機械と花 ロボットだろうが感情はあるんだから恋愛くらいしてもいいだろ?

トリカブト

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束の間の休息 1

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 アマリリス撃破後、大きくこちらへ傾いた戦況で慣れない武器に少々苦戦しながら俺は、敵を殲滅しつくした。圧倒的に不利だった状況での勝利。自国における勝利はここ数年間なかったため拠点では、久しぶりの勝利に歓喜する兵士たちが、宴会を開いていた。
 沸き立つ人々の声と漂う酒の匂い、それに色々と混ざる美味しい食べ物の匂い‥‥悪くはないな。そんなことを考えていると、指揮官が千鳥足になりながらこちらへ近づいてきた。
「おう!この戦場の英雄が何でこんな隅っこにいるんだ?」

「いえ、私は酒があまり飲めないので、場の雰囲気を冷めさせてしまうかと」

「はっはっはっ!ロボットで酔うことなんてないだろうし、飲んでいても楽しくないかもな!」

「ですが、美味しい食事は個人的には嬉しいです」

「ほう!じゃあ食いまくれ!この戦場のMVPは、誰に聞いてもお前だというだろう!主役が、じゃんじゃんやってくれないと、脇役の俺たちが盛り上がるのが申し訳なる」

「私が、じゃんじゃんやってなくても、指揮官さんは飲みまくるのでは?」

「はは!違いねぇ!」
 暫しの間、美味しい食事に舌鼓を打っていると、指揮官さんが1つ頼み事をしてきた。
「そうだ!司令官に報告に行ってくれないか?報告書はもう作ってあるから渡すだけだ」

「構いませんよ、私も武器の新調のために街へいったん帰ろうと考えていましたし」

「はは!じゃあ頼んだ!今日は、楽しもうぜ!」
 そう言い終えると、指揮官は酒を求めて、喧騒の中に消えていった。
 俺も、少しだけ羽目を外すか‥‥



 日が昇り、周りの兵士たちは、酔いつぶれ静かに寝ていた。俺は、街へ帰るため、報告書を貰いに指揮官を探した。
 少しの間、探し回ると帯多々しいカラの酒瓶に、埋もれるように寝ているのを発見した。
「指揮官さん‥‥起きてください‥‥指揮官さん!」

「んお?!なんだもう朝か?」

「はい、私は、これから街へ帰ります。報告書はどこにありますか?」

「俺のテントのデスクにあるぜ。しかし、なんでこんなに朝早くに‥‥」

「司令官さんは、報告は早く、正確にということを忘れるなと常々言っていますから、宴会開いて、報告を遅らせたって聞くと‥‥」

「分かった!分かったから、チクるのやめてくれ!頼むよ、な?」
 そういうと、そそくさと報告書を取りに行き、俺に渡してきた。
 俺は、それを受け取ると、街の方向へ全速力で向かった。



 あっという間に街へ着くと、俺は基地へと向かった。まだ朝の早い時刻だからか、静かな大通りを俺は歩く。いつもとは違う風景に新鮮さを感じながら、俺は目的地へと向かう。
 いつも通り静かな基地へと着くと、司令官が散歩しているのを見かけた。
「司令官さん、お疲れ様です」

「7号か?戦線にいるはずでは?」

「はい、そのことで報告書を提出に参りました」

「そうか、貴公が報告を早くするとは、珍しいな」
 そう言うと、俺たちは基地の中へと入っていった。
 司令室へ着き、報告書の封筒を司令官が開く。書類に慣れた手つきで目を通すと、驚いた表情をした後、俺にこう聞いてきた。
「貴公、あの戦況を1人でひっくり返したというのか?」

「はい、結果的にはそうなります」

「そうか‥‥なるほど‥‥」
 彼は、蓄えた髭をいじりながら、何かを考えていた。しかし、司令官の驚いた顔を見るのは初めてだな。確かに自軍の完全な勝利は、これが数年ぶりとは言えるが、あのような表情が見れるとは、思っていなかった。

