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金の番人
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「ほんと尊敬するわ。こんな深夜まで、あくせく働いて。そんな安月給じゃ俺なら辞めてるけどな」
各省庁の予算を査定するお役所にお勤めの渋谷光一は、深夜まで行われた仕事の帰りに、民間企業に就職した東大の同級生の麻生涼輔に出くわしてしまいこう言われた。
時代はバブル。若者は皆、煌びやかな格好で、青春を謳歌していた。
涼輔も例外でなく、ラフな服装をして、イカしたスポーツカーに乗り、ハデな女の子をつれて、いかにも羽振りの良さそうな生活を送っている。
「各省庁の予算をしっかり通してあげないと、君たちの生活にも支障がでてしまうから大切な仕事なんだよ。」
くたびれたスーツ姿の光一が少しイラつきながら言うと、
「はーい。優等生さまが配分してくれた予算で提供される行政サービスをしっかり消費することで社会貢献しまーす。」
と煽るような言葉を発して、涼輔は彼女と夜の町へ消えていった。
"大学の劣等生だったあいつがバブルの恩恵を享受しているのに、成績優秀で国民の為に尽くしたいという意欲のある自分がこんな惨めな生活しているのはおかしくないか?"
と思いながら、帰り道の商店街を通っていると、
"時(人生)買います。"
と書かれた札の付いた屋台があることに気付いた。
"もしかして、いそがしく仕事をして寝るだけの毎日を早く終わりにしてくれるんじゃないのか?"
そう思った光一は屋台に寄ってみることにした。
「いらっしゃい。この店はあなたの時間(人生)を売って、それと同等のモノ、経験、契約が手に入る店だよ。」
と店員が言った。
「今、自分が働いているお役所のトップになって民間企業に就職した同級生を見返してやりたいんですができますか?」
と光一がいうと、
「君の勤めているお役所のトップになる年齢は大体55歳位だから、今から23年の人生を売ってもらうことになるけどそれでもいいのかい?」
と店員が尋ねたので、
「売ってしまった時間の思い出はどうなるのでしょうか?」
と光一が質問すると、
「君がやったことは世間の記録としては残るけど、売ってしまった時間の思い出は君の記憶には残らないよ。」
と店員が答えた。
"それじゃあ。23年人生を早送りさせるのと同じだなぁ。ただ人生を売りさえすれば、同期で一人しかなれないトップになれるのだから売ってしまえ"
と思った光一は
「人生売ります。契約させてください。」
といい店員が出した契約書にサインをした。
光一がサインするや否や自身が部下から上がってくる各省庁の予算の査定にダメ出しをしていることに気が付いた。
「この道路は必要ないし、農業は栽培から販売まで自助努力で行わせないとダメじゃないか。他国が軍事進行してきたら傭兵に対応させなさい。」
"各省庁の予算を握るのって楽しい"
光一は、うきうきしてきた。
様々な予算を査定するなかで
"各国民が自主自立し、民間企業中心で生活をなりたたせていることこそが喜ばしいことではないか"
と思い、自己陶酔に浸っていた。
そんなとき
「本日は大学時代のお仲間との同窓会の予定だって言ってたじゃないですか。そろそろ退勤しないと遅刻っすよ。」
と部下から言われたので光一はあくせく役所を後にした。
"なんかよくわからんが、このスマホとやらのいう通りの場所で同窓会があるようだからいってみることにしよう"
なれないスマホ操作に悪戦苦闘しながら会場のホテルに、同窓会開始時刻ギリギリに到着した。
「よう。元気そうじゃないか」
声の方を振り向くと、白髪が目立つようになった涼輔がそこにいた。
「久し振りだな。仕事うまくいってるか?俺、役所のトップまで上り詰めたんだぜ。この国も民間中心でうまく回っているようだし俺の努力の賜物だな」
光一は涼輔に自身の成功を得意そうに語ったところ
「うまく回っているだと。とんでもない。あまりにも予算が絞られ過ぎていて行政サービスがいき届かなくなって、俺は家族で海外に移住したぜ」
涼輔がカリカリしながら言ったのを聞いて、
"ムカつく涼輔を見返してやりたかっただけなのに、どうやら俺はとんでもないことをしでかしてしまったようだぞ。"
と思った光一が、治安の悪くなった街中で強盗に襲われたのはその同窓会の帰り道だったそうですよ。
各省庁の予算を査定するお役所にお勤めの渋谷光一は、深夜まで行われた仕事の帰りに、民間企業に就職した東大の同級生の麻生涼輔に出くわしてしまいこう言われた。
時代はバブル。若者は皆、煌びやかな格好で、青春を謳歌していた。
涼輔も例外でなく、ラフな服装をして、イカしたスポーツカーに乗り、ハデな女の子をつれて、いかにも羽振りの良さそうな生活を送っている。
「各省庁の予算をしっかり通してあげないと、君たちの生活にも支障がでてしまうから大切な仕事なんだよ。」
くたびれたスーツ姿の光一が少しイラつきながら言うと、
「はーい。優等生さまが配分してくれた予算で提供される行政サービスをしっかり消費することで社会貢献しまーす。」
と煽るような言葉を発して、涼輔は彼女と夜の町へ消えていった。
"大学の劣等生だったあいつがバブルの恩恵を享受しているのに、成績優秀で国民の為に尽くしたいという意欲のある自分がこんな惨めな生活しているのはおかしくないか?"
