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第七章 かけがえのないもの
73話 すれ違う影
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事実は呆気なく、かつ皮肉だった。
警備兵から聞いた話を頼りにガロンの行方を追うと、僕達は結果的にレジスタンスの本部へと戻ることとなっていたのだ。
そこで対峙した者同士、ばちりと目が合った途端に腰の武器に手を伸ばす。殺意同士は素早く交わり、そこに戦闘の気配が迸った。
「待て!」
レジスタンスの本部の目前で武器を抜きかけた僕達に向かって、強く怒鳴るようにして制止の声がかかる。
その声に応じるようにして、周辺にいた他の兵士達が僕達の間に割り込んでその果たし合いを止めにかかってきた。制止の怒鳴り声を上げたのはモルズだった。
僕は周りの兵士に強く押さえ込まれるようにして、すぐに武器から手を離して身を引いた。しかし難儀なのはパウルの方だ。周りの兵士に掴みかかられてもなお、その魔剣を抜こうとして踏ん張っている様子が見える。
その目は深く憎悪に満ち、同じように押さえられているガロンのことを刺すように睨んでいる。
「待てと言っている! ここで味方同士で殺し合いをするなんて私が許さん。魔術師!」
モルズにそう再度怒鳴られ、パウルは苦々しい顔で舌打ちをしたようだ。
「誰が味方だ、このクソ野郎! なんでお前がここにいる!」
そう喚くように言うが、対するガロンは皮肉っぽく、笑いさえ浮かべていた。
「はっ、忘れたのかよ、パーティルじゃ一緒に戦った仲だろうが。俺もズミのレジスタンスだぜ? こうしてモルズ殿と再会を果たせたんだ、元の鞘に収まるのが道理ってもんだろ」
「盗賊風情がどの口でほざく!」
そう大声を張り上げる二人を中心に、騒ぎを聞きつけた他の兵士らも次第に集まってきた。モルズはそれをかき分けるようにして両者の間に割り込んだ。
「ああ分かった、お前達の間にただならないことがあったことは察する。だが今はとにかく一度武器を収めろ。魔術師も、ガロンもレジスタンスの仲間として私が責任を持って受け入れた者だ、勝手に揉め事を起こすことは許さん。何か利害のぶつかることがあったのならこの場で話し合って解決しろ。納得がいかないのなら私が補償をしても構わん」
そうまで言われて、ようやくパウルは体に入れた力を緩めただろうか。しかしその顔は変わらず深い怒りのままでガロンを睨んでいた。
「話し合えだあ……? それじゃあ今すぐこの場で俺に謝れ。地面に頭を擦り付けて謝れ」
そんなことを言ったパウルにガロンもまだ険悪だ。
「ああ? 何言ってんだ、そもそも俺はお前から何も盗ってねえだろ、なのに盗賊呼ばわりとは失礼なもんだ」
「実際盗賊だろうが! 今までどれだけの人間の命を弄んできた……その自覚もないのか!?」
「だからお前からは盗ってねえだろ。何をそんなにお前さんが怒るんだって話だよ」
「ふざけんな、ヨンのことを殺そうとしただろうが! 謝ったぐらいで許してやる気にもならねえがな、謝れよ!」
「んなこと言えばお前らだって俺のウィルを殺そうとしただろうが! お前らのせいであいつはめちゃくちゃになったんだぞ、そっちこそ謝れ!」
当然その言い合いは穏やかに終わりそうもない。モルズは次第に苛立ったような呆れたような表情になった。
「両者とも一度黙れ! 私の質問にだけ答えろ。……ガロンお前、盗賊だというのは本当か」
ガロンはモルズに言われ、つまらなさそうに舌打ちをした。
「けっ、まあ正直に言えばそういうこともしてきたさ。だが仕方がないだろう? 戦争ばっかで荒れた世の中、まっとうな稼ぎじゃ食っていけない奴なんていくらでもいるんだ。この軍だってそういう寄せ集めの奴がいるだろう、過去の経歴を洗えば手が綺麗な奴の方が少ないんじゃないのか? モルズ、あんただって分かっているはずだ」
モルズはフンと鼻息を吐いて、次にパウルに視線を向けた。
「それで魔術師、お前はこのガロンに何か盗られたのか」
パウルも苦々しい顔を浮かべる。
