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第六章 大陸震撼
6-26 二度目のお宅訪問(魔神)
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朝っぱらからスーパー美少女(魔神)に拉致された後、彼女の部屋で優雅なティータイムとなった。
喧騒とは無縁の静かな空間に、向かい合っては艶然と微笑む美しい少女。口に含むは豊かな香り、背に感じるは柔らかなるソファの背もたれ。
クラシックの変奏曲でも聞こえてきそうな穏やかな時間なれど、窓から見える外の天候はあいにくと荒れている。魔物騒動により買い物予定も潰れてしまったし、今日はこのままゆっくりと過ごすのも悪くないかもしれない。
(はぁ……)
(諦めろギルタブ。ロウはくるくる回る風見鶏のようなやつだ。根気強く付き合っていくしかない)
そんな優しい時間は曲刀たちの念話により水を差されてしまった。魔神とは平穏に茶を楽しむことさえ許されぬ生らしい。
「おいしゅうございました。エスリウ様の淹れるお茶は、相変わらずとても香りが良いです」
「うふふ、なによりです。身の回りのことの一つとして覚えた作法ですけれど、こうしてロウさんに褒めてもらえるとなると、覚えておいて良かったと実感いたしますね」
絶世の美少女と茶を楽しむこと十数分。
黒刀からの無言の圧力が増してきたため、目の前の少女に今回の用件を聞くことにした。
「お茶に招待されちゃいましたけど、俺としては挨拶だけで終わる予定だったんですよね。バロール様との面談の件は分かりますけど、エスリウ様が他に話したいことってどんなことなんですか?」
「率直に申し上げるなら、旅行や昨日の地震の間にロウさんが何処で何をしていたのか、それを教えてもらいたいのです。本来なら詮索や干渉などすべきではないのでしょうけれど、いずれの出来事も金の魔力──竜の存在が絡んでいますから。竜が絶大なる力を持ち魔神の敵対者である以上、もしロウさんが無関係でないのなら……知らずにおくことなど出来ません」
前回砕けてしまったものとは異なる古風なローテーブルの上に茶器を置き、真面目な面持ちで語るエスリウ。
魔力の質が何たるかを見抜く「魔眼」を持つ彼女は、先の一件が竜の引き起こしたものだと看破しているようだ。
俺の魔力はバレていないのか、それともあえて情報を隠しているのか。現状では判断できない。
如何に俺が魔神といえど、ヴリトラやレヴィアタンのような古き竜を前にすると霞んでしまうし、この魔導国からでは確認できなかったのかもしれない。
そういえば、俺が魔神として真に覚醒したことや「降魔」が出来るようになったことは、まだエスリウも知らないのか。神たちは既に知っていることだし、彼女にも伝えておくべきだろうか?
(エスリウの背後にはバロールがいますからね。古き竜たちとの関係も考えるに、不用意な発言は避けるべきだと思うのです)
(隠しておくべきだという話も分かるが……如何せんロウだからなあ。遅かれ早かれ露見するんじゃないか? そう考えれば、自分の口から伝えていた方が心証は良くなるだろうな)
相棒たちの意見はまたもや真っ二つ。
竜と魔神の関係性を考える黒刀に、俺の性質を踏まえる銀刀。どちらの案にも理があるが……。
「ぶっちゃけますと、俺が絡んでいるというか俺が竜と殴り合ったからなんですよね。砂漠の大災害も、昨日の大地震も」
エスリウはともかくバロールを前にして誤魔化せるとは思っていないので、この場で真実を伝えることにした。
それに、前回の会談みたく神が乱入してくれば一瞬で露見してしまうという懸念もある。そうなったら伝説の魔神と敵対なんて事態になりかねない。
(とか言いつつ、隠すのが面倒になったって面も大きいんだろ?)
(ロウは面倒臭がりですから、きっとそうでしょう)
一瞬で本音を見透かす曲刀たちへその指摘は当たらないと脳内で強弁しつつ、意識を目の前の少女へ向ける。
「……」
俺の言葉がよほど衝撃的だったのか、彼女は目を点にして硬直していた。
こりゃフリーズしてますわ!
