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第五章 ヴリトラ大砂漠
5-5 転生者と転生者
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「──貴方には、異なる世界の記憶や知識があるのではないですか?」
まつ毛さえも触れ合うような超至近距離でヤームルから言い放たれたのは、予想だにしない言葉だった。
「……マジかー」
半歩後ずさり、思考の再起動を図る。
オーケー、俺は冷静だ。美少女の灰色の瞳に吸い込まれそうになっていたけど、もう大丈夫だ。
……まさか、俺がヤームルの転生者という証拠を掴む前に、相手から見抜かれるとは。
それもお姫様抱っこが落とし穴だったとは。予想できるわけないっつーの。
バレたもんは仕方がないし、現状確認はこれくらいにして。今は彼女の言葉にどう返すかである。
──俺が中島太郎としての記憶や知識を得てからひと月と少々が経過したが、そういった事情は今まで誰にも、相棒の曲刀たちにすら話していない。
理由はごくごく単純。吹聴して回るものではないからだ。
レムリア大陸を魔族の手から救った大英雄ユウスケのように、この世界において異世界の存在というものは、稀ではあるが存在する。
とはいえ、それはあくまで稀。そん所そこらの子供が「俺は異世界の記憶があるんだぜ!」などと言っても、狂言としかとられないだろう。
この世界にはないような、地球時代の知識を披露すれば信憑性が増すかもしれないが……平々凡々な大学生だった俺に、異世界で役立つ様な専門的な知識など皆無である。
せいぜいが太極拳や八極拳といった大陸拳法であり、これら鍛錬によって磨き上げられた技術を異世界人である証明とするには、些か客観性を欠いている。
何より、足を洗ったとはいえ俺は盗賊だったのだ。妙な知識をひけらかし名が広まるなど論外な身の上であろう。
──などと考えていると。
「沈黙するということは、肯定だということですか?」
ヤームルが話を逸らさせまいと追撃を仕掛けてきた。こりゃあまいりましたね。
「いやあ、えーっと、うん。まあそうなんですけど」
迫りくる美少女の前に後ずさりを繰り返し、壁に追い詰まったところで白旗を上げた。
曲刀たちがいれば機転の一つや二つ利かせられたかもしれないが、俺ひとりでは無理無理ムーリのかたつむりーである。
そもそも先ほどの彼女の言葉を考えれば、彼女自身も異世界の存在であると言っているようなものだ。ならば俺の正体を言い触らして回るような真似はすまい、という思惑もある。
彼女自身も、今までその事実を隠し通してきたのだろうし。
「やっぱり……。ロウさんは歳の割に落ち着きすぎていると思っていたんですよ。魔力だって異様に多いし、それに何だか中国拳法みたいな戦闘術を使うし」
「みたいなのっていうか、そのものずばりなんですけどね。とりあえず時間ですし、外に出ましょうか。話は移動中でも出来ますし。舌を噛まないように気を付けないといけませんけども」
「……むう。いつもみたいに誤魔化さないでくださいね。約束ですよ?」
ジト目に膨れっ面という可愛らしい表情が離れていき、ひとまずヤームルの詰問が終了した。
荷物の準備を行い、いつも通りの雰囲気に戻った彼女と共に砦の外へ出る。
天は変わらず快晴、どんより気分のこちらなど知ったことかと晴れ渡っている。
「それでは、よろしくお願いしますね、ロウさん」
「はいはい。どこか痛かったら教えてくださいねー」
「「「……?」」」
ヤームルを抱き上げてスタンバイしていると、周囲の面々がこちらを見て首をかしげている様が目に入った。
「フフ、ロウ君にヤームル君、仲睦まじいようだね」
「ふむ? 今朝は恥ずかしがっておったのに、もう慣れたのか」
「むふふ。ヤームルちゃんたら、ロウ君の首に手を回しちゃって。ダイタンだね!」
言われて気が付く首に絡んだ腕の位置。妙に良い匂いがすると思ったら腕を回されていたようだ。午前中は腕を彼女自身の胸元に引っ込めていたが……。
「この方がロウさんも楽みたいですからね。私が恥ずかしさを我慢するだけで負担を軽減できるなら、進んでやりますとも」
軽く頬を染めながらも、事もなげに言ってのけるヤームル氏。本心なのか誤魔化しなのかは判断しかねるが、ここは流れに乗っておこう。こっちも恥ずかしいし。
