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第二章 工業都市ボルドー
2-26 異形の魔物セルケト、リバース
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時は前後し、ロウがムスターファ邸を出発して、冒険者組合へ向かっていた頃。
「ぐうぅ……腹と背が同化してしまいそうだ。こなくそ! このような惨めな死に方があって堪るかっ!」
ガイヤルド山脈の麓の森林地帯にて、異形の魔物セルケトは途方に暮れていた。
彼女は現在、飢えていた。それも死を感じるほどの飢えである。
二日前に決意を秘め、強くなるために身体を作り替えたというのに、まさか戦う以前に空腹で餓死寸前にまで追い込まれようなどとは想像できようはずもなかった。
無論彼女とて、食料の選り好みをしていたわけではない。気は進まなかったが、肉体を作り替える以前食していた動物や魔物の生肉に挑戦したこともある。
だが、以前は抵抗なく──旨いなどと感じたことは無かったが──食べられた生肉たちが、今ではその臭いや味に強い忌避感を覚えるようになっていた。
のみならず、強烈な嘔吐感をもよおしてしまうのだ。実際、彼女は挑戦した生肉のほとんどをリバースしている。
それでもなお食事に挑戦し続け糊口を凌いできたが、未だそこいらの大型肉食獣よりも巨大な肉体を持つ彼女。そんなか細い食生活を耐え続けられるはずもない。
「このまま我は、あの少年との再戦叶わず、朽ち果ててしまうか……無念……ん?」
初めて手にした望みを果たせぬまま飢えて死んでいくのかと、悲嘆に暮れた彼女だったが──飢えたことで研ぎ澄まされた嗅覚が、これまでにない刺激を突如として感知した。
「──これは……唾液が溢れるっ!? なんということだ、分かる、解るぞっ! これは我が体の欲する糧の匂いだっ!」
雷光に打たれたかの如く急激に走る衝動。優美な曲線を描く下顎を伝った涎を拭い、セルケトはがばりと身を起こす。その勢いのままこの機を断じて逃さぬと死力を振り絞り、匂いの下へとひた走る。
まだまだ元気が有り余ってたのではないかと思うほどの速力で森を駆け抜け、彼女は匂いが漂う場所付近に到達した。
遠方で動く影を柴染色の瞳で捉えると、彼女は即座に樹上へ身を隠し、気配を断って様子を窺う。
今までの様な無策の突撃など論外だ。確実に仕留めなければならないのだから。
「ふむ……あれは人族たちか。あやつらの食らう食料の臭いが、我の元まで漂ってきたということか? 殺して奪うか、譲ってくれと説得してみるか……」
口内で泉のように湧き出る生唾を嚥下しつつ、枝葉の隙間から覗き見る。
セルケトの視線の先では、三人の男女が魔術でこしらえたであろう卓で食事を行っていた。周囲警戒は行っているようだが、近付いた彼女の気配に気が付いた様子はない。
「空腹では力を発揮できず敗れることもありうるか。人族に対し以前の様な敵愾心が湧き出ることも無し。まずは下手に出てみるとしよう。……この姿で躍り出て、あやつらに話が通じるか? という点に疑問は残るが」
戦いとなればそれまでと腹をくくり、ええいままよと人族たちへ身を隠しながらもゆっくりと近づいていくセルケト。
「──何かいるっ!?」
本来ならば寸秒で命を刈り取れる間合いにまで彼女が近づいた、その時。