「エスリウ様ー? 大丈夫ですかー?」
目の前で手を振ってみるも反応は無し。いつぞやの停止する魔眼で動きを止めてしまったかのようだ。
「……ロウ。その、竜と殴り合ったというのは、あの青玉竜のことではなく、別の竜相手にということ?」
時を止めたエスリウにどうしたものかと難儀していると、主の傍で控えていたマルトが代わりに口を開く。その表情はまさに苦悶だ。
「あいつとはもう和解したようなもんだし、今じゃ喧嘩するようなこともないよ。旅先で古い竜に因縁つけられたり、不幸が重なって殴り合う羽目になったりしてな」
「古い竜……ということは、やはり……。その竜の名を聞いてもいいかな」
「言っちゃった以上は隠すもんでもないか。砂漠で戦ったのが琥珀竜ヴリトラ、大陸中央では海魔竜レヴィアタン。二度とは御免って面子だけど……その反応からして、マルトも竜の正体まで知ってたのか」
「……ええ。バロール様は琥珀竜とは幾度となく戦った間柄だから、遠く離れたこの地でもその魔力を見極められたんだ。でもまさか、海魔竜の名まで出てくるとは思いもよらなかったよ」
疲れた表情で眉間を揉む彼女曰く、琥珀竜に関してはバロールが知覚していたものの、海魔竜の名が出るのは予想外だという。
大陸北部の大砂漠に、大陸中央部の火山平原。このヘレネスからの距離はどちらも似たようなものに感じるが……。
「バロール様はレヴィアタンさんと戦ったことはないのか? 向こうの話しぶりだと、何度か戦ったっていう感じだったんだけど」
「いえ、かの竜とも何度も衝突しているよ。バロール様はリマージュへ戻っているから、私たちが昨日の今日で会うことは出来なかったんだ」
「そういうことか。でもエスリウ様の場合は、竜とまでは判断できても実際に戦ったことはないから、相手の詳細は分からなかった、と」
「……ふぅ、そういうことですね。それにつけてもロウさん、貴方は本当にどうなっているのですか」
フリーズ状態が解除されたエスリウは、開口一番俺という存在に疑問を投げかける。
俺のおおよその実力を知る彼女にとっては、古き竜とひと悶着もふた悶着もあって生き残っているということが不可解なのだろう。我ながら不思議でもあるし。
「アレですよアレ、日々の努力の成果ってやつです」
「「……」」
「すんません軽い冗談です。日々の努力ってのも強ち嘘って訳でもないですが、それ以上に大きかったのが魔神として覚醒したことと、『降魔』が可能になったことですかね」
冗談で流せそうにも無かったため、これまた情報を開示する。
俺が力ある魔神となったことを示していた方が、彼女や彼女の母親からの過度な干渉を避けられるだろう。流石の彼女たちも古き竜と殴り合ったような魔神相手にはぐいぐいこまい。多分。
「あらあら! ロウさんもついに、自身の司る権能を把握されたのですね」
「魔神として覚醒……。空間魔法を自在に操っていた君が、魔神としては不完全であったと?」
「ヴリトラと戦っていた時に肉体的にも魔力的にもギリギリまで追い込まれたんですけど、そこから魔力が変質しちゃいまして。その時に魔力の総量やら濃さやらなんやらが全部変わって、ついでに権能も付いてきた感じです」
「権能がついで扱いとは、なんとも君らしい」
「死に瀕したことで眠っていた力が目覚めた、ということでしょうか? ……ということは、ロウさんは人型状態でも、更に強くなってしまわれたということですか」
当時を振り返りつつざっくりと説明すれば、呆れと感心が混じったような反応である。
(いつも通りだな)(何のことはありませんね)
何度も見てきた反応であるし自分でもそう思うけれども、曲刀たちから指摘されると腹立たしく感じてしまう。人の心とはかくも奇妙なものである。
「うふふ、ロウさんの司る権能というものも気になりますね。やはり、色欲なのでしょうか?」
「やはりってなんすかやはりって。そんなふしだらなものじゃなくて“虚無”ですよ。万事一切の性質を曖昧にしちゃう感じです」
「性質を曖昧にする“虚無”。……色々なことを有耶無耶にするというのは、君の本質だったんだね」
「ふふふっ、確かに。マルトの言う通り、この上なくロウさんらしい権能かもしれません」
「……」
権能を教えるも何故か自身の性格に結び付けられてしまった。解せぬ。
