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第65話 クルトワ村の老婆から見た4人の冒険者
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祈りの果てに、光は来たりぬ
わしは、ただの年寄りじゃ。
年を重ねれば、若いもんの力には敵わんと身にしみてわかるもんじゃが、それでも、あの子が攫われたときばかりは……わしは、泣いて祈るしかできんかった。
エミリア——わしのたった一人の孫娘じゃ。息子夫婦が流行り病で逝ってしまってからは、わしが代わりに育ててきた。まだ十もいかん子じゃ。無垢な笑顔と、春先の花のような声で笑うあの子が……盗賊どもにさらわれたと聞いたときは、胸が裂けるようだった。
村の男衆も何人か砦へ向かったが、戻ってきたのは一人もおらん。生きておるのか、死んでおるのか、それさえわからんというのに……わしには、ただ天に祈るしかなかった。
——けれど、あの日。
昼を少し過ぎた頃、村長の家の方から人が集まって騒いでおった。何事かと思って駆けつけると、見慣れぬ旅人たちがそこにおった。四人組。若い者ばかりじゃったが、目が違う。どこか、影を背負った目じゃ。それでも、その奥には確かな光が宿っておった。
「おばあさん。大丈夫、必ずお孫さんを助け出します」
桃色の髪の娘が、わしの手を握ってそう言ったんじゃ。名前は……たしか、エリーゼ。瞳の奥に、何か強い決意が宿っておった。言葉ではなく、信じさせる力がある子じゃった。
他の者たちも、実に個性的じゃった。
青い髪の眼鏡の神官の若者——名前は、ダリルといったか。自信なさげな口調じゃったが、話す言葉の一つ一つに人を思う誠実さがあった。
それから、金髪の魔法使い——アリスター。自分を「ボク」と呼ぶ、ちょっと変わった子じゃったが、天才肌というのか、何とも頼もしげな笑みを浮かべておった。
最後に、逞しい体つきの黒髪の剣士——マスキュラー。無口なようでいて、目がとても優しい。あの者は、きっと何か大きな哀しみを抱えている。そう思わせるような、静かな力を持っておった。
その夜、四人は砦へ向かった。誰もが無理だと思っていた……わしでさえ、半ば諦めておったのじゃ。だが——
朝方。わしは、戸を叩く音で目を覚ました。開けると、そこにいたのは……
「おばあちゃん……!」
エミリアじゃった。
無事に、無傷で、あの子は帰ってきたんじゃ。泣きじゃくる声と、抱きついてくる小さな身体を、わしは必死に受け止めた。夢かと思った。いや、今でも夢ではないかと思う時がある。それほどまでに……奇跡のような出来事じゃった。
あとから聞いた話では、四人が砦に乗り込み、見事に盗賊どもを打ち倒したのだという。娘たちは全員救い出され、誰一人欠けることなく戻ってきた。
信じられぬ話じゃ。だが、その「信じられぬ」を成してくれたのが、スプレーマムという名の冒険者たちだった。
その日の夕刻、村の広場でささやかな宴が開かれた。皆、彼らに酒や食べ物を振る舞い、感謝の言葉を伝えた。わしもその輪に加わり、震える手で彼らに礼を言ったんじゃ。
「ありがとう……本当に、ありがとうよ……エミリアを……わしの大事な孫を、救ってくれて……」
「いえ、大したことじゃありません。わたしたちにできることをしただけですから」
エリーゼは、そう言って微笑んだ。わしはその笑顔に、かつて戦場に立った女神の面影を見たような気がした。
アリスターはワインを手に、自慢げに呟いておった。
「ボクの計算どおりだったからね。敵の位置、戦力差、心理状態まで……完璧な勝利だったさ」
だがその目は、どこか満足げでありながら、仲間たちを誇らしげに見ていた。自分ひとりではなく、皆で勝ち取った勝利——その事実が彼を支えているように思えた。
マスキュラーは騒ぎから少し外れた木の陰にいた。わしはそっと近づき、彼にだけ言葉をかけた。
「……本当の勇気というのはな、自分のためでなく、誰かのために戦えることじゃ。あんたは、そういう人じゃ」
彼は驚いたような顔をして、それから……恥ずかしそうに目をそらした。だが、わしにはわかった。あの者が誰よりも仲間を大事に思っていることが。
夜が更け、宴が終わる頃——エミリアがエリーゼの手を握って離さなかった。涙を流しながら「ありがとう、ありがとう」と繰り返していた。
わしはその光景を見ながら、ひとつのことを思った。
——この子たちは、ただの冒険者ではない。
人を救い、希望を届ける「光の導き手」なのだ、と。
スプレーマム。妙な名前じゃが、どこか可愛らしくて、人懐っこくて、そして強い。あの子たちは、世界のどこかで今日もまた、誰かの涙を拭っているのかもしれぬ。
……ならば、わしも祈るとしよう。
