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結論、良くない。※

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 なんかもう、今までに無いくらいの勢いでボロボロと涙が落ちていく。

 私に会いに来たんじゃなくて、帰って来たのか?
 世界隔ててたのにわざわざ?

 それって、私の為に?

 「う、ううぅ...っ!」
 「ア、アイレ!?」

 そんな私を見て慌てたのか、ベリアルは双子に繋がれていた手を離し、私に近寄りそのまま優しく抱き締めた。

 ちょ、やめて今優しくしないで
 色々とタガがぶっ飛んでるんだ今の私は

 ていうか、今気付いたんだけど、今まであったフィルターみたいな何かが無くなってる。

 ぼんやりしてピントが合っていないように感じていた世界が、なにもかも全て現実として、はっきりと実感出来た。

 世界が、ちゃんと見える。

 拒絶しかしていなかった心が、とうとう今の現実を受け入れたのだろう。


 ............現実?


 途端に、涙が引っ込んだ。

 ちょっと待って何この現実。
 ヤバい今私凄いイケメンに優しく抱きしめられてる。

 そういやコイツ私の事欲しいとか好きとか言ってなかったか?
 ていうか毎晩のように抱かれてなかったか?
 ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って

 どんどんとフラッシュバックしてくる今までのアレコレを改めて理解すると、羞恥にまた涙腺が緩んで来た。

 ヤバい。この現実ヤバい。

 あ、夢?、もしかして私今まで夢でも見てた?
 今までの事全部夢?
 じゃあイケメンに抱きしめられてる今の状況は一体何が起きたんだ?

 ▼アイレは こんらん している!

 私の頭は、一度に全ての現実を理解するには少々スペックが足りなかったらしい。

 そんな時、気付きたくない事実に気付いてしまって、若干冷静になった。

 「ベリアル...」

 「どうした?落ち着いたか?」

 うん、ちょっと落ち着いたよ。
 頭は絶賛混乱中だけど大丈夫、寝て起きたら整理される筈だから。
 それよりもね。

 「......何故元気になってるんだ...」

 息子さんおっきしてますが、なぁにこれ?
 抱きしめられてるから、丁度お腹辺りに当たっちゃったんですが。

 「............」

 見上げる私から無言で目を逸らすベリアルを怪訝に思う。
 今まで余裕が無く気付かなかったが、良く見ればいつもよりもとても辛そうに呼吸していて、頬も上気していた。

 「......何があった」

 「薬を盛られただけだ」

 「......誰に」

 じっと見つめながら尋ねるが、ベリアルは答えようとしない。

 ふうん、答えたくないのか、そうか。
 へええ、まあ良いけど。

 あんだけ好かれてたんだ、あの金髪の青年とオタノシミだったんだろう。
 効果抜けてから来れば良いのに。
 私の事好きとか言っておきながらそれってどうなん。最低じゃん。

 「違う」

 「何がだ」
 「抱いていない、アイレ以外抱かぬと決めた」

 知らん間にそんな決意されてたの私。
 別に嬉しくない。

 えっと、それが違うとなると

 「......じゃあ掘られたのか」

 「そんな訳あるか、そうなるくらいなら殺す覚悟で暴れる」

 「......じゃあ、一体何が......まさかあの金髪の青年に放置プレイの趣味が...?」

 恐る恐る呟くと、当の青年が声を荒らげた。

 「そんな趣味あってたまるか!!私を侮辱しているのかヒト風情が!!」

 「......じゃあ迫られて断ったから、腹いせか最終手段かで盛られたのか」

 言った途端一気に静かになったので、これがほぼ正解なんだろう。

 何やってんだあんたら。

 「......私を含め、馬鹿ばっかりか」

 思わず、溜息と共にそんな呟きが零れる。

 そんなに辛くなるまで我慢してしまうベリアルも、自分のモノにしたくて薬を盛った青年も、今更全てを現実だと受け入れ、理解した私も。
 何だコレ。
 馬鹿しかいないじゃないか。

 一番馬鹿なのはきっと私なんだろうけども。

 ぼんやりとそう考えた時だった。
 ベリアルの私を抱きしめる腕の力が強くなったかと思えば、後ろから後頭部に手を押しつけられ身体ごとピッタリと密着させられる形となった。
 正に抱きすくめられるという表現がピッタリの状態である。

 え、ちょっと待って、当たってる当たってる当たってる元気な息子さん当たってるから!

 混乱する私をよそに、ベリアルは私の耳元にまで顔を寄せると、呟くように囁いた。

 「アイレ、部屋へ帰るぞ」
 「え、いや、これから授業が...」

 ちょっと待ってさっき登校したばっかなんだけど?

