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序章
第1話 職業決定にはご注意を
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青い空にどこまでも広い草原、そこかしこに闊歩するモンスターにそれと戦う人々、一歩間違えれば死と隣り合わせの王道ファンタジー世界がそこにあった。そんな世界に、謎の石と優待券だけ手に持った勇者の登場か…?
「いや、安全な場所で転生させてもらえないの?!」
(ごめんごめん!私も初めてのことだから!)
あのやかましさ全開の声がどこかしら聞こえてきた。周囲を見渡していると、ポケットに入れていた謎の石が光り、勢い良く飛び出してきた。
(ここよ!聞こえるかしら?)
「はい、聞こえますよ。女神アリフィカ」
(ふふ、これは成功ね!)
「あの…この状況生き残れる気がしないのですが?」
(だ、大丈夫よ!すぐ近くに駆け出し冒険者の町と名高いアステリアっていう場所があるわ!)
「それは近いんですか?」
(徒歩圏内よ!徒歩圏内!)
「…」
(20分くらいですね…はい)
「はぁ…とりあえず文句を言っても状況は変わりませんので、行きましょうか」
明らかに取り乱したり、結構なドジを踏んだりする神もいたものだな…まぁ、そんな神と一緒に世界を変えるために奔走しなくてはいけないわけだが。まぁ神の加護的なもので守られている?はずだから魔物に襲われることはないだろう。そんなどこから湧いてくるのか分からない自信は、静かに近づいて来ていたスライムに打ち消されるのであった。
襲い来る魔物たちから逃げの一手で走り続けて数時間後、アリフィカの言っていたアステリアにようやく着いた。中世ヨーロッパ風の石造りの街並みはいかにもって感じで素晴らしいと思ったが、これまでの道中でそんな観光気分ともいかない程疲れていた。とりあえず花壇のふちに腰掛け呼吸を整えていると、道行く人々がチラチラとこちらを見ていることに気が付く。…そうか!この服が原因か。確かに、彼らの服装とはかけ離れたものだ。…まぁ、当てにならないが
「アリフィカ、聞こえますか?」
(…何よ、どうせ私は使えないわよ!)
「そんなことありませんよ、アステリアに着いたのも貴方のおかげじゃないですか」
(…そう?)
「もちろん!」
(ふっふーん♪そうよね!私のおかげだわ)
「では、とりあえず服装を変えたいのですが…どこかいい場所というか店ありますか?」
(うん?でも、私たちお金ないわよ?)
「え?…全く?」
(ええ、無一文よ!)
「はぁ…じゃあお金から何とかしましょうか…」
(それなら冒険者協会へ行きましょう!)
彼女の提案に不安感しかないが、情報が皆無な僕に提案することなんて出来ない。大人しくやるしか…おや?なんでだろう、周囲の視線が痛いな…
(あっ、言い忘れていたわ!私の声はあなたにしか聞こえないの、だからそんな大きな声で話すと…)
「もっと早く言ってくださいよぉ!」
思わずそう怒鳴ってしまい、周囲の視線がさらに痛くなる。そんな視線を振り払うように冒険者協会へと走り出した。
「こんにちは!冒険者ギルド受付です。何か御用でしょうか?」
そんな綺麗な女性たちとは正反対に、屈強な男どもが酒を片手に掲示板を眺めている。なるほど、まさに異世界生活って感じだな。そんな感心を抱いていると、後ろから来た冒険者たちに肩を押され、中に入ってしまった。‥‥ええい、ここまで来て餓死とか野宿は嫌だ!そう決心し、受付嬢に話しかける。
「すみません!これ使いたいんですが!」
「それは…冒険者ギルド優待券でございますね。では、お職業をこちらからお選びください」
昔ながらの電話帳並みの分厚さくらいある職業リストに少しひるみながも、ペラペラとページをめくっていく。戦士、武闘家、魔法使いにこれは槍使い?なんでこんなに細かいんだ?そもそも職業ってどんなものか聞いてなかったなぁ…
「あの…僕、遠くから旅してきたんで分からない冒険者協会の仕組みがちょっと分からないのですが」
「これは失礼いたしました。まず職業の説明をいたします。職業とは、スキル習得を助けるカテゴリーでございます。例えば、戦士を選びますと、武器系のスキル習得は楽ですが、魔法系のスキル習得は難しいといった感じですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「オススメの職業ですと、戦士か魔法使いでしょうかね。この2つは…」
ペラペラとページをめくる手が止まる。魂術師、ソウルテイカー?魂専門の魔法系職で感情を読み取れる人しかおすすめしません。しかし、使いこなせれば、生物の根源たる魂を自在に操れる。…この職業になぜこれほどまでに引っかかってしまうんだ?もしかして、僕が自殺した理由と因果関係があるのかも…
「これにします」
「魂術師?!こちらは、扱いにくい職業で…」
(あんた何考えてんのよ!!せっかく私のあげた優待券が無駄になっちゃうじゃない!)
「これがいいんです。僕には感情が色で見える…だから!」
「そこまで言うのなら…分かりました、魂術師で冒険者登録いたします」
(ちょ、そっちのお嬢さん?ちょっとお待ちいただける?…ってこれ聞こえないんだった!)
やかましい岩の彼女の注意を聞かず、僕は魂術師として晴れて冒険者となった!さっそく魔物狩りだ!そう意気込み、草原へと走り出した。
町を出ればそこら中にいる魔物たち…その中で最初に戦うって言ったらスライムだろう!何たって、最弱のモンスターだからな!
