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閑話、カズハの話。

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 アタシは人間だ。
 その事に関しては特に何も思わない。
 だって結局アタシはアタシで、それ以上でも以下でもないし、種族なんてどうしようもないから。

 人間ってだけで色々煩わしい事も多いけど、歴史的観点から見てもどう考えたって人間の自業自得。
 子孫の事もうちょっと考えてくれたって良かったのに、ホントに仕方ない種族だと思う。


 一番古い記憶は、檻の中。

 アタシは人間の中でも珍しく魔力を持ってたから、政府に見つかる前、裏の組織みたいなのに横流しされるみたいに売られて、そこで商品として扱われていた。

 大体、4、5才くらいだったと思う。
 見目も良かったから、本当に愛玩動物扱いだった。
 これは後から聞いた話だけど、アタシはある程度成長してからオークションに出される予定だったらしい。

 結局その組織は政府によって潰されて、アタシは政府の作った人間保護施設に収監された。

 周りの大人は気持ち悪い色ばっかりで、同じ人間なんて馬鹿ばっかりだったし、なんかもう人生ヤバいわコレ終わったとか思った。

 その頃は8才か9才くらいだったと思う。

 施設に入る時、胸の下、右脇腹に管理番号を刻印された。

 0312、と黒い数字を。

 目茶苦茶痛かったけど、泣かなかった。
 結局、どうなったって管理される事に変わり無いから、全部どうでも良かった。

 今考えるとなんでそんな皮膚薄くて痛い所に入れるのかマジ意味わかんないよね。
 よっぽど人間が嫌いなんだろうな、とは思う。

 希望なんて、持っていなかった。
 持ちたくもなかった。

 自分が将来どうなるか、物心付く前から何度も、予知夢で見せられたから。

 本来人間に無いはずの魔力なんて物があるせいで、そういう夢を見るんだとは理解してたけど、本当に要らない能力だと思う。

 全く知らない相手と子孫を残す為に愛の無い行為を繰り返し、毎日のように強要される、とか
 魔力をどうやったら有効活用出来るかの実験、とか
 生きたまま拘束されて魔力電池扱い、とか
 政府に真っ向から反発してテロリストになっても、どの未来でも結局捕まって、同じ末路を辿ったり
 結果、頭がおかしくなって死のうとしたり。

 全て自力じゃ死ねないんだけど。

 もう本当にクソみたいな未来ばっかり。

 信じたくなかったけど、見る夢全部そんな感じだから、もうそういうものなんだと思ってた。
 頻繁に色んなパターンの人生を最期まで夢で見せられるせいで、性格はひん曲がったと思う。

 毎日死にたかった。
 生きてる意味とか何も無かったから仕方ないんだけど。

 魔力があるせいで毎日毎日寝る暇もなく色々な実験されて、気が付いたら馬鹿みたいな魔力量になって
 でも結局全く制御出来なくなって施設を破壊して
 結果アタシは全く悪くないのにあちこちの施設をたらい回しにされた。

 まぁそうなるのは夢で知ってたから何も思わなかった。

 最終的に落ち着いたのは、全く関係ないこの学園。

 魔力の制御を覚える為に、成人になるまで学園で過ごす事になって、それが大体11才くらいだったかな。

 過ごすうちに、なんだか知らないけどアタシが人間でも気にしないっていう友達が出来て、騒がしくて楽しい日々が続いた。
 そしたら不思議な事に、その辺りから夢の内容が少しずつ変わり始めた。

 学園で出来た友達が政府から助けようとしてくれたり、アタシを連れて逃げてくれたり
 結局、最後は悲惨な事になるけど、それでもアタシには誰かが居た。

 一人で狂っていく人生より、断然マシだった。

 未来はアタシが動けば変わる、そう気付いたら、そんな風に出来てるんだと思ったら、思い切り好き勝手してやろうと思った。

 後悔なんてしない生き方を、してやろうと思った。

 どうせ最悪な事ばかりしか無い人生でも、輝ける部分がある方がいい。
 もしかしたらそうする事で、多少なりともマシな未来になるかもしれないと思った。
 アタシはアタシの思うがまま、好きなように生きてやろうと。
 その結果が、悲惨な未来でも何もせず後悔するより良いと思った。