 「......すまん、我はもう限界だ」
 「えっ」

 次の瞬間、気付いた時には部屋に帰っていた。

 「......えっ」

 余りの事に呆然と見渡す。

 ......瞬間移動能力持ってたよベリアルさんったら。
 どんだけチートキャラなのマジで。

 とか考えた時、一瞬にしてベッドへ連れ込まれた。

 「なっ、ちょ、待て!」

 気持ちは分かるがちゃんと現実だと認識した今、少しで良いから心の準備を!

 「無理だ」

 ですよね。
 思わず遠い目をしてしまったが仕方ないと思う。

 次の瞬間、お互いの着ていた服が全て消え、そのまま流れるような動作で手早く組み伏せられてしまった。

 相変わらず隙がないなぁチクショウ!

 「すまん」

 不意に掛けられた謝罪の言葉に、一瞬意味が分からず気を取られたその時
 馴らされてもいない後ろのソコへ、ベリアルの雄が一気に突き入れられて、鈍い痛みが走った。

 「…っ!!」

 圧迫感に息が詰まり、声も出せなくて身体がのけ反る。
 苦しくなったせいでナカを締め付けてしまったのか、艶っぽい吐息と共にベリアルが震え、私の中でベリアルのソレが何かを吐き出した。

 いや、何かってもうアレしか無いけどさ。

 「...っは...、あ、...え?」

 出した事で萎んだ筈なのに、私のナカでまた体積を増し始めるソレに困惑する。

 薬、強すぎないか?

 「ミカエルの奴め、薬の分量など考えずに...!
 すまない、アイレ、収まるまで付き合ってくれるか......?」

 「...え...、ひ、一人で、なんとか、出来たり...しないか?」

 ちょっとした希望を含め、もしかしたら解放してくれないかなー、とわざと可愛く首を傾けながら尋ねてみる。

 「アイレを抱きたい」

 「......嫌だ、と言ったら、どうする」
 「抱き潰す」

 「変わらんじゃないか!!」
 「我だって限界なんだ、別に良かろう」

 「良くない!大体、どのくらいで効果が切れるか分から、んァっ!」

 言葉の途中で突き上げられ、つい声を上げてしまった。

 「お喋りは終了だ」
 「っな、あ、ッあ、くっ、んっ」

 反論しようにも、白濁が潤滑油代わりになったのかスムーズに何度も突き上げられて言葉にならない。

 自分の声の艶っぽさや、目の前のベリアルにそれが聞かれているという事実を今まで以上に意識してしまって、
 なんかもう恥ずかしさだけが先行して顔に熱が集まった。

 凄く恥ずかしい。
 恥ずかしいし、なんか悔しいし、腹立つ。

 私に触れる指や、熱い吐息、体温、情欲に濡れた眼差し、言葉、何もかもが、今はきちんとした現実として感じてしまって訳が分からない。

 おかしい

 過去何度も抱かれている筈なのに、今更こんな風に思うなんて
 いくら十日くらい間が空いたからってこんなの変だ。

 「あっ、ん、んんッ!」
 「......く...っ!」

 またベリアルの身体が震え、私のナカでまたベリアルのソレがビクビクと痙攣するように白濁を吐き出した。

 ペースが早い。

 まだそんなに経ってないのにもう二回だ。
 こんなに強い薬を、今までずっと我慢していたのだろうか。

 さすがに二回ともなると少しはマシになっただろうか、とベリアルを見上げれば、何故かまたナカの息子が元気になった。

 「......っベリアル、こんなペースで、大丈夫か」
 「アイレが可愛いのが悪い」

 「......は?、っあ!んっ!ふぁっ!」

 言葉の脈絡が無くて意味が分からず首を傾げた瞬間、ベリアルのソレがとある場所へ打ち付けられ始めて、喉から高い声が出る。

 おかしい
 一体どうなっているんだろう

 突き上げられる度に、媚薬成分のあるあの液体を飲んだ時のような甘い痺れが身体を襲う。
 今までのような嫌悪感は何故か無く、引っ切り無しに襲ってくる快感に、ただ喘いだ。


 「ひぁっ!あ!はぅっ、んんっ!んぁ!」

 「いつもより、感度が良いな」

 「あぅ!、んっ、言う、なぁっ!」


 なんだ、これ
 今までこんな風に感じた事無い。

 なんで、こんな


 頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。
 ただ自分のナカにあるベリアルのソレが、あの場所を責め立てている事だけしか感じられなくて、何を言われているのか分からなくなりそうだった。

 「ッあ、あぁあ...ッ!」

 気が付けば、いつの間にか自分のソレが白濁を吐き出していた。

 射精後の倦怠感の中、荒い息を吐きながら瞬きを繰り返す。
 目の前がチカチカした。


 なんかコレ、ヤバい


 今回の事で、ベリアルに心を許してしまったからなんだろうか。
 何もかもが以前と違う。

 以前は全て、何もかも拒絶していたからまるで作業のように抱かれていた。
 だからある程度麻痺していたのだろう。

 不意に、ヒトは信頼出来る相手の前だとリラックス出来る、という事を思い出して、ちょっと自分にツッコミを入れたくなった。

 心許せたら身体も許せるのかよ自分...!
 いくらなんでも現金過ぎるだろ...!
 ていうか、もしかしてこれが通常の状態って事か?
 この身体どんだけ感度良いんだよ!やだよもう!無理!無理だから!