「さぁ、勝負だ!スライム!」
勇ましく踏み出したが、ここで失念していたことがあった。魂術師は、魔法系専門職である、つまり上位職だ。何が言いたいって、基本ステータスが無いということだ。最弱スキルでもMPが足りず、無残に敗北を喫した。
「いや、安全な場所で転生させてもらえないの?!」
(ごめんごめん!私も初めてのことだから!)
あのやかましさ全開の声がどこかしら聞こえてきた。周囲を見渡していると、ポケットに入れていた謎の石が光り、勢い良く飛び出してきた。
(ここよ!聞こえるかしら?)
「はい、聞こえますよ。女神アリフィカ」
(ふふ、これは成功ね!)
「あの…この状況生き残れる気がしないのですが?」
(だ、大丈夫よ!すぐ近くに駆け出し冒険者の町と名高いアステリアっていう場所があるわ!)
「それは近いんですか?」
(徒歩圏内よ!徒歩圏内!)
「…」
(20分くらいですね…はい)
「はぁ…とりあえず文句を言っても状況は変わりませんので、行きましょうか」
明らかに取り乱したり、結構なドジを踏んだりする神もいたものだな…まぁ、そんな神と一緒に世界を変えるために奔走しなくてはいけないわけだが。まぁ神の加護的なもので守られている?はずだから魔物に襲われることはないだろう。そんなどこから湧いてくるのか分からない自信は、静かに近づいて来ていたスライムに打ち消されるのであった。
襲い来る魔物たちから逃げの一手で走り続けて数時間後、アリフィカの言っていたアステリアにようやく着いた。中世ヨーロッパ風の石造りの街並みはいかにもって感じで素晴らしいと思ったが、これまでの道中でそんな観光気分ともいかない程疲れていた。とりあえず花壇のふちに腰掛け呼吸を整えていると、道行く人々がチラチラとこちらを見ていることに気が付く。…そうか!この服が原因か。確かに、彼らの服装とはかけ離れたものだ。…まぁ、当てにならないが
「アリフィカ、聞こえますか?」
(…何よ、どうせ私は使えないわよ!)
「そんなことありませんよ、アステリアに着いたのも貴方のおかげじゃないですか」
(…そう?)
「もちろん!」
(ふっふーん♪そうよね!私のおかげだわ)
「では、とりあえず服装を変えたいのですが…どこかいい場所というか店ありますか?」
(うん?でも、私たちお金ないわよ?)
「え?…全く?」
(ええ、無一文よ!)
「はぁ…じゃあお金から何とかしましょうか…」
(それなら冒険者協会へ行きましょう!)
彼女の提案に不安感しかないが、情報が皆無な僕に提案することなんて出来ない。大人しくやるしか…おや?なんでだろう、周囲の視線が痛いな…
(あっ、言い忘れていたわ!私の声はあなたにしか聞こえないの、だからそんな大きな声で話すと…)
「もっと早く言ってくださいよぉ!」
思わずそう怒鳴ってしまい、周囲の視線がさらに痛くなる。そんな視線を振り払うように冒険者協会へと走り出した。
「こんにちは!冒険者ギルド受付です。何か御用でしょうか?」
そんな綺麗な女性たちとは正反対に、屈強な男どもが酒を片手に掲示板を眺めている。なるほど、まさに異世界生活って感じだな。そんな感心を抱いていると、後ろから来た冒険者たちに肩を押され、中に入ってしまった。‥‥ええい、ここまで来て餓死とか野宿は嫌だ!そう決心し、受付嬢に話しかける。
「すみません!これ使いたいんですが!」
「それは…冒険者ギルド優待券でございますね。では、お職業をこちらからお選びください」
昔ながらの電話帳並みの分厚さくらいある職業リストに少しひるみながも、ペラペラとページをめくっていく。戦士、武闘家、魔法使いにこれは槍使い?なんでこんなに細かいんだ?そもそも職業ってどんなものか聞いてなかったなぁ…
「あの…僕、遠くから旅してきたんで分からない冒険者協会の仕組みがちょっと分からないのですが」
「これは失礼いたしました。まず職業の説明をいたします。職業とは、スキル習得を助けるカテゴリーでございます。例えば、戦士を選びますと、武器系のスキル習得は楽ですが、魔法系のスキル習得は難しいといった感じですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「オススメの職業ですと、戦士か魔法使いでしょうかね。この2つは…」
ペラペラとページをめくる手が止まる。魂術師、ソウルテイカー?魂専門の魔法系職で感情を読み取れる人しかおすすめしません。しかし、使いこなせれば、生物の根源たる魂を自在に操れる。…この職業になぜこれほどまでに引っかかってしまうんだ?もしかして、僕が自殺した理由と因果関係があるのかも…
「これにします」
「魂術師?!こちらは、扱いにくい職業で…」
(あんた何考えてんのよ!!せっかく私のあげた優待券が無駄になっちゃうじゃない!)
「これがいいんです。僕には感情が色で見える…だから!」
「そこまで言うのなら…分かりました、魂術師で冒険者登録いたします」
(ちょ、そっちのお嬢さん?ちょっとお待ちいただける?…ってこれ聞こえないんだった!)
やかましい岩の彼女の注意を聞かず、僕は魂術師として晴れて冒険者となった!さっそく魔物狩りだ!そう意気込み、草原へと走り出した。
町を出ればそこら中にいる魔物たち…その中で最初に戦うって言ったらスライムだろう!何たって、最弱のモンスターだからな!
「さぁ、勝負だ!スライム!」
勇ましく踏み出したが、ここで失念していたことがあった。魂術師は、魔法系専門職である、つまり上位職だ。何が言いたいって、基本ステータスが無いということだ。最弱スキルでもMPが足りず、無残に敗北を喫した。
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