 思いっ切り楽しんで、それからクソみたいな残りの人生を生きてやろうと思ったんだ。

 そんなある日、また夢が変わった。

 黒髪ポニーテールの美少女が転入生として途中入学して来る夢。
 それから、何故かアタシは遠い未来の夢を見なくなった。

 見れてせいぜい一週間以内。

 未来が見えない事に最初は少し戸惑った。
 でも今を生きてるのに先の事なんてどうでもいいんじゃね?と思ったらなんか本当にどうでもよくなった。

 中途半端に遠すぎる不確定な未来の予知夢とか見るからしんどかったのよね。
 マジクソだわこの能力。

 それから本当に、黒髪の美少女みたいな男が途中入学してきて、アタシはとうとう三日先の未来も見なくなった。

 クソみたいな人生にほんの少しだけ希望が持てるんじゃないかと思えた。

 結局、月一回検査とか、定期報告とか面倒な事しなきゃいけなくて、未来が分からなくなっても毎日に特に何も変化は無かったから、きっと、結末はあんまり変わらないんだろうなと思っていたけど。

 友達兼幼なじみのようなルイと仲良くなったソイツ、ミズキは本当に色々やらかした。

 突然もう一人美少女にしか見えない顔の男、アイレを連れて来たり、学食のメニュー全制覇したり、模擬戦の授業で二人を相手に無傷でルイに勝ちそうになったにも関わらず降参したり、なんか危なそうな奴と知り合いだったり
 結果ルイに付き纏われて困惑したりして、付き合わされてるアイレが地味に可哀相だった。

