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第一章 異世界転生と新天地への旅立ち
1-21 南下完了
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ロウにとっては肩透かしだったが、ボルドーへ到着後の聴取はごく短い時間で終わった。
というのも、調査団から聞き取りを受けた際にボルドーへの報告書も受け取っていたということが大きい。
報告書の信憑性は、都市の精鋭たる騎士であり調査団の長であるネイサンの勲章によって裏打ちされていた。そのため、衛兵たちから疑いの目を向けられることもなかったのだ。
「ネイサン殿のおかげですんなり街には入れたのう」
「報告書を持っていたのがムスターファ殿だったっていうのも大きそうですよ。どこの誰とも知れない者なら、確実に疑いの目を向けられたはずですから」
ボルドーは現在厳戒態勢を敷いており、人の出入りが制限された状態だ。本来であれば入都税を払うことですんなりと入ることが出来る城門も、厳しい検閲のために長蛇の列ができ、列の脇に商人が簡易の店を出す始末である。
ロウのような身元の不確かなものもボルドーへ入ることができたのは、ひとえにムスターファの積み上げた信用があったからであろう。
「ムスターファ殿、冒険者組合への報告があるので、俺たちはここで失礼します。積み荷や馬車を守り切れず、申し訳ありません」
都市の商業区画まで辿り着いた時、アルベルトが依頼主であるムスターファに切り出した。
「君たちの護衛は実に素晴らしいものだったよ。道中も野営も快適だったからね。最後は、ただただ運が悪かった。損失が出た以上全額は出せないが、報酬は組合へ送金しておこう。また機会があれば是非とも頼むよ」
「ありがとうございます。『竜殺し』の名を持つ以上、真なる竜をも退ける力を目指し精進します」
(「竜殺し」も大変だな。過分な二つ名に潰されなければいいが)
(いうて、「亜竜殺し」だと語感が悪いし残念感増し増しだぞ。格好良さの代償ってことでアルベルトには頑張ってもらうしかない)
(確かに「亜竜殺し」じゃあきまりが悪いな)
ムスターファたちが別れの挨拶をしている間にロウはといえば、益のない脳内会話に興じていた。
どうせこの後ムスターファの屋敷に行くのだからと気楽なものである。
「ロウも色々とありがとうな。お礼に『白き風』で接待でもしようかと思ってたけど、先にムスターファ殿から勧誘を受けてるとは思わなかったぞ」
アルベルトの言う「白き風」は、彼らのパーティーである。メンバーはここに居るアルベルト、レア、アルバの三人と小規模だが、幾度も亜竜や魔族のような大物を狩った実績のある面々だ。
「ムスターファさんの私兵だって話は都市に入るための便宜的なものですよ。実際に私兵としての契約関係になっているわけじゃありませんから。そんなわけで、是非とも接待をお願いします」
いけしゃあしゃあと言い放つロウ。これにはさしものムスターファも苦笑いである。
「儂を前にして言うかね……いや、実に君らしいと思ってしまうが。会って間もないのに奇妙な話だが、そのふてぶてしさこそが“らしい”と思えてならないよ」
彼の言葉に同意するようにアルベルトも引き攣った笑みを浮かべているが、自分から接待の提案をした以上撤回は出来ない。
「冗談のつもりだったのに余計なこと言っちまったな。ともかく、困ったことがあれば冒険者組合で俺たちへ言伝してくれ。しばらくはボルドーを拠点にするつもりだからな」
ロウへ協力を惜しまない旨を伝え、組合へと向かうアルベルト。続くレアとアルバもロウとムスターファに感謝と別れを告げ、去っていった。
◇◆◇◆
アルベルトたちと別れたロウは、都市の中枢である上層区に位置するムスターファの邸宅の一室に招き入れられた。
広大な敷地を誇る彼の屋敷は正に豪華絢爛。
手入れが行き届いた幾何学的な美しさを醸す庭園や、部屋に通されるまでの廊下で飾られている魔力を込められ妖しく引き込まれるような絵画、室内を彩る美しいな調度品等々……。少年にとって馴染みのないものばかりだった。
(すげーな。公爵家の別荘でもこれほどの贅を凝らしたものじゃなかったけど)
ムスターファは自分の想像よりも力のある商人だったようだと、ロウは心の内で驚嘆する。