気配に気づいた森人族の女が声を上げ立ち上がり、人間族の男と小人族の女もそれに続いて立ち上がった──卓を蹴倒し食料をぶちまけながら。
「──あああぁぁぁーっ!? なんということをするのだ! 貴様らは正気かっ!?」
泥にまみれ地に転がった食料を見たセルケトは、瞳に涙をためて慟哭する。
当然である。やっと己の身体が欲する食料にありつけると思ったら、寸前で地に打ち捨てられてしまったのだから……。
とはいえ、事情を知らぬ人族ら──「白き風」のアルベルトらにとっては理解不能である。
半人半魔の女が気配を消して近寄ってきたかと思うと、いきなり声を上げて泣き叫び出したという状況なのだ。度し難いにもほどがある。
「……え? 何?」
「──下はアレだけど、上半身は美人だな。端麗な顔立ち、ツンと上を向いた形の良いおっぱい、へそ周りのくびれ、バランスの良いスタイルがタマラン。話に聞く異形の魔物なのか? 聞いてた印象と随分違うというか、魔物というより魔族に思えるが」
「下半身を見るにかなり高位存在だと思う。件の異形の魔物なら間違いなく強いし、別の存在だとしても十分危険。油断はしないで」
美しい女性なら大体歓迎なアルベルトは、ピンクな思考をフル回転させつつも落ち着いた分析中。対しレアは茫然自失、アルバは警戒感を露わにし愛用の鈍器を構えている。
しかし、セルケトにとってはそれどころではない。
「くっ、やむを得ん。そこを退くのだ人族らよ! 我が地に落ちしそれらを食らう!」
「「「は?」」」
何を言い出すんだこの魔物は? そんな表情を浮かべる三人をよそにセルケトは倒れた卓へと突貫する。眩暈がするほどの飢餓感に苛まされている彼女には、もはやなりふりを構う余裕などないのだ。
「おわッ!?」
「「っ!」」
セルケトの均一のとれた美しい上半身に見惚れていたアルベルトは、彼女の突進に直撃を見舞われた。残る二人は即座に横へ飛び、難を逃れる。
体勢を立て直したレアとアルバは即座に武器を構えたが、セルケトはお構いなしに地面に落ちていたオークの肉を頬張り食らう。
「……っ! ……っ!」
何度も頷き、咽び泣きながら食べ続ける半人半魔。
丸二日ぶりの食事、体を作り替えてからは初。その上味も良い肉となると、感極まって然るべきである。
「アルは無事みたいだし、攻撃の意思があったわけじゃなさそうね~?」
「必死に食べてる。お腹が空いてたみたい?」
「素敵な……ハグだったぜ……ガハッ」
吹っ飛ばされたアルベルトは大した傷もなく幸せそうな表情を浮かべてたため、二人は魔物を警戒しつつもとりあえずのところ様子を見ることに決めた。
◇◆◇◆
──奇怪なる半人半魔の食事を眺めること五分。
「ふぅ。人心地がついた。うぬらに礼を言う」
四本腕で口元の土を拭いながら、居丈高に語り掛けるセルケト。腹が膨れてしまえば人族などに遅れなどとらないが故に、仕方のない態度のかもしれない。
「はぁ。えっと、あなたは一体……?」
「我が名はセルケト。人族らが言うところの魔物である」
「名前、あるんだ。私はアルバ。セルケトは魔族じゃなくて、魔物? 魔物でも、言葉を話せるの?」
「我は生まれが特殊でな。誕生時より言語を解する能力を母から継いでいたのだよ。尤も、話せるようになったのはつい最近ではあるがな」
「知性ある魔物か。俺はアルベルトだ……ちなみにセルケトさんが食ってたのってオークの肉なんだけど、共食いにはならないのか?」
