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第44話 ローゼ視点 愛は君に届いた!
永遠の誓い ― ローゼ視点(婚約式)
光に包まれた牢を出てから、日々はあっという間に過ぎていった。
アルベルト殿下の失脚とともに、王宮はまるで別の場所のように新しい秩序へと移り変わっていったのだ。
◆
牢を出た翌日、私は両親と再会した。
父エルンストと母ハイロニーは、広間で私を見つけるなり駆け寄ってくる。母は声を上げて泣きながら私を抱きしめ、父は静かに私の肩を支えた。
「ローゼ……!」
「ごめんなさい、こんなに心配をかけて……」
「いいのよ。あなたが無事に帰ってきてくれた、それだけで十分なの」
母の言葉は震えていたが、そこには確かな愛情があった。
父もまた、短く、それでいて重みのある声で告げる。
「よく耐えた。……誇りに思う」
私は子どものように泣きながら、二人の胸に顔を埋めた。
あの日の絶望が遠ざかり、再び歩き出せるのだと、ようやく実感した。
◆
王宮は大きな転換を迎えていた。
第一王子アルベルトの失脚。
そして新たに王太子に立てられたのは、第二王子エリオットだった。
その母である王妃セリーヌ様は、側室から正妃へと昇格された。控えめでありながら凛とした気品を持つ方が王妃の座についたことで、王宮の空気は柔らかく、清らかなものに変わっていった。
一方で、アルベルトの母である第一王妃アナスタシア様は離宮に幽閉され、政から遠ざけられることとなった。権勢の座は一瞬で消え去ったのだ。
アルベルトは辺境の男爵家に婿入りを命じられた。
彼とともにいたミーアやアーサー、マッスルたちも同じく辺境へ送られ、二度と権力の中枢に戻ることはないだろう。かつて私を嘲り、追い詰めた人々が遠ざかっていくと知り、胸の奥に奇妙な安堵が満ちた。
◆
そして――私にとっての運命の日が訪れた。
エリオット殿下との「婚約式」である。
この式は結婚ではない。だが、国を導く王太子とその伴侶となる者が、未来を約束する大切な儀式だ。
王宮の大広間は白と金で飾られ、壇上には国王陛下と王妃セリーヌ様が並んで座していた。廷臣、神官、兵士、侍女、そして多くの貴族たちが参列し、静謐な空気の中で私を待ち受けている。
緊張で足が震えそうになった瞬間、父エルンストが私の手を握った。
「胸を張れ、ローゼ。今日からは未来を歩むのだ」
「……はい、お父様」
その一言で、心が少し落ち着いた。私は白い式服に身を包み、父に伴われてゆっくりと壇上へと進む。
人々の視線が集まる。かつて牢獄の闇の中でうつむいていた私が、今は光のもとで未来を託されようとしているのだ。
◆
壇上に立つエリオット殿下が見えた。
白と紺を基調にした礼服に身を包み、背筋をまっすぐに伸ばした彼は、凛とした気高さを漂わせている。けれど、その瞳はやわらかく、まっすぐに私だけを見つめていた。
父が私の手を彼に渡す。
大きく温かな掌が、しっかりと私を受け止めた。
「来てくれてありがとう、ローゼ。今日からは共に歩もう」
「……はい、エリオット殿下」
その瞬間、胸の奥が熱くなり、緊張がほどけていった。
◆
式は厳かに進められた。
国王陛下が立ち上がり、朗々とした声で宣言する。
「ここに、新しき王太子エリオットと、ローゼ・フォン・エルンストとの婚約を認める。二人は一年の時をかけ、互いを知り、国を学び、将来を誓うのだ」
広間にざわめきが広がり、再び静まり返る。
続いて神官が問いかける。
「王太子エリオット殿下。この者を伴侶とすることを望みますか」
「望みます」
「ローゼ・フォン・エルンスト嬢。あなたはこの方を伴侶とすることを望みますか」
「……望みます」
その答えを口にした瞬間、胸の奥が震えた。
牢獄で絶望した私が、今は国の未来を担う約束を口にしている――。まるで夢のようだった。
◆
誓いの証として、二人には「婚約の印」が授けられた。
結婚指輪のようなものではなく、銀に蒼玉をあしらった小さな徽章である。
私はそれを胸元に留め、エリオットは同じ徽章を礼服の左胸につけた。
「この印は、我らが未来を共に歩む証だ」
エリオットが静かに囁き、私は小さくうなずいた。
「ええ。必ず、あなたの隣で」
拍手が広間を満たす。音楽が奏でられ、人々は私たちを祝福してくれた。
◆
こうして私は、正式にエリオット殿下の婚約者となった。
けれどこれは終わりではない。むしろ始まりなのだ。
今日を境に、私は将来の王妃として歩みを始める。
夫婦となるのは一年後。だが、それまでの時間は空虚ではない。
共に学び、共に国を見つめ、共に成長するための大切な一年となる。
「ローゼ……これからの一年、共に未来を築こう」
「ええ、エリオット。あなたとなら、どこまでも」
私たちは固く手を握り合った。