(この屋敷の豪奢な様には驚いたが。お前さん、人間族国家の、公爵家の屋敷にも入ったことがあるのか? 魔族だってのに)
(真っ当に招き入れられたわけじゃないって。……どうしても視界に入る品々の価値を計ってしまうのは、盗賊としてさもしく生きてきた故の性か)
銀刀たるサルガスと脳内で話している内に、自身の言葉で鬱屈としてくるロウ。
中島太郎として生きてきた時はこうではなかったのにと嘆きつつも、鋭く周囲を観察することを止められない。それはロウとしての人生があまりにも過酷であり、その動きこそが肉体に染み付いた自然な行動だからかもしれない。
(そう悲観することでもないでしょう。価値を計ることを続けていれば自然と弁別が身に付き審美眼も鍛えられようものです)
(そう言ってもらえるとしょうもない癖も悪くないと思えてくる。ありがとな)
ギルタブは相変わらずこちらの気持ちを上向かせるのが巧みだと思ったロウは、少し気恥ずかしさを感じながらも、鬱々とした気を晴らしてくれたことに感謝の念を伝えた。
(おお……ロウから礼を言われると、こう、刀身の背の側がゾクゾクしてきますね)
鞘の中で身じろぎする様に震えるギルタブ。その様、すこぶる不気味である。
((うわあ……))
あたかも奇想天外なものを見たというようにドン引きする、少年ともう一振りの曲刀。
(見なかったことにするか)
(英断だな。見ざる聞かざる言わざるで行こう)
該当記憶を抹消するサルガスに三猿にあやかり加護を求めるロウ。散々な対応だが、独りで身悶える漆黒の曲刀など恐怖の対象以外の何物でもない。
二人してギルタブの奇行に戦慄していたところで、入室を知らせるノックがかかる。
「失礼いたします。お飲み物をお持ちいたしました」
「お気遣い、ありがとうございます」
いかにも仕事が出来そうな白髪の老執事──アルデスが紅茶を運んできたのだ。
今生はもちろん前世でも紅茶を嗜んだことなどなかったロウ。
しかしそれでも、ドレイクの襲撃から慣れぬ商談を通し凝り固まった身体の疲労が解けていくような、そんな心安らぐ風味を紅茶から感じた。
「とても落ち着く香りですね。紅茶には明るくないですが、とても美味しく感じます」
ホッと一息吐いて告げた少年の言葉に対し、アルデスは折り目正しく一礼し茶葉についての解説を加える。
「お気に召されたのなら何よりです。この紅茶はボルドー近隣にあるガイヤルド山脈で生育した茶葉を使用しており、アーリア商会でも人気の品の一つです。その茶畑の経営にムスターファ様も携わっておりますので、ロウ様のお言葉を聞けばお喜びになることでしょう」
それからしばらくの間、ロウは色々とこの老執事にアーリア商会のことを質問を重ね、ムスターファが実に様々な事業や商売に手を出していることを知ることができた。
(正に大商人、大商会だな。知り合えたのは僥倖だったじゃないか)
知り得た内容についてサルガスは軽く語るが、ロウは懐疑的だ。
(恩を売れたのは良かったけど、どうだろうな? 大きい商会だけあって色々な情報や物は集まりそうだけど、面倒ごとも付いて回りそうな雰囲気だ。アルデスさん一人とったって尋常じゃないし。この人、物腰は柔らかいけど俺が視線外してる時は鋭く観察してるし、何より隙が一切ない。何時でも俺を組み伏せられるよう、無駄な重心の移動が全くないぜ)
ふんふんと相槌を返しながらも密かに観察を行っていた少年は、この老執事が只者ではないと看破していた。アルデスを一目見た時から身に纏う白い魔力の濃さに驚き、彼の様子を子細に観察していたのだ。
(ロウはよく観察していますね。私も紅茶を飲んでみたいなあ、なんて考えていたのが恥ずかしくなるのです)
魔力量は不明だが、質で言えばあの才女ヤームルに匹敵しそうだ──そんなことをロウが考えていると、黒刀から意気消沈したような念話が届く。いつもは涼しげな彼女の声音も、心なしか落ち込んでいるように聞こえる。
少年の中での黒刀の印象は、近頃は有能秘書からポンコツ秘書へと傾きつつあった。彼女は基本的に優秀だが、妙な所で抜けている。
そんな主の心情を読み取ったのか、あるいは単純に会話に混ざりたかったのか。銀刀も黒刀に同調するような念話を発する。
(あー。人族たちの真似をしてみたい分かるな。俺たちの場合、そう望めば身体も獲得できるかもしれないし)