 しばらくの間、沈黙が続いた後、彼が口を開く。
「貴公に提案がある‥‥危険だが見返りは大きい‥‥いや、この作戦が成功すれば、我が国の勝利も夢ではない」

「あの帝国に勝てるのですか?!」

「うむ、帝国が何故連合国に攻められないか、分かるか?」

「はい、帝国の巨大な戦力‥‥国落としと言われる5人のロボットと最高戦力のラクアがいるからですか?」

「そうだ、奴らの厄介な点は、人間では絶対に勝てないような速度や技‥‥単純な戦闘力が飛びぬけている点だ」

「連合国は、機械工学は遅れているので、手出しが出来ない‥‥ということですか?」

「その通りだ、我が国も帝国と同等の技術を持っているとは言えないが‥‥貴公は、アマリリスというロボットを討伐したそうだな?」

「はい、私が倒しました」

「奴は、国落とし候補生だった。実際、貴公が止めなければ、我が国は崩落していただろう‥‥帝国が、植民地支配している小国と同じように」

「つまり、私に国落としを狩っていけと言いたいのですか?」

「そうなるな‥‥国落としの戦闘力は計り知れない‥‥危険に身をさらせと言うようで申し訳ないが、こちらから攻めなければいずれ国力で勝る帝国が勝ってしまう‥‥頼めるか?」
 そう言うと、彼は頭を下げた。しかし、俺は即決で答えが出せずにいた。これ以上危険に身を晒し、命の危機に立たされる状況下になれば、彩花はどう思うだろうか?それに、必ず帰って来るという約束が守り切れないかもしれない。
 俺は、悩みながらこう答えた。
「時間をくれませんか?」

「別に構わない、貴公が負うリスクの大きさを鑑みれば、即決出来ないのは無理もない」

「ありがとうございます」

「答えが出れば、私に教えてくれ。前向きな返答が返ってくることを願うよ」
 俺は、一礼した後、司令室を出た。



 廊下を歩いていると、彩花がいた。
「こんな所で何をしているんだ?」

「ああ、漆山さん!おかえりなさい。今は散歩に行こうと部屋を出てきたところですよ」
 彼女が笑顔で返す。この笑顔を奪うようなことはしたくないな‥‥だが、あの作戦のことを話さざるを得ない。その時、彼女は、悲しむだろうか‥‥
 俺がそんなことを考えていると、彼女がこう提案してきた。
「漆山さん‥‥あの‥‥予定がなければなんですけど‥‥この街の花畑に行きたいのですが‥‥一緒に行きませんか?」

「うん?ああ、構わないよ」

「良かった!じゃあ行きましょう!」
 彼女がはしゃぐように外に向かう。大分元気になってきたな‥‥保護したときとは、別人‥‥とまではいかないが、彼女が良くなればそれでいい。
 俺は、そう考えながら、彼女の後を追った。



 基地を出て、いつもの大通りに出た。この街の花畑は、街外れにあるから、彩花が疲れないかが気がかりだった。
「ここは、いつも通り賑やかですね。たくさんの人たちの声が聞こえてきます」

「ああ、国一番の商業地だからな」

「ふふ、きっと楽しそうな景色なのでしょうね」

「まぁ、大方想像通りって所だよ」

「あっ、そうだ!橘博士に私の目を診てもらったら、治る可能性があるって言われました!」

「そうか‥‥それは良かった」

「漆山さんが博士にお願いしてくれたおかげでこのことが分かりました!ありがとうございます!」
 彼女は、嬉しそうに言った。目が見えるようになったら、この関係は終わってしまうのだろうな‥‥不謹慎だが、この時間がずっと続けばいいと思ってしまった。
 そんなことを考えていると、何種類も入り混じった花の香りが、漂ってきた。



 「いい香り‥‥」
 彼女が嚙み締めるように呟く。風になびく彼女の髪が透き通って見えた。まるで絹の織物のようだった。そろそろ話さなければいけないか‥‥そう思い俺は、おもむろに口を開く。
「彩花‥‥実は、話があるんだ」

「ええ‥‥そんな気がしたわ。多分危ない任務に就くとかでしょう?」

「何故分かったんだ?」

「漆山さんは、隠し事が出来ないタイプだから、口調に出ていましたよ」

「そうか‥‥また心配をかけると思うが‥‥」

「はい、貴方を信じて待っています‥‥」

「すまないな‥‥」
 そう俺が言い終えると、メールが届いた。いい雰囲気だったのに邪魔が入ったな‥‥
 そんなことを考えながら、メールを確認すると、新武器が完成したから取りに来てくれという旨が書かれていた。
 後で取りに行くと、博士に連絡を入れ、俺は、暫し彼女との時間を楽しむことにした。有限のこの時間を‥‥
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