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隠された秘密 1
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アカンサスを撃破した満身創痍とも言える状態の俺は、なんとか撤退に成功し、基地に無事帰還することが出来た。
俺の帰還に歓喜する者や状態の悪さから敗戦したのではと疑い嘆く者が、入り混じった中で、俺は、何よりも先にメンテナンスを受けて休みたいと思っていた。
1人の兵士に、博士の研究室の場所を聞き、俺は群衆から逃げるようにそこへ向かった。
研究室に着くと、青ざめた顔で博士が寄ってくる。
「か、一将‥‥すぐに修理する!こっちに来て!」
「ああ、じゃあ頼む」
俺がそう言い、所定された場所まで移動すると、スリープモードに入り、修理を受けた。
「一将‥‥一将、修理終わったよ」
博士の声で目を覚ます。身体を起こしてみると、完全な状態に戻っていた。
「ありがとう、博士‥‥」
「いいよ、いつものことだろう?」
気まずい‥‥圧倒的に気まずい。まず、あのカミングアウトから、数日で元通りにしゃべるということが無理難題過ぎたんだ‥‥何を話せばいいか、全く話題が思い浮かばない。
言葉を選んでいる俺に、博士はこう聞いてきた。
「もしかして、負けたの?」
「いいや、勝った。目標を撃破したからな‥‥」
「そうか、それは良かった‥‥」
「あのさ、一将‥‥改めて、謝るよ。ごめんね‥‥」
「騙していたことか?‥‥まぁ、気にしてないよ」
「はは‥‥やっぱり君は、嘘が下手だね」
「そうなのか?彩花にも同じことを言われたんだが‥‥」
「相当下手だよ、全部声と表情に出ているからね」
「なるほど、じゃあ、俺はスパイに向いていないな」
「違いないや、10秒と持たないよ」
「じゃあ、そろそろ司令官に報告しに行ってくる」
「ちょっと待って、一将!」
「うん?何か要件でもあるのか?」
「‥‥いや、後でにしようか。いってらっしゃい」
そう言った博士の表情は、何か言いたげだった。俺も隠し事は下手だが、博士も大概だと思うな。
そんなことを思いながら、俺は、司令室へと向かった。
「失礼します、7号です」
「おお、7号か?機体の修復はもういいのか?」
「はい、完璧でございます」
「それは良かった‥‥それで、ここに来たということは、報告だな?」
「はい、目標のアカンサス、並びに国落としの第3席次 リアトリスの撃破を完遂いたしました」
「それは、素晴らしいな。貴公のおかげで、我々の勝利は近い」
と司令官は嬉しそうに言った。確かに、残る戦力は国落としが1人、それに最高戦力のラクアのみだ。以前の状況からは、一変して良い状況になっているが、それでもこちらの劣勢だ。
「次なる目標は、第1席次 ゴールドだが‥‥貴公も連戦に次ぐ連戦だ。1日ゆっくりとしてから、作戦を決行しよう」
「私は、大丈夫なので作戦を‥‥」
「7号よ‥‥焦ってはいけない。貴公の機体には、激闘によるダメージが蓄積されている」
「ですが、先ほどメンテナンスを‥‥」
「分かっておる、貴公が焦る気持ちは。国落としを4機倒したが、相手の戦力は、こちらよりも上回る。だから焦っているのだろう?」
「そうです、もし攻めてこられたら‥‥」
「実は、ラクアが攻めてくるというのはないということは分かっておる。奴は修復とともに改良を加えられているから、戦線復帰は少し遠のいたのだ」
「まぁ、早くても帝王の演説がある4日後までには、修復を終わらせると考えているが、それも怪しくなれば、第1席次が護衛に回らなければならない」
「つまり、敵は攻める人材不足に陥っている。だから、攻めるに攻められないということだ」
「なるほど‥‥」
「だからこそ、休息をとり、万全な状態で挑むべきだ。それに、訓練をして、戦闘スキルを高めることに使ってもよいだろう。好きに使うといい」
「ありがとうございます。では、お暇を頂きます」
「作戦は追って、説明しよう」
「はい、では、失礼しました」
そう言い終えると、俺は司令室を後にした。
司令室を出た俺は、自室に戻ろうと廊下を歩いていると、彩花に出会った。
「また散歩か?」
「あっ‥‥漆山さん!帰っていらしたのですね!」
「ああ、今しがた帰ってきたところだ」
「そうなのですね。あの‥‥これから漆山さんに買ってもらった傘を取りに行くんです!良かったら‥‥一緒に行きませんか?」
「ああ、構わない」
「良かった‥‥じゃあ、行きましょうか!」
そう言い終えると、意気揚々と彼女が基地の出口へと進み、俺はその後を追った。
基地を出て、町に出た俺たちは、前回とは違った雰囲気の場所に少し驚いていた。
活気ある人々の声、美味しそうなにおいのする店に、自国では見られないような商品‥‥決して規模は、いつもの街よりも大きくないが、こちらも中々賑わっていた。
「いい香りに、沢山の人の声がしますね。いつもの街みたいに!」
彩花がそう楽しそうに言った。どうやら、俺と同じことを考えていたらしい。少しうれしいが、ちょっと恥ずかしいな‥‥
そんなことを考えていると、傘屋に着いたようだ。俺たちは、戸を開き、中へと入っていった。
俺たちが、中に入ると、店主がこう言った。
「いらっしゃい、ああ、お嬢ちゃんたちか。注文の品は出来てるぜ」
「おお、早速見せてくれ」
「おう、少し待っててくれ」
そう言うと、店主が店の奥へと消えていった。どんな仕上がりになったんだろう‥‥彼女は、気に入ってくれるんだろうか‥‥いや、まずは使ってくれるんだろうかな?
