異世界転移イケオジ受肉三人衆~TSって普通美少年ちゃうんか~

藤 都斗(旧藤原都斗)

文字の大きさ
2 / 69

いちんちめそのにー。

しおりを挟む
 


 全裸になることは“だめです”の一点張りで諦めさせられたので、とりあえず色んなものの確認をすることにした。

『なんで今下着の中を確認してるんですか』
「ホントに生えてるとかウケるー」
『ウケないで』

 股間にナマコみたいなのとゴールデンボールが二個と水色のが生えてるんですけどウケるー。

「でさー、あとドラゴさんとハーツさんが来てんすよね?」
『わたくしの話聞く気ないんですね』
「まあまあそー言わずに」
『仕方ないですね……はい、そうです』

 めっちゃ仕方なさそー。ウケるー。いやウケてる場合じゃないんだけどねぇ。
 そういうわけなので、ふざけずに気になることを尋ねることにした。

「あの二人どこ?」

 来てるんだよね、おっさんの姿で。

『……それが……あの……申し上げにくいんですが……はぐれました』
「え」

 詳しく聞けば、どうやら焦り過ぎた結果、自分でも何がどうなってこうなったのかは分からないが、気づいた時には三人がバラバラの場所に転移してしまったそうだ。あらまぁ。

『で、でも大丈夫です! あなた方はあのゲームでいうパーティを組んだフレンドの状態なので、パーティチャットや、あとフレンドチャット、フレンド間メールを使えますし、なによりマップ機能もそのままです!』

 意気揚々と言われたので、確認の為に“あの画面出ろー”と念じてみると、たしかに、あの慣れ親しんだゲームほぼそのままのコンテンツメニュー画面を空中に出す事が出来た。どこかで見たファンタジー小説と同じならきっと自分にしか見えないんだろうな。と思いつつ、内容確認を開始する。
 今後本当に使うか分からんようなキャラクターの装備や状態などの確認が出来る、いわゆるステータス画面や、今連絡を取ることの出来るフレンドが表示されたフレンド画面。
 それから、これも使うか分からん今組んでいるパーティメンバーの体力などが分かる簡易画面。
 これを見る限り二人とも元気そうである。

 そして肝心のメール機能とマップ機能だが、たしかにゲームで使っていたそのままだ。

 来たことのない場所だから地形距離感その他もろもろが真っ白ではあるが、パーティメンバーがどこらへんに居るかは、親切な青い点がマップ上で教えてくれていた。

「あー……」
『一応、理由やその他もろもろをメールで送ってますし、すぐに合流出来ますよ!』

 うん、すーごい至れり尽くせりなんだけどねー。

「んー……多分無理かなー」
『なぜっ!?』

 なぜというか、まぁ。

「あの二人、方向音痴なんすわ」
『えっ』
「ドラゴさんは天然で方向音痴、ハーツさんはマイペースで方向音痴。ほんでどっちも誰かに言われなきゃメール機能すら気づかないタイプ」
『詰んでるっ!?』

 普通は大丈夫だと思うよねー。でもそれが当てはまらないのがあの二人なのである。
 まず画面が出ることに気づくかなあの二人。気づかないだろうなー。メニュー画面に気づけたとしてもマップ機能に至っては気づけるかすら分からない。
 正直アタシも言われなきゃ気づかなかった。

「詰んでるねー」
『ど、ど、どうしたら……』
「二人の居場所分かってんならアタシんとこ来たみたいにやったらいんじゃねーすか」
『それは……あなたを起点にしてしまったので無理ですが、声を飛ばすことは出来ます』
「んじゃあ、それで」
『分かりました、そうします』

 いやー、まじ便利だなこの小さいの。
 つーか今更だけど、コイツなんなんだろ。

 白く光る、透明な、妖精とか精霊とか、なんかそんな風に見えるけど小さいせいで性別も顔立ちも分からん。体長5cmくらいしかないんじゃないのコイツ。まぁ、どうでもいいんだけど。

「ところで、魂抜けた元の体ってどーなってんです?」
『あ、ご安心ください、こちらの魂をまるごとコピーして突っ込んできましたので、あちらの人間関係にはなんの影響もないはずです』
「なるほど」

 そりゃつまり明後日の仕事もゲームの続きも勝手にやってくれるってわけか。仕事はともかくゲームは自分でやりたいんだが、そこんとこなんとかならんのかなゲームしたい。

『しかし、輪廻出来る魂が三つも突然世界移動してしまったので、あちらの神様とこちらの神様にこっぴどく怒られまして……』
「ほんほん」
『神としての地位と名前を剥奪の上、あなた方のサポートを任された次第です……』
「あっはっは」