「何ぃっ!? あれがあのマズいオークだっただと!? どういうことだ!?」
「いや、どういうことも何も、オークの肉だし……」
アルベルトが先ほどのセルケトの食事について言及すると、彼女はいきり立ちアルベルトへと詰め寄る。近寄られたことで突き出されることになったセルケトのたわわな果実を、彼は思わず凝視する。そんな彼を白い目で見るレアとアルバ。
「我を謀っているのか? この身になり食性が変化してから幾度となくあやつらの腕や脚、腹に臓物と食らってきたが、先ほどの肉の様な美味なるものではなかったぞ。何度嘔吐した事か……」
「う、そうなんだ。あ、私はレアよ。よろしく……っていうのも変だけど。……う~ん、セルケトさんが食べていたのはバラ肉だったし、調理の仕方がダメだったのかもね~」
「魔物に調理なんて概念無いだろうし、そうかも」
などと、レアとアルバが口々に言う。なお、アルベルトは二人からの冷たい視線により精神に致命傷を負ったため口を噤んでいる。
「調理……知っているぞ。確か、火を熾し、水を加え、風で火勢を上げ、土で容器を創る技術……だったはずだな?」
「「なんかちょっと違う!」」
「ふむ……はっ!? そういうことか! つまりは、マズそうに見えたあの肉たちも、生ではなく調理を行うことで我が食すに適したものと変わるのかっ!」
「「「生で食べてたんだ……」」」
魔物故である。致し方なし。
「今までは生で十分だったのだがな。この体となり、食性が変わったのだよ」
「……ちなみに前は、どういう姿だったんだ?」
セルケトが何の気なしに零した言葉に、アルベルトがやや緊張した面持ちで問いを返す。
この問いに対する答え次第では敵対関係となりかねない為、彼の緊張は当然である。彼女が件の異形の魔物ならば、冒険者である彼らがここで見逃す道理はない。
「恐らく汝らが思い描く通りであるよ。我は人を恨み、殺し、食らってきた故にな」
「「「──っッ!」」」
一触即発。アルベルトたちは武器を構えるが、しかしセルケトは動じない。
「貴様らには一飯の恩がある故、見逃しておこう。挑み殺さんとするならば、その限りではないがな」
「……セルケト、あんたはさっきまで空腹で倒れそうだったんだろ? 三人相手によくそんなに余裕な態度でいられるな?」
アルベルトは両手大剣を構えセルケトを見据えながら彼女を挑発する。
彼女が乗れば、たちまちアルバとレアによる連携攻撃が彼女の背後より迫るだろう。
「全く、分からん奴等よな。良かろう、調理についての恩もある。アルベルトよ、試しに汝の放てる全力の攻撃を我に叩きつけてみると良い」
「──は?」
「「!?」」
腕を組みながらお手上げポーズという四本腕ならではのボディランゲージを披露して、嘆息するセルケトは青年の挑発に対し挑発をもって返答する。
魔物だからアルベルトの武器の強力さが分からないのか? それとも大振りの攻撃に合わせて反撃を狙っているのか? 様々な可能性が動揺する三人の脳裏をよぎる。
「簡単なことだ。我の体は堅牢強固であるが故にその大剣など取るに足らぬと、そう言っているのだ。好きな場所を斬りつけるがよい」
アルベルトたちの疑問を払うような宣言と共に、セルケトは四本の腕を広げ八本の脚を地に突き刺し、何処でも来いと言わんばかりに構えを取った。
更には、構えと同時に魔力を解放。肉体の強化を極限まで引き上げる!