「俺様がこんな下賤な盗賊風情にまんまと盗られたりするもんか。だがこいつはよりによって魔道人形を使って盗賊行為を働いてやがった。魔道人形は人間の子どもの命を犠牲にして作る兵器だ、そんな所業を……まっとうな人間なら許せるわけないだろ」
その答えを聞いてモルズはふむ、と言って頷いた。彼はもう一度ガロンの方を振り向く。
「それは本当か? ガロン」
「ああ、その通りだ。というか俺が使っていた魔道人形はモルズ、あんたもパーティルで見ただろ。そういう魔術師、こいつだって人形を使って戦ってたんだぜ。自分はいいのに人がやるのは許せないのか? そんな都合の良い正義感で勝手に怒って“まっとうな人間”とは笑わせるぜ」
そんな言葉でパウルを煽るガロンを、モルズはびしりと睨みつけた。
「両者とも! 私の質問だけに答えろと言ったはずだ。それで魔術師、それからヨン。ガロンがヨンを殺そうとした、という話をしていたな。本当か?」
その質問は僕にも飛んできた。僕はむすっと顔をしかめたまま、言葉は言わずに頷いた。
「ああそうだ。こいつ、よりによって俺のヨンを魔道人形に改造しようとしやがった」
そんなことを言ったパウルに、誰がお前のヨンだ、なんて口を挟みたくもなったが、今は黙っておく。モルズはガロンを振り向いた。
「ガロン、それは本当か」
「嘘か本当かで言えば本当さ。先に喧嘩ふっかけてきたのはそっちだがな」
ガロンがそう答えたのに対して、パウルは眉を寄せて怒鳴った。
「嘘つけ、喧嘩しかけてきたのはお前からだろ!」
「黙れったら!」
モルズがまた怒鳴る。
「ガロンはヨンを殺そうとした。だがまあ、そこにいるんだ、そうはならずに済んだわけだな? それでガロン、お前がさっき言ったウィルというのはお前の部下か? 魔術師に何かされたのか」
「俺の息子も同然に可愛がってる魔道人形だ。こいつらに喧嘩をふっかけられたせいではぐれちまった。再会するためにこの町へ来たんだがまだ消息が掴めてねえ」
そう語ったのは本当だろうか。まだガロンはウィルと合流できていない……。
モルズはふむ、と言って頷いた。
「お前達はどうやらその魔道人形というものを巡って対立したわけか。ヨンの命をやりとりするようなことはあったが、実際両者の間で金品や命が奪われてはいない。そういう認識で合っているな。であれば補償するべきものは無い」
そう纏めたモルズに、パウルは呆れたような顔を向けた。
「実際とられてなきゃいいってもんか?」
「当然そうはいかんだろう。魔術師、お前にとってヨンがどれほど大事な部下なのかは俺も分かっているつもりだ。だがガロンの部下にも相当するウィルという者に攻撃をしかけているなら、やっていることはお互い様だ。互いに許し水に流せ、とは言わん。だがともかく私の軍で作戦に当たる間に果たし合いをすることは許さん。やるなら戦争が終わったあとに各自の責任でやれ」
モルズが淡々と言った言葉は、僕の頭にもうまく入ってこない。……やっていることがお互い様だって? 冗談じゃない。
だけど言い返す言葉はすぐには出てこない。周囲の兵士達の眼差しも重く、この場で暴れ続けたって栓のないことは明白だった。
「それからガロンも……、お前の言う通り汚れた経歴を持っている者もこの軍には多い。だが皆今はズミのために真っ当に戦っている。お前も倣って、今後の盗賊行為は許さん。いいな?」
モルズはびしとした声でパウルとガロンの両者に言いつけた。
……当然納得がいくわけもない。殺されかけた当人の意見は無視なのか、なんて気持ちは湧いてきたが、僕が口を開かないせいだろう。
パウルもガロンも黙っていたが、やはり険悪な顔で睨み合っている。いくらモルズが言ったとて、このパウルが怒りを収めるとは考えづらい。
しかしこれから大きな戦いに挑まんとするモルズにとって、一人でも戦力が欲しいのも、その味方同士で揉め事を起されてはたまらないという事情も痛いほどに分かる。ガロンはどうか分からないが、パウルもモルズのその立場は理解しているだろう。
彼が表向きだけでもガロンとの対立をやめるというのであれば、僕もあえて怒りを出すことはしないが……。しかし果たして、そんないびつな不戦協定が成り立つのか……。