 「ったのむから、少し、手加減、して、くれないか」

 途切れ途切れになりながらも、なんとかそう告げる。

 「......すまんが、これ以上手加減出来ん、精一杯やってコレだ」

 マジか......!

 「怨むぞ、ミカエルとやら...!」

 「......悪気は無いんだ、許してやってくれ」
 「悪気が無くても、やって良い事と悪い事があるだろう...!」

 悔しくてそう言った時、ベリアルの雰囲気が少し変わった。
 眉間に皺が寄り、どこか怒っているようなそんな表情だ。

 「......あの時、我の手を取っていれば防げたかもしれん事だが?」
 「なっ、......私に彼の邪魔をする権利は...!」
 「言い訳か?」
 「ちが、ぁんっ!ちょ、聞け!」

 待って待って待って、何、なんで怒ってんの?

 「聞く耳持たん」
 「ふざけ、あッ、んんッ」

 「我にはアイレだけいれば良い...」

 今そんな事言われても!

 「アイレ、我のモノだ」
 「ッあ!」

 ズンッと激しく奥を突かれ息が出来なくなる。


 あかんコレ流されるパターンや
 いやいやいやちょっと待って、このままじゃ駄目だ。

 いくら心を許したとはいえ私の所有権まで許したくないんだけど!

 「知らん、貴様は我のモノだ」
 「あぅ!、っん!、っかってに、きめるな、あっ!」

 なんでこう何もかも勝手なんだ。
 私の意志は無視か!

 「ならば、何を望む?」

 「えっ」

 突如として律動が止み、そうして掛けられた言葉がイマイチ理解出来ずそんな声が漏れた。
 ベリアルはそんな私をじっと見つめながら頬を撫でる。

 「寂しいなら共に居てやろう、愛が欲しいなら我が愛そう、望むなら、何もかも捨ててやろう」

 ゆっくりと、まるで唄を歌うかのように、そんな言葉が私に向けて紡がれていく。

 「我にとって、アイレだけが、我の唯一だ」

 今まで生きて来て全く言われた事のない言葉達に、どう反応すべきか全く分からなくて言葉に詰まる。
 ベリアルはやっぱり気にした様子もなく私をじっと見つめ続けながら、言葉を続けた。

 「だからアイレ、我を貴様の唯一としろ。
 我のモノとなれ」

 その言葉はとても真っ直ぐで、今まで見ようとしていなかったから気付かなかった、彼の必死さが見えた。

 ......私はどうやら、相当酷い事をしていたらしい。

 もうコレ、なし崩し的にモノにされるパターンじゃないか?
 いやいやいや、それは駄目だ。

 だって私は、まだ彼を好きかどうか分かってない。

 「わたしは、逃げたくない......!」

 ちゃんと自分と向き合って、折り合いを付けて、答えを出したいと思っている。
 だから、逃げる訳にはいかないと、必死にそう声を発した。

 「この件に関しては逃げて良い、流されてしまえ。
 全て忘れて、我のモノとなれ」

 耳元で低く甘く、そんな優しい言葉を囁かれて腰の辺りがゾクリとする、が、なんとか踏ん張って反論した。

 「...いやだ...!」

 「そうか......ならば良いと言うまで抱き続けるだけだ」

 えっ?ちょ、何て言った今。

 待て待て待て。今は駄目だ
 まだ気持ちも現実もちゃんと整理出来てない。
 こんな、感じ方が全く違う状態で、そういう方向で責められたら何がどうなるか全く予想が付かなかった。

 最悪、記憶が飛ぶ。
 というかきっと意識だって飛ぶ。

 飛んでる間に色々口走って確実に最悪の事態になる気がする。


 「ま、待て、それは駄目だ、特に今は、ひぁ!」

 ぐっと腰を押し付けられて反射的に高い声が上がった。

 「さぁ、覚悟するが良い」
 「ぅあ、あああ!」

 ニヤリと凶悪に笑うベリアルに、なんか段々、色々と恐くなって来て思わず離れようと足掻く。
 だが腰を掴まれ、それ以上動けなくなった。

 「逃がすとでも?」
 「逃がせ!」

 さっきは逃げて良いって言ったじゃないか!

 「それとこれが違うのは当たり前だろう?」

 うるせぇ知るか!

 「さぁ、再開しよう」
 「や、やめ、ひぅッ!」





 その後、案の定私の記憶は飛んだ。
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