 そんな感じだから、気付いたらアタシもミズキと仲良くなっていた。

 そんなある日

 「俺絶対、アンタをこの檻みたいな世界から助けるから」

 教室で呑気に会話していた時突然、ミズキは珍しく真剣な顔して、そう言って来た。

 「はいはい」
 「あっ、信じてねーだろ、マジだからな!」

 正直意味が分からなくて適当に流したけど、この時アタシは何も知らなかったから仕方ないと思う。

 予知夢を見なくなったからミズキにはきっと何かあるんだろうなとは思ってた、けどまさか神様とは思わないよね。
 誰だって思わないでしょあんなの。

 ......神ってあんな感じなのね。
 自由で本当に羨ましい。

 ミズキがアタシを、本当に助けてくれるなんて全く考えてなかった。
 だってカミサマって基本的に助けてくれないものだし、気まぐれだから、アテになる訳がない。

 ちなみに現在そのカミサマは、教室で突っ伏して唸っていた。


 「何やってんのミズキ」

 「悩んでるー」
 「ふーん」

 声を掛ければ、突っ伏したまま返事されたから、とりあえずそれで終わらせる。
 そうしたら、途端にミズキはガバッと顔を上げてアタシを見た。

 「そんだけかよ!、もうちょっとこう、どうしたの?とか無いの!?」
 「何、聞いて欲しいの?」

 「いや、そういう訳じゃないけどさ......」

 じゃあ初めからスルーしときゃ良いのに。

 溜息を吐きながら隣の席に座る。

 「そんな悩むとか、どうせルイの事でしょ」

 クソがリア充爆発しろ。

 「確かにそうだけど、俺は爆発しませんしリア充でもないですぅー」

 心を読まれたのか幼学部の子が反論するような腹立つノリでそんな風に返されてイラッとした。

 「うるさいわよ、あんだけ好かれてんだからとっととくっつけば良いじゃない」
 「あのなぁ......そういう訳にいかねーの!」

 右手で頬杖を付きながらミズキを見れば、真面目に不服そうなそんな反論が返る。

 「一体何が問題な訳?アンタがカミサマだから?」
 「俺にだって色んな事情があんだよ。
 簡単になんて決めらんねーの」

 事情?、事情、ねぇ。

 半眼でミズキをじっと見つめながら、口を開いた。

 「......アイレの事は簡単に決めたのに?
 聞いたわよ、いきなり他の世界から連れて来られたって」

 「うっ......、いや、でもそれとコレとは別だろ......」

 たじろぐミズキに、若干呆れながら畳み掛ける。

 「何も別じゃないと思うけど。
 アイレに好き勝手したんだからルイにだって好き勝手すりゃ良いじゃない」

 「......だから、事情があんだよ。」
 「アイレなら大丈夫で、ルイはダメってどんな事情よ」

 「......言いたくない」

 ぺしょ、なんて音がしそうなくらいの頼りなさで、また机に突っ伏しながら、ミズキは呟くようにそれだけを言った。

 「......ふーん。
 別に良いけど、多分ルイはずっとアンタに付き纏い続けると思うわよ」
 「......分かってるよ、あいつすげー純粋だもん」

 ルイは確かに純粋だ。
 大体の奴は皆、心に何か色を持ってて、傷が入ってたりヒビが入ってたりするのが普通
 でもルイは透明で何の混じり気も傷もヒビも無い、水晶玉みたいな心をしてる。

 本当に綺麗な、何も知らない心。

 この能力は相手がどんな奴なのか分かるからちょっと重宝してたりする。
 信用出来る奴かどうか、すぐに分かるから。
 信用出来ない奴は気持ち悪い色してるからすぐに分かる。

 不確定な最悪の未来しか見えない中途半端過ぎる予知夢より断然使えるのよねコレ。

 ミズキは机に頬を押し付けながら、呟くように口を開いた。

 「でも俺、あいつを好きになっちゃダメなんだ」

 ぽつりぽつりと呟かれたそんな言葉には、全く覇気が無い。

 ......あらまぁ。
 カミサマなのにそういう所はめんどくさいのね。

 「その理由って、事情とやらに関係する?」
 「あぁ。凄く関係してる」

 なんだか分からないけど、どうやら本当に何か重大な事情があるらしい。

 マジめんどくさいわねコイツら。

 「......ならソレ、ルイにはちゃんと説明しといた方がいいんじゃない?」

 「......言っても気にしない気がするぞあいつ」

 まぁ確かにあのルイなら、どんな理由を告白されても受け入れるだろう。
 この間は、ミズキの為ならヒトである事を捨てる、的な事言ってたし。

 「.........じゃあもうアンタも気にしなくて良いんじゃないの」
 「気にする、命に関わる事なんだ」

 ふぅん。命。

 「なら尚更、アンタは気にしちゃダメじゃん」
 「......なんでだ?」

 「それを決めるのはアンタじゃなくて、アイツでしょ」

 そんな重大な事情なら、こっちでヤキモキした所で意味なんて無いし、勝手に決めたらそれこそルイを侮辱する事になると思う。
 命が関わるなら、それこそルイがどうするか決めるべきでしょ。

 「......でも、俺のせいで誰かが死ぬのを見るのは、もう嫌だ......」
 「嫌なら足掻けば良いじゃない」

 「どうにも出来ない場合どうすりゃいいんだよ」
 「諦めたら?」
 「......嫌だ」

 そこまで嫌ならなんで動かないのよ。馬鹿なの?