「皆さん準備出来ましたし、出発しますか」
「はーい」「そうだね」「はい」
提案すれば了承を得られ、早速移動開始である。
時に乾いた地面を、時に灼けるような熱砂を駆け回り。熱風のような風圧を感じながら疾走して砂漠の中心地を目指す。
「……そろそろいいですか?」
走り始めてから三十分ほど経った頃、おずおずといった様子でヤームルが口を開いた。
向かい風とは別に温かく湿度のある空気が耳にあたり、妙に緊張してしまう。
「どうぞ。って、なるほど。首に腕を回したら小さな声でも会話できますもんね。そういうことでしたか」
童貞らしい動揺を悟らせまいと適当に気が付いたことを言ってみると、右耳から楽し気な声が届く。
「ふふっ、そんなところです。それにしても……ロウさんって日本人、ですよね? 中国の雑技団とか、どこかの山岳民族じゃなくて」
「はい、日本で大学生をやってましたね。大陸の拳法を知っているのは、子供のころからずっとやってきたからです。趣味みたいなもんでしたけど」
「大学生! そうでしたか。確かに、言われてみれば納得しますよ。冷静だったりはめを外したり、大人だったり子供だったりと揺れ動く時期ですもんね。そっかあー、大学生……ロウさんっていうより、ロウ君だね。ふふふ」
「ちょっとヤームルさん、その生温かい笑いやめてくれません?」
からかうような言葉に抗議し、愉快そうに笑う彼女へ今度はこちらだと質問を投げる。
「とにかく、俺の方はそういう感じですけど。ヤームルさんも日本人の、社会人の方ってことでいいんですかね?」
「はい。元々は医療機器のソフトウェア開発をしていました。……こっちで役立つ肩書ではないですが」
「おお、医療系ですか。さっきのヤームルさんの言葉じゃないですけど、納得するというかしっくりきますね。ヤームルさんって理路整然としてますし、イメージ通りに感じます」
「ありがとう、なのかな? って、なんだか合コンみたいに……こほん。日本での話も気になりますが、今はとりあえず置いておきましょうか」
昔話(?)で盛り上がるかと思いきや、咳払い一つで素早く話を話を進めるヤームルさん。出来る女性は切り替えが早いのかもしれない。
「日本での話以外となると、この世界で日本での知識や記憶が目覚めた、得られた時の話、ということでしょうか?」
「私が一番知りたいのは、正にそういう話ですね。少し暗い話になりますが……私の場合、記憶が目覚めたのは七年ほど前です。通勤途中の電車が事故を起こしたみたいで、詳しくは覚えていませんが、日本での記憶はそこで途切れています。今の身体……ヤームルとしての意識に日本での記憶が目覚めたのは、そのすぐ後でした。……いえ、単純にそのタイミングで思い出しただけかもしれませんが」
こちらの右肩に身体を預けるようにして、ほのかに表情を陰らせながら彼女は続ける。
「日本での記憶が目覚めた時は、とても混乱しましたね。当時私は黒死病……多分地球で言うところのペストと殆ど変わらないものだと思いますが、それに感染してベッドで寝込んでいました。奇跡を扱う神官でも症状が重ければ治療は難しかったらしく、私は一人離れに隔離されていて。脇の下や太腿の付け根辺りがこんもりと腫れ、黒ずんだ斑点が身体に浮き上がって……。内側から中身を削られるような頭痛と、吐き出すものが何もないのにこみ上げ続ける吐き気と、全身の刺すような痛みと、目に映る何もかもが灰色に濁る意識の混濁と……本当に、死を待つばかりの状態でした」
照り付ける日差しは相も変わらず暑いのに、彼女は寒くて堪らないとでもいうように身を縮こまらせ、震えていた腕に力をこめた。
「そんな状況で、突然日本での記憶が湧き出るように頭の中に溢れ出て、病に侵されていた身体も嘘のように回復してしまいましたからね。病気が治って喜びたいはずなのに、状況を整理するために一時間以上ベッドの上で唸ることになってしまいましたよ」
暗くなっていた雰囲気を払う様に、ヤームルは努めて明るく話を締めた。俺もそれに応じ、繰り返しにならないよう確認しておきたい要点だけを問う。
「ヤームルさんに、そんな辛い過去が……。今こうして、元気なヤームルさんから話を聞けて良かったです。聞いてる途中は冷や冷やしましたが、転生したことで命を取り留めた、ということですか?」