(えッ!? マジかよ。武器の成長ってそんなことまで可能なのか。前に聞いてた魔法が使えるようになるって話より、よっぽど衝撃的なんだけど)
曰く、喋る曲刀が曲刀人間(?)へと成長するという。驚くなという方が無理難題というものだ。
(私たちを打ったハダルの作品の中にも、人族のような身体を獲得したものがいました。兄妹ともいえる彼女が肉体を得たならば、私たちも可能だと思うのです)
(そういえば末っ子だったんだっけ君ら。いつかその武器? 女性? にも会ってみたいもんだなー)
とりとめのない話を脳内で繰り広げていると、部屋の隅で待機していたアルデスが音もなく扉へ向かう気配が感じられた。
「ムスターファ様がいらしたようです」
ロウの知覚網にも既にムスターファの気配は察知できていたが、彼は動かなかった。
腕が立つであろうこの老執事にあまり鋭い反応を見せたくなかったこと、そして相手がどの辺りで反応するのか確かめたかったこと。少年はしたたかにもアルデスの動きを待っていたのだ。
その行動が功を奏したのか、自身へ向けられる視線が多少緩む。ロウは警戒が弱まったことに安堵しながら姿勢を正す。
そうして居住まいを正し座して待つこと数十秒。主人の気配を感じたアルデスが扉を開け、少々疲労感が顔に滲むムスターファが入室する。
「待たせてすまなかったね、ロウ君」
「いえ。こちらこそ貴重なお時間を割いていただき、ありがたく思います」
「冒険者組合への報告書の作成に思いのほか時間をとられてね……失礼」
ソファへ背を預け紅茶でのどを潤すムスターファ。亡くなった冒険者の組合への報告や都市への竜出現報告、馬車荷車の損失額の計算など頭を悩ませることが多いのだろうか、その表情は疲れが透けて見えそうなものだ。
「お疲れのところ申し訳ないです。とりあえずのところ、素材を引き渡す日時の取り決め、内容が書面で確認できる契約書の準備を出来たらなと考えています」
時間をとらせるのも悪いと考え、ロウは早速本題を切り出す。
商談など、飲食店のアルバイトくらいしか働いた経験のない、平凡な大学生だった自分には荷が重く、さっさと遁走したいという考えも当然ある。最低限書面で確認できるようにしたら、後は全て放り投げてしまいたい。彼はそんな気分でもあった。
「フフ、気を遣ってもらってすまんのう。書面の準備は終わっているから目を通してほしい……まさか、その歳で契約書を残すという発想が出てくるとは思わなかったよ。文字を読めることは半ば予想していたがね」
虚を突かれたようにしばし呆然としながらムスターファが呟く。
ロウはといえば微笑みを張り付けたポーカーフェイスを維持しているが、内面では頭を抱えて七転八倒ものである。
(あがー! やっちまったァー! 書面とか言わずにぶん投げりゃ良かったんだ。高評価得た方が今後の取引で有利とはいえ、絶対必要以上に買いかぶられてるわ)
とはいえ、やらかした事実は消えない以上さっくり切り替えてしまうに限る。幸いにしてムスターファが書類を持ってきているのだ。読んでいれば意識も勝手に変わるというものだと、ロウは己に言い聞かせた。
(あの爺さんから見たら神童のように映ってるだろうなあロウは。ククッ)
(問題ありませんよロウ。あの程度ならば買い被りでも何でもなく事実なのです)
他人事のサルガスと過大評価のギルタブ。いずれも少年の過去のことなど斟酌してくれない。
近いうちに目立ちたくないという方針だけではなく、過去の悪行も伝えたほうが良いかもしれない。少年は書類に目を通しながら小さく嘆息する。
自身が持っている力は尋常ならざるものだが、内面は一般人として長く生きてきた認識があるため、力に対して不相応で歪なものだ。曲刀たちとの会話でも精神を摩耗してしまう現状はあまりよろしくないものだった。
そんな小心者のような決意を秘めつつ、彼は書類の確認を終えた。
書いてあることはお互いが決めた金額、今後決めた金額が変動するかどうかは要相談、持ち込まれた素材に他者から奪う、禁猟区や保護区域などで獲るなどの不正があった場合は一方的に取引を打ち切る。そして類似の契約を行うことを禁止する──そんな旨であった。
「確認いたしました。こちらとしては気になる点はありません。この場で署名をしても?」
「フム……」