(日頃の行いだろう)(マルトの着眼点、中々に侮れませんね)
曲刀たちもキレッキレである。やはりこの無機物たちには血も涙もないようだ。
「まあ、そんなこんなで竜との戦いを乗り越えたわけです。といっても、ヴリトラもレヴィアタンさんも正に最強って感じだったので、真っ向勝負じゃなくて狡い手使って何とか生き残ったんですけどね」
脇道にそれていても仕方が無いと、俺は話を戻した。
(物は言いようですね)(流石は虚無を司っているだけはあるな。クク)
念話で届けられる戯れ言は当然無視である。
「琥珀竜にしても海魔竜にしても、この世の頂点と言って間違いない存在だよ。彼らと事を構えて生き延びたのなら、それだけで神話となるかもしれない。何より、君は竜が憎んで止まない魔神だ」
「そうですね。古き竜と対するまでになるなんて、ロウさんが随分と遠い存在となってしまったように感じます。熱く語り合ったあの日から、まだひと月ほどしか経っていないというのに……」
「語り合うっつーか騙り合うっつーか……。というか話流してましたけど、バロール様との面談ってもうお流れになったってことでいいんですかね? 俺もそろそろ帝国に移動しようかと思ってるので、そういうことなら予定がたてやすいんですけど」
「あら。お母様には空間魔法がありますし、何ならロウさんだって空間魔法があるではないですか。遠く離れたリマージュであっても、数日のうちに面談の設定も行えるはずですよ──と、噂をすれば」
エスリウの妄言で気が抜けていたその時──室内に茜色の魔力が集束ッ!?
「うおあッ!?」((!?))
魔力は灼熱の火球へと変じ、火球は人型に転じる。
どこかで見たイリュージョンのように登場するのは、噂の渦中にあった絶世の美女。魔神バロールだった。
喧騒とは無縁の静かな空間に、向かい合っては艶然と微笑む美しい少女。口に含むは豊かな香り、背に感じるは柔らかなるソファの背もたれ。
クラシックの変奏曲でも聞こえてきそうな穏やかな時間なれど、窓から見える外の天候はあいにくと荒れている。魔物騒動により買い物予定も潰れてしまったし、今日はこのままゆっくりと過ごすのも悪くないかもしれない。
(はぁ……)
(諦めろギルタブ。ロウはくるくる回る風見鶏のようなやつだ。根気強く付き合っていくしかない)
そんな優しい時間は曲刀たちの念話により水を差されてしまった。魔神とは平穏に茶を楽しむことさえ許されぬ生らしい。
「おいしゅうございました。エスリウ様の淹れるお茶は、相変わらずとても香りが良いです」
「うふふ、なによりです。身の回りのことの一つとして覚えた作法ですけれど、こうしてロウさんに褒めてもらえるとなると、覚えておいて良かったと実感いたしますね」
絶世の美少女と茶を楽しむこと十数分。
黒刀からの無言の圧力が増してきたため、目の前の少女に今回の用件を聞くことにした。
「お茶に招待されちゃいましたけど、俺としては挨拶だけで終わる予定だったんですよね。バロール様との面談の件は分かりますけど、エスリウ様が他に話したいことってどんなことなんですか?」
「率直に申し上げるなら、旅行や昨日の地震の間にロウさんが何処で何をしていたのか、それを教えてもらいたいのです。本来なら詮索や干渉などすべきではないのでしょうけれど、いずれの出来事も金の魔力──竜の存在が絡んでいますから。竜が絶大なる力を持ち魔神の敵対者である以上、もしロウさんが無関係でないのなら……知らずにおくことなど出来ません」
前回砕けてしまったものとは異なる古風なローテーブルの上に茶器を置き、真面目な面持ちで語るエスリウ。
魔力の質が何たるかを見抜く「魔眼」を持つ彼女は、先の一件が竜の引き起こしたものだと看破しているようだ。
俺の魔力はバレていないのか、それともあえて情報を隠しているのか。現状では判断できない。
如何に俺が魔神といえど、ヴリトラやレヴィアタンのような古き竜を前にすると霞んでしまうし、この魔導国からでは確認できなかったのかもしれない。
そういえば、俺が魔神として真に覚醒したことや「降魔」が出来るようになったことは、まだエスリウも知らないのか。神たちは既に知っていることだし、彼女にも伝えておくべきだろうか?