愛がすべてを導き、闇を越えさせてくれた。
もう迷わない。
来年の結婚式の日まで、そしてその先も――私は彼と共に国を支える王妃として生きていく。
光に包まれた牢を出てから、日々はあっという間に過ぎていった。
アルベルト殿下の失脚とともに、王宮はまるで別の場所のように新しい秩序へと移り変わっていったのだ。
◆
牢を出た翌日、私は両親と再会した。
父エルンストと母ハイロニーは、広間で私を見つけるなり駆け寄ってくる。母は声を上げて泣きながら私を抱きしめ、父は静かに私の肩を支えた。
「ローゼ……!」
「ごめんなさい、こんなに心配をかけて……」
「いいのよ。あなたが無事に帰ってきてくれた、それだけで十分なの」
母の言葉は震えていたが、そこには確かな愛情があった。
父もまた、短く、それでいて重みのある声で告げる。
「よく耐えた。……誇りに思う」
私は子どものように泣きながら、二人の胸に顔を埋めた。
あの日の絶望が遠ざかり、再び歩き出せるのだと、ようやく実感した。
◆
王宮は大きな転換を迎えていた。
第一王子アルベルトの失脚。
そして新たに王太子に立てられたのは、第二王子エリオットだった。
その母である王妃セリーヌ様は、側室から正妃へと昇格された。控えめでありながら凛とした気品を持つ方が王妃の座についたことで、王宮の空気は柔らかく、清らかなものに変わっていった。
一方で、アルベルトの母である第一王妃アナスタシア様は離宮に幽閉され、政から遠ざけられることとなった。権勢の座は一瞬で消え去ったのだ。
アルベルトは辺境の男爵家に婿入りを命じられた。
彼とともにいたミーアやアーサー、マッスルたちも同じく辺境へ送られ、二度と権力の中枢に戻ることはないだろう。かつて私を嘲り、追い詰めた人々が遠ざかっていくと知り、胸の奥に奇妙な安堵が満ちた。
◆
そして――私にとっての運命の日が訪れた。
エリオット殿下との「婚約式」である。
この式は結婚ではない。だが、国を導く王太子とその伴侶となる者が、未来を約束する大切な儀式だ。
王宮の大広間は白と金で飾られ、壇上には国王陛下と王妃セリーヌ様が並んで座していた。廷臣、神官、兵士、侍女、そして多くの貴族たちが参列し、静謐な空気の中で私を待ち受けている。
緊張で足が震えそうになった瞬間、父エルンストが私の手を握った。
「胸を張れ、ローゼ。今日からは未来を歩むのだ」
「……はい、お父様」
その一言で、心が少し落ち着いた。私は白い式服に身を包み、父に伴われてゆっくりと壇上へと進む。
人々の視線が集まる。かつて牢獄の闇の中でうつむいていた私が、今は光のもとで未来を託されようとしているのだ。
◆
壇上に立つエリオット殿下が見えた。
白と紺を基調にした礼服に身を包み、背筋をまっすぐに伸ばした彼は、凛とした気高さを漂わせている。けれど、その瞳はやわらかく、まっすぐに私だけを見つめていた。
父が私の手を彼に渡す。
大きく温かな掌が、しっかりと私を受け止めた。
「来てくれてありがとう、ローゼ。今日からは共に歩もう」
「……はい、エリオット殿下」
その瞬間、胸の奥が熱くなり、緊張がほどけていった。
◆
式は厳かに進められた。
国王陛下が立ち上がり、朗々とした声で宣言する。
「ここに、新しき王太子エリオットと、ローゼ・フォン・エルンストとの婚約を認める。二人は一年の時をかけ、互いを知り、国を学び、将来を誓うのだ」
広間にざわめきが広がり、再び静まり返る。
続いて神官が問いかける。
「王太子エリオット殿下。この者を伴侶とすることを望みますか」
「望みます」
「ローゼ・フォン・エルンスト嬢。あなたはこの方を伴侶とすることを望みますか」
「……望みます」
その答えを口にした瞬間、胸の奥が震えた。
牢獄で絶望した私が、今は国の未来を担う約束を口にしている――。まるで夢のようだった。
◆
誓いの証として、二人には「婚約の印」が授けられた。
結婚指輪のようなものではなく、銀に蒼玉をあしらった小さな徽章である。
私はそれを胸元に留め、エリオットは同じ徽章を礼服の左胸につけた。
「この印は、我らが未来を共に歩む証だ」
エリオットが静かに囁き、私は小さくうなずいた。
「ええ。必ず、あなたの隣で」
拍手が広間を満たす。音楽が奏でられ、人々は私たちを祝福してくれた。
◆
こうして私は、正式にエリオット殿下の婚約者となった。
けれどこれは終わりではない。むしろ始まりなのだ。
今日を境に、私は将来の王妃として歩みを始める。
夫婦となるのは一年後。だが、それまでの時間は空虚ではない。
共に学び、共に国を見つめ、共に成長するための大切な一年となる。
「ローゼ……これからの一年、共に未来を築こう」
「ええ、エリオット。あなたとなら、どこまでも」
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