おとがいに手を当てまたも考え込むムスターファ。ロウは書面を読む時間が短すぎたかもしれないと考え、自分が内容を把握していることを伝える。
「取引内容も複雑なものではありませんし、不正に関する対応も素性の知れない人間相手ならば当然とも言えるものです。取引出来るだけでも望外なことなので、煮詰める事もないと考え今日この場での署名を申し入れました」
「イヤイヤイヤ……呆けてすまなかった。君が内容を理解しているのは十分伝わったよ。儂も話がこの場で決まるならありがたい。ただ、思ってもみなかったことでね」
困ったような微笑を浮かべる老人を見て、ロウはまたしてもやらかしたかァ! と歪みそうになる表情を必死に抑え込む。
(あああァーッ! 十歳くらいのガキが理路整然と要点挙げだしたら、そりゃあ戸惑うよな! ……もういっそ開き直るか。演技するのも面倒臭いし疲れるし、俺はそんなに器用じゃないし。何より今更だ)
((……))
曲刀二人の呆れた思念が伝わってくるが、ロウには構っている余裕などない。故に放置であった。
「儂は既に署名済みだ。もう一度内容を確認して、問題が無ければ署名してもらいたい」
ムスターファに請われ再度書面に目を向ける。ロウは確認を終え署名し、彼に書類を渡した。
「ありがとう。フフッ、君の働き次第では今回失った資産以上の益が出るだろう。期待しているよ」
ニッと口角を上げ白い歯を見せるムスターファ。時折見せるこういう仕草をする彼は若々しい。未だ精力的に活動し、その身体に活力が満ちているというのも納得できる瞬間だ。
(元気な爺さんだ)
自分と同年代の孫がいるとは思えないムスターファの仕草に、思わず微笑んでしまうロウだった。
というのも、調査団から聞き取りを受けた際にボルドーへの報告書も受け取っていたということが大きい。
報告書の信憑性は、都市の精鋭たる騎士であり調査団の長であるネイサンの勲章によって裏打ちされていた。そのため、衛兵たちから疑いの目を向けられることもなかったのだ。
「ネイサン殿のおかげですんなり街には入れたのう」
「報告書を持っていたのがムスターファ殿だったっていうのも大きそうですよ。どこの誰とも知れない者なら、確実に疑いの目を向けられたはずですから」
ボルドーは現在厳戒態勢を敷いており、人の出入りが制限された状態だ。本来であれば入都税を払うことですんなりと入ることが出来る城門も、厳しい検閲のために長蛇の列ができ、列の脇に商人が簡易の店を出す始末である。
ロウのような身元の不確かなものもボルドーへ入ることができたのは、ひとえにムスターファの積み上げた信用があったからであろう。
「ムスターファ殿、冒険者組合への報告があるので、俺たちはここで失礼します。積み荷や馬車を守り切れず、申し訳ありません」
都市の商業区画まで辿り着いた時、アルベルトが依頼主であるムスターファに切り出した。
「君たちの護衛は実に素晴らしいものだったよ。道中も野営も快適だったからね。最後は、ただただ運が悪かった。損失が出た以上全額は出せないが、報酬は組合へ送金しておこう。また機会があれば是非とも頼むよ」
「ありがとうございます。『竜殺し』の名を持つ以上、真なる竜をも退ける力を目指し精進します」
(「竜殺し」も大変だな。過分な二つ名に潰されなければいいが)
(いうて、「亜竜殺し」だと語感が悪いし残念感増し増しだぞ。格好良さの代償ってことでアルベルトには頑張ってもらうしかない)
(確かに「亜竜殺し」じゃあきまりが悪いな)
ムスターファたちが別れの挨拶をしている間にロウはといえば、益のない脳内会話に興じていた。
どうせこの後ムスターファの屋敷に行くのだからと気楽なものである。
「ロウも色々とありがとうな。お礼に『白き風』で接待でもしようかと思ってたけど、先にムスターファ殿から勧誘を受けてるとは思わなかったぞ」
アルベルトの言う「白き風」は、彼らのパーティーである。メンバーはここに居るアルベルト、レア、アルバの三人と小規模だが、幾度も亜竜や魔族のような大物を狩った実績のある面々だ。
「ムスターファさんの私兵だって話は都市に入るための便宜的なものですよ。実際に私兵としての契約関係になっているわけじゃありませんから。そんなわけで、是非とも接待をお願いします」
いけしゃあしゃあと言い放つロウ。これにはさしものムスターファも苦笑いである。