(エスリウの背後にはバロールがいますからね。古き竜たちとの関係も考えるに、不用意な発言は避けるべきだと思うのです)
(隠しておくべきだという話も分かるが……如何せんロウだからなあ。遅かれ早かれ露見するんじゃないか? そう考えれば、自分の口から伝えていた方が心証は良くなるだろうな)
相棒たちの意見はまたもや真っ二つ。
竜と魔神の関係性を考える黒刀に、俺の性質を踏まえる銀刀。どちらの案にも理があるが……。
「ぶっちゃけますと、俺が絡んでいるというか俺が竜と殴り合ったからなんですよね。砂漠の大災害も、昨日の大地震も」
エスリウはともかくバロールを前にして誤魔化せるとは思っていないので、この場で真実を伝えることにした。
それに、前回の会談みたく神が乱入してくれば一瞬で露見してしまうという懸念もある。そうなったら伝説の魔神と敵対なんて事態になりかねない。
(とか言いつつ、隠すのが面倒になったって面も大きいんだろ?)
(ロウは面倒臭がりですから、きっとそうでしょう)
一瞬で本音を見透かす曲刀たちへその指摘は当たらないと脳内で強弁しつつ、意識を目の前の少女へ向ける。
「……」
俺の言葉がよほど衝撃的だったのか、彼女は目を点にして硬直していた。
こりゃフリーズしてますわ!
「エスリウ様ー? 大丈夫ですかー?」
目の前で手を振ってみるも反応は無し。いつぞやの停止する魔眼で動きを止めてしまったかのようだ。
「……ロウ。その、竜と殴り合ったというのは、あの青玉竜のことではなく、別の竜相手にということ?」
時を止めたエスリウにどうしたものかと難儀していると、主の傍で控えていたマルトが代わりに口を開く。その表情はまさに苦悶だ。
「あいつとはもう和解したようなもんだし、今じゃ喧嘩するようなこともないよ。旅先で古い竜に因縁つけられたり、不幸が重なって殴り合う羽目になったりしてな」
「古い竜……ということは、やはり……。その竜の名を聞いてもいいかな」
「言っちゃった以上は隠すもんでもないか。砂漠で戦ったのが琥珀竜ヴリトラ、大陸中央では海魔竜レヴィアタン。二度とは御免って面子だけど……その反応からして、マルトも竜の正体まで知ってたのか」
「……ええ。バロール様は琥珀竜とは幾度となく戦った間柄だから、遠く離れたこの地でもその魔力を見極められたんだ。でもまさか、海魔竜の名まで出てくるとは思いもよらなかったよ」
疲れた表情で眉間を揉む彼女曰く、琥珀竜に関してはバロールが知覚していたものの、海魔竜の名が出るのは予想外だという。
大陸北部の大砂漠に、大陸中央部の火山平原。このヘレネスからの距離はどちらも似たようなものに感じるが……。
「バロール様はレヴィアタンさんと戦ったことはないのか? 向こうの話しぶりだと、何度か戦ったっていう感じだったんだけど」
「いえ、かの竜とも何度も衝突しているよ。バロール様はリマージュへ戻っているから、私たちが昨日の今日で会うことは出来なかったんだ」
「そういうことか。でもエスリウ様の場合は、竜とまでは判断できても実際に戦ったことはないから、相手の詳細は分からなかった、と」
「……ふぅ、そういうことですね。それにつけてもロウさん、貴方は本当にどうなっているのですか」
フリーズ状態が解除されたエスリウは、開口一番俺という存在に疑問を投げかける。
俺のおおよその実力を知る彼女にとっては、古き竜とひと悶着もふた悶着もあって生き残っているということが不可解なのだろう。我ながら不思議でもあるし。
「アレですよアレ、日々の努力の成果ってやつです」
「「……」」
「すんません軽い冗談です。日々の努力ってのも強ち嘘って訳でもないですが、それ以上に大きかったのが魔神として覚醒したことと、『降魔』が可能になったことですかね」