「恐らくは。あの時私は人事不省に陥って、意識すらない危険な状態だったはずですから。壊死したような状態だった皮膚まですっかり癒えてしまうなんてことも、まずあり得ないことでしょうし」
「ペストって、鼠やそれについてるノミの病気でしたよね? そんなに恐ろしいものなんですね……」
「ええ。元々ボルドーには鼠が多くなかったのですが、その年は下水道工事によって住処を追われた鼠が地上で活動し、それらがペストをばら撒いたということがあったみたいで。私以外にも沢山の犠牲者が出たと聞いています」
彼女の語るところによれば、ボルドーの住民が増えるに伴って拡張してきた下水道がいよいよキャパシティの限界に近付いたため、最新の技術で作り直そうとしたことに端を発するようだった。
より良い環境を目指して行われた施策が逆に疫病の流行を引き起こすなど、皮肉なものだ。
もっともこの事例の場合は、疫病をばら撒く元となる鼠の駆除を徹底しなかったことが蔓延の最たる要因だったらしい。疫病への知識の欠如が元凶とも言えるかもしれない。
いやはや、防疫というものはどの世界においても重要な意味を持つのだなあ。
「──っと、少し脇道に逸れましたか。話を戻しますと、その時を境に私は異世界の知識を得て、ついでに身体能力や魔力といった能力が大きく増すことになりました。それから私は、この世界の知識を吸収し理不尽に抗う力を身につけるため、本を読み魔術を学ぶことにしたのですが。ロウ君はどういった感じだったんですか?」
いつの間にか主題がリーヨン公国の公衆衛生となっていたため、彼女は本題へと立ち返り、こちらの事情を求めてきた。
「ん~……そうですね。まず俺の場合、記憶が目覚めたのがここ最近、一か月と少し前の話ですからね。ヤームルさんとはかなり事情が違う感じです」
「え? 一か月前って……ロウ君と出会った頃ってことですか!?」
「確か、ヤームルさんと会う一週間くらい前だったかな? 俺も日本で電車に乗ってて、それが脱線事故? を起こして横転して、死んでしまった、のだと思います。鉄柱が胸に刺さって熱かったことは覚えてるんですが」
「うっ……。とんでもないことをサラッと言いますね。しかし、ロウ君も電車の事故で、とは。電車の事故に巻き込まれるとこの世界に飛ばされることがあるのか、それとも実は同じ事故で、記憶が目覚めるタイミングだけが違ったのか……」
俺の回答を聞き、彼女は首に巻いていた腕を放し考え込む。距離が開いてほんのちょっぴり残念である。
そんな感傷に囚われていると、抱いている右腕辺りから視線を感じた。
首を動かして見れば、目尻を下げ口角を上げている、人の悪い笑みを浮かべる美少女の顔が。この野郎、こっちの反応を楽しんでやがったのか!
視線を切って正面を見据え、誤魔化しついでに自分の見解を伝えることにした。
「俺の実感としては、記憶が目覚めたというより、瀕死の状態にあるところに別の存在を無理矢理叩き込まれた、という感じで理解してます。ヤームルさんとは状況が違いますが、俺も殆ど死にかけている状態で記憶や意識が芽生えて、身体の傷が治り魔力も大きく増した、ということがありましたから。記憶が目覚めて身体が治る、より、別の存在と混ざり合い肉体が変質することで命を繋いだ、という方がしっくりくるような気がします」
「確かに、言われてみれば。そうすると、電車の事故に巻き込まれると、この世界に転生……というのか正しいかは分かりませんが、まあ転生するんでしょうね。私が死んでから、また事故があったってことなのかな」
俺の考えを聞いて頷いたヤームルは、日本の電車事情は大丈夫なのかと憂いを滲ませているが……。
彼女は七年前に通勤途中の電車事故で亡くなったのだと言うが、俺が知る限り記憶にない。日本では電車内での死亡事故というのは、近くとも十数年前に兵庫県で起きた甚大なものくらいだ。
もう一つ気になる点もある。九百年近く前にこの世界へと召喚された大英雄ユウスケが現代日本人だったことだ。死亡フラグだの戦いは数だよ兄貴だの、そんなワードを九百年前の人物がばら撒けるとは思えない。
これらを鑑みるに、この世界での時間の流れは地球と異なる、あるいは極端に早いと考えられる。
──であれば、もしかすると。