と思いながら、帰り道の商店街を通っていると、
"時(人生)買います。"
と書かれた札の付いた屋台があることに気付いた。
"もしかして、いそがしく仕事をして寝るだけの毎日を早く終わりにしてくれるんじゃないのか?"
そう思った光一は屋台に寄ってみることにした。
「いらっしゃい。この店はあなたの時間(人生)を売って、それと同等のモノ、経験、契約が手に入る店だよ。」
と店員が言った。
「今、自分が働いているお役所のトップになって民間企業に就職した同級生を見返してやりたいんですができますか?」
と光一がいうと、
「君の勤めているお役所のトップになる年齢は大体55歳位だから、今から23年の人生を売ってもらうことになるけどそれでもいいのかい?」
と店員が尋ねたので、
「売ってしまった時間の思い出はどうなるのでしょうか?」
と光一が質問すると、
「君がやったことは世間の記録としては残るけど、売ってしまった時間の思い出は君の記憶には残らないよ。」
と店員が答えた。
"それじゃあ。23年人生を早送りさせるのと同じだなぁ。ただ人生を売りさえすれば、同期で一人しかなれないトップになれるのだから売ってしまえ"
と思った光一は
「人生売ります。契約させてください。」
といい店員が出した契約書にサインをした。
光一がサインするや否や自身が部下から上がってくる各省庁の予算の査定にダメ出しをしていることに気が付いた。
「この道路は必要ないし、農業は栽培から販売まで自助努力で行わせないとダメじゃないか。他国が軍事進行してきたら傭兵に対応させなさい。」
"各省庁の予算を握るのって楽しい"
光一は、うきうきしてきた。
様々な予算を査定するなかで
"各国民が自主自立し、民間企業中心で生活をなりたたせていることこそが喜ばしいことではないか"
と思い、自己陶酔に浸っていた。
そんなとき
「本日は大学時代のお仲間との同窓会の予定だって言ってたじゃないですか。そろそろ退勤しないと遅刻っすよ。」
と部下から言われたので光一はあくせく役所を後にした。
"なんかよくわからんが、このスマホとやらのいう通りの場所で同窓会があるようだからいってみることにしよう"
なれないスマホ操作に悪戦苦闘しながら会場のホテルに、同窓会開始時刻ギリギリに到着した。
「よう。元気そうじゃないか」
声の方を振り向くと、白髪が目立つようになった涼輔がそこにいた。
「久し振りだな。仕事うまくいってるか?俺、役所のトップまで上り詰めたんだぜ。この国も民間中心でうまく回っているようだし俺の努力の賜物だな」
光一は涼輔に自身の成功を得意そうに語ったところ
「うまく回っているだと。とんでもない。あまりにも予算が絞られ過ぎていて行政サービスがいき届かなくなって、俺は家族で海外に移住したぜ」
涼輔がカリカリしながら言ったのを聞いて、
"ムカつく涼輔を見返してやりたかっただけなのに、どうやら俺はとんでもないことをしでかしてしまったようだぞ。"
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