「「「!」」」
爆発と見紛うような勢いで溢れ出た魔力に、アルベルトたちは目を剥き息を飲んだ。
「これは……凄まじい魔力だな。だが、チャンスをくれるというなら是非とも挑戦させてもらうぜ」
「アルっ!?」
「……」
アルベルトが両手大剣を背中に背負うように構え、更には捻るように半身となる。
青年が提案を飲んだ直後に僅かな逡巡を見せたレアだったが、アルバも無言で武器を構えためにやむなく戦闘態勢へ。矢を番え魔術を備え、万全を期す。
「……別にアルベルトの攻撃を受けても襲い掛からんというのに。魔物というくびきにも困ったものよな──」
緊張高まる空気をどこ吹く風と、セルケトが嘆息したところで──アルベルトの渾身の一撃が、彼女の胴体を薙いだ。
「おぉおおッ!」
つま先、踵、膝、股関節、腰、背筋、肩、上腕、手首。
溜めに溜めた力を余すことなく連動させたその斬撃は、かつて成人男性数人分のサイズとなるオークキングを吹き飛ばしたそれである。
全身の力を一点に集約させる一撃は、人の上半身なれば剛断一閃真っ二つ。まさしく絶技だ。
惜しむらくは、放った相手が人ならざる魔物であったこと。
外見こそに似ていたが中身は異質、否、皮膚すらも異質だったのだ。故に人の道理は通らない。
「──ッ!?」
全身全霊の横薙ぎはセルケトをのけ反らせ、その衝撃で錨の如く突き刺された八本足に線を描かせたが……彼女の胴体を両断するに及ばず、白磁の肌を浅く裂くに留まった。
「ぐっ、ふ……中々どうして、やるものだなアルベルト? 見くびっていたのは誤りだったようだ」
薙がれた後だというのに、彼女は赤き鮮血を静かに拭って愉快そうに笑みを浮かべる。
「──ふっ!」
「はぁっ!」
そんな結果を知ってか知らずか、レアとアルバは命知らずにも攻撃を放つ。
小人族特有の怪力を乗せた鈍器の重撃、土魔術による相手の脚の拘束、関節や眼球を狙った魔力や炎、冷気を纏う猟矢の嵐。並みの魔物など瞬く間に蜂の巣になる怒涛の攻撃である。
「ふんっ!」
迫りくるその攻撃を、セルケトは武器を出すまでもなく素手にて応じた。
殴り返し、掴み取り、叩き落とし、蹴り砕く。技ですらない一挙動が、人が乾坤一擲と繰り出す捨て身の技に匹敵する。
以前ロウが評した通り、どころか、それ以上の戦力差があるがための光景であった。
「ぐっ!?」「かはっ……」
攻撃が捌かれ隙を晒したアルバに拳、レアに掌底を打ち込み意識を奪い、セルケトはチラリとアルベルトを一瞥する。
彼は既に次なる一撃を腰だめに溜め準備万端、今にも弾丸のような突きを見舞ってきそうな気配である。それを見て、彼女は救いがたいと額に手をやりため息をつく。
「親切かと思えば死にたがり。全く、度し難い。付き合っておれん」
「ッ!? 待て!」
「はんっ。次は無いぞアルベルトよ。貴様の同族らにも伝えよ。この領域に足を踏み入れるならば容赦せんとな!」
アルベルトの制止を一笑に付し、異形の魔物は森の奥へと消えていった。
一人残され暫し立ち尽くしたアルベルトだったが、悔し気に表情を歪ませ吐き捨てる。
「……見逃されたのか。クソッ!」
八つ当たり気味に大剣を振るい樹木を薙ぎ切る。成人男性の倍する太い幹を持つ木が倒れるが、そんな剣もセルケトには通じなかった。
彼女といい街道であった竜といい、何故行く先々で自分を圧倒する存在と鉢合わせてしまうのか。不運を嘆くアルベルトだったが、軽く頭を振るい思考を切り替える。
「あんな化け物連中と会っても生きてるんだ。あいつらの強さは知れた。それなら、俺は超えるべく修練するのみだ!」