「もしかすると、ヤームルさんと俺は、同じ電車に乗っていたのかもしれませんね」
そういう可能性も、あるのかもしれない。
俺が可能性を示唆すると、彼女もそれが頭にあったのか、言葉を吟味する様に目を伏せる。
「……同じ電車に、ですか。そう言うということは、ロウ君の知る限り通勤時間帯での電車事故というのは無かった、ということですか?」
「ですね。十年以上前ならかなり大きな事故があったんですけど。俺が乗っていたのも通勤時間帯で、新宿に向かう電車だったんですが……」
「新宿方面。それって、もしかして、神奈川県から出発する、あの路線ですか?」
「そのアレです。正確には、2019年の夏に、朝帰りで電車に乗りました」
ヤームルと確認しあっていると思い出されるのは死の前日、友人たちとの乱痴気騒ぎだ。
友人の実家は非常に広く、両親不在ということもあって、はめを外し大いに騒いだものだが……。
今考えれば、迫りくる就職活動へのぼんやりとした不安を吹き飛ばしたいがために、ああやって騒ぎ、うたかたの夢にまどろんだのかもしれない。
所詮は夢幻泡影の如くよ──などと柄にもなく世を儚んでいると、しばらく考え込んでいたヤームルから言葉が返ってきた。
「驚きました。私も2019年の夏に、電車に乗っています。私もロウ君も直近で電車事故の記憶がありませんし、同じ電車に乗って事故に巻き込まれたという可能性が高そうですね」
「俺もそう考えています。ただそうなると、俺とヤームルさんの意識が宿った時期のズレが、少し気になってきますけども」
同じ事故に巻き込まれたのだとしたら同時期に記憶が目覚めそうなものだが、現実には俺と彼女で七年ものズレが生じている。
何らかの原因によるものなのか、あるいはただの偶然によるものなのか。はたまた、前提自体が間違っていて、同じ電車での事故などではないのか。
お姫様抱っこ中のヤームルと共に考えながら進む、六日目の昼だった。
まつ毛さえも触れ合うような超至近距離でヤームルから言い放たれたのは、予想だにしない言葉だった。
「……マジかー」
半歩後ずさり、思考の再起動を図る。
オーケー、俺は冷静だ。美少女の灰色の瞳に吸い込まれそうになっていたけど、もう大丈夫だ。
……まさか、俺がヤームルの転生者という証拠を掴む前に、相手から見抜かれるとは。
それもお姫様抱っこが落とし穴だったとは。予想できるわけないっつーの。
バレたもんは仕方がないし、現状確認はこれくらいにして。今は彼女の言葉にどう返すかである。
──俺が中島太郎としての記憶や知識を得てからひと月と少々が経過したが、そういった事情は今まで誰にも、相棒の曲刀たちにすら話していない。
理由はごくごく単純。吹聴して回るものではないからだ。
レムリア大陸を魔族の手から救った大英雄ユウスケのように、この世界において異世界の存在というものは、稀ではあるが存在する。
とはいえ、それはあくまで稀。そん所そこらの子供が「俺は異世界の記憶があるんだぜ!」などと言っても、狂言としかとられないだろう。
この世界にはないような、地球時代の知識を披露すれば信憑性が増すかもしれないが……平々凡々な大学生だった俺に、異世界で役立つ様な専門的な知識など皆無である。
せいぜいが太極拳や八極拳といった大陸拳法であり、これら鍛錬によって磨き上げられた技術を異世界人である証明とするには、些か客観性を欠いている。
何より、足を洗ったとはいえ俺は盗賊だったのだ。妙な知識をひけらかし名が広まるなど論外な身の上であろう。
──などと考えていると。
「沈黙するということは、肯定だということですか?」
ヤームルが話を逸らさせまいと追撃を仕掛けてきた。こりゃあまいりましたね。
「いやあ、えーっと、うん。まあそうなんですけど」
迫りくる美少女の前に後ずさりを繰り返し、壁に追い詰まったところで白旗を上げた。
曲刀たちがいれば機転の一つや二つ利かせられたかもしれないが、俺ひとりでは無理無理ムーリのかたつむりーである。
そもそも先ほどの彼女の言葉を考えれば、彼女自身も異世界の存在であると言っているようなものだ。ならば俺の正体を言い触らして回るような真似はすまい、という思惑もある。
彼女自身も、今までその事実を隠し通してきたのだろうし。
「やっぱり……。ロウさんは歳の割に落ち着きすぎていると思っていたんですよ。魔力だって異様に多いし、それに何だか中国拳法みたいな戦闘術を使うし」
