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第105話 新たなる旅立ち 過去と向き合うために
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マケドニアの空に、雲ひとつない朝が広がっていた。
教会の中庭では、旅支度を整える冒険者たちの姿があった。
「よし、荷物はこれで全部だな。エリーゼ、お前の荷物は精霊魔法で収納してのか」
マスキュラーが肩に革袋に収納された長剣を肩に担ぎながら、エリーゼに軽く頷く。
「そうよ。それなりには収納できるけど、魔法使い専用ではないのでね……アリスターに頼んだ方がいいかも」
「アリスターに頼むとは、しょうがないってやつだな。……まあ、“お嫁さん”だからね」
「ちょ、マスキュラーっ! その言い方やめてってば!」
照れながら顔を赤くするエリーゼを見て、マスキュラーは肩をすくめた。
「新婚夫婦の絡みは何度見ても新鮮だのう……」
そうぼやいたのは、教会の外階段に腰掛けているダリルだった。青い法衣に身を包み、小さな革袋と魔道書を脇に抱えている。
「とはいえ、冗談はさておき……本当に行くんだな。テオドリック王国へ」
「ええ。逃げてばかりはいられませんもの。アリスターの過去と向き合うためにも」
隣に立っていたアリスターが、ゆっくりと頷いた。
「ボクは……王子としての立場も、家族も、あの日すべてを奪われた。真実を知ってもらわなきゃならない。そして、何が王国をあんな風にしたのか、見極めたい」
「けど、向こうに着けば手配中の身かもしれねえ。危険だってこと、分かってんだろ?」
マスキュラーの問いに、アリスターは微笑む。
「ボクひとりじゃ不安だけど……今は違う。仲間がいる。それに……」
彼はエリーゼを見つめた。
「……妻がいるからね」
「うぅ……またさらっと甘いこと言って……!」
エリーゼが頬を押さえて悶える中、石畳の上に一人の仮面の男が音もなく現れた。
「行くと決めたなら、情報を伝えよう」
ヴェルト――かつて“ガーラン”と呼ばれた男。仮面の下から響く声には、いつも通りの静かな熱があった。
「テオドリック王国は今、貴族派と王族派の権力争いが続いている。だが、その裏で“魔の手”が蠢いているらしい。君たちが王国に戻れば、おそらく騒ぎになる」
「……やっぱりな」
アリスターはため息をつく。
「だが、お前が現れることを望んでいる者もいる。生きている王女、ルシア姫だ。かつて君と仲の良かった妹だろう」
「ルシアが……」
アリスターの表情がわずかに揺らいだ。
「詳しい場所や潜入ルートについては、道中で伝える。私も一部、同行しよう」
「いいの? ヴェルト、君は……」
「私は“案内人”だ。進むべき者の前に道を作るのが仕事だろう」
アリスターが無言で頷くと、ヴェルトは一歩、ふた歩き後ろに下がった。
「馬車は教会裏に準備してある。荷物を積み、すぐにでも出発できる」
「準備、終わりだね」
エリーゼが背負った鞄の紐をきゅっと握り直す。
マスキュラーは剣の柄に手を置き、どこか戦の前のような緊張をまとった。
ダリルは深呼吸を一つ。だが、その手は震えていなかった。
「それじゃあ、行きましょうか――“テオドリック王国”へ!」
エリーゼの力強い声に、仲間たちはうなずいた。
門を出たその瞬間、光の粒が舞うような朝の風が頬をなでた。
かつて失ったものを取り戻すために。
過去と向き合い、真実を暴くために。
そして、愛する人のために――
冒険者パーティー《スプレーマム》、新たなる旅路が今、始まる。
教会の中庭では、旅支度を整える冒険者たちの姿があった。
「よし、荷物はこれで全部だな。エリーゼ、お前の荷物は精霊魔法で収納してのか」
マスキュラーが肩に革袋に収納された長剣を肩に担ぎながら、エリーゼに軽く頷く。
「そうよ。それなりには収納できるけど、魔法使い専用ではないのでね……アリスターに頼んだ方がいいかも」
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隣に立っていたアリスターが、ゆっくりと頷いた。
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「けど、向こうに着けば手配中の身かもしれねえ。危険だってこと、分かってんだろ?」
マスキュラーの問いに、アリスターは微笑む。
「ボクひとりじゃ不安だけど……今は違う。仲間がいる。それに……」
彼はエリーゼを見つめた。
「……妻がいるからね」
「うぅ……またさらっと甘いこと言って……!」
エリーゼが頬を押さえて悶える中、石畳の上に一人の仮面の男が音もなく現れた。
「行くと決めたなら、情報を伝えよう」
ヴェルト――かつて“ガーラン”と呼ばれた男。仮面の下から響く声には、いつも通りの静かな熱があった。
「テオドリック王国は今、貴族派と王族派の権力争いが続いている。だが、その裏で“魔の手”が蠢いているらしい。君たちが王国に戻れば、おそらく騒ぎになる」
「……やっぱりな」
アリスターはため息をつく。
「だが、お前が現れることを望んでいる者もいる。生きている王女、ルシア姫だ。かつて君と仲の良かった妹だろう」
「ルシアが……」
アリスターの表情がわずかに揺らいだ。
「詳しい場所や潜入ルートについては、道中で伝える。私も一部、同行しよう」
「いいの? ヴェルト、君は……」
「私は“案内人”だ。進むべき者の前に道を作るのが仕事だろう」
アリスターが無言で頷くと、ヴェルトは一歩、ふた歩き後ろに下がった。
「馬車は教会裏に準備してある。荷物を積み、すぐにでも出発できる」
「準備、終わりだね」
エリーゼが背負った鞄の紐をきゅっと握り直す。
マスキュラーは剣の柄に手を置き、どこか戦の前のような緊張をまとった。
ダリルは深呼吸を一つ。だが、その手は震えていなかった。
「それじゃあ、行きましょうか――“テオドリック王国”へ!」
エリーゼの力強い声に、仲間たちはうなずいた。
門を出たその瞬間、光の粒が舞うような朝の風が頬をなでた。
かつて失ったものを取り戻すために。
過去と向き合い、真実を暴くために。
そして、愛する人のために――
冒険者パーティー《スプレーマム》、新たなる旅路が今、始まる。
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