 「だったら、色々試せば良いじゃない。やれる事全部やれば良いのよ」

 「それがルイの心を歪めるかもしれない事でもか」

 あぁ成る程、それが怖いのねこのカミサマ。
 ホントに馬鹿みたい。

 「何する気か知らないけど、アイツはそんなに弱くない。
 気にせず色々試せば良いわ」

 「でも......」

 言いたい事があるけど言えない、みたいな感じでミズキが呟く。

 へー、よっぽど怖いんだ、自分が予期せず誰かを傷付ける事。
 でも自分で決めた事なら平気なんでしょうね、アイレには平気で酷い事やってるっぽいし。

 悩んでるって事は、自分が矛盾してるのも分かってるんだろう。

 分かってて、コレか。
 めんどくさい奴ね。

 「何もしないでおいて嫌だって駄々こねるより、何かしておいた方がどう考えたってマシじゃない?」

 無言で固まったように動かないミズキに、そんな風に言いながら、また言葉を続ける為に口を開く。

 「どうするかはアンタ次第だけど、もし失敗してもやり直せば良いじゃない、カミサマなんでしょ」

 ハッキリキッパリと言い放ってやれば、ミズキは顔を上げて誤魔化すみたいに笑った。

 「あはは!かなわないなーカズハちゃんは。
 ......そんなだからどーしても助けたくなるんだよまったく」

 「............は?」

 助けるって、アタシを?
 何言ってんだろコイツ。

 「アンタには幸せになって貰いたいんだ、俺。だから助ける」
 「ふぅん......期待しないでおくわ」

 「そこは期待してよ!悲しい!」

 アタシの冷たい返答に、俺悲しい!なんて泣き真似しながら、そう言ってふざけるミズキは

 わざとらし過ぎて目茶苦茶、鬱陶しかった。


 「その無理してやってるハイテンションもう止めたら?疲れない?」

 冷めた目を向けるアタシを見て、ミズキは驚いたように目を見開いて、それからバツが悪そうに頬を掻きながら呟いた。

 「......参ったな、なんで分かんの」

 「だってアンタ、心の色と全く合ってないわよ、行動」

 ミズキの心は、なんかもう表現するなら、一番分かりやすい例えは宇宙だ。
 青黒い中にキラキラした星のような小さな光が満天の星空のように瞬いている。

 そんな奴が、普段から馬鹿みたいにハイテンションな訳が無い。

 ミズキは溜息を吐きながら淡々と呟いた。

 「......そっか。」

 「大体なんでそんな無駄なハイテンションやってんの」

 尋ねれば、ミズキは軽く考えるような様子を見せてから、真面目な顔で口を開いた。

 「アイレの為だよ」

 「ふぅん?」

 「カミサマは馬鹿で、鈍感で、楽しい事が大好きなうっかり屋さん。その方が救いになるだろ」

 「......救い、ね」

 へー。


 馬鹿じゃないの?


 アタシはまた半眼でミズキを見詰めた。
 途端に拗ねたみたいに口を尖らせてアタシを見るミズキ。

 「......なんだよ」
 「余計なお世話じゃないの、ソレ」

 キッパリと言い放ってやればミズキは眉間へ皺を寄せた。

 「......なんで」

 なんでって。
 本当に気付いてないの?カミサマなのに?

