るった。
黒髭は盾で毒棘を防ぐも、傷持ちワイバーンの力は他よりも一段と強く、そのまま弾き飛ばされた。
対角線から向かってきた茶髪には、深緑色の翼が振るわれた。
「ちぃっ!」
剣を突き立て、翼に差し込む。せめてもの反撃を試みたが、翼皮を傷つけた程度では大した障害にならず、力づくで押し返される。
「ぐぁっ」
茶髪は翼に打ちつけられ、吹き飛ばされてしまった。
だが、茶髪と黒髭に対応していたことで強風が止んだ。
「よくやった、お前たち」
ネルビスは隙を見逃さない。
すかさずワイバーンとの距離を詰める。
ワイバーンがネルビスの方を向くと、足を突き出した。
「ふんっ!」
ネルビスは怖気づくことなく、鉄剣を突き出す。
「ガアアアアア!」
鉄剣がワイバーンの足を貫いた。
しかし――
「なにっ!?」
足を貫く剣にも構わず、ワイバーンは強引に足を押し出した。
肉を切らせた反撃にネルビスは、その足を身体で受けるほか無い。
たまらず、ネルビスの身体は大地へと押し付けられた。
「ネルビス!」
ザックスが叫んだ。
辛うじて、ネルビスの身体は押しつぶされていない。
盾が大地に突き刺さるようにしてつっかえとなり、身体が潰されることは無かった。突き立てられた剣のおかげで踏みつける力が弱まったこともある。が、身動きが取れるほど自由な隙間があるわけでもなく、剣を抜くことも出来なかった。
「ぐっ、動けぬ……」
さしものネルビスも、押し倒された状態では竜の足を押しのけることも叶わない。
ワイバーンが、上から自身を睥睨するのが見えた。
まるで、二度と同じ手は食わない。そう言っているような視線だった。
「あのネルビスが、まるで歯が立たないだと……くそっ!」
ザックスは、力を振り絞り走り出した。
「うおおぉぉぉぉ!」
地を蹴って飛び上がり、身体を捻りワイバーンへ向けてガン・ソードを振りかざす。
ワイバーンは黄色の双眸でザックスを見やると、翼を振るい、難なくザックスを打ち払った。
ザックスは地を転げ、ガン・ソードを手放し突っ伏した。
「くそったれ……!」
黒い砂利を右手で握り、顔だけを上げてワイバーンを睨みつける。
満身創痍の身体では、満足に戦うことが出来なかった。
「ザックスさん、大丈夫ですか?」
大男がザックスに駆け寄り、介抱する。
「くそっ……どうにかして、奴に近づければ……」
「あまり無理をしないでください。その傷では、満足に動くこともままならないでしょう」
「だからと言って、お前らの親分はどうすんだよ」
ザックスは歯噛みしながら、赤い瞳を大男へ向けた。
「我々が何とかします。数の上では、我々が有利です」
「数だけでどうにかなってねぇだろ……そうだ!」
ザックスは打開策を閃き、大男の腕を払い退けてよろよろと立ち上がった。
「おい、俺を奴のとこまで投げてくれねぇか?」
「何を?」
「俺が奴の眉間に、最大の一撃をぶち込んでやる。この環境でも、超至近距離ならガン・ソードの攻撃が通用するのは確認済みだ。頼むぜ」
「はぁ……」
ザックスはガン・ソードを拾い上げると、歯を剥いて大男へ不敵な笑みを向けた。
この状況でなお笑えるザックスに、大男は驚きの念を隠せなかった。
「……分かりました。やってみましょう」
大男はすぐに他の仲間を呼び、ザックスの意図を説明した。
茶髪が頷き、理解を示す。
「分かった。俺たちが時間を稼いでやる。いくぜ!」
「おう!」
茶髪、ハゲ、黒髭、デブが傷持ちへ向けて駆けだした。
四人は、ワイバーンを取り囲むように広がる。
「さて、ザックスさん。ちょっと失礼しますね」
大男は、ザックスを対竜ネットでふんわりと包む。
「これから、お前さんをネットごと奴のところに放り投げてやる。うまいこと、やつの頭にとり付いてくれよ」
「ああ、任せとけ」
ザックスは、対竜ネットにその身を預けた。
「よし、回すぞ!」
大男とそばかすは、対竜ネットの端を手繰り寄せて持ち、二人がかりでぶん回し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる