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国落とし討伐戦線 2
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ルドベキアの懐に潜り込むと、俺は、銃剣で切り上げた。すると、奴のほほを切っ先がかすめた。攻撃が当たらないことに少し冷静さを欠いていると、奴の左拳が俺の眼前に広がっていた。咄嗟に後ろへのけぞるも、拳が顔面に突き刺さる。
深刻なダメージではないが‥‥このままでは不味いな、何か策を‥‥
そんなことを考えていると、今度はあちらから突進してきた。やはり、じっくり考えさせてくれるほど甘い相手ではないか‥‥
そう思っている俺の頭上に、奴の巨大な槌が振り降ろされる。だが、今度は受け流すのではなく、逆に飛び込みカウンターを狙った。しかし、これを待っていたかのように奴の右ストレートが顔面に深々と刺さる。
思わずよろめき後ろに下がると、間髪入れずに戦槌でぶん殴られる。咄嗟に後ろへ威力を流すも、俺の体は勢いよく吹っ飛ばされた。
「君が戦闘慣れしているのは、立ち回りで分かる。僕のように長物を武器にしている相手には間合いを詰めてくるってね」
ゆっくりと近づき、勝利を確信したように話すルドベキア。一歩ずつ‥‥一歩ずつ‥‥まるで死が迫ってくるようだ。こんな感情は‥‥初めてではないな。おしゃべりなあいつも俺がああ見えたのかな‥‥一か八か、試してみるか。
「まだ勝ちを確信するには、早いんじゃないか?」
「なんだって?」
俺は、おもむろに壊れた部下が持っていた剣を持ち、あいつの構えをとる。
「我流剣術アマリリス‥‥とでも命名しておくとしようか」
ルドベキアが不思議そうな顔をした後、笑いながらこう言い放った。
「はは!付け焼刃やその場の思い付きで勝てるほど甘い相手だと思われていたか‥‥その考え、不愉快だ」
「付け焼き刃?そうでもねぇよ。太刀筋は暗記するほど、戦ってきた」
「そうかい?じゃあ、後悔しないでくれよ!」
そう言い終えると、これまでとは段違いの速さで突っ込んできた。俺の行為が、奴のプライドを傷つけたのだろう。その証拠に、今まで見せてきたことのない冷静さが感じられない表情をしている。
俺は、突進してくる奴に銃弾を浴びせる。しかし、紙一重で躱した。それを確認すると、俺は奴に接近し、左手の剣を振り下ろす。あることに気が付き、対応しきれなかった奴の体を裂く。
体を裂かれ、後ろに下がる奴に追い打ちをかけるも、戦槌で防がれ、鍔迫り合いの形になる。
「はぁ‥‥はぁ‥‥銃弾を置きトラップに使うとは‥‥」
「悪いな‥‥この銃は特別製なんだ。低速と高速で銃弾を撃てる‥‥最も両者の差はほとんどないがな」
そう言い終えると、俺は至近距離で銃を放つ。奴の脇腹を抉り、後方へとよろめかせる。すかさず左の剣で切りつける。袈裟切りに奴をとらえるが、刃が止まる。自らの体を盾にし、俺の動きを止めるためだと気づいたとき、剣を放し、銃を撃ち込みつつ、間合いを取る。
「このひと振りに全身全霊を込める‥‥!くらえ!雷帝の一撃!」
銃弾を浴びながらそう言った奴が、凄まじい一撃を放つ。銃剣で応戦するも、圧倒的な火力の差で、俺の体がガード越しから損傷していく。このままでは潰されてしまう‥‥必死に奴の一撃を耐えていると、力が段々と抜けていくのが分かった。
俺は奴の攻撃から抜け出すと、銃剣で突き刺しながら、砲撃した。崩れ行く奴の体が、地に落ちるのを見て、勝利を確信した。
「見事だね‥‥願わくば‥‥領地の平民は‥‥殺さないでくれ‥‥」
「ああ‥‥だが、襲って来るものたち以外は危害を加えん‥‥約束しよう」
ルドベキアは、それを聞き終えると、安心したのか眠るように死んだ。
暫しの間、俺は、勝利に酔いしれていた。国落としを‥‥倒した‥‥!任務完了も近いだろう‥‥!そう考えながら、戦闘をどう最小限にする策を練る。どうすればいいのか‥‥