自分を圧倒する強者と対峙してなお挫けぬ不屈の心。弱気にのまれぬ克己心。これこそが彼の持ち味であり、自身では気づかぬ強さでもある。
「っと、セルケトは多分来ないだろうけど、このままじゃ魔物がくるかもしれないか。二人を街まで運ばないと。……アルバの締まった身体、レアのむっちりとした尻か。ハッ!? いかんいかん。二人の目が覚めてからギクシャクしたら最悪だし、煩悩は締め出さなければ。無だ、無になるんだ……」
思考を切り替えるのが早すぎて色々台無しだったが、邪な想いを打ち払ったアルベルトは二人を背負い素早くその場を離脱。
セルケトの情報を冒険者組合へと報告すべく、ボルドーへと急いだのだった。
「ぐうぅ……腹と背が同化してしまいそうだ。こなくそ! このような惨めな死に方があって堪るかっ!」
ガイヤルド山脈の麓の森林地帯にて、異形の魔物セルケトは途方に暮れていた。
彼女は現在、飢えていた。それも死を感じるほどの飢えである。
二日前に決意を秘め、強くなるために身体を作り替えたというのに、まさか戦う以前に空腹で餓死寸前にまで追い込まれようなどとは想像できようはずもなかった。
無論彼女とて、食料の選り好みをしていたわけではない。気は進まなかったが、肉体を作り替える以前食していた動物や魔物の生肉に挑戦したこともある。
だが、以前は抵抗なく──旨いなどと感じたことは無かったが──食べられた生肉たちが、今ではその臭いや味に強い忌避感を覚えるようになっていた。
のみならず、強烈な嘔吐感をもよおしてしまうのだ。実際、彼女は挑戦した生肉のほとんどをリバースしている。
それでもなお食事に挑戦し続け糊口を凌いできたが、未だそこいらの大型肉食獣よりも巨大な肉体を持つ彼女。そんなか細い食生活を耐え続けられるはずもない。
「このまま我は、あの少年との再戦叶わず、朽ち果ててしまうか……無念……ん?」
初めて手にした望みを果たせぬまま飢えて死んでいくのかと、悲嘆に暮れた彼女だったが──飢えたことで研ぎ澄まされた嗅覚が、これまでにない刺激を突如として感知した。
「──これは……唾液が溢れるっ!? なんということだ、分かる、解るぞっ! これは我が体の欲する糧の匂いだっ!」
雷光に打たれたかの如く急激に走る衝動。優美な曲線を描く下顎を伝った涎を拭い、セルケトはがばりと身を起こす。その勢いのままこの機を断じて逃さぬと死力を振り絞り、匂いの下へとひた走る。
まだまだ元気が有り余ってたのではないかと思うほどの速力で森を駆け抜け、彼女は匂いが漂う場所付近に到達した。
遠方で動く影を柴染色の瞳で捉えると、彼女は即座に樹上へ身を隠し、気配を断って様子を窺う。
今までの様な無策の突撃など論外だ。確実に仕留めなければならないのだから。
「ふむ……あれは人族たちか。あやつらの食らう食料の臭いが、我の元まで漂ってきたということか? 殺して奪うか、譲ってくれと説得してみるか……」
口内で泉のように湧き出る生唾を嚥下しつつ、枝葉の隙間から覗き見る。
セルケトの視線の先では、三人の男女が魔術でこしらえたであろう卓で食事を行っていた。周囲警戒は行っているようだが、近付いた彼女の気配に気が付いた様子はない。
「空腹では力を発揮できず敗れることもありうるか。人族に対し以前の様な敵愾心が湧き出ることも無し。まずは下手に出てみるとしよう。……この姿で躍り出て、あやつらに話が通じるか? という点に疑問は残るが」