黙ったまま、特に抗議を上げない二人を前に、一応その協定は成ったという雰囲気らしい。周囲に集まっていた兵士らも次第にそれぞれの持ち場へ戻っていくようだ。
パウルはやがて大きなため息をついて頭を押さえた。
「ちっ……。それじゃあガロンさんよ、せっかく殴り合いの禁令が出たんだ、この際たっぷりと情報共有をしようじゃないか? 少し付き合えよ」
そんな誘いを出したパウルに、ガロンは不機嫌そうに顔をしかめた。それはモルズも一緒だった。
「いや呼び出して暗殺なんてしねえよ。……ったく信用ねえな。じゃあここでいい。座れよ、おら」
そう言ってパウルは、建物の脇に無造作に積んであるだけの木箱の上に乱暴に腰掛けた。周辺には備品の確認や訓練に励む兵士の姿は多い、騒ぎを起こせばすぐに押さえられるだろう。
それを見て仕方が無さそうに、ガロンも適当な段差の上にどかと腰を下ろした。僕はガロンを視界に入れるのもなんとなく嫌で、パウルの隣に、彼に背を向けるようにして座り込んだ。
彼らの顔は視界に入らず、背中から声だけが聞こえてくる。
「ウィルと合流ができてねえってのは本当か」
パウルがそう切り出した。ガロンの声は渋そうだ。
「ああ、そうだ。まったくお前らのせいで俺達はめちゃくちゃだ、本当にどうしてくれる」
「そりゃお前がヨンを攫って殺そうとするからだろ。……何がやってることはお互い様だ、生きた人間であるヨンとあの気色の悪い人形を一緒にするんじゃねえ」
「気色が悪いとはお言葉だな。確かにあいつは人形だろうが、見た目は人間と変わらねえ。飲み食いはしねえが……体温だってあるし言葉を理解もする。何が違うっていうんだ?」
二人の男はまだ険悪そうな、苦々しくも暗い声でそう淡々と言葉を交わしていた。
「知らねえとは言わせねえ、あれは人間の死体を材料に作り出されている道具だ、同じなわけないだろ。元々の肉体の持ち主の人格を何だと思ってる」
「俺からすりゃ知ったことじゃないな。ウィルは出会った時からウィルだ、その前の人格なんて知らねえよ」
「……教えろよガロン、あの人形をどこでどうやって拾った?」
二人の声色はまだ変わらない。
「ラズミルの近くで……泥だらけで一人でうろついてる子どもがいたから拾っただけさ。あの時は俺だって今日明日食うものにも困ってる浮浪者だった。トレンティアとの混血なんて珍しいだろう、捕まえて売ればちょっとは金になると思ったんだがな、拾ってみりゃあ人間じゃねえ、そりゃ最初はたまげたもんだ」
「その力を利用して盗賊をやればいいと閃いたわけだ。……前も言ったがガロン、魔道人形ってのは本当なら、封じられた禁術の産物だ。そんな軽率に手を出しちゃあ火傷するのはお前だぜ」
「それは余計なお世話って奴だな。俺は盗賊だぜ、既にこれ以上堕ちるとこなんかねえんだ、火傷なんか気にしたって屁にもならねえ」
「そりゃ豪胆で結構なことだが、お前だってむざむざ死にたくはないだろ。……悪いことは言わん、あの人形からは手を引け。お前のことを父親だなんて思い込んでいるようだ、その幻想さえ断ち切ってやればお前もあいつも無傷で別れられるだろう。お前も死ななくて済む」
「偉そうに俺に指図するなよ。拾った当初からあいつはずっとお父さんお父さんつって誰かを探していたぜ。かわいそうなもんじゃないか。嘘でも父親がいてやったほうがいいと思わないか? そんなに言うなら俺が父親になってやると言った時のウィルの嬉しそうな顔ったら……お父さんお父さんって慕ってついてくるんだぜ、可愛いもんだ」
ガロンのその言葉を聞いて、胸に嫌な痛みが走るのを感じた。……なぜかは分からない。だけど何かとてつもなく、嫌な痛みだ。
パウルは何を思っているのだろうか、そこで沈黙したようだ。やがてガロンの、ふっと笑ったような息の音が聞こえた。
「……なあ魔術師、くだらねえことを聞くがお前、家族はいるのか」
そんなことを切り出したガロンに、パウルからは訝しげな声が上がった。
「は? 何の話だよ」
「いや、トレンティア人でありながらズミで傭兵稼業なんてやってるろくでなしだ、そんなもんはないかね。俺は戦争が始まる前は……貧乏だったが真っ当な職人だった。貧乏人同士で嫁さんもらって、ガキもころころ産まれた。お前にゃ分からねえだろう、飯を食うばっかりで働きもしねえ、一日中泣いて騒いでうるさいったらありゃしねえクソガキどもがな、自分の子だと思えばなぜかそれだけで可愛らしくてな……」