「みたいなのっていうか、そのものずばりなんですけどね。とりあえず時間ですし、外に出ましょうか。話は移動中でも出来ますし。舌を噛まないように気を付けないといけませんけども」
「……むう。いつもみたいに誤魔化さないでくださいね。約束ですよ?」
ジト目に膨れっ面という可愛らしい表情が離れていき、ひとまずヤームルの詰問が終了した。
荷物の準備を行い、いつも通りの雰囲気に戻った彼女と共に砦の外へ出る。
天は変わらず快晴、どんより気分のこちらなど知ったことかと晴れ渡っている。
「それでは、よろしくお願いしますね、ロウさん」
「はいはい。どこか痛かったら教えてくださいねー」
「「「……?」」」
ヤームルを抱き上げてスタンバイしていると、周囲の面々がこちらを見て首をかしげている様が目に入った。
「フフ、ロウ君にヤームル君、仲睦まじいようだね」
「ふむ? 今朝は恥ずかしがっておったのに、もう慣れたのか」
「むふふ。ヤームルちゃんたら、ロウ君の首に手を回しちゃって。ダイタンだね!」
言われて気が付く首に絡んだ腕の位置。妙に良い匂いがすると思ったら腕を回されていたようだ。午前中は腕を彼女自身の胸元に引っ込めていたが……。
「この方がロウさんも楽みたいですからね。私が恥ずかしさを我慢するだけで負担を軽減できるなら、進んでやりますとも」
軽く頬を染めながらも、事もなげに言ってのけるヤームル氏。本心なのか誤魔化しなのかは判断しかねるが、ここは流れに乗っておこう。こっちも恥ずかしいし。
「皆さん準備出来ましたし、出発しますか」
「はーい」「そうだね」「はい」
提案すれば了承を得られ、早速移動開始である。
時に乾いた地面を、時に灼けるような熱砂を駆け回り。熱風のような風圧を感じながら疾走して砂漠の中心地を目指す。
「……そろそろいいですか?」
走り始めてから三十分ほど経った頃、おずおずといった様子でヤームルが口を開いた。
向かい風とは別に温かく湿度のある空気が耳にあたり、妙に緊張してしまう。
「どうぞ。って、なるほど。首に腕を回したら小さな声でも会話できますもんね。そういうことでしたか」
童貞らしい動揺を悟らせまいと適当に気が付いたことを言ってみると、右耳から楽し気な声が届く。
「ふふっ、そんなところです。それにしても……ロウさんって日本人、ですよね? 中国の雑技団とか、どこかの山岳民族じゃなくて」
「はい、日本で大学生をやってましたね。大陸の拳法を知っているのは、子供のころからずっとやってきたからです。趣味みたいなもんでしたけど」
「大学生! そうでしたか。確かに、言われてみれば納得しますよ。冷静だったりはめを外したり、大人だったり子供だったりと揺れ動く時期ですもんね。そっかあー、大学生……ロウさんっていうより、ロウ君だね。ふふふ」
「ちょっとヤームルさん、その生温かい笑いやめてくれません?」
からかうような言葉に抗議し、愉快そうに笑う彼女へ今度はこちらだと質問を投げる。
「とにかく、俺の方はそういう感じですけど。ヤームルさんも日本人の、社会人の方ってことでいいんですかね?」
「はい。元々は医療機器のソフトウェア開発をしていました。……こっちで役立つ肩書ではないですが」
「おお、医療系ですか。さっきのヤームルさんの言葉じゃないですけど、納得するというかしっくりきますね。ヤームルさんって理路整然としてますし、イメージ通りに感じます」
「ありがとう、なのかな? って、なんだか合コンみたいに……こほん。日本での話も気になりますが、今はとりあえず置いておきましょうか」
昔話(?)で盛り上がるかと思いきや、咳払い一つで素早く話を話を進めるヤームルさん。出来る女性は切り替えが早いのかもしれない。
「日本での話以外となると、この世界で日本での知識や記憶が目覚めた、得られた時の話、ということでしょうか?」
「私が一番知りたいのは、正にそういう話ですね。少し暗い話になりますが……私の場合、記憶が目覚めたのは七年ほど前です。通勤途中の電車が事故を起こしたみたいで、詳しくは覚えていませんが、日本での記憶はそこで途切れています。今の身体……ヤームルとしての意識に日本での記憶が目覚めたのは、そのすぐ後でした。……いえ、単純にそのタイミングで思い出しただけかもしれませんが」