「儂を前にして言うかね……いや、実に君らしいと思ってしまうが。会って間もないのに奇妙な話だが、そのふてぶてしさこそが“らしい”と思えてならないよ」
彼の言葉に同意するようにアルベルトも引き攣った笑みを浮かべているが、自分から接待の提案をした以上撤回は出来ない。
「冗談のつもりだったのに余計なこと言っちまったな。ともかく、困ったことがあれば冒険者組合で俺たちへ言伝してくれ。しばらくはボルドーを拠点にするつもりだからな」
ロウへ協力を惜しまない旨を伝え、組合へと向かうアルベルト。続くレアとアルバもロウとムスターファに感謝と別れを告げ、去っていった。
◇◆◇◆
アルベルトたちと別れたロウは、都市の中枢である上層区に位置するムスターファの邸宅の一室に招き入れられた。
広大な敷地を誇る彼の屋敷は正に豪華絢爛。
手入れが行き届いた幾何学的な美しさを醸す庭園や、部屋に通されるまでの廊下で飾られている魔力を込められ妖しく引き込まれるような絵画、室内を彩る美しいな調度品等々……。少年にとって馴染みのないものばかりだった。
(すげーな。公爵家の別荘でもこれほどの贅を凝らしたものじゃなかったけど)
ムスターファは自分の想像よりも力のある商人だったようだと、ロウは心の内で驚嘆する。
(この屋敷の豪奢な様には驚いたが。お前さん、人間族国家の、公爵家の屋敷にも入ったことがあるのか? 魔族だってのに)
(真っ当に招き入れられたわけじゃないって。……どうしても視界に入る品々の価値を計ってしまうのは、盗賊としてさもしく生きてきた故の性か)
銀刀たるサルガスと脳内で話している内に、自身の言葉で鬱屈としてくるロウ。
中島太郎として生きてきた時はこうではなかったのにと嘆きつつも、鋭く周囲を観察することを止められない。それはロウとしての人生があまりにも過酷であり、その動きこそが肉体に染み付いた自然な行動だからかもしれない。
(そう悲観することでもないでしょう。価値を計ることを続けていれば自然と弁別が身に付き審美眼も鍛えられようものです)
(そう言ってもらえるとしょうもない癖も悪くないと思えてくる。ありがとな)
ギルタブは相変わらずこちらの気持ちを上向かせるのが巧みだと思ったロウは、少し気恥ずかしさを感じながらも、鬱々とした気を晴らしてくれたことに感謝の念を伝えた。
(おお……ロウから礼を言われると、こう、刀身の背の側がゾクゾクしてきますね)
鞘の中で身じろぎする様に震えるギルタブ。その様、すこぶる不気味である。
((うわあ……))
あたかも奇想天外なものを見たというようにドン引きする、少年ともう一振りの曲刀。
(見なかったことにするか)
(英断だな。見ざる聞かざる言わざるで行こう)
該当記憶を抹消するサルガスに三猿にあやかり加護を求めるロウ。散々な対応だが、独りで身悶える漆黒の曲刀など恐怖の対象以外の何物でもない。
二人してギルタブの奇行に戦慄していたところで、入室を知らせるノックがかかる。
「失礼いたします。お飲み物をお持ちいたしました」
「お気遣い、ありがとうございます」
いかにも仕事が出来そうな白髪の老執事──アルデスが紅茶を運んできたのだ。
今生はもちろん前世でも紅茶を嗜んだことなどなかったロウ。
しかしそれでも、ドレイクの襲撃から慣れぬ商談を通し凝り固まった身体の疲労が解けていくような、そんな心安らぐ風味を紅茶から感じた。
「とても落ち着く香りですね。紅茶には明るくないですが、とても美味しく感じます」
ホッと一息吐いて告げた少年の言葉に対し、アルデスは折り目正しく一礼し茶葉についての解説を加える。
「お気に召されたのなら何よりです。この紅茶はボルドー近隣にあるガイヤルド山脈で生育した茶葉を使用しており、アーリア商会でも人気の品の一つです。その茶畑の経営にムスターファ様も携わっておりますので、ロウ様のお言葉を聞けばお喜びになることでしょう」
それからしばらくの間、ロウは色々とこの老執事にアーリア商会のことを質問を重ね、ムスターファが実に様々な事業や商売に手を出していることを知ることができた。
(正に大商人、大商会だな。知り合えたのは僥倖だったじゃないか)
知り得た内容についてサルガスは軽く語るが、ロウは懐疑的だ。
