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第4章 サクラサク

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「いくら?」
 
 と“旅人”は聞いた。

「2千円」

 と“ミカエル”が言った。

「1万円」

 と“旅人”は言った。

「調子に乗んな」

 と“ミカエル“が“旅人”に唾を吐きかけながら言った。

「あ、それ2千円だよ」

「もう、わかったから早く舐めて」

 4千円の利益だ。それが“ミカエル“の優しさなんて事はつゆ知らず、“旅人”は“ミカエル”の太ももを嬉々としてペチャペチャと舐めた。

「あっ・・・」

『ペチャペチャペッチャペッチャ』

「ん・・・・もっと奥まで舐めて・・・」

「調子に乗んな」

 “旅人”はそう言って“ミカエル“の頭をポンと叩いた。“ミカエル“はえへへ、と言って笑った。

 “ミカエル”が食べ終わった皿を洗っていると、横になってテレビを観ながら“旅人”が言った。

「それにしても、なんでも金で解決するなんて、やっぱりこの街の住人はおかしいぜ」

 テレビの中のビーチで相撲を取らされている水着のアイドルを観ながら“旅人”が言った。

「もー何度も説明してるじゃーん」

 “ミカエル”が皿を拭きながら言った。

「拝金主義者は、嫌いだね」

「もー拝金主義者じゃないってのに~・・・まあ、“みっくん“も明日から同じ大学に通うんだから、そこでちゃんと勉強したらきっとわかるよ」

「ふん、大学なんて行っても金の無駄だ」

「明日から通うのに何言ってんだよほんと・・・」

 “旅人”は明日から、アパートから1km程歩いた所にある“ミカエル”、そして“飛鳥さん“も通う【ちゅっぽん大学】に新入生として入学する。2人は明日から2年生になる。入学試験?は1月の終わりにあり、金さえ払えば誰でも入学する事ができる。なぜそこに“旅人”が入学することになったかというと、まあ、これも流れだね、流れ。

 その入学金は“飛鳥さん“が立て替えた。100万円程だった。マスターの借金3万円も“飛鳥さん“が立て替えた。合計103万円。利子は月に1割だ。それが今日の“ハムおじさん“のバイトをするまでに124万6300円になった。

「金の亡者め」

「・・・“みっくん“ってさ、ほんとお金のこと、舐めてるよね」

 “ミカエル“が皿を棚に戻しながら言った。

「何!?どーゆー意味だ!!」

 “旅人”は激昂した。

「皿洗いだってすればお金になるのに、しないしさ」

「人にはそれぞれ向き不向きってものがあるだろう」

「挑戦しなきゃそれもわからないでしょ?」

「うるさいゴリラ男が!!貴様に何がわかる!!」

「・・・ほんと“みっくん“てさぁ、自分の立場弁えないよね・・・」

「何をぉ!!!もうしゃぶらせねえぞ!!!」

「・・・もういい、寝る」

 “ミカエル“はそう言ってベッドに入った。“旅人”も寝ようとベッドに入ろうとすると、“ミカエル“に蹴り飛ばされた。

「クソが!!」

 そう言って“旅人”は部屋を出た。出たとて他に行くところはない。4月の夜はまだ肌寒い。アパートのすぐ横を流れる川沿いに咲く桜の花びらが風に舞ってドアの前でうずくまる“旅人”の落武者頭の上に乗った。それを階段を上って来たバイト終わりの“飛鳥さん“がひょいと拾い上げた。
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