機械と花 ロボットだろうが感情はあるんだから恋愛くらいしてもいいだろ?

トリカブト

文字の大きさ
27 / 28

白昼夢に見せられて

しおりを挟む
 ラクア戦の深刻なダメージの中、俺は、帝王を探していた。すると、路地裏の奥に人影を見かけた。あれは‥‥帝王か?そう思い、目を凝らす。間違いない‥‥帝王だ!そう思い、奴の後を追った。
 奴は路地裏の奥にある頑丈そうな扉を開け、その中に入っていた。俺も後を追い、中へ入る。その中に帝王の姿はなく、戸惑っていると扉が閉まる音がした。振り返るとそこに奴がいた。
「見つけたぞ‥‥」

「ああ、わざと見つかってやったのだ」

「何だと?」

「あのラクアに勝ったものから逃げ切れるとは思えんからな‥‥」

「潔いじゃないか?なら、望み通り殺してやる‥‥出来るだけ楽にな」

「それは、ありがたいな。だが、余はただでは倒れるつもりはない」

「ここは、国一番の技術者に作らせた特別なシェルターだ。頑丈なうえに、発見が難しいように光学迷彩まで搭載されている」

「お前のその身体では、この扉を破壊することは出来ないだろう?つまり‥‥道連れにしてやるってことだ!」
 そう言い終えると、奴は鍵を壊し、脱出不可能にした。
「恨んでもらってかまわない。どうせ、感謝されることよりそちらの方が多い人生だったからな」

「どこぞの誰かに殺されるくらいなら‥‥余の大切な部下達を‥‥友人を殺したお前を道連れにして‥‥皆の無念を晴らす名誉ある死を選ぶ!」

「長話しすぎたな‥‥もう言い残すことはない‥‥さぁ‥‥殺せ!」
 そう言った彼の表情は、死を前に開き直ったような投げやりなものではなく、目の前の死を受け入れる覚悟に満ちている誇りあるものだった。
 そんな奴に敬意を払いながら、俺は、首を跳ね飛ばした。力なく倒れ込む奴を見納めると、俺は力尽き、その場に倒れ込んだ。



柔らかな陽の光を顔に浴び、目を覚ます。身体を起こすと、見知らぬ草原の木陰にいた。何が起きているのか分からず、周りを見渡す。すると、後ろから声が聞こえてくる。
「一将―!どこ行ったんだ?特訓するぞー!」
 その声がする方向に行ってみると、少年が木の棒を両手に持って、俺を探している様子だった。視線に気が付いたのか、彼が振り向くと、こう言った。
「おっ、いた!早く特訓しようぜ!兄ちゃんが、考えた戦い方を教えてやるよ!」

「えっ?うん、分かった」
 俺の兄と名乗る少年と、日が暮れるまで気の棒を振るった。疲れ切った俺が、その場に座り込むと、少年が呆れたようにこう話す。
「はぁ‥‥一将!こんなことで、へばっていると戦場では死んでしまうぞ!」

「でも、そろそろ夕飯の時間だ。早く帰らないと母さんに怒られる‥‥ちょっと休憩したら、すぐに帰るぞ!」



 少年に連れられ、大きな建物に着く。鍵を開けて、その中に入り、帰ってきたことを告げると奥から、綺麗な女性が現れた。
「あら‥‥おかえりなさい。今日も2人で遊んできたの?」

「遊びじゃない!特訓だよ!」

「ふふ、分かったわ。もう少しで、ご飯が出来るからお風呂に入ってきなさい」

「はぁーい、一将、いこうぜ」
 そう言った少年に連れられて、俺は浴室に向かった。そこで、身体の異変に気が付いた。柔らかい手‥‥それに、これは‥‥肉体だ‥‥俺は‥‥人間になっているのか?!