その声色は昔を懐かしむようなものだった。……思わず耳を塞ぎたくもなる。
多くの子どもの命を奪い、盗賊行為をはたらいて顧みない下衆が、真っ当な人間のように家族のことなど語らないでほしい。
「まあ全員戦争で死んだがな。お前らトレンティア人が起こした戦争でだ。妻も子どもも皆殺しにされて、食うや食わぬやで野盗に成り下がった男の前に、ウィルは現れたんだ。お父さんお父さんって俺のことを慕ってな。……なあ、何が違うっていうんだ? お前はそれすらも俺から奪おうってのか?」
ガロンの声は切なげに掠れていった。パウルの声は変わらない……淡々としていて、暗かった。
「お前の家族を殺したことは……トレンティア人の一人として詫びてやる。俺だって祖国に……ズミへの侵略戦争なんてしてほしくなかった。だが止められなかった……。俺が止められなかったせいだ。悪かったよ」
そんな言葉を言ったのを聞いて、思わず僕は振り向いていた。しかしフードを被って俯きがちにしている彼の表情は分からない。
……戦争を止められなかった。彼がかつてトレンティアの王太子であったことを知っているなら、その言葉は一層重く感じられる。
「だがガロン、これだけは理解しろ。ウィルは人形だ、死んだお前の子どもの生まれ変わりでもないし、その代替物でもない。ウィルにとってもそうだ、お前は本当の父親じゃないしその代替物にもならない。一個の人間の代わりなんて何者にも務まらない。人間であろうと、人形であろうとな」
その声は重々しく、真剣そのものだった。こんな悪党相手に真面目に説教したって仕方がないだろうに、なんて僕は思う。
当然その言葉がガロンに響くこともないだろうか、ガロンはむしろ逆上したような様子だった。
「偉そうに指図するなっつってんだろ。ったく、お前と話してても馬鹿馬鹿しい、俺はもう行くぜ」
ガロンは苛立ったように言って立ち上がったようだ。パウルは少しだけ顔を上げた。
「ウィルの父親だという名乗りを撤回しろ」
なおも真剣な声で言ったパウルに、ガロンはかっと怒りの表情を露わにした。
「うるせえ! 死んでもしてやるか! ウィルは俺の息子だ!」
パウルは、ウィルとガロンの繋がりさえ絶てるのなら……という展開を交渉で持ちかけようとしたのだろうか。しかしそれに簡単に応じてくれる相手でもない。
ガロンはいい加減に苛立ったらしく、それ以上話を聞く素振りもなく荒っぽい足取りで歩き始める。パウルは木箱に座ったまま、それを追おうとはしなかった。
しかしそこで散る二人を、まるで引き止めるように――突然僕達を衝撃が襲う。それはパウルとガロンだけじゃない、その場にいた……いやきっとその町にいる全員を。
ズシンと、大きな地響きのような音とともに、僅かに地面が揺れた気さえした。視界に入っていた全員が驚いて顔を上げ、音のした方角を探した。
それは遠い場所ながらに、視線を高くしてぐるりと回すとひと目で見つけられた。何か遠くで砂煙が上がっている。
「何だ、敵襲か?」
誰ともなしに呟いた声によって緊張が一挙に伝播する。すぐに兵士らは各々の武器を持って任務の体勢に入り始めた。それは当然、僕もパウルも。
……何か嫌な予感がした。その方角と距離から見て……近い。僕達の家に。
始めからガロンとの戦闘を想定して僕達は武装していた。パウルと共にその場から真っ直ぐ現場へ向かって駆け出す。
その道を進めば進むほどに嫌な予感は増していく。どんどんと家に近付いていくものだから。
そして偶然近くにいたのだろうか、現場の方角から駆けてくる様子の兵士が一人、血相抱えた顔で僕達を見た。
「ヨンか!? あれ、お前の家だろ。アルド先生の病院の壁が吹っ飛んだ」
慌てている様子の彼の言葉は突飛もなかった。途端に息が詰まるような心地さえする。
壁が吹っ飛んだ? 何のことか分からない。ただその被害が、よりによって僕達の家で起こったことだけは分かった。