(恩を売れたのは良かったけど、どうだろうな? 大きい商会だけあって色々な情報や物は集まりそうだけど、面倒ごとも付いて回りそうな雰囲気だ。アルデスさん一人とったって尋常じゃないし。この人、物腰は柔らかいけど俺が視線外してる時は鋭く観察してるし、何より隙が一切ない。何時でも俺を組み伏せられるよう、無駄な重心の移動が全くないぜ)
ふんふんと相槌を返しながらも密かに観察を行っていた少年は、この老執事が只者ではないと看破していた。アルデスを一目見た時から身に纏う白い魔力の濃さに驚き、彼の様子を子細に観察していたのだ。
(ロウはよく観察していますね。私も紅茶を飲んでみたいなあ、なんて考えていたのが恥ずかしくなるのです)
魔力量は不明だが、質で言えばあの才女ヤームルに匹敵しそうだ──そんなことをロウが考えていると、黒刀から意気消沈したような念話が届く。いつもは涼しげな彼女の声音も、心なしか落ち込んでいるように聞こえる。
少年の中での黒刀の印象は、近頃は有能秘書からポンコツ秘書へと傾きつつあった。彼女は基本的に優秀だが、妙な所で抜けている。
そんな主の心情を読み取ったのか、あるいは単純に会話に混ざりたかったのか。銀刀も黒刀に同調するような念話を発する。
(あー。人族たちの真似をしてみたい分かるな。俺たちの場合、そう望めば身体も獲得できるかもしれないし)
(えッ!? マジかよ。武器の成長ってそんなことまで可能なのか。前に聞いてた魔法が使えるようになるって話より、よっぽど衝撃的なんだけど)
曰く、喋る曲刀が曲刀人間(?)へと成長するという。驚くなという方が無理難題というものだ。
(私たちを打ったハダルの作品の中にも、人族のような身体を獲得したものがいました。兄妹ともいえる彼女が肉体を得たならば、私たちも可能だと思うのです)
(そういえば末っ子だったんだっけ君ら。いつかその武器? 女性? にも会ってみたいもんだなー)
とりとめのない話を脳内で繰り広げていると、部屋の隅で待機していたアルデスが音もなく扉へ向かう気配が感じられた。
「ムスターファ様がいらしたようです」
ロウの知覚網にも既にムスターファの気配は察知できていたが、彼は動かなかった。
腕が立つであろうこの老執事にあまり鋭い反応を見せたくなかったこと、そして相手がどの辺りで反応するのか確かめたかったこと。少年はしたたかにもアルデスの動きを待っていたのだ。
その行動が功を奏したのか、自身へ向けられる視線が多少緩む。ロウは警戒が弱まったことに安堵しながら姿勢を正す。
そうして居住まいを正し座して待つこと数十秒。主人の気配を感じたアルデスが扉を開け、少々疲労感が顔に滲むムスターファが入室する。
「待たせてすまなかったね、ロウ君」
「いえ。こちらこそ貴重なお時間を割いていただき、ありがたく思います」
「冒険者組合への報告書の作成に思いのほか時間をとられてね……失礼」
ソファへ背を預け紅茶でのどを潤すムスターファ。亡くなった冒険者の組合への報告や都市への竜出現報告、馬車荷車の損失額の計算など頭を悩ませることが多いのだろうか、その表情は疲れが透けて見えそうなものだ。
「お疲れのところ申し訳ないです。とりあえずのところ、素材を引き渡す日時の取り決め、内容が書面で確認できる契約書の準備を出来たらなと考えています」
時間をとらせるのも悪いと考え、ロウは早速本題を切り出す。
商談など、飲食店のアルバイトくらいしか働いた経験のない、平凡な大学生だった自分には荷が重く、さっさと遁走したいという考えも当然ある。最低限書面で確認できるようにしたら、後は全て放り投げてしまいたい。彼はそんな気分でもあった。
「フフ、気を遣ってもらってすまんのう。書面の準備は終わっているから目を通してほしい……まさか、その歳で契約書を残すという発想が出てくるとは思わなかったよ。文字を読めることは半ば予想していたがね」
虚を突かれたようにしばし呆然としながらムスターファが呟く。
ロウはといえば微笑みを張り付けたポーカーフェイスを維持しているが、内面では頭を抱えて七転八倒ものである。
(あがー! やっちまったァー! 書面とか言わずにぶん投げりゃ良かったんだ。高評価得た方が今後の取引で有利とはいえ、絶対必要以上に買いかぶられてるわ)
とはいえ、やらかした事実は消えない以上さっくり切り替えてしまうに限る。幸いにしてムスターファが書類を持ってきているのだ。読んでいれば意識も勝手に変わるというものだと、ロウは己に言い聞かせた。