そんなことを考えていると、店主が戻ってきた。その手には、綺麗な水色の傘があり、内心少しだけホッとした。
「ほらよ、ご要望の品だ、お嬢ちゃん」
「ありがとうございます!」
そう嬉しそうに受け取る彼女を見て、さっきの杞憂が嘘のように消えた。俺が、代金を支払った後、店を後にした。
町に出た俺たちは、ゆっくりと賑わう街の中を進む。すると、彩花が少し恥ずかしそうにこうしゃべりかけてきた。
「あの‥‥漆山さんは‥‥恋人っているのですか?」
「うん?別にいないが‥‥どうした?」
「ふふ、何でもありませんよ」
彼女がご機嫌にそう答える。そんなに傘がうれしかったのか?それならいいんだが‥‥
俺がそんなことを考えていると、彩花が続けてこう言った。
「この戦争が、もう少しで終わると聞きました‥‥漆山さんが頑張っているそうですね!」
「ああ、まだ敵の戦力は、こちらの上を行くが‥‥」
「あの‥‥漆山さんに‥‥言いたいことが‥‥」
「うん、なんだ?」
「いえ‥‥この戦争が終わったらしましょう」
「ああ、少し気になるが、待っておこう」
そんな会話をしていると、基地へと着いた。俺は、彩花を部屋まで送った後、要件があると言っていた博士の元へと向かった。だが‥‥何か胸騒ぎがするな‥‥杞憂に終わればいいんだが‥‥
俺の帰還に歓喜する者や状態の悪さから敗戦したのではと疑い嘆く者が、入り混じった中で、俺は、何よりも先にメンテナンスを受けて休みたいと思っていた。
1人の兵士に、博士の研究室の場所を聞き、俺は群衆から逃げるようにそこへ向かった。
研究室に着くと、青ざめた顔で博士が寄ってくる。
「か、一将‥‥すぐに修理する!こっちに来て!」
「ああ、じゃあ頼む」
俺がそう言い、所定された場所まで移動すると、スリープモードに入り、修理を受けた。
「一将‥‥一将、修理終わったよ」
博士の声で目を覚ます。身体を起こしてみると、完全な状態に戻っていた。
「ありがとう、博士‥‥」
「いいよ、いつものことだろう?」
気まずい‥‥圧倒的に気まずい。まず、あのカミングアウトから、数日で元通りにしゃべるということが無理難題過ぎたんだ‥‥何を話せばいいか、全く話題が思い浮かばない。
言葉を選んでいる俺に、博士はこう聞いてきた。
「もしかして、負けたの?」
「いいや、勝った。目標を撃破したからな‥‥」
「そうか、それは良かった‥‥」
「あのさ、一将‥‥改めて、謝るよ。ごめんね‥‥」
「騙していたことか?‥‥まぁ、気にしてないよ」
「はは‥‥やっぱり君は、嘘が下手だね」
「そうなのか?彩花にも同じことを言われたんだが‥‥」
「相当下手だよ、全部声と表情に出ているからね」
「なるほど、じゃあ、俺はスパイに向いていないな」
「違いないや、10秒と持たないよ」
「じゃあ、そろそろ司令官に報告しに行ってくる」
「ちょっと待って、一将!」
「うん?何か要件でもあるのか?」
「‥‥いや、後でにしようか。いってらっしゃい」
そう言った博士の表情は、何か言いたげだった。俺も隠し事は下手だが、博士も大概だと思うな。
そんなことを思いながら、俺は、司令室へと向かった。
「失礼します、7号です」
「おお、7号か?機体の修復はもういいのか?」
「はい、完璧でございます」
「それは良かった‥‥それで、ここに来たということは、報告だな?」
「はい、目標のアカンサス、並びに国落としの第3席次 リアトリスの撃破を完遂いたしました」
「それは、素晴らしいな。貴公のおかげで、我々の勝利は近い」
と司令官は嬉しそうに言った。確かに、残る戦力は国落としが1人、それに最高戦力のラクアのみだ。以前の状況からは、一変して良い状況になっているが、それでもこちらの劣勢だ。
「次なる目標は、第1席次 ゴールドだが‥‥貴公も連戦に次ぐ連戦だ。1日ゆっくりとしてから、作戦を決行しよう」
「私は、大丈夫なので作戦を‥‥」
「7号よ‥‥焦ってはいけない。貴公の機体には、激闘によるダメージが蓄積されている」