なぜ、誰が? 考えるのは全て後だ、あそこには父と……ジュリがいるはずなのだ。どうか無事であってくれと、全力で足を動かしながら、その現場を見るまではただ祈ることしかできない。
警備兵から聞いた話を頼りにガロンの行方を追うと、僕達は結果的にレジスタンスの本部へと戻ることとなっていたのだ。
そこで対峙した者同士、ばちりと目が合った途端に腰の武器に手を伸ばす。殺意同士は素早く交わり、そこに戦闘の気配が迸った。
「待て!」
レジスタンスの本部の目前で武器を抜きかけた僕達に向かって、強く怒鳴るようにして制止の声がかかる。
その声に応じるようにして、周辺にいた他の兵士達が僕達の間に割り込んでその果たし合いを止めにかかってきた。制止の怒鳴り声を上げたのはモルズだった。
僕は周りの兵士に強く押さえ込まれるようにして、すぐに武器から手を離して身を引いた。しかし難儀なのはパウルの方だ。周りの兵士に掴みかかられてもなお、その魔剣を抜こうとして踏ん張っている様子が見える。
その目は深く憎悪に満ち、同じように押さえられているガロンのことを刺すように睨んでいる。
「待てと言っている! ここで味方同士で殺し合いをするなんて私が許さん。魔術師!」
モルズにそう再度怒鳴られ、パウルは苦々しい顔で舌打ちをしたようだ。
「誰が味方だ、このクソ野郎! なんでお前がここにいる!」
そう喚くように言うが、対するガロンは皮肉っぽく、笑いさえ浮かべていた。
「はっ、忘れたのかよ、パーティルじゃ一緒に戦った仲だろうが。俺もズミのレジスタンスだぜ? こうしてモルズ殿と再会を果たせたんだ、元の鞘に収まるのが道理ってもんだろ」
「盗賊風情がどの口でほざく!」
そう大声を張り上げる二人を中心に、騒ぎを聞きつけた他の兵士らも次第に集まってきた。モルズはそれをかき分けるようにして両者の間に割り込んだ。
「ああ分かった、お前達の間にただならないことがあったことは察する。だが今はとにかく一度武器を収めろ。魔術師も、ガロンもレジスタンスの仲間として私が責任を持って受け入れた者だ、勝手に揉め事を起こすことは許さん。何か利害のぶつかることがあったのならこの場で話し合って解決しろ。納得がいかないのなら私が補償をしても構わん」
そうまで言われて、ようやくパウルは体に入れた力を緩めただろうか。しかしその顔は変わらず深い怒りのままでガロンを睨んでいた。
「話し合えだあ……? それじゃあ今すぐこの場で俺に謝れ。地面に頭を擦り付けて謝れ」
そんなことを言ったパウルにガロンもまだ険悪だ。
「ああ? 何言ってんだ、そもそも俺はお前から何も盗ってねえだろ、なのに盗賊呼ばわりとは失礼なもんだ」
「実際盗賊だろうが! 今までどれだけの人間の命を弄んできた……その自覚もないのか!?」
「だからお前からは盗ってねえだろ。何をそんなにお前さんが怒るんだって話だよ」
「ふざけんな、ヨンのことを殺そうとしただろうが! 謝ったぐらいで許してやる気にもならねえがな、謝れよ!」
「んなこと言えばお前らだって俺のウィルを殺そうとしただろうが! お前らのせいであいつはめちゃくちゃになったんだぞ、そっちこそ謝れ!」
当然その言い合いは穏やかに終わりそうもない。モルズは次第に苛立ったような呆れたような表情になった。
「両者とも一度黙れ! 私の質問にだけ答えろ。……ガロンお前、盗賊だというのは本当か」
ガロンはモルズに言われ、つまらなさそうに舌打ちをした。
「けっ、まあ正直に言えばそういうこともしてきたさ。だが仕方がないだろう? 戦争ばっかで荒れた世の中、まっとうな稼ぎじゃ食っていけない奴なんていくらでもいるんだ。この軍だってそういう寄せ集めの奴がいるだろう、過去の経歴を洗えば手が綺麗な奴の方が少ないんじゃないのか? モルズ、あんただって分かっているはずだ」
モルズはフンと鼻息を吐いて、次にパウルに視線を向けた。
「それで魔術師、お前はこのガロンに何か盗られたのか」
パウルも苦々しい顔を浮かべる。
「俺様がこんな下賤な盗賊風情にまんまと盗られたりするもんか。だがこいつはよりによって魔道人形を使って盗賊行為を働いてやがった。魔道人形は人間の子どもの命を犠牲にして作る兵器だ、そんな所業を……まっとうな人間なら許せるわけないだろ」
