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ルーチンワーク
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中古軽自動車…50万円
小林佳子はスマホで何度も価格を確認したが、価格は変わりそうにない。それどころか最近の物価高でますます値段は上がっていくだろう。
"ハクルトレディ" としてルート営業の仕事をはじめて4年が経過し、実入りは手取りで月にほどほどは手に入るが、ルート営業に使う自家用車がないため、店舗から自動車をレンタルしており、そのレンタル代が毎月の手痛い出費なのだ。違う職種にチャレンジしたいとは思うのだが、義理の母の介護があるため時間に融通の効く今の仕事は正直助かっている。
"マイカーがあればいいのになぁ"
と思いながら今日も、ルート営業で担当の会社に向かい、いつものように中年男性にヨーグルト、フルーツ豆乳、ハクルト等の代わりばえのしない商品を売り、
「あのおばちゃん、もっと愛想良くできないもんかねぇ」
などど聞こえるような声で悪口を言われる。
そんないつものルーチン営業をやっていった。
本日の営業も終了し、事務所で伝票整理を行った後、家に帰る途中で
"あなたの、時(人生)買います。"
と書かれた札の着いた屋台があることに気付き、
"マイカーが手に入るならなんでも売って手に入れてしまおう"
と思って立ち寄ってみた。
「いらっしゃい。この店はあなたの時(人生)・健康を売って、それに見合った契約、もの、こと(経験)が手に入る店だよ。」
と店員が言ったので、
「義理の母の介護ができなくなるので、健康は売れませんが、50万円の中古軽自動車を手に入れるにはどれくらいの人生を売ればよいでしょうか?」
と佳子が尋ねると、
「あなたなら半年間の人生を売ってくれたら手に入れることができるけど、その間の思い出は残らないよ。それでも売るかい?」
と店員が確認をとってきたが、
「売ります。」
と佳子は即答した。
佳子に契約書が渡され、人生を売る契約書にサインするや否や、佳子は自分自身が軽自動車のなかにいてルート営業先に向かっていることに気が付いた。
その道中の道は陥没しており、建物は液状化で歪んでしまっているような建物が多く見られた。
"私が人生を売ってしまった間、地震が起こっていたみたいね。人生を売る前の4年間の信頼の蓄積があるとはいえ、震災時の営業対応が悪くて私の評価は落ちていないだろうか?"
と不安に思いながらいつものルート営業先の会社に到着し、商品を販売しようと商品を整理しているところに、いつも商品を買っている中年の男性がきて、
「会社で働いているときに震災に合ったんだけど、電気も停電していて自販機も使えず、水道も断水してしまっているなかあんたが、いつも通り来て、ヨーグルトや、ハクルトを売ってくれて、とても助かったよ。もっと愛想よくすればいいのにとも思っていたけど、ハクルトレディに一番必要なのは、銀座のホステスのように非日常を演出することでなくて、震災、火災、戦争等の非常事態が起きても日常のようにルーチンワークを確実にこなす実行力なのだとつくづく痛感したよ。」
とお礼をいいにきたのを聞いて
佳子は
"思い出には残っていないけど、4年続けてきた仕事が震災時にも役に立ったみたいね。これからも雨が降ろうが、雪が降ろうが、ミサイルが落ちようが、必ず営業にいくようにするわ。今さらセミナー等に通って愛想をよくしたところでたいして効果が見込めないのだから、実行力で愛想のなさをカバーしてバリバリ売るわよ。"
と思ったそうな。
小林佳子はスマホで何度も価格を確認したが、価格は変わりそうにない。それどころか最近の物価高でますます値段は上がっていくだろう。
"ハクルトレディ" としてルート営業の仕事をはじめて4年が経過し、実入りは手取りで月にほどほどは手に入るが、ルート営業に使う自家用車がないため、店舗から自動車をレンタルしており、そのレンタル代が毎月の手痛い出費なのだ。違う職種にチャレンジしたいとは思うのだが、義理の母の介護があるため時間に融通の効く今の仕事は正直助かっている。
"マイカーがあればいいのになぁ"
と思いながら今日も、ルート営業で担当の会社に向かい、いつものように中年男性にヨーグルト、フルーツ豆乳、ハクルト等の代わりばえのしない商品を売り、
「あのおばちゃん、もっと愛想良くできないもんかねぇ」
などど聞こえるような声で悪口を言われる。
そんないつものルーチン営業をやっていった。
本日の営業も終了し、事務所で伝票整理を行った後、家に帰る途中で
"あなたの、時(人生)買います。"
と書かれた札の着いた屋台があることに気付き、
"マイカーが手に入るならなんでも売って手に入れてしまおう"
と思って立ち寄ってみた。
「いらっしゃい。この店はあなたの時(人生)・健康を売って、それに見合った契約、もの、こと(経験)が手に入る店だよ。」
と店員が言ったので、
「義理の母の介護ができなくなるので、健康は売れませんが、50万円の中古軽自動車を手に入れるにはどれくらいの人生を売ればよいでしょうか?」
と佳子が尋ねると、
「あなたなら半年間の人生を売ってくれたら手に入れることができるけど、その間の思い出は残らないよ。それでも売るかい?」
と店員が確認をとってきたが、
「売ります。」
と佳子は即答した。
佳子に契約書が渡され、人生を売る契約書にサインするや否や、佳子は自分自身が軽自動車のなかにいてルート営業先に向かっていることに気が付いた。
その道中の道は陥没しており、建物は液状化で歪んでしまっているような建物が多く見られた。
"私が人生を売ってしまった間、地震が起こっていたみたいね。人生を売る前の4年間の信頼の蓄積があるとはいえ、震災時の営業対応が悪くて私の評価は落ちていないだろうか?"
と不安に思いながらいつものルート営業先の会社に到着し、商品を販売しようと商品を整理しているところに、いつも商品を買っている中年の男性がきて、
「会社で働いているときに震災に合ったんだけど、電気も停電していて自販機も使えず、水道も断水してしまっているなかあんたが、いつも通り来て、ヨーグルトや、ハクルトを売ってくれて、とても助かったよ。もっと愛想よくすればいいのにとも思っていたけど、ハクルトレディに一番必要なのは、銀座のホステスのように非日常を演出することでなくて、震災、火災、戦争等の非常事態が起きても日常のようにルーチンワークを確実にこなす実行力なのだとつくづく痛感したよ。」
とお礼をいいにきたのを聞いて
佳子は
"思い出には残っていないけど、4年続けてきた仕事が震災時にも役に立ったみたいね。これからも雨が降ろうが、雪が降ろうが、ミサイルが落ちようが、必ず営業にいくようにするわ。今さらセミナー等に通って愛想をよくしたところでたいして効果が見込めないのだから、実行力で愛想のなさをカバーしてバリバリ売るわよ。"
と思ったそうな。
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