「ですが、先ほどメンテナンスを‥‥」
「分かっておる、貴公が焦る気持ちは。国落としを4機倒したが、相手の戦力は、こちらよりも上回る。だから焦っているのだろう?」
「そうです、もし攻めてこられたら‥‥」
「実は、ラクアが攻めてくるというのはないということは分かっておる。奴は修復とともに改良を加えられているから、戦線復帰は少し遠のいたのだ」
「まぁ、早くても帝王の演説がある4日後までには、修復を終わらせると考えているが、それも怪しくなれば、第1席次が護衛に回らなければならない」
「つまり、敵は攻める人材不足に陥っている。だから、攻めるに攻められないということだ」
「なるほど‥‥」
「だからこそ、休息をとり、万全な状態で挑むべきだ。それに、訓練をして、戦闘スキルを高めることに使ってもよいだろう。好きに使うといい」
「ありがとうございます。では、お暇を頂きます」
「作戦は追って、説明しよう」
「はい、では、失礼しました」
そう言い終えると、俺は司令室を後にした。
司令室を出た俺は、自室に戻ろうと廊下を歩いていると、彩花に出会った。
「また散歩か?」
「あっ‥‥漆山さん!帰っていらしたのですね!」
「ああ、今しがた帰ってきたところだ」
「そうなのですね。あの‥‥これから漆山さんに買ってもらった傘を取りに行くんです!良かったら‥‥一緒に行きませんか?」
「ああ、構わない」
「良かった‥‥じゃあ、行きましょうか!」
そう言い終えると、意気揚々と彼女が基地の出口へと進み、俺はその後を追った。
基地を出て、町に出た俺たちは、前回とは違った雰囲気の場所に少し驚いていた。
活気ある人々の声、美味しそうなにおいのする店に、自国では見られないような商品‥‥決して規模は、いつもの街よりも大きくないが、こちらも中々賑わっていた。
「いい香りに、沢山の人の声がしますね。いつもの街みたいに!」
彩花がそう楽しそうに言った。どうやら、俺と同じことを考えていたらしい。少しうれしいが、ちょっと恥ずかしいな‥‥
そんなことを考えていると、傘屋に着いたようだ。俺たちは、戸を開き、中へと入っていった。
俺たちが、中に入ると、店主がこう言った。
「いらっしゃい、ああ、お嬢ちゃんたちか。注文の品は出来てるぜ」
「おお、早速見せてくれ」
「おう、少し待っててくれ」
そう言うと、店主が店の奥へと消えていった。どんな仕上がりになったんだろう‥‥彼女は、気に入ってくれるんだろうか‥‥いや、まずは使ってくれるんだろうかな?
そんなことを考えていると、店主が戻ってきた。その手には、綺麗な水色の傘があり、内心少しだけホッとした。
「ほらよ、ご要望の品だ、お嬢ちゃん」
「ありがとうございます!」
そう嬉しそうに受け取る彼女を見て、さっきの杞憂が嘘のように消えた。俺が、代金を支払った後、店を後にした。
町に出た俺たちは、ゆっくりと賑わう街の中を進む。すると、彩花が少し恥ずかしそうにこうしゃべりかけてきた。
「あの‥‥漆山さんは‥‥恋人っているのですか?」
「うん?別にいないが‥‥どうした?」
「ふふ、何でもありませんよ」
彼女がご機嫌にそう答える。そんなに傘がうれしかったのか?それならいいんだが‥‥
俺がそんなことを考えていると、彩花が続けてこう言った。
「この戦争が、もう少しで終わると聞きました‥‥漆山さんが頑張っているそうですね!」
「ああ、まだ敵の戦力は、こちらの上を行くが‥‥」
「あの‥‥漆山さんに‥‥言いたいことが‥‥」
「うん、なんだ?」
「いえ‥‥この戦争が終わったらしましょう」
「ああ、少し気になるが、待っておこう」
そんな会話をしていると、基地へと着いた。俺は、彩花を部屋まで送った後、要件があると言っていた博士の元へと向かった。だが‥‥何か胸騒ぎがするな‥‥杞憂に終わればいいんだが‥‥
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