その答えを聞いてモルズはふむ、と言って頷いた。彼はもう一度ガロンの方を振り向く。
「それは本当か? ガロン」
「ああ、その通りだ。というか俺が使っていた魔道人形はモルズ、あんたもパーティルで見ただろ。そういう魔術師、こいつだって人形を使って戦ってたんだぜ。自分はいいのに人がやるのは許せないのか? そんな都合の良い正義感で勝手に怒って“まっとうな人間”とは笑わせるぜ」
そんな言葉でパウルを煽るガロンを、モルズはびしりと睨みつけた。
「両者とも! 私の質問だけに答えろと言ったはずだ。それで魔術師、それからヨン。ガロンがヨンを殺そうとした、という話をしていたな。本当か?」
その質問は僕にも飛んできた。僕はむすっと顔をしかめたまま、言葉は言わずに頷いた。
「ああそうだ。こいつ、よりによって俺のヨンを魔道人形に改造しようとしやがった」
そんなことを言ったパウルに、誰がお前のヨンだ、なんて口を挟みたくもなったが、今は黙っておく。モルズはガロンを振り向いた。
「ガロン、それは本当か」
「嘘か本当かで言えば本当さ。先に喧嘩ふっかけてきたのはそっちだがな」
ガロンがそう答えたのに対して、パウルは眉を寄せて怒鳴った。
「嘘つけ、喧嘩しかけてきたのはお前からだろ!」
「黙れったら!」
モルズがまた怒鳴る。
「ガロンはヨンを殺そうとした。だがまあ、そこにいるんだ、そうはならずに済んだわけだな? それでガロン、お前がさっき言ったウィルというのはお前の部下か? 魔術師に何かされたのか」
「俺の息子も同然に可愛がってる魔道人形だ。こいつらに喧嘩をふっかけられたせいではぐれちまった。再会するためにこの町へ来たんだがまだ消息が掴めてねえ」
そう語ったのは本当だろうか。まだガロンはウィルと合流できていない……。
モルズはふむ、と言って頷いた。
「お前達はどうやらその魔道人形というものを巡って対立したわけか。ヨンの命をやりとりするようなことはあったが、実際両者の間で金品や命が奪われてはいない。そういう認識で合っているな。であれば補償するべきものは無い」
そう纏めたモルズに、パウルは呆れたような顔を向けた。
「実際とられてなきゃいいってもんか?」
「当然そうはいかんだろう。魔術師、お前にとってヨンがどれほど大事な部下なのかは俺も分かっているつもりだ。だがガロンの部下にも相当するウィルという者に攻撃をしかけているなら、やっていることはお互い様だ。互いに許し水に流せ、とは言わん。だがともかく私の軍で作戦に当たる間に果たし合いをすることは許さん。やるなら戦争が終わったあとに各自の責任でやれ」
モルズが淡々と言った言葉は、僕の頭にもうまく入ってこない。……やっていることがお互い様だって? 冗談じゃない。
だけど言い返す言葉はすぐには出てこない。周囲の兵士達の眼差しも重く、この場で暴れ続けたって栓のないことは明白だった。
「それからガロンも……、お前の言う通り汚れた経歴を持っている者もこの軍には多い。だが皆今はズミのために真っ当に戦っている。お前も倣って、今後の盗賊行為は許さん。いいな?」
モルズはびしとした声でパウルとガロンの両者に言いつけた。
……当然納得がいくわけもない。殺されかけた当人の意見は無視なのか、なんて気持ちは湧いてきたが、僕が口を開かないせいだろう。
パウルもガロンも黙っていたが、やはり険悪な顔で睨み合っている。いくらモルズが言ったとて、このパウルが怒りを収めるとは考えづらい。
しかしこれから大きな戦いに挑まんとするモルズにとって、一人でも戦力が欲しいのも、その味方同士で揉め事を起されてはたまらないという事情も痛いほどに分かる。ガロンはどうか分からないが、パウルもモルズのその立場は理解しているだろう。
彼が表向きだけでもガロンとの対立をやめるというのであれば、僕もあえて怒りを出すことはしないが……。しかし果たして、そんないびつな不戦協定が成り立つのか……。
黙ったまま、特に抗議を上げない二人を前に、一応その協定は成ったという雰囲気らしい。周囲に集まっていた兵士らも次第にそれぞれの持ち場へ戻っていくようだ。
パウルはやがて大きなため息をついて頭を押さえた。