「今度は、あの子たちが報われますように」
そう呟いたわしの言葉が、微かな風に乗って空へ昇っていった。
わしは、ただの年寄りじゃ。
年を重ねれば、若いもんの力には敵わんと身にしみてわかるもんじゃが、それでも、あの子が攫われたときばかりは……わしは、泣いて祈るしかできんかった。
エミリア——わしのたった一人の孫娘じゃ。息子夫婦が流行り病で逝ってしまってからは、わしが代わりに育ててきた。まだ十もいかん子じゃ。無垢な笑顔と、春先の花のような声で笑うあの子が……盗賊どもにさらわれたと聞いたときは、胸が裂けるようだった。
村の男衆も何人か砦へ向かったが、戻ってきたのは一人もおらん。生きておるのか、死んでおるのか、それさえわからんというのに……わしには、ただ天に祈るしかなかった。
——けれど、あの日。
昼を少し過ぎた頃、村長の家の方から人が集まって騒いでおった。何事かと思って駆けつけると、見慣れぬ旅人たちがそこにおった。四人組。若い者ばかりじゃったが、目が違う。どこか、影を背負った目じゃ。それでも、その奥には確かな光が宿っておった。
「おばあさん。大丈夫、必ずお孫さんを助け出します」
桃色の髪の娘が、わしの手を握ってそう言ったんじゃ。名前は……たしか、エリーゼ。瞳の奥に、何か強い決意が宿っておった。言葉ではなく、信じさせる力がある子じゃった。
他の者たちも、実に個性的じゃった。
青い髪の眼鏡の神官の若者——名前は、ダリルといったか。自信なさげな口調じゃったが、話す言葉の一つ一つに人を思う誠実さがあった。
それから、金髪の魔法使い——アリスター。自分を「ボク」と呼ぶ、ちょっと変わった子じゃったが、天才肌というのか、何とも頼もしげな笑みを浮かべておった。
最後に、逞しい体つきの黒髪の剣士——マスキュラー。無口なようでいて、目がとても優しい。あの者は、きっと何か大きな哀しみを抱えている。そう思わせるような、静かな力を持っておった。
その夜、四人は砦へ向かった。誰もが無理だと思っていた……わしでさえ、半ば諦めておったのじゃ。だが——
朝方。わしは、戸を叩く音で目を覚ました。開けると、そこにいたのは……
「おばあちゃん……!」
エミリアじゃった。
無事に、無傷で、あの子は帰ってきたんじゃ。泣きじゃくる声と、抱きついてくる小さな身体を、わしは必死に受け止めた。夢かと思った。いや、今でも夢ではないかと思う時がある。それほどまでに……奇跡のような出来事じゃった。
あとから聞いた話では、四人が砦に乗り込み、見事に盗賊どもを打ち倒したのだという。娘たちは全員救い出され、誰一人欠けることなく戻ってきた。
信じられぬ話じゃ。だが、その「信じられぬ」を成してくれたのが、スプレーマムという名の冒険者たちだった。
その日の夕刻、村の広場でささやかな宴が開かれた。皆、彼らに酒や食べ物を振る舞い、感謝の言葉を伝えた。わしもその輪に加わり、震える手で彼らに礼を言ったんじゃ。
「ありがとう……本当に、ありがとうよ……エミリアを……わしの大事な孫を、救ってくれて……」
「いえ、大したことじゃありません。わたしたちにできることをしただけですから」
エリーゼは、そう言って微笑んだ。わしはその笑顔に、かつて戦場に立った女神の面影を見たような気がした。
アリスターはワインを手に、自慢げに呟いておった。
「ボクの計算どおりだったからね。敵の位置、戦力差、心理状態まで……完璧な勝利だったさ」
だがその目は、どこか満足げでありながら、仲間たちを誇らしげに見ていた。自分ひとりではなく、皆で勝ち取った勝利——その事実が彼を支えているように思えた。
マスキュラーは騒ぎから少し外れた木の陰にいた。わしはそっと近づき、彼にだけ言葉をかけた。
「……本当の勇気というのはな、自分のためでなく、誰かのために戦えることじゃ。あんたは、そういう人じゃ」
彼は驚いたような顔をして、それから……恥ずかしそうに目をそらした。だが、わしにはわかった。あの者が誰よりも仲間を大事に思っていることが。
夜が更け、宴が終わる頃——エミリアがエリーゼの手を握って離さなかった。涙を流しながら「ありがとう、ありがとう」と繰り返していた。
わしはその光景を見ながら、ひとつのことを思った。
——この子たちは、ただの冒険者ではない。
人を救い、希望を届ける「光の導き手」なのだ、と。
スプレーマム。妙な名前じゃが、どこか可愛らしくて、人懐っこくて、そして強い。あの子たちは、世界のどこかで今日もまた、誰かの涙を拭っているのかもしれぬ。
……ならば、わしも祈るとしよう。
「今度は、あの子たちが報われますように」
そう呟いたわしの言葉が、微かな風に乗って空へ昇っていった。
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