Gifted:また世界に××××

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3話 生首

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3話 生首

父親と母親の声が聞こえる。

そうだ、この日は家族でショッピングに来たんだ。買い物好きの母は心躍らせているのか、弟の琉星の手を引くとすぐさま店内へと入っていく、父はそれを後ろ目に呆れた顔つきで僕と手を繋ぐ。
「心利が俺と同じ買い物嫌いで良かったよ。」
父は昔から買い物が嫌いだ、特に母との買い物は長いから嫌いだなんだと言う。
「僕は別に嫌いって訳じゃないよ。」
「じゃあ何でそんな面倒くさそうな顔をしてるんだ?」
「それは...」
心利は父の返答に言葉に詰まらせる。
「ねぇ~心利はどうする?!」
父との会話を遮る様に母が間に割り込んだ。
「琉星はポ○モンの服が欲しいってよ!」
母の上機嫌な顔を見て僕は満面の笑みをする。
「え~僕は無地でいいよ!」
「ほら心利も!こっちきて色々見てまわろ~」
母はそんな僕は手を掴んだ。
「そうか、本当に心利は優しいんだな。」
父は心利の背中を見て微笑みを溢す。
「ハハッ待ってくれ!俺もポケ○ンの服が欲しいんだ!」
そういうと父は明るい店内へ駆け出した。

そうだ僕はあの時ゲ○ガーの服を買ったんだっけか?

しかしそれは平和な世界での話だ。
ここはアトランティア王国郊外、南に位置するナイル村。

以下の5名は護衛任務についていた。

アトランティア王国 
聖騎士団 護衛部隊所属 第四部隊
隊長  ルーシー・ガルシア
副隊長 ベイク・グランツ
隊員  キース・トレジャー
隊員  ダイナ・リタリナ
新人  ルルベルト・ササ

「ベイクとキースはルルベルトとダイナに肩をかせ!早くここを離れるぞ!!」
アトランティア王国聖騎士団護衛第4部隊の5名は血相を変えて森を走っている。鉄の鎧を装備する彼女らは森の中にいるあるものから逃げていた。先頭を走るのは金髪の女性、後ろに続く大柄な男2人、そして足を引きずる女と男の2人。

先頭を走る金髪の女性は足元にある奇妙な植物を剣で切り裂き退路を確保する。どうやら後衛にいる2人が重傷を負ったようで大柄な男2人が肩を貸している。だからなのか彼らは思う様に奴を撒くことができないようだ。
「ルーシー隊長!ここで奴と戦おう!このままだと全員死んじまう!」
大柄な男の一人が腰に携えられた剣に手をかけ、奴との接敵を試みようとする。
「ベイク!私の命令に従え!!」
金髪の女は逃げる様に命令を下すが、女の問いかけも虚しく届かない。どうやら混乱からかベイクという大柄な男は冷静な判断ができていないようだ。
「ふざけるなルーシー!お前に従って生き残った奴はいないだろ!?」
「なぁ俺に従っとけって!第四部隊の生き血の魔女さんよ!」
「なんだとっっっ」
金髪の女性は剣を抜きベイクの首元に剣を当てる。
「ッやれるもんならやってみろ!コレでお前のキャリアも終わりだぞ!!」
男の一言で女もまた冷静な判断を見失った。
「言わせておけばッ!!」
激昂した女が剣を振り下ろそうとしたその時、奴に見つかってしまった。彼女らは逃げる事に専念し、足を止めるべきではなかったのだ。

奴は姿をあらわにする。
木々を薙ぎ倒し、酷い臭気を放つ化け物[ガベージキメラ]。

奴は四足歩行で地を這い、鉄の硬度を超える強靭な爪や背中に生える複数の触手で人を襲う。コレだけでも十分な脅威だが、奴はそれだけではない。厄介なのはその特性だ。ガレージキメラ、奴の体液には興奮剤と出血毒が含まれている。それは奴の体液に一度触れれば冷静な判断ができなくなると共に受けた傷からは数週間血が止まらなくなる。

女の方はよく持ったほうだろう。ベイクという男は随分前から冷静な判断が出来ていない。
「キース、止めてよ!!」
足に怪我を負った女、ダイナがもう1人の大柄の男キースに仲裁に入る様に叫ぶ。
「無茶言うなよダイナ...僕らはここで終わりなんだ。僕らはあの臭いやつに殺されるんだよ...潔く死のう...」
体の大きさと反対に気弱な性格のキースは悲観に浸り肩の力を落とす。
「なぁ~」
そんな時キースの背後で若い少年の声がした。
「別に死ぬのはいいんだけど俺をここから引っ張り出してくれないか?」
キースはそれを聞くと深いため息をつき、ダイナに泣き言をこぼす。
「はぁぁぁ、ダイナなんか声まで聞こえてきたよ。僕はコレで終わりなのか?」
「あんたうるさいわね!声なら私も聞こえたわよ!!」
「え?いったい誰のをさ、、」
ダイナとキースは目を合わせ声のした方へと目を運ぶ。
「あークソッ、ここ日本じゃないから言葉が伝わっていないのか?」
キースは声の主を震える手先で足元の草木をかき分け探る。するとすぐにそれは見つかった。しかしキースからしたらそれは予想外なものだった。

キースの目に映ったもの。それは地面から少年の生首が生えているという何とも奇妙なものだった。心利の生首を見た気弱な男キースの顔はみるみる青くなっていった。
「うあぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
絶叫をあげキースは腰を抜かし、地面にへたり込む。
「キースの馬鹿!静かにしなさいよ!」
キースのその絶叫でガベージキメラは興奮状態に入ってしまった。ガべージキメラは唸り声を上げ、怒りの表情でこちらへ走り出す。
「うぉぉぉ何だアレ!!早く引っ張り抜いてくれ~」
心利もまた突如目の前に現れた化け物ガベージキメラを前に泣き出す。

キースは心利の頭を両手で鷲掴みにすると泥から一気に引っ張り出し、駆け出した。
「隊長!副隊長!来てます!ア、アレが来てます!!逃げてください!!」
キースがそう叫ぶと頭に血が上った2人といえど、目と鼻の先にいるガベージキメラを前に逃げる様にその場から駆け出した。正確にはやっ噛み合いながら2人は駆け出した。
「ベイクお前後でタダじゃおかないからな!!」
「うるせぇルーシー俺はな!死にたくないだけだ!!」
2人は互いの胸ぐらを掴み合いながら横並びに走り出す。
「2人ともうるさい!あとあんたら私とルルを置いてかないでよ!」
2人はその言葉を聞くとくるりと振り返り、怪我人を背負って再び駆け出した。
「で、君は誰なの?」
キースは肩に背負う少年に問いかける。
「俺か?俺の名前は真田心利だ、よろしく。」
「さ?真田?」
「心利でいいよ、何でお前に俺の言語が伝わっているのか知らないが、小さなことはもうどうでもいい。」
「まぁしばらく世話になるよ。」
先ほどまで泣いていた心利はどこに行ったのか、彼はキースの肩の上で腕を組み踏ん反り返っている。
「う、うん。でも君はなんでそんな偉そうなの?」
「そう言う性格だ。」
「そう言うものなの?」
「そうだ。」
「キース置いてくぞ!早く走れぇぇぇぇぇ」
ベイクとルーシーは怪我人を背負いながらキース走りぬいていった。キースに比べ2人は大人1人を背負った状態で走り、キースを追い抜いていった。

その様を見て心利は言葉を漏らした。
「お前足おっそいな、、、」



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