「ちっ……。それじゃあガロンさんよ、せっかく殴り合いの禁令が出たんだ、この際たっぷりと情報共有をしようじゃないか? 少し付き合えよ」
そんな誘いを出したパウルに、ガロンは不機嫌そうに顔をしかめた。それはモルズも一緒だった。
「いや呼び出して暗殺なんてしねえよ。……ったく信用ねえな。じゃあここでいい。座れよ、おら」
そう言ってパウルは、建物の脇に無造作に積んであるだけの木箱の上に乱暴に腰掛けた。周辺には備品の確認や訓練に励む兵士の姿は多い、騒ぎを起こせばすぐに押さえられるだろう。
それを見て仕方が無さそうに、ガロンも適当な段差の上にどかと腰を下ろした。僕はガロンを視界に入れるのもなんとなく嫌で、パウルの隣に、彼に背を向けるようにして座り込んだ。
彼らの顔は視界に入らず、背中から声だけが聞こえてくる。
「ウィルと合流ができてねえってのは本当か」
パウルがそう切り出した。ガロンの声は渋そうだ。
「ああ、そうだ。まったくお前らのせいで俺達はめちゃくちゃだ、本当にどうしてくれる」
「そりゃお前がヨンを攫って殺そうとするからだろ。……何がやってることはお互い様だ、生きた人間であるヨンとあの気色の悪い人形を一緒にするんじゃねえ」
「気色が悪いとはお言葉だな。確かにあいつは人形だろうが、見た目は人間と変わらねえ。飲み食いはしねえが……体温だってあるし言葉を理解もする。何が違うっていうんだ?」
二人の男はまだ険悪そうな、苦々しくも暗い声でそう淡々と言葉を交わしていた。
「知らねえとは言わせねえ、あれは人間の死体を材料に作り出されている道具だ、同じなわけないだろ。元々の肉体の持ち主の人格を何だと思ってる」
「俺からすりゃ知ったことじゃないな。ウィルは出会った時からウィルだ、その前の人格なんて知らねえよ」
「……教えろよガロン、あの人形をどこでどうやって拾った?」
二人の声色はまだ変わらない。
「ラズミルの近くで……泥だらけで一人でうろついてる子どもがいたから拾っただけさ。あの時は俺だって今日明日食うものにも困ってる浮浪者だった。トレンティアとの混血なんて珍しいだろう、捕まえて売ればちょっとは金になると思ったんだがな、拾ってみりゃあ人間じゃねえ、そりゃ最初はたまげたもんだ」
「その力を利用して盗賊をやればいいと閃いたわけだ。……前も言ったがガロン、魔道人形ってのは本当なら、封じられた禁術の産物だ。そんな軽率に手を出しちゃあ火傷するのはお前だぜ」
「それは余計なお世話って奴だな。俺は盗賊だぜ、既にこれ以上堕ちるとこなんかねえんだ、火傷なんか気にしたって屁にもならねえ」
「そりゃ豪胆で結構なことだが、お前だってむざむざ死にたくはないだろ。……悪いことは言わん、あの人形からは手を引け。お前のことを父親だなんて思い込んでいるようだ、その幻想さえ断ち切ってやればお前もあいつも無傷で別れられるだろう。お前も死ななくて済む」
「偉そうに俺に指図するなよ。拾った当初からあいつはずっとお父さんお父さんつって誰かを探していたぜ。かわいそうなもんじゃないか。嘘でも父親がいてやったほうがいいと思わないか? そんなに言うなら俺が父親になってやると言った時のウィルの嬉しそうな顔ったら……お父さんお父さんって慕ってついてくるんだぜ、可愛いもんだ」
ガロンのその言葉を聞いて、胸に嫌な痛みが走るのを感じた。……なぜかは分からない。だけど何かとてつもなく、嫌な痛みだ。
パウルは何を思っているのだろうか、そこで沈黙したようだ。やがてガロンの、ふっと笑ったような息の音が聞こえた。
「……なあ魔術師、くだらねえことを聞くがお前、家族はいるのか」
そんなことを切り出したガロンに、パウルからは訝しげな声が上がった。
「は? 何の話だよ」
「いや、トレンティア人でありながらズミで傭兵稼業なんてやってるろくでなしだ、そんなもんはないかね。俺は戦争が始まる前は……貧乏だったが真っ当な職人だった。貧乏人同士で嫁さんもらって、ガキもころころ産まれた。お前にゃ分からねえだろう、飯を食うばっかりで働きもしねえ、一日中泣いて騒いでうるさいったらありゃしねえクソガキどもがな、自分の子だと思えばなぜかそれだけで可愛らしくてな……」