 突然の変異に驚きながら、俺は食卓に着く。先ほどの女性と、少年、それに‥‥屈強な男が座っている。皆が食卓に並んだのを確認すると、男はこう言った。
「よし!じゃあ、食うか!」
 それを合図に手を合わせた後、食事を始めた。すると、少年が男性にこう問いかける。
「父さん!今日は、どんな人倒してきたの?」

「うん?今は戦争が起きていないから、誰も倒してないよ」

「なんだ~つまんないな~」

「はは!こうやって何もないくらいがちょうどいいんだよ」

「俺は、絶対に父さんみたいな強い戦士になるんだ!」

「そうだな‥‥敦也は、もう継承が終わっているからなぁ‥‥」

「うん!爺ちゃんから受け継いだんだ!」

「一将は、俺の武器を継承させてやるからな。安心してなさい」
 そう諭すように話しかけてくる男性に、小さく頷くと、彼は少し笑った後、食事を再開した。とても美味しくどこか懐かしい味に俺は、少し目元が潤んだが、ほおばるように味わった。




 俺は食事を終え、寝室に向かった。ふかふかのベッドに顔をうずめながら考える‥‥何故このようなことが起きているのか‥‥そういえば博士が、人間の脳を直接使っているって言っていたな‥‥じゃあ、これは走馬灯というやつなのか?記憶をさかのぼって、俺の人間だったころを思い出している最中なんだろうか?
 答えを出そうと必死に考えていると、睡魔が襲ってきた。いっぱい動いて疲れているのか?機械では味わえない感覚だ‥‥だが、今は‥‥まだ答えが出てな‥‥まぁ‥‥いいか‥‥ここはとても暖かいし、居心地がいい‥‥明日、考えるか‥‥
 そう思い、重たくなった瞼を閉じ、深い眠りについた。



 小鳥の声と階下のいい匂いで、俺は目が覚める。目をこすりながら体を起こし、居間へ向かう。居間では、食器を並べている母親と、それを手伝っている兄、新聞を読みながらコーヒーを飲む父親がいた。
「あら、おはよう。一将」

「おはよう‥‥母さん」

「一将!はやく席につけよ!俺、腹減ったよ~」

「分かったよ、兄さん」

「おっ、一将。起きたか、じゃあ食おう!」
 そう言うと、皆で食事を始めた。何気ない日常の風景‥‥平和とは、ここまで良いものだったとは‥‥そう思いながら、朝食にがっつく。それを見て笑う両親に、負けじとがっつく兄‥‥こんな居心地のいい朝は初めてだ。
 そう思いながら、美味しい食事を楽しんでいると、母親がこう聞く。
「そういえば、友達と遊びに行くって言ってなかった、一将?」

「え?多分そうだったかな?」

「友達を待たせすぎてはいけませんよ?」

「うん、分かった」
 そう言い終えると、残ったものをすべて平らげ、食器を片付けた後、俺は外へ向かった。



 外に出た後、大切なことを聞き忘れていることに気が付いた。どこで待ち合わせをしているんだ?それに、誰と遊ぶんだ?‥‥まぁ‥‥この平原を散策してたら、きっと会うだろう。そう思って、俺は歩き出した。
 どこまでも続く平原と横には綺麗な木々が色づく森林、どれもこれも自国では、見たことがほとんどないような風景だ‥‥綺麗な風景を楽しんでいると、後ろから女の子の声が聞こえる。
「あ、ここにいた!酷いわ、待ち合わせに遅れるなんて!」

「ご、ごめんよ‥‥」

「いいわ、許してあげる!ついてきて、また花言葉を教えてあげる!」
 明朗快活な女の子に連れられ、野原をかけまわり、花を見る。笑いながら話す彼女は、すごく可愛らしい印象を受けた。楽しい時間はすぐに過ぎていき、あっという間に日が暮れて、帰る時間になった。
「じゃあね、一将くん!」
 手を振る彼女に、同じく手を振り返した後、俺は帰路についた。



 家に近づくと、何やら焦げ臭いようなにおいが散漫していた。もしかして、母さんが料理でも失敗したのかな?だが、そんな冗談が吹き飛ぶような光景が待っていた。
 燃え上がる建物‥‥我が家だったものがそこにあった。俺が絶望の中で立ち尽くしていると、中から兄が飛び出してきて、俺の手を取り、森の中へと姿を隠した。
「兄さん?家が‥‥」

「分かってる!父さんも母さんも‥‥あの中だ‥‥だけど、俺たちは逃げなきゃいけない‥‥この神器は‥‥決して」
 そう言った彼の目には、溢れんばかりの涙がたまっていた。なんで、こんな別れ方をしなきゃいけないんだ!だが、今の非力な姿でどうすることも出来ないことも事実だった。俺は、溢れ出る涙も止められないまま、兄に引っ張られ、安全な場所へと逃げていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...