戦いとなればそれまでと腹をくくり、ええいままよと人族たちへ身を隠しながらもゆっくりと近づいていくセルケト。
「──何かいるっ!?」
本来ならば寸秒で命を刈り取れる間合いにまで彼女が近づいた、その時。
気配に気づいた森人族の女が声を上げ立ち上がり、人間族の男と小人族の女もそれに続いて立ち上がった──卓を蹴倒し食料をぶちまけながら。
「──あああぁぁぁーっ!? なんということをするのだ! 貴様らは正気かっ!?」
泥にまみれ地に転がった食料を見たセルケトは、瞳に涙をためて慟哭する。
当然である。やっと己の身体が欲する食料にありつけると思ったら、寸前で地に打ち捨てられてしまったのだから……。
とはいえ、事情を知らぬ人族ら──「白き風」のアルベルトらにとっては理解不能である。
半人半魔の女が気配を消して近寄ってきたかと思うと、いきなり声を上げて泣き叫び出したという状況なのだ。度し難いにもほどがある。
「……え? 何?」
「──下はアレだけど、上半身は美人だな。端麗な顔立ち、ツンと上を向いた形の良いおっぱい、へそ周りのくびれ、バランスの良いスタイルがタマラン。話に聞く異形の魔物なのか? 聞いてた印象と随分違うというか、魔物というより魔族に思えるが」
「下半身を見るにかなり高位存在だと思う。件の異形の魔物なら間違いなく強いし、別の存在だとしても十分危険。油断はしないで」
美しい女性なら大体歓迎なアルベルトは、ピンクな思考をフル回転させつつも落ち着いた分析中。対しレアは茫然自失、アルバは警戒感を露わにし愛用の鈍器を構えている。
しかし、セルケトにとってはそれどころではない。
「くっ、やむを得ん。そこを退くのだ人族らよ! 我が地に落ちしそれらを食らう!」
「「「は?」」」
何を言い出すんだこの魔物は? そんな表情を浮かべる三人をよそにセルケトは倒れた卓へと突貫する。眩暈がするほどの飢餓感に苛まされている彼女には、もはやなりふりを構う余裕などないのだ。
「おわッ!?」
「「っ!」」
セルケトの均一のとれた美しい上半身に見惚れていたアルベルトは、彼女の突進に直撃を見舞われた。残る二人は即座に横へ飛び、難を逃れる。
体勢を立て直したレアとアルバは即座に武器を構えたが、セルケトはお構いなしに地面に落ちていたオークの肉を頬張り食らう。
「……っ! ……っ!」
何度も頷き、咽び泣きながら食べ続ける半人半魔。
丸二日ぶりの食事、体を作り替えてからは初。その上味も良い肉となると、感極まって然るべきである。
「アルは無事みたいだし、攻撃の意思があったわけじゃなさそうね~?」
「必死に食べてる。お腹が空いてたみたい?」
「素敵な……ハグだったぜ……ガハッ」
吹っ飛ばされたアルベルトは大した傷もなく幸せそうな表情を浮かべてたため、二人は魔物を警戒しつつもとりあえずのところ様子を見ることに決めた。
◇◆◇◆
──奇怪なる半人半魔の食事を眺めること五分。
「ふぅ。人心地がついた。うぬらに礼を言う」
四本腕で口元の土を拭いながら、居丈高に語り掛けるセルケト。腹が膨れてしまえば人族などに遅れなどとらないが故に、仕方のない態度のかもしれない。
「はぁ。えっと、あなたは一体……?」
「我が名はセルケト。人族らが言うところの魔物である」
「名前、あるんだ。私はアルバ。セルケトは魔族じゃなくて、魔物? 魔物でも、言葉を話せるの?」
「我は生まれが特殊でな。誕生時より言語を解する能力を母から継いでいたのだよ。尤も、話せるようになったのはつい最近ではあるがな」