その時、俺の頭に良い考えが浮かぶ。ルドベキアの武器‥‥この戦槌があれば、無血開城出来るのでは?勝てる見込みのない戦いをしてくる奴らばかりとは限らない‥‥
俺は、ルドベキアの戦槌を持ち、これから占領する土地へと向かった。
土地に着くと、先行していた部下たちの無残な姿と多くの兵士の亡骸が広がっていた。流石は、新型だ‥‥あの短い時間で、こんなに殲滅するとは‥‥
残った部下とともに、奥へ進むと、数人の兵士が現れた。
「ルドベキア様が倒しに行ったのに、何故生きている?もしや‥‥」
「ああ、そのもしやだ。これが証拠だ。だが、貴様らの上司に襲って来るものだけ殺すと約束した。まぁ、ここで立ち向かうのは、個人の自由だが‥‥」
奴の武器を見せながら言った。兵士たちはざわめきつつ、全員で決断したようにこう言った。
「悪いが、ルドベキア様とともに、戦うことを誓った俺たちが、ここで立ち向かわないわけにはいかない!行くぞ!!」
「分かった‥‥残念だが、良い部下を持っていたんだな‥‥」
突進してくる敵たちを殺しながら、少し苦い思いをしていた。
敵兵を殲滅しつくした時には、もう日が昇っていた。死屍累々の現状を見て、約束が守れなかったなと憂いていた。
部下に死体の山の片づけを命じた後、司令官に報告をするため基地に通信を行った。
「こちら7号です。占領に成功しました」
「7号か?もう占領成功したのか?」
「はい、こちらの損害は甚大でしたが‥‥これから新拠点を設けようと考えていますが、敵の拠点をそのまま使うのはいかがでしょうか?」
「ああ‥‥その‥‥私は、死体の匂いがすると仕事に集中できないのだが‥‥そこで殺したりはしていないのか?」
「‥‥何人かは」
「はぁ‥‥しかし、選り好みしている場合じゃないか‥‥」
「掃除は、ちゃんとやらしてもらいます」
「ああ、頼むよ‥‥これからの予定なのだが、まず機動力の高いロボットたちをそちらに送る。半日経てば、完了するだろう。それが終わるまで、貴公はそこで待機だ」
「その後で、我々人間がそちらに向かう。そこで貴公に護衛してもらいたいのだ。東雲様もご同行する。戦力の分担はかえって危険になるかも知れんからな」
「了解しました。こちらに、ロボットが着き次第、街へと戻ります」
そう言い終えると、俺は通信を切った。彩花がこちらに来るのか‥‥この辺の地理は、さっぱりだから、今のうちに覚えておこうか‥‥
深刻なダメージではないが‥‥このままでは不味いな、何か策を‥‥
そんなことを考えていると、今度はあちらから突進してきた。やはり、じっくり考えさせてくれるほど甘い相手ではないか‥‥
そう思っている俺の頭上に、奴の巨大な槌が振り降ろされる。だが、今度は受け流すのではなく、逆に飛び込みカウンターを狙った。しかし、これを待っていたかのように奴の右ストレートが顔面に深々と刺さる。
思わずよろめき後ろに下がると、間髪入れずに戦槌でぶん殴られる。咄嗟に後ろへ威力を流すも、俺の体は勢いよく吹っ飛ばされた。
「君が戦闘慣れしているのは、立ち回りで分かる。僕のように長物を武器にしている相手には間合いを詰めてくるってね」
ゆっくりと近づき、勝利を確信したように話すルドベキア。一歩ずつ‥‥一歩ずつ‥‥まるで死が迫ってくるようだ。こんな感情は‥‥初めてではないな。おしゃべりなあいつも俺がああ見えたのかな‥‥一か八か、試してみるか。
「まだ勝ちを確信するには、早いんじゃないか?」
「なんだって?」
俺は、おもむろに壊れた部下が持っていた剣を持ち、あいつの構えをとる。
「我流剣術アマリリス‥‥とでも命名しておくとしようか」
ルドベキアが不思議そうな顔をした後、笑いながらこう言い放った。
「はは!付け焼刃やその場の思い付きで勝てるほど甘い相手だと思われていたか‥‥その考え、不愉快だ」
「付け焼き刃?そうでもねぇよ。太刀筋は暗記するほど、戦ってきた」
「そうかい?じゃあ、後悔しないでくれよ!」
そう言い終えると、これまでとは段違いの速さで突っ込んできた。俺の行為が、奴のプライドを傷つけたのだろう。その証拠に、今まで見せてきたことのない冷静さが感じられない表情をしている。