その声色は昔を懐かしむようなものだった。……思わず耳を塞ぎたくもなる。
多くの子どもの命を奪い、盗賊行為をはたらいて顧みない下衆が、真っ当な人間のように家族のことなど語らないでほしい。
「まあ全員戦争で死んだがな。お前らトレンティア人が起こした戦争でだ。妻も子どもも皆殺しにされて、食うや食わぬやで野盗に成り下がった男の前に、ウィルは現れたんだ。お父さんお父さんって俺のことを慕ってな。……なあ、何が違うっていうんだ? お前はそれすらも俺から奪おうってのか?」
ガロンの声は切なげに掠れていった。パウルの声は変わらない……淡々としていて、暗かった。
「お前の家族を殺したことは……トレンティア人の一人として詫びてやる。俺だって祖国に……ズミへの侵略戦争なんてしてほしくなかった。だが止められなかった……。俺が止められなかったせいだ。悪かったよ」
そんな言葉を言ったのを聞いて、思わず僕は振り向いていた。しかしフードを被って俯きがちにしている彼の表情は分からない。
……戦争を止められなかった。彼がかつてトレンティアの王太子であったことを知っているなら、その言葉は一層重く感じられる。
「だがガロン、これだけは理解しろ。ウィルは人形だ、死んだお前の子どもの生まれ変わりでもないし、その代替物でもない。ウィルにとってもそうだ、お前は本当の父親じゃないしその代替物にもならない。一個の人間の代わりなんて何者にも務まらない。人間であろうと、人形であろうとな」
その声は重々しく、真剣そのものだった。こんな悪党相手に真面目に説教したって仕方がないだろうに、なんて僕は思う。
当然その言葉がガロンに響くこともないだろうか、ガロンはむしろ逆上したような様子だった。
「偉そうに指図するなっつってんだろ。ったく、お前と話してても馬鹿馬鹿しい、俺はもう行くぜ」
ガロンは苛立ったように言って立ち上がったようだ。パウルは少しだけ顔を上げた。
「ウィルの父親だという名乗りを撤回しろ」
なおも真剣な声で言ったパウルに、ガロンはかっと怒りの表情を露わにした。
「うるせえ! 死んでもしてやるか! ウィルは俺の息子だ!」
パウルは、ウィルとガロンの繋がりさえ絶てるのなら……という展開を交渉で持ちかけようとしたのだろうか。しかしそれに簡単に応じてくれる相手でもない。
ガロンはいい加減に苛立ったらしく、それ以上話を聞く素振りもなく荒っぽい足取りで歩き始める。パウルは木箱に座ったまま、それを追おうとはしなかった。
しかしそこで散る二人を、まるで引き止めるように――突然僕達を衝撃が襲う。それはパウルとガロンだけじゃない、その場にいた……いやきっとその町にいる全員を。
ズシンと、大きな地響きのような音とともに、僅かに地面が揺れた気さえした。視界に入っていた全員が驚いて顔を上げ、音のした方角を探した。
それは遠い場所ながらに、視線を高くしてぐるりと回すとひと目で見つけられた。何か遠くで砂煙が上がっている。
「何だ、敵襲か?」
誰ともなしに呟いた声によって緊張が一挙に伝播する。すぐに兵士らは各々の武器を持って任務の体勢に入り始めた。それは当然、僕もパウルも。
……何か嫌な予感がした。その方角と距離から見て……近い。僕達の家に。
始めからガロンとの戦闘を想定して僕達は武装していた。パウルと共にその場から真っ直ぐ現場へ向かって駆け出す。
その道を進めば進むほどに嫌な予感は増していく。どんどんと家に近付いていくものだから。
そして偶然近くにいたのだろうか、現場の方角から駆けてくる様子の兵士が一人、血相抱えた顔で僕達を見た。
「ヨンか!? あれ、お前の家だろ。アルド先生の病院の壁が吹っ飛んだ」
慌てている様子の彼の言葉は突飛もなかった。途端に息が詰まるような心地さえする。
壁が吹っ飛んだ? 何のことか分からない。ただその被害が、よりによって僕達の家で起こったことだけは分かった。
なぜ、誰が? 考えるのは全て後だ、あそこには父と……ジュリがいるはずなのだ。どうか無事であってくれと、全力で足を動かしながら、その現場を見るまではただ祈ることしかできない。
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