「知性ある魔物か。俺はアルベルトだ……ちなみにセルケトさんが食ってたのってオークの肉なんだけど、共食いにはならないのか?」
「何ぃっ!? あれがあのマズいオークだっただと!? どういうことだ!?」
「いや、どういうことも何も、オークの肉だし……」
アルベルトが先ほどのセルケトの食事について言及すると、彼女はいきり立ちアルベルトへと詰め寄る。近寄られたことで突き出されることになったセルケトのたわわな果実を、彼は思わず凝視する。そんな彼を白い目で見るレアとアルバ。
「我を謀っているのか? この身になり食性が変化してから幾度となくあやつらの腕や脚、腹に臓物と食らってきたが、先ほどの肉の様な美味なるものではなかったぞ。何度嘔吐した事か……」
「う、そうなんだ。あ、私はレアよ。よろしく……っていうのも変だけど。……う~ん、セルケトさんが食べていたのはバラ肉だったし、調理の仕方がダメだったのかもね~」
「魔物に調理なんて概念無いだろうし、そうかも」
などと、レアとアルバが口々に言う。なお、アルベルトは二人からの冷たい視線により精神に致命傷を負ったため口を噤んでいる。
「調理……知っているぞ。確か、火を熾し、水を加え、風で火勢を上げ、土で容器を創る技術……だったはずだな?」
「「なんかちょっと違う!」」
「ふむ……はっ!? そういうことか! つまりは、マズそうに見えたあの肉たちも、生ではなく調理を行うことで我が食すに適したものと変わるのかっ!」
「「「生で食べてたんだ……」」」
魔物故である。致し方なし。
「今までは生で十分だったのだがな。この体となり、食性が変わったのだよ」
「……ちなみに前は、どういう姿だったんだ?」
セルケトが何の気なしに零した言葉に、アルベルトがやや緊張した面持ちで問いを返す。
この問いに対する答え次第では敵対関係となりかねない為、彼の緊張は当然である。彼女が件の異形の魔物ならば、冒険者である彼らがここで見逃す道理はない。
「恐らく汝らが思い描く通りであるよ。我は人を恨み、殺し、食らってきた故にな」
「「「──っッ!」」」
一触即発。アルベルトたちは武器を構えるが、しかしセルケトは動じない。
「貴様らには一飯の恩がある故、見逃しておこう。挑み殺さんとするならば、その限りではないがな」
「……セルケト、あんたはさっきまで空腹で倒れそうだったんだろ? 三人相手によくそんなに余裕な態度でいられるな?」
アルベルトは両手大剣を構えセルケトを見据えながら彼女を挑発する。
彼女が乗れば、たちまちアルバとレアによる連携攻撃が彼女の背後より迫るだろう。
「全く、分からん奴等よな。良かろう、調理についての恩もある。アルベルトよ、試しに汝の放てる全力の攻撃を我に叩きつけてみると良い」
「──は?」
「「!?」」
腕を組みながらお手上げポーズという四本腕ならではのボディランゲージを披露して、嘆息するセルケトは青年の挑発に対し挑発をもって返答する。
魔物だからアルベルトの武器の強力さが分からないのか? それとも大振りの攻撃に合わせて反撃を狙っているのか? 様々な可能性が動揺する三人の脳裏をよぎる。
「簡単なことだ。我の体は堅牢強固であるが故にその大剣など取るに足らぬと、そう言っているのだ。好きな場所を斬りつけるがよい」
アルベルトたちの疑問を払うような宣言と共に、セルケトは四本の腕を広げ八本の脚を地に突き刺し、何処でも来いと言わんばかりに構えを取った。
更には、構えと同時に魔力を解放。肉体の強化を極限まで引き上げる!