俺は、突進してくる奴に銃弾を浴びせる。しかし、紙一重で躱した。それを確認すると、俺は奴に接近し、左手の剣を振り下ろす。あることに気が付き、対応しきれなかった奴の体を裂く。
体を裂かれ、後ろに下がる奴に追い打ちをかけるも、戦槌で防がれ、鍔迫り合いの形になる。
「はぁ‥‥はぁ‥‥銃弾を置きトラップに使うとは‥‥」
「悪いな‥‥この銃は特別製なんだ。低速と高速で銃弾を撃てる‥‥最も両者の差はほとんどないがな」
そう言い終えると、俺は至近距離で銃を放つ。奴の脇腹を抉り、後方へとよろめかせる。すかさず左の剣で切りつける。袈裟切りに奴をとらえるが、刃が止まる。自らの体を盾にし、俺の動きを止めるためだと気づいたとき、剣を放し、銃を撃ち込みつつ、間合いを取る。
「このひと振りに全身全霊を込める‥‥!くらえ!雷帝の一撃!」
銃弾を浴びながらそう言った奴が、凄まじい一撃を放つ。銃剣で応戦するも、圧倒的な火力の差で、俺の体がガード越しから損傷していく。このままでは潰されてしまう‥‥必死に奴の一撃を耐えていると、力が段々と抜けていくのが分かった。
俺は奴の攻撃から抜け出すと、銃剣で突き刺しながら、砲撃した。崩れ行く奴の体が、地に落ちるのを見て、勝利を確信した。
「見事だね‥‥願わくば‥‥領地の平民は‥‥殺さないでくれ‥‥」
「ああ‥‥だが、襲って来るものたち以外は危害を加えん‥‥約束しよう」
ルドベキアは、それを聞き終えると、安心したのか眠るように死んだ。
暫しの間、俺は、勝利に酔いしれていた。国落としを‥‥倒した‥‥!任務完了も近いだろう‥‥!そう考えながら、戦闘をどう最小限にする策を練る。どうすればいいのか‥‥
その時、俺の頭に良い考えが浮かぶ。ルドベキアの武器‥‥この戦槌があれば、無血開城出来るのでは?勝てる見込みのない戦いをしてくる奴らばかりとは限らない‥‥
俺は、ルドベキアの戦槌を持ち、これから占領する土地へと向かった。
土地に着くと、先行していた部下たちの無残な姿と多くの兵士の亡骸が広がっていた。流石は、新型だ‥‥あの短い時間で、こんなに殲滅するとは‥‥
残った部下とともに、奥へ進むと、数人の兵士が現れた。
「ルドベキア様が倒しに行ったのに、何故生きている?もしや‥‥」
「ああ、そのもしやだ。これが証拠だ。だが、貴様らの上司に襲って来るものだけ殺すと約束した。まぁ、ここで立ち向かうのは、個人の自由だが‥‥」
奴の武器を見せながら言った。兵士たちはざわめきつつ、全員で決断したようにこう言った。
「悪いが、ルドベキア様とともに、戦うことを誓った俺たちが、ここで立ち向かわないわけにはいかない!行くぞ!!」
「分かった‥‥残念だが、良い部下を持っていたんだな‥‥」
突進してくる敵たちを殺しながら、少し苦い思いをしていた。
敵兵を殲滅しつくした時には、もう日が昇っていた。死屍累々の現状を見て、約束が守れなかったなと憂いていた。
部下に死体の山の片づけを命じた後、司令官に報告をするため基地に通信を行った。
「こちら7号です。占領に成功しました」
「7号か?もう占領成功したのか?」
「はい、こちらの損害は甚大でしたが‥‥これから新拠点を設けようと考えていますが、敵の拠点をそのまま使うのはいかがでしょうか?」
「ああ‥‥その‥‥私は、死体の匂いがすると仕事に集中できないのだが‥‥そこで殺したりはしていないのか?」
「‥‥何人かは」
「はぁ‥‥しかし、選り好みしている場合じゃないか‥‥」
「掃除は、ちゃんとやらしてもらいます」
「ああ、頼むよ‥‥これからの予定なのだが、まず機動力の高いロボットたちをそちらに送る。半日経てば、完了するだろう。それが終わるまで、貴公はそこで待機だ」
「その後で、我々人間がそちらに向かう。そこで貴公に護衛してもらいたいのだ。東雲様もご同行する。戦力の分担はかえって危険になるかも知れんからな」
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