婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス

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第160話 悲しみのエリーゼ、怒るアリスター

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夜の帳が王城を静かに包んでいた。窓の外では星が瞬き、淡い月光が寝室のベッドの縁を銀色に染めている。

 エリーゼは天蓋付きの寝台に座ったまま、膝を抱えていた。隣にはアリスター。けれど、今夜はなぜだか、彼のぬくもりを素直に受け取れない。

「……ルシアちゃん、泣いてたの」

 ぽつりと、エリーゼが口を開いた。

「好きな人がいるって、すごく素敵なことなのに。なのに、どうして……どうして、幸せになれないのかな」

 アリスターは黙っていた。けれど、彼女の肩に手を添えてくれる優しさが、余計に切なさを募らせる。

「両想いなのに、別れを選ぶなんて……私には、信じられない。なにか方法があるはずなのに。どうして二人とも、そんなに我慢するの?」

「……ダリルは、ルシアのことを本気で想ってる。だからこそ、自分がそばにいることで彼女が苦しむ未来を恐れてるんだよ」

 アリスターの声は穏やかで、けれどどこか諦めが混じっていた。

「でも、それって……結局、自分が傷つきたくないだけじゃないの?」

 そう言った自分の声に、エリーゼは驚いた。冷たい言葉だった。でも、それが本音でもあった。

「……ごめん。わたし、今夜は……」

 アリスターがそっと彼女を抱き寄せようとした。そのぬくもりは心地よく、安心できるものだった。けれど、エリーゼはそっと彼の手を払った。

「今夜は……そういう気分じゃないの」

 アリスターは少し驚いたような表情を浮かべた。けれど、すぐに微笑みに変わった。その笑顔は、どこか無理をしているように見えた。

「……わかったよ」

 ただ一言、そう言った。

 エリーゼは胸が苦しかった。彼を拒んだわけじゃない。けれど、今はそれよりも、ルシアとダリルのことが心から離れなかった。

 ──なぜ、好き合っている二人が結ばれないの?

 誰も悪くないのに、誰も救われないなんて。そんなの、悲しすぎる。

 そのとき、ふと、アリスターが視線を窓の外に向けた。鋭い目だった。

「……やっぱり、なんとかしなきゃな」

 その低い声に、エリーゼは顔を上げる。

「アリスター?」

「いや、なんでもない。……ただ、何もできないってのは、性に合わなくてね」

 エリーゼには、彼の意図がよくわからなかった。けれど、その背中に、何かを決意した者の気配を感じた。

「……あなた、何を考えてるの?」

「内緒だよ」

 そう言って笑った彼の瞳に、ほんのわずか、怒りにも似た情熱が灯っていた。

 ルシアとダリル。二人の恋が、どうか報われますように。エリーゼはそう願いながら、月明かりの中でそっとまぶたを閉じた。
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