こちらの右肩に身体を預けるようにして、ほのかに表情を陰らせながら彼女は続ける。
「日本での記憶が目覚めた時は、とても混乱しましたね。当時私は黒死病……多分地球で言うところのペストと殆ど変わらないものだと思いますが、それに感染してベッドで寝込んでいました。奇跡を扱う神官でも症状が重ければ治療は難しかったらしく、私は一人離れに隔離されていて。脇の下や太腿の付け根辺りがこんもりと腫れ、黒ずんだ斑点が身体に浮き上がって……。内側から中身を削られるような頭痛と、吐き出すものが何もないのにこみ上げ続ける吐き気と、全身の刺すような痛みと、目に映る何もかもが灰色に濁る意識の混濁と……本当に、死を待つばかりの状態でした」
照り付ける日差しは相も変わらず暑いのに、彼女は寒くて堪らないとでもいうように身を縮こまらせ、震えていた腕に力をこめた。
「そんな状況で、突然日本での記憶が湧き出るように頭の中に溢れ出て、病に侵されていた身体も嘘のように回復してしまいましたからね。病気が治って喜びたいはずなのに、状況を整理するために一時間以上ベッドの上で唸ることになってしまいましたよ」
暗くなっていた雰囲気を払う様に、ヤームルは努めて明るく話を締めた。俺もそれに応じ、繰り返しにならないよう確認しておきたい要点だけを問う。
「ヤームルさんに、そんな辛い過去が……。今こうして、元気なヤームルさんから話を聞けて良かったです。聞いてる途中は冷や冷やしましたが、転生したことで命を取り留めた、ということですか?」
「恐らくは。あの時私は人事不省に陥って、意識すらない危険な状態だったはずですから。壊死したような状態だった皮膚まですっかり癒えてしまうなんてことも、まずあり得ないことでしょうし」
「ペストって、鼠やそれについてるノミの病気でしたよね? そんなに恐ろしいものなんですね……」
「ええ。元々ボルドーには鼠が多くなかったのですが、その年は下水道工事によって住処を追われた鼠が地上で活動し、それらがペストをばら撒いたということがあったみたいで。私以外にも沢山の犠牲者が出たと聞いています」
彼女の語るところによれば、ボルドーの住民が増えるに伴って拡張してきた下水道がいよいよキャパシティの限界に近付いたため、最新の技術で作り直そうとしたことに端を発するようだった。
より良い環境を目指して行われた施策が逆に疫病の流行を引き起こすなど、皮肉なものだ。
もっともこの事例の場合は、疫病をばら撒く元となる鼠の駆除を徹底しなかったことが蔓延の最たる要因だったらしい。疫病への知識の欠如が元凶とも言えるかもしれない。
いやはや、防疫というものはどの世界においても重要な意味を持つのだなあ。
「──っと、少し脇道に逸れましたか。話を戻しますと、その時を境に私は異世界の知識を得て、ついでに身体能力や魔力といった能力が大きく増すことになりました。それから私は、この世界の知識を吸収し理不尽に抗う力を身につけるため、本を読み魔術を学ぶことにしたのですが。ロウ君はどういった感じだったんですか?」
いつの間にか主題がリーヨン公国の公衆衛生となっていたため、彼女は本題へと立ち返り、こちらの事情を求めてきた。
「ん~……そうですね。まず俺の場合、記憶が目覚めたのがここ最近、一か月と少し前の話ですからね。ヤームルさんとはかなり事情が違う感じです」
「え? 一か月前って……ロウ君と出会った頃ってことですか!?」
「確か、ヤームルさんと会う一週間くらい前だったかな? 俺も日本で電車に乗ってて、それが脱線事故? を起こして横転して、死んでしまった、のだと思います。鉄柱が胸に刺さって熱かったことは覚えてるんですが」
「うっ……。とんでもないことをサラッと言いますね。しかし、ロウ君も電車の事故で、とは。電車の事故に巻き込まれるとこの世界に飛ばされることがあるのか、それとも実は同じ事故で、記憶が目覚めるタイミングだけが違ったのか……」
俺の回答を聞き、彼女は首に巻いていた腕を放し考え込む。距離が開いてほんのちょっぴり残念である。
そんな感傷に囚われていると、抱いている右腕辺りから視線を感じた。
首を動かして見れば、目尻を下げ口角を上げている、人の悪い笑みを浮かべる美少女の顔が。この野郎、こっちの反応を楽しんでやがったのか!
