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第52話 マスキュラーの恋心
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ダリルとアリスターが露店街で土産物を物色している間、マスキュラーとエリーゼは路地裏の静かな小道を歩いていた。賑やかな喧騒から一歩離れたそこには、石畳と木造の小さな店が並び、時間の流れがどこか緩やかだった。
「この辺りは昔からある商人街でな。観光客はあまり来ねぇが、地元の連中には人気なんだ」
マスキュラーが案内するように言うと、エリーゼは目を輝かせて頷いた。
「へえ、知らなかった。いい雰囲気の場所ね。案内ありがとう、マスキュラー」
「オレの地元だしな。少しくらい役に立たねぇと」
マスキュラーは照れ隠しのように鼻を鳴らした。
しばらく歩いた後、エリーゼが何気ない風を装って口を開いた。
「ねぇ、マスキュラー。昔いたパーティーのこととか、この街で恋愛したこととかって……あるの?」
唐突ともいえる質問だったが、エリーゼの表情は自然で、好奇心のままに尋ねたようなものだった。
マスキュラーは一瞬、足を止めかけたが、すぐにまた歩き出す。その背中に、どこかため息のような空気が滲んだ。
「昔のパーティーは……まぁ、オレには合ってなかった。だから追い出されたんだろうな」
「そっか。でも、あんたは今のスプレーマムにちゃんと必要とされてるわよ」
エリーゼの言葉に、マスキュラーは小さく肩をすくめた。
「ありがとな。……で、恋愛の話だが……そんな奴はいなかった。今まではな」
その言葉に、エリーゼがピタリと立ち止まり、興味深そうにマスキュラーを見つめた。
「えっ? 最近できたの?」
「……ああ。最近、気になる女ができた」
それ以上の言葉はなかった。マスキュラーは前を向いたまま、表情を崩さずにそう答えた。
「そうなんだ。……もし、悩んだりしたら、相談乗るからね。わたし、恋バナとか、わりと好きだから」
エリーゼはそう言って、無邪気に笑う。その笑顔に、マスキュラーの胸は苦しく締めつけられた。
「まー……気が向いたらな」
それだけを言って、マスキュラーは笑ってみせた。だがその笑顔は、どこか自嘲の色を含んでいた。
――気になる女。それは、他でもない、エリーゼ=アルセリア。
桃色の髪、明るく真っすぐな心、どんな苦境でも笑って前を向ける強さ。仲間として過ごすうちに、気づけばその背中を、笑顔を、何よりその生き方を好きになっていた。
けれどマスキュラーは知っている。彼女がよく一緒に行動するのは、あの金髪の魔法使い――アリスター。
たまに見せる二人の息の合った掛け合いや、互いを信じる目を見れば、自然とそう思ってしまう。
あの二人はお似合いだ。
自分なんて、筋肉しかない。剣しか振れない。
筋肉でどうにもできない問題なんて、世の中には山ほどある。
だからマスキュラーは、ただ見守ることにした。
エリーゼが笑っていられるなら、それでいい。
たとえ、その隣に座っているのが、自分じゃなかったとしても。
マスキュラーはふと、隣を歩くエリーゼの姿を横目で見た。
その笑顔を、焼き付けるように心に刻む。
(お前が幸せなら、オレはそれでいい)
そんな想いを胸に秘めたまま、マスキュラーは一歩前を歩いた。エリーゼに気づかれないように、そっと、小さく息を吐きながら。
「この辺りは昔からある商人街でな。観光客はあまり来ねぇが、地元の連中には人気なんだ」
マスキュラーが案内するように言うと、エリーゼは目を輝かせて頷いた。
「へえ、知らなかった。いい雰囲気の場所ね。案内ありがとう、マスキュラー」
「オレの地元だしな。少しくらい役に立たねぇと」
マスキュラーは照れ隠しのように鼻を鳴らした。
しばらく歩いた後、エリーゼが何気ない風を装って口を開いた。
「ねぇ、マスキュラー。昔いたパーティーのこととか、この街で恋愛したこととかって……あるの?」
唐突ともいえる質問だったが、エリーゼの表情は自然で、好奇心のままに尋ねたようなものだった。
マスキュラーは一瞬、足を止めかけたが、すぐにまた歩き出す。その背中に、どこかため息のような空気が滲んだ。
「昔のパーティーは……まぁ、オレには合ってなかった。だから追い出されたんだろうな」
「そっか。でも、あんたは今のスプレーマムにちゃんと必要とされてるわよ」
エリーゼの言葉に、マスキュラーは小さく肩をすくめた。
「ありがとな。……で、恋愛の話だが……そんな奴はいなかった。今まではな」
その言葉に、エリーゼがピタリと立ち止まり、興味深そうにマスキュラーを見つめた。
「えっ? 最近できたの?」
「……ああ。最近、気になる女ができた」
それ以上の言葉はなかった。マスキュラーは前を向いたまま、表情を崩さずにそう答えた。
「そうなんだ。……もし、悩んだりしたら、相談乗るからね。わたし、恋バナとか、わりと好きだから」
エリーゼはそう言って、無邪気に笑う。その笑顔に、マスキュラーの胸は苦しく締めつけられた。
「まー……気が向いたらな」
それだけを言って、マスキュラーは笑ってみせた。だがその笑顔は、どこか自嘲の色を含んでいた。
――気になる女。それは、他でもない、エリーゼ=アルセリア。
桃色の髪、明るく真っすぐな心、どんな苦境でも笑って前を向ける強さ。仲間として過ごすうちに、気づけばその背中を、笑顔を、何よりその生き方を好きになっていた。
けれどマスキュラーは知っている。彼女がよく一緒に行動するのは、あの金髪の魔法使い――アリスター。
たまに見せる二人の息の合った掛け合いや、互いを信じる目を見れば、自然とそう思ってしまう。
あの二人はお似合いだ。
自分なんて、筋肉しかない。剣しか振れない。
筋肉でどうにもできない問題なんて、世の中には山ほどある。
だからマスキュラーは、ただ見守ることにした。
エリーゼが笑っていられるなら、それでいい。
たとえ、その隣に座っているのが、自分じゃなかったとしても。
マスキュラーはふと、隣を歩くエリーゼの姿を横目で見た。
その笑顔を、焼き付けるように心に刻む。
(お前が幸せなら、オレはそれでいい)
そんな想いを胸に秘めたまま、マスキュラーは一歩前を歩いた。エリーゼに気づかれないように、そっと、小さく息を吐きながら。
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