冗談で流せそうにも無かったため、これまた情報を開示する。
俺が力ある魔神となったことを示していた方が、彼女や彼女の母親からの過度な干渉を避けられるだろう。流石の彼女たちも古き竜と殴り合ったような魔神相手にはぐいぐいこまい。多分。
「あらあら! ロウさんもついに、自身の司る権能を把握されたのですね」
「魔神として覚醒……。空間魔法を自在に操っていた君が、魔神としては不完全であったと?」
「ヴリトラと戦っていた時に肉体的にも魔力的にもギリギリまで追い込まれたんですけど、そこから魔力が変質しちゃいまして。その時に魔力の総量やら濃さやらなんやらが全部変わって、ついでに権能も付いてきた感じです」
「権能がついで扱いとは、なんとも君らしい」
「死に瀕したことで眠っていた力が目覚めた、ということでしょうか? ……ということは、ロウさんは人型状態でも、更に強くなってしまわれたということですか」
当時を振り返りつつざっくりと説明すれば、呆れと感心が混じったような反応である。
(いつも通りだな)(何のことはありませんね)
何度も見てきた反応であるし自分でもそう思うけれども、曲刀たちから指摘されると腹立たしく感じてしまう。人の心とはかくも奇妙なものである。
「うふふ、ロウさんの司る権能というものも気になりますね。やはり、色欲なのでしょうか?」
「やはりってなんすかやはりって。そんなふしだらなものじゃなくて“虚無”ですよ。万事一切の性質を曖昧にしちゃう感じです」
「性質を曖昧にする“虚無”。……色々なことを有耶無耶にするというのは、君の本質だったんだね」
「ふふふっ、確かに。マルトの言う通り、この上なくロウさんらしい権能かもしれません」
「……」
権能を教えるも何故か自身の性格に結び付けられてしまった。解せぬ。
(日頃の行いだろう)(マルトの着眼点、中々に侮れませんね)
曲刀たちもキレッキレである。やはりこの無機物たちには血も涙もないようだ。
「まあ、そんなこんなで竜との戦いを乗り越えたわけです。といっても、ヴリトラもレヴィアタンさんも正に最強って感じだったので、真っ向勝負じゃなくて狡い手使って何とか生き残ったんですけどね」
脇道にそれていても仕方が無いと、俺は話を戻した。
(物は言いようですね)(流石は虚無を司っているだけはあるな。クク)
念話で届けられる戯れ言は当然無視である。
「琥珀竜にしても海魔竜にしても、この世の頂点と言って間違いない存在だよ。彼らと事を構えて生き延びたのなら、それだけで神話となるかもしれない。何より、君は竜が憎んで止まない魔神だ」
「そうですね。古き竜と対するまでになるなんて、ロウさんが随分と遠い存在となってしまったように感じます。熱く語り合ったあの日から、まだひと月ほどしか経っていないというのに……」
「語り合うっつーか騙り合うっつーか……。というか話流してましたけど、バロール様との面談ってもうお流れになったってことでいいんですかね? 俺もそろそろ帝国に移動しようかと思ってるので、そういうことなら予定がたてやすいんですけど」
「あら。お母様には空間魔法がありますし、何ならロウさんだって空間魔法があるではないですか。遠く離れたリマージュであっても、数日のうちに面談の設定も行えるはずですよ──と、噂をすれば」
エスリウの妄言で気が抜けていたその時──室内に茜色の魔力が集束ッ!?
「うおあッ!?」((!?))
魔力は灼熱の火球へと変じ、火球は人型に転じる。
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