視線を切って正面を見据え、誤魔化しついでに自分の見解を伝えることにした。
「俺の実感としては、記憶が目覚めたというより、瀕死の状態にあるところに別の存在を無理矢理叩き込まれた、という感じで理解してます。ヤームルさんとは状況が違いますが、俺も殆ど死にかけている状態で記憶や意識が芽生えて、身体の傷が治り魔力も大きく増した、ということがありましたから。記憶が目覚めて身体が治る、より、別の存在と混ざり合い肉体が変質することで命を繋いだ、という方がしっくりくるような気がします」
「確かに、言われてみれば。そうすると、電車の事故に巻き込まれると、この世界に転生……というのか正しいかは分かりませんが、まあ転生するんでしょうね。私が死んでから、また事故があったってことなのかな」
俺の考えを聞いて頷いたヤームルは、日本の電車事情は大丈夫なのかと憂いを滲ませているが……。
彼女は七年前に通勤途中の電車事故で亡くなったのだと言うが、俺が知る限り記憶にない。日本では電車内での死亡事故というのは、近くとも十数年前に兵庫県で起きた甚大なものくらいだ。
もう一つ気になる点もある。九百年近く前にこの世界へと召喚された大英雄ユウスケが現代日本人だったことだ。死亡フラグだの戦いは数だよ兄貴だの、そんなワードを九百年前の人物がばら撒けるとは思えない。
これらを鑑みるに、この世界での時間の流れは地球と異なる、あるいは極端に早いと考えられる。
──であれば、もしかすると。
「もしかすると、ヤームルさんと俺は、同じ電車に乗っていたのかもしれませんね」
そういう可能性も、あるのかもしれない。
俺が可能性を示唆すると、彼女もそれが頭にあったのか、言葉を吟味する様に目を伏せる。
「……同じ電車に、ですか。そう言うということは、ロウ君の知る限り通勤時間帯での電車事故というのは無かった、ということですか?」
「ですね。十年以上前ならかなり大きな事故があったんですけど。俺が乗っていたのも通勤時間帯で、新宿に向かう電車だったんですが……」
「新宿方面。それって、もしかして、神奈川県から出発する、あの路線ですか?」
「そのアレです。正確には、2019年の夏に、朝帰りで電車に乗りました」
ヤームルと確認しあっていると思い出されるのは死の前日、友人たちとの乱痴気騒ぎだ。
友人の実家は非常に広く、両親不在ということもあって、はめを外し大いに騒いだものだが……。
今考えれば、迫りくる就職活動へのぼんやりとした不安を吹き飛ばしたいがために、ああやって騒ぎ、うたかたの夢にまどろんだのかもしれない。
所詮は夢幻泡影の如くよ──などと柄にもなく世を儚んでいると、しばらく考え込んでいたヤームルから言葉が返ってきた。
「驚きました。私も2019年の夏に、電車に乗っています。私もロウ君も直近で電車事故の記憶がありませんし、同じ電車に乗って事故に巻き込まれたという可能性が高そうですね」
「俺もそう考えています。ただそうなると、俺とヤームルさんの意識が宿った時期のズレが、少し気になってきますけども」
同じ事故に巻き込まれたのだとしたら同時期に記憶が目覚めそうなものだが、現実には俺と彼女で七年ものズレが生じている。
何らかの原因によるものなのか、あるいはただの偶然によるものなのか。はたまた、前提自体が間違っていて、同じ電車での事故などではないのか。
お姫様抱っこ中のヤームルと共に考えながら進む、六日目の昼だった。
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旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
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しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
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フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
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