 「......ヒトってのは基本、弱く見えて弱くないのよ。
 酷い環境であればある程、打たれ強くなんの」

 「......アイレは、あんまり強くねーよ」

 拗ねたみたいに机の自分の腕に顔を埋めながら、くぐもった返答をするミズキ。

 どうやら本当に分かっていないらしい。

 「......あの子の心、いくらヒビ入っても粉々になってないわ。
 クラック水晶みたいに、ヒビが入ったまま、凄く綺麗」

 「......ちょっとの刺激で壊れちまいそうだよ?」

 「......壊れるならもっと早く壊れてると思うわ、あの子はそういう魂の質なのよ。
 だから連れて来れたんでしょ?、見た目がすぐ壊れそうだから騙されてんのよ」

 「......そう、かな」

 「そうよ、今はちょっとの事でヒビが入るけど、絶対割れないわ。
 本人がそれを嫌がってるもの」

 あれは、あの目は

 諦めたくない者の目だ。

 「あの子、強くなるわよ。弱い事を嫌がって、強くなろうと足掻いてる」

 「それは、知ってる」

 知っててあの態度って喧嘩売ってるとしか思えないけど。

 「......なら、見守ってあげたら良いじゃない」

 「......いきなり態度変えんのもな......」
 「あー......そうね、なら少しずつ変えてったら?」

 仕方なく打開策を提示してやったら、ミズキは真面目な顔のままで口を開いた。

 「正直めんどくさい」

 ......アタシは正直アンタがめんどくさいわ......。

 「......じゃあもうテキトーにしちゃえば?」

 「......良いかな?」
 「良いんじゃない?」

 知ったこっちゃないからもう好きにしたら良いわよ全く。

 溜息を吐きながら両手で頬杖をついて、窓の外に視線を送る。

 と、黙り込んでいたミズキが不意に口を開いた。

 「......俺、絶対アンタを助けるからな」

 ......助ける、って言われてもなぁ。

 足を組み替えながらミズキに視線を戻してじっと見つめる。


 「具体的に何する気よ?」

 「ひ・み・つ!」
 「凄いうざい」

 口元に人差し指を当てながらわざとらしく可愛くウインクしたミズキを冷たくあしらうと、何故か、へへっ、なんて軽く笑った。

 「ひっでー。でもちゃんと本気だよ俺」

 本気、ね。
 なんかよくわかんないけど、なんでアタシを助けようなんて思うのか。

 「だって俺、アンタのその性格とか考え方とか、生き方とか心とか、気に入ってるんだぜ?
 なのに幸せになれないとか嫌だもん、腹立つし」

 「何その理由」

 「カミサマらしい立派な理由だろ?」

 そうね、自分が嫌だから助けるなんて自分勝手でホントにカミサマらしいわ。

 でもね、気になる事があるのよ

 「......何故か嫌な予感しかしないんだけど?」

 “助ける”ってそんな嫌な予感するようなもんじゃないと思うんだけど何コレ?
 こんな予感するならヤダ。
 マジで助けられたくない。

 「大丈夫だって、ちゃんとリア充になれるから」
 「ちょっと待って。マジ何する気よ、なんか寒気までするんだけど?」

 何コレ、めっちゃゾワゾワするとかどういう事、アタシ何されんのマジ
 これから一体アタシに何が起きんの
 ヤダ、なんか知らないけどマジヤダ。

 「ホントに勘が鋭いなカズハちゃんはー。
 でも大丈夫、目茶苦茶苦労すると思うけど、ちゃんと幸せになれるから。目茶苦茶苦労すると思うけど」
 「ちょっと、なんで二回言ったの。嫌な予感倍増したんだけど」

 「大丈夫だってば、この世界で生きるより絶対マシだから。苦労するけど」
 「どんだけよソレ。嫌よそんなん。
 どうせ助けるならその苦労からも助けなさいよ」
 「ゴメン、無理★」

 「シバくわよ」

 てへっ、なんてわざとらしく笑いながら頭をコツン★とかやってるミズキは多分アタシの反応見て楽しんでいるんだろう。
 めっちゃ腹立つ。

 「あははー、まぁ楽しみにしててよ」
 「嫌、断固拒否するわ」
 「拒否権など無い!」

 真面目に堂々と、自信満々にキリッとしながら、顔文字で(`・ω・´)みたいな顔で理不尽な断言をされてますます腹が立った。

 「ハァ!?ふざけんな、いっそほっときなさいよ!」
 「拒否権など、無い!」

 断言すんな。
 なんで当事者のアタシが巻き込まれ型主人公みたいになってんのよ腹立つ。

 「ねぇ、なんでアタシの意志無視してんの」
 「助けたいから助ける。それだけだ」

 「カッコよく言って誤魔化そうとしてない?」

 「そんな事無いよー心外だなー」
 「棒読みだけど?」


 めっちゃ腹立つんだけど?


 「......安心してよ、ちゃんと幸せになれるからさ」

 突然ミズキはそう言って、優しく笑った。

 幸せ、か。


 「......今がじゅーぶん幸せだから、気にしなくて良いのよ」


 アタシは、アタシのクソみたいな人生に誰かを巻き込む気は無い。
 好きなように生きると決めたから、その皺寄せを受けるのはアタシだけでいい。

 この学園での楽しかった思い出があれば、アタシはこの先も生きて行ける。
 例え最期が悲惨でも、後悔しない人生だったなら、それだけで良い。

 アタシはアタシが思うまま、好きなように生きたって思えたら、それでいい。

 だから、アタシに助けは必要無いのよ、なんで分かってくれないかな。


 「......絶対、助ける」

 「気持ちだけ受け取っとく事にするわ」


 そう言って、アタシは笑った。


 だってアタシは、今が幸せだ。
 でもきっとミズキはそれじゃ満足出来ないんだろう。

 余計なお節介なのにねー。

 アタシの事より自分の事考えるべきだと思うんだけどな。
 マジめんどくさい奴らだわ。


 てゆーか、なんでアタシがオカンみたいに皆の世話焼いてんだ。
 しかも男同士のカップルの。

 .........あーぁ、爆発しないかなぁ。ガチめに。
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