 ざまぁ。

『笑いごとじゃないんですよ!?』

 アタシにとっちゃ笑いごと以外のなんでもない。正直コイツの事情とかどうでもいいしね。
 それでもまだ何か言いたそうな雰囲気だったから耳を傾けることにした。

 どうせ自分がどれだけショックだったかとかの恨み節を聞かされると思っていたのだが、しかしソイツは予想外の内容を口走り始めた。

『わたくしはさておき、あなた方はゲームの能力そのままにこんなファンタジーな異世界に来ちゃったんですから!』

 ドヤ顔で言うことがそれなのかコイツ。
 いや、待て、それより。

「……そのままなんすか?」
『あ、いえ、厳密に言うと完全にそのままではないです』
「ふむ」

 どっちやねん。

『例えばあなたは吟遊詩人でしたよね?』
「まぁ、ゲームの職業ですがね」
『でも他にも弓術や銃火器など、遠距離物理攻撃を得意としてましたよね』
「そーね」

 真剣な話のようだし、一応聞く体勢を、と腕を組む。しっかし腕長いな。足もだけど。

『なので、その肉体は遠距離物理攻撃特化であり、魔法や大剣、盾役などは出来ません』
「なるほどー」

 つまりアタシに出来るのは攻撃補助と仲間の補助、それから遠距離からの狙撃と援護射撃、あとは気配察知とかか。便利じゃん。

『つまり、あなた方パーティのそれぞれの役割そのまま、異世界に転移した形になります……』
「ほーん」

 他にも何が出来るか確認したいところだけど、さぁどうしようかな。と思ったその時、急に小さいのが怒り始めた。

『なんであなたそんなにユルいんですか!!!』
「いやだから全く現実感ねーんですわ」
『だとしてもユルすぎます!』

 怒られても困るっていうか、なんていうか。

「焦ったり、怒ったり、そーゆーの性に合わねぇんすよアタシ」
『はぁ……! もう、もうなんなんですか……!』

 不意に、小さいのが頭を抱えてうずくまった。

「ん?」
『一人称が“アタシ”で!? ユルくて笑顔が胡散臭い猫耳のチャラいイケオジとか!!! 卑怯にも程があるでしょ萌え殺す気か!?』

 なんだかよく分からない魂の叫びを聞いた気がした。

「いきなり何の話すか……こわ……」
『鏡! 鏡見てください! ほら!』
「……あー、なるほど」

 もう一回差し出された鏡を改めて見て、思う。
 たしかにこんなおっさんがそんな感じだったら卑怯かもしれない。
 え、アタシすごいイケオジじゃね?

『それで! ほかになにか質問ないんですか? 全部答えますよ』
「質問……あー、そうだ」
『はい! なんでしょう!』

 顎に手をあてて、軽く悩んでいるジェスチャーが無駄に様になっている気がするが、それは今はどうでもいい。
 とても重要で、すごく気にしておかなきゃいけないことを思い出したからだ。

「……アタシらが本当のアタシらで、偽物じゃないっていう証明出来るんです?」

 小さいのを睨む。お前は信頼出来ないのだと鈍感な奴でも分かるように、眉間にシワさえ寄せながら睨みつける。

『!!!』
「……どしたんすか」
『い、いきなり真剣な顔で、すごくかっこいい顔しないでください……萌え死にます……』
「は?」

 どうしようコイツあかんかもしれん。

『ゲフンゲフン! えっと、本物である証拠でしたね』

 それで誤魔化されると思ってんのかなぁ。
 じとーっと見ているのにも関わらず、小さいのはどこか誇らしげに語り始めた。

『簡単です。魂の強さが違います』
「ほう?」

 魂の強さとな。

『例えば、神の権限で一つの命を生み出したとして、世界の輪廻を巡る魂が宿っていない命はすぐに消えます』
「それってつまり残して来た元の体は……」

『あぁ、いずれはどこかで朽ちるでしょうね。でもそれにはあちらの時間で三十年以上はかかりますのでご安心ください』
「安心していいのか微妙なんすけど」

『そのままのあなた方なので、ちゃんとお仕事もするでしょうし、親孝行もすると思いますよ?』
「……あー、うん、そう思ってんならそれでいいすわ」

 言いたいことは色々あるし、そういう問題じゃないんだけど、そこはまあ考え方の違いというやつなんだろう。

 正直、この小さいのの言葉を全部そのまま信じるほど素直な人間じゃない。
 口ではどうとでも言えるし、アタシらの精神に何かしてないとも言いきれない。
 信用、信頼、そういうものはすぐに出来るものじゃないからだ。

 まぁ、わざわざ助けてくれるって言ってるんだから利用するだけしてやろう。あとの二人が本当に来てるのかも疑わしいし、もし来てたとしてもあの二人はきっと何も疑わないだろうから、アタシだけでも全てを疑いながら行くとしよう。

 こうなった原因は神じゃなくて、悪魔とかそういうのの可能性もあるしな。

 さぁて、どれが嘘でどれが本当だろうね?


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...