「「「!」」」
爆発と見紛うような勢いで溢れ出た魔力に、アルベルトたちは目を剥き息を飲んだ。
「これは……凄まじい魔力だな。だが、チャンスをくれるというなら是非とも挑戦させてもらうぜ」
「アルっ!?」
「……」
アルベルトが両手大剣を背中に背負うように構え、更には捻るように半身となる。
青年が提案を飲んだ直後に僅かな逡巡を見せたレアだったが、アルバも無言で武器を構えためにやむなく戦闘態勢へ。矢を番え魔術を備え、万全を期す。
「……別にアルベルトの攻撃を受けても襲い掛からんというのに。魔物というくびきにも困ったものよな──」
緊張高まる空気をどこ吹く風と、セルケトが嘆息したところで──アルベルトの渾身の一撃が、彼女の胴体を薙いだ。
「おぉおおッ!」
つま先、踵、膝、股関節、腰、背筋、肩、上腕、手首。
溜めに溜めた力を余すことなく連動させたその斬撃は、かつて成人男性数人分のサイズとなるオークキングを吹き飛ばしたそれである。
全身の力を一点に集約させる一撃は、人の上半身なれば剛断一閃真っ二つ。まさしく絶技だ。
惜しむらくは、放った相手が人ならざる魔物であったこと。
外見こそに似ていたが中身は異質、否、皮膚すらも異質だったのだ。故に人の道理は通らない。
「──ッ!?」
全身全霊の横薙ぎはセルケトをのけ反らせ、その衝撃で錨の如く突き刺された八本足に線を描かせたが……彼女の胴体を両断するに及ばず、白磁の肌を浅く裂くに留まった。
「ぐっ、ふ……中々どうして、やるものだなアルベルト? 見くびっていたのは誤りだったようだ」
薙がれた後だというのに、彼女は赤き鮮血を静かに拭って愉快そうに笑みを浮かべる。
「──ふっ!」
「はぁっ!」
そんな結果を知ってか知らずか、レアとアルバは命知らずにも攻撃を放つ。
小人族特有の怪力を乗せた鈍器の重撃、土魔術による相手の脚の拘束、関節や眼球を狙った魔力や炎、冷気を纏う猟矢の嵐。並みの魔物など瞬く間に蜂の巣になる怒涛の攻撃である。
「ふんっ!」
迫りくるその攻撃を、セルケトは武器を出すまでもなく素手にて応じた。
殴り返し、掴み取り、叩き落とし、蹴り砕く。技ですらない一挙動が、人が乾坤一擲と繰り出す捨て身の技に匹敵する。
以前ロウが評した通り、どころか、それ以上の戦力差があるがための光景であった。
「ぐっ!?」「かはっ……」
攻撃が捌かれ隙を晒したアルバに拳、レアに掌底を打ち込み意識を奪い、セルケトはチラリとアルベルトを一瞥する。
彼は既に次なる一撃を腰だめに溜め準備万端、今にも弾丸のような突きを見舞ってきそうな気配である。それを見て、彼女は救いがたいと額に手をやりため息をつく。
「親切かと思えば死にたがり。全く、度し難い。付き合っておれん」
「ッ!? 待て!」
「はんっ。次は無いぞアルベルトよ。貴様の同族らにも伝えよ。この領域に足を踏み入れるならば容赦せんとな!」
アルベルトの制止を一笑に付し、異形の魔物は森の奥へと消えていった。
一人残され暫し立ち尽くしたアルベルトだったが、悔し気に表情を歪ませ吐き捨てる。
「……見逃されたのか。クソッ!」
八つ当たり気味に大剣を振るい樹木を薙ぎ切る。成人男性の倍する太い幹を持つ木が倒れるが、そんな剣もセルケトには通じなかった。
彼女といい街道であった竜といい、何故行く先々で自分を圧倒する存在と鉢合わせてしまうのか。不運を嘆くアルベルトだったが、軽く頭を振るい思考を切り替える。
「あんな化け物連中と会っても生きてるんだ。あいつらの強さは知れた。それなら、俺は超えるべく修練するのみだ!」
自分を圧倒する強者と対峙してなお挫けぬ不屈の心。弱気にのまれぬ克己心。これこそが彼の持ち味であり、自身では気づかぬ強さでもある。
「っと、セルケトは多分来ないだろうけど、このままじゃ魔物がくるかもしれないか。二人を街まで運ばないと。……アルバの締まった身体、レアのむっちりとした尻か。ハッ!? いかんいかん。二人の目が覚めてからギクシャクしたら最悪だし、煩悩は締め出さなければ。無だ、無になるんだ……」
思考を切り替えるのが早すぎて色々台無しだったが、邪な想いを打ち払ったアルベルトは二人を背負い素早くその場を離脱。
セルケトの情報を冒険者組合へと報告すべく、ボルドーへと急いだのだった。
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使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
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この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
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スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
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地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
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追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
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祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
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しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
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勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
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チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
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平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
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