かみつみ 〜神便鬼毒・流流譚

あぢか

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死の怪 鬼 後編

みをつくしても

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「っ…お腹、痛い…もう、出ちゃう…」

「まだよ、我慢なさい」

「いや、嫌、無理、もう…あ、あぁ…っ」

 震える膝の下から、黄金色の水溜りが広がっていく。濡れた道場の床が___いつしか椅子の座板に変わり、溢れた水が教室の床へと音を立てて降り注ぐ。

「せんせー、あしやさんがまたおもらししてまーす!」

「きたねー!」「またもらしたの?」「おむつしたら良いのに。赤ちゃんなんだから」

「もうここは幼稚園じゃないのよ! トイレに行きたいなら、ちゃんと言いなさい!」

「ひぐっ…ひっ…あっ、あぁ…」

 泣きじゃくる少女の目の前___一組の布団が現れた。暖かな柑橘の香りが、一瞬にして線香と、死人特有の臭気に塗りつぶされる。

「…ご臨終です」

「ぐすっ…嫌だよぉ…嫌…お母さん…」

「美河様は、最期まで勤めを果たされました。澪逢様も、もう立派な巫女。次代まで、この水鏡も安泰でしょう」

 スーツ姿の女が立ち上がり、去っていく。誰もいない畳の上に、少女は一人…



「…澪逢」



「…!」

 ふわり。少女の身体を、優しく包み込む腕。



「…もう、やめよう。こんなこと」



「駄目よ…」

 澪逢は微笑んだ。

「あなたを、助けないと…」



「僕は、死なないよ。でも、このままじゃ澪逢が死んじゃう」



「ええ…あなたを助けられるなら…私は、死んでもいい…だって、あなたは…」

◆◆◆

「…い、伊吹、さん…?」

「…きひっ」

 暗い廃アパートの一室。仰向けに転がった鋼の上に、伊吹ばら乃…鬼が、跨っていた。枯れ竹のように細いその脚が、ずり、ずりと、鋼の身体を滑っていく。

「な、何のつもり…」

「あんた…やないな?」

「何言って…んぐっ!?」

 とうとう、ばら乃の腰が、鋼の顔面を跨いだ。そのまま、彼女は躊躇なく腰を落とす。

「ぁんっ。…あの娘の小便は、苦いやろ?」

「んっ、んーっ!?」

 制服のスカートの中、あるべきはずの布を介さない、しっとりした肌の熱に目を白黒させる鋼。その肌が、ぷるりと震えた。

「んん…んっ。…うちの方が、あんたには甘いかも…ん、あ、ぁ、出るぅ…んっ」

「んんっ!? げほっ、んごっ! …ん、んぐっ、ぐっ…んく、んくっ…」
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