(あの爺さんから見たら神童のように映ってるだろうなあロウは。ククッ)
(問題ありませんよロウ。あの程度ならば買い被りでも何でもなく事実なのです)
他人事のサルガスと過大評価のギルタブ。いずれも少年の過去のことなど斟酌してくれない。
近いうちに目立ちたくないという方針だけではなく、過去の悪行も伝えたほうが良いかもしれない。少年は書類に目を通しながら小さく嘆息する。
自身が持っている力は尋常ならざるものだが、内面は一般人として長く生きてきた認識があるため、力に対して不相応で歪なものだ。曲刀たちとの会話でも精神を摩耗してしまう現状はあまりよろしくないものだった。
そんな小心者のような決意を秘めつつ、彼は書類の確認を終えた。
書いてあることはお互いが決めた金額、今後決めた金額が変動するかどうかは要相談、持ち込まれた素材に他者から奪う、禁猟区や保護区域などで獲るなどの不正があった場合は一方的に取引を打ち切る。そして類似の契約を行うことを禁止する──そんな旨であった。
「確認いたしました。こちらとしては気になる点はありません。この場で署名をしても?」
「フム……」
おとがいに手を当てまたも考え込むムスターファ。ロウは書面を読む時間が短すぎたかもしれないと考え、自分が内容を把握していることを伝える。
「取引内容も複雑なものではありませんし、不正に関する対応も素性の知れない人間相手ならば当然とも言えるものです。取引出来るだけでも望外なことなので、煮詰める事もないと考え今日この場での署名を申し入れました」
「イヤイヤイヤ……呆けてすまなかった。君が内容を理解しているのは十分伝わったよ。儂も話がこの場で決まるならありがたい。ただ、思ってもみなかったことでね」
困ったような微笑を浮かべる老人を見て、ロウはまたしてもやらかしたかァ! と歪みそうになる表情を必死に抑え込む。
(あああァーッ! 十歳くらいのガキが理路整然と要点挙げだしたら、そりゃあ戸惑うよな! ……もういっそ開き直るか。演技するのも面倒臭いし疲れるし、俺はそんなに器用じゃないし。何より今更だ)
((……))
曲刀二人の呆れた思念が伝わってくるが、ロウには構っている余裕などない。故に放置であった。
「儂は既に署名済みだ。もう一度内容を確認して、問題が無ければ署名してもらいたい」
ムスターファに請われ再度書面に目を向ける。ロウは確認を終え署名し、彼に書類を渡した。
「ありがとう。フフッ、君の働き次第では今回失った資産以上の益が出るだろう。期待しているよ」
ニッと口角を上げ白い歯を見せるムスターファ。時折見せるこういう仕草をする彼は若々しい。未だ精力的に活動し、その身体に活力が満ちているというのも納得できる瞬間だ。
(元気な爺さんだ)
自分と同年代の孫がいるとは思えないムスターファの仕草に、思わず微笑んでしまうロウだった。
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主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
